青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十三夏 骸の怒り

 あの一件が過ぎて以降、僕たちは快斗君の姿を見なくなった。あの後、松原さんは快斗君と別行動になったため僕らと同じく見ていないとのことだ。弦巻家の黒服の人に聞いてみると家にも帰っていないらしい。一応捜査はしているらしいがどうにも見つからないらしい。京君の方も探してみてはいる状態らしいけどこちらも見つからないとのことだ。どうして急に姿を消してしまったのか、僕たちは知っているかもしれない。もしかしたら、あの時松原さんを危ない目に合わせて顔を合わせづらくて逃げているのか、それとももっと強くなるために修行しているのか、などと話してはいたのだがそしたら見つからないとおかしくないかという話になった。

 今日は夕飯の買い物をしながら快斗君を探している。もしかしたらお腹をすかしているのではないだろうかと考えつつもどうしたのかが気になる。そのことについて真剣に考えていると真横から声をかけられた。

 

「ねぇ新一、今日の夜ご飯は何?」

「今日はね……ってなんでここにいるの?」

「買い出しに行ってきて欲しいって頼まれたからさ〜」

 

 その正体はリサだった。僕の事情を知っている数少ない人のうちの一人。手には買い物かごをぶら下げており中に牛蒡やにんじんが入っていた。

 

「あ、あのさ…聞きたいことがあるんだけど」

「何?僕嫌いな食べ物はないよ?」

「へー今はないんだ………ってそうじゃなくてさ、この間ボロボロで帰ってきたじゃん?何かあったの?」

「それは………」

 

 正直混乱を招くわけにもいかなかったのでいうのをためらった。だから僕は快斗君のことは隠しながら話すことにした。

 

「この間の敵は強かったんだよ、皆ヘトヘトでさ」

「また戦ってたの!?」

「うん、本当はすぐに戻るはずだったんだけど出て来ちゃったからね」

「だからあんなになってたんだ……無理しちゃだめだよ?」

「無理はしてないよ、あれが僕の役目だし。皆を守れるならそれが一番だしね」

 

 でも、と顔を顰めるリサに心配してくれてありがとうとだけ伝える。僕はその場から離れて食材を籠に詰めて会計を済ませる。あまり心配させたくないなと思いながら食材をエコバックに詰めていくと錠前が鳴り出す。奴らが出たんだ。急いで残りのものを詰め込んで店を出る。持ってきていたイクサリオンに乗って向かう。向かった先にはマスカレードの大群がいた。しかし数は前に見た時もはるかに多かった。同時に着いたのか京君が向かい側に見える。

 

「京君行くよ!」

『レ・デ・ィ』

「わかってる!蹴散らすぞ!」

『スカル』

「「変身」」

『フィ・ス・ト・オ・ン』

『スカル』

 

 変身した僕たちは自分たちの力でマスカレードの軍団を蹂躙していった。だが、何がどうなっているのか倒しても一向に数が減らない状態が続いている。今はセーブモードで対応しているがそれでもスペックは上回っているはず。故に倒すのは簡単なのだが数だけは変わらない。…試されているのか?誰かが実験として大量のマスカレードを送り出したとか?

 そんなことを考えながら戦っていると遠くから悲鳴が聞こえてくる。その方向を見るとマスカレードに捕まった女の子の姿があった。その正体は弦巻家の御令嬢、弦巻こころだった。なぜこんなところに彼女がいる!?そもそも黒服の人たちはどうしたと視野を広げると近くに黒服の人たちが倒れているのが見つかる。どうやら数に圧倒されたらしい。急いで向かおうとするにも大量の兵隊の所為で救出に迎えない。京君の方を見ても数が押し寄せているのが見える。これじゃ助けに行けない、と考えた瞬間だった。

 突然、赤い閃光が目の前を通っていく。閃光が通り過ぎると目の前は兵隊達は燃え上がり、塵となって消えていった。辺り一帯のマスカレードは全滅し、御令嬢も助けられた。ただ、令嬢を抱えている人の正体は意外な人物だった。

 

「───大丈夫か?こころ」

「快斗!来てくれたのね!」

「ああ、遅くなった。すまねぇ」

「助けてくれたんだもの、そんなこといいわ!それより最近見なかったけどどこ行ってたの?」

「ああ、ちょっとな」

「快斗君!よかった、心配したよ」

 

 快斗君はこころさんを下ろすと僕たちの方をじっと見てくる。改めてみるといつもの快斗君の姿ではなかった。本人自体の姿は見れなかったが、エターナルの姿が違っていた。いつもは所々が蒼い炎だったのに今日は赤い炎だった。

 

「久しぶりです、新一さん、京」

「おお、お前なんか変わったな」

「まぁな」

「とにかく無事でよかった」

「ご迷惑おかけしました。でも、もう心配しなくていいですよ。ついでに言えばもう戦わなくていいっすよ」

「?どういうことだ…?」

 

 疑問を投げかけた京君にいつの間にか快斗君のナイフが向けられていた。殺意も敵意もなくただただ向けられているようには感じられなかった。

 

「だから、もうアンタらは戦わなくていい(・・・・・・・)んだよ」

「言ってることの意味が理解できねぇな」

「俺は強くなった。だから俺一人で十分だ。以上」

「快斗君、一人じゃ危ないこともあるし皆で戦おうよ」

「まだ、わかんねぇのか。はっきり言ってやる」

 

 そういうと快斗君はこころさんを後ろに下がらせて笑うように言い放った。

 

「お前ら、邪魔」

「………は?」

 

 困惑を隠せなかった。邪魔?何故だ?快斗君はそんなこと言う子じゃないはず。それが数日見ない間にどうしてそんなこと言うようになったんだ?わからない。それでも今度ははっきり伝わってくる。彼は完全にこちらに敵意を向けている。隠そうとしない敵意を。何かに気づいたのか京君はその静寂を切り出した。

 

「お前、何に手を出した?」

「何に?言っている意味がわかんねぇんだけど」

「はっ、嘘もそこら辺にしとけ。少なくともそれはお前の力(・・・・)じゃねえ」

「………は?」

「京君どういうこと?」

「こいつの今の強さはこいつのじゃなくて借りモンだってことだ」

「違う、これは俺が手に入れた()だ!」

 

 癇に障ったのか快斗君はナイフを横に一振りしてからこっちを攻撃し始めた。彼の攻撃は以前よりも遥かに強く、動きも速くなっていた。攻撃を躱そうにもそれを超えるようなスピードで攻撃がやってくる。剣で捌こうとしてもフェイントによって攻撃をまともに喰らってしまう。それは京君も同じだった。しばらくその状態が続き、分かったことがある。連撃を喰らった僕たちは息を切らしているのに彼は一切息を切らすような様子を見せない。それどころか攻撃が入るたびにスピードが速くなっていっている。結果として僕たちは地に這いつくばるような状態になっていた。

 

「これが…今の快斗君の強さ……?」

「テメェ、それは弱いのと変わんねぇぞ!」

「………あ?」

「借りモンでよくそこまで威張れたな、お前はもう弱者も同然だ!」

「黙れ…」

 

 挑発の言葉と受け取ったのか、快斗君の動きは止まる。京君はそれでも火に油を注ぐように言葉をかけていく。

 

「まだ、前のお前の方が強かったぜ?」

「黙れ!黙れ!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!!!」

 

 激情した快斗君は京君に向かって攻撃を再開した。数々のメモリの使い分け、更には元々持っていたであろう戦闘技術を駆使して攻撃を続けていた。止めようと入ると強化された力によって弾き飛ばされる。前に模擬戦闘した時よりも比べ物にならないくらいのその力はもはや快斗君その人ではないようだった。

 

「ハハハハハ!弱い奴はもう戦わなくていいんだよ!そうやって出しゃばってると死んじまうぜ!」

 

 僕たちを圧倒した快斗君は笑いあげている。ゲラゲラと笑っている姿に苛立ちを覚えたのか、それとも別の理由なのか、京君は立ち上がるとゆらゆらと快斗君の方に歩いて行った。

 

「テメェ、そこまで言うなら加減しなくていいよな?」

「何を言って」

 

 京君は質問の答えを聞かずに快斗君を思いっきり殴り飛ばす。

 

「そこまで言われたらもういいよな?ここで潰す…いや、殺してやるよ」

「強くなった俺に叶うはずが」

「黙れ」

 

 黙れという言葉と同時にスカルマグナムを乱射して快斗君の動きを封じた。そして距離を縮めると一方的に殴り始める。快斗君の方をさっきまでの力はどこへ行ったのか防戦一方になっていた。

 

「そんなッ、馬鹿な、俺は強く………」

「鉄砕拳!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 京君の技が強かったのか快斗君は宙に浮き上がり、そこに京君が追い討ちをかける様に銃撃をする。起き上がる快斗君に対してスカルメモリをスロットに挿し込んでボタンを三回押す。

 

『マキシマムドライブ』

『マキシマムドライブ』

『マキシマムドライブ』

 

 音が鳴り終えると京君の右手は大きく紫に燃え上がり、快斗君の胸ぐらを掴んで構えていた。

 

「今度はちゃんと殺してやるよ。じゃあな、確実にあの世に送ってやる」

「俺は…俺はッ……!!」

「京君待って!」

「おぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 掴んでいた手を離し、怒声をあげながら殴ろうとする京君とよろける快斗君の間に入り込んで止めに入った。あの拳なら快斗君は確実に死ぬ。そんな事をしたら京君は人殺しになってしまう。

 

「どけ、新一!コイツは俺が殺す!」

「そんな事させない!快斗君、今のうちに逃げて、早く!」

「………………ッ!」

 

 姿が消えるメモリを使ったのか快斗君の姿はその場から消えた。それを確認すると僕たちは変身を解除した。この前みたいに胸ぐらを掴まれるかと思いきや京君はその場に座り込んだ。そして地に拳を叩きつけて叫ぶように声を上げ始める。

 

「クソが……クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!あの馬鹿野郎ぉ!!!!」

「………」

「新一、なんで止めた。あのバカはもう殺さねぇとダメだ」

「そんな事はないよ、まだ方法はある。それにあのままにしたら京君が人殺しになってしまう」

「そうか、そんな事気にしていたのか。それなら気にしなくていい。俺は元からあるヤツを殺す(・・・・・)事も目当てにしてんだからな」

「ヤツを、殺す………?」

「そういえばまだ話してないか、俺がライダーになった過去を。いいぜ、話してやる」

 

 彼は立ち上がると僕に真正面から話しかけてくる。それも、今までにないほどの真剣な眼差しで。

 

「俺にはな、昔、二人の友人がいたんだ。名前は三枝 千尋(さえぐさ ちひろ)皇 獅郎(すめらぎ しろう)、あの頃はみんなでバカやって遊んでたさ、メモリ(これ)が見つかるまではな。千尋は機械に強かった。どんな情報システムにもハッキングできるくらいにな。だからこれを調べに調べた結果どれだけのものかというのが分かった。その時だ、俺たちに亀裂が入ったのは。俺たちはそれをどうにか人の役に立てないかと考えた。けど獅郎は違った。アイツだけは俺たちとは違って自分の力に使うことだけを考えていた。

 それから1週間後だ。俺が千尋に会いに行った時、アイツは千尋を殺してた。しかもあの時俺たちが見つけたメモリの二つのうち一つである『Nazca(ナスカ)』のメモリを使っていたんだ。見しらぬドライバーをつけて変身し、殺したらしい。奴が悠長に話してくれたよ。そしてアイツは逃亡、未だに見つからない。

 その後だった。知らねぇ女が俺にドライバーを渡して、俺に探偵になれと言ってきた。俺は自慢の頭の回転の速さを利用して探偵になった。事件を解決するたびにアイツを探している。あのクソ野郎を。アイツだけは誰が何と言おうと俺が殺す。そのために今探偵を続けてこっちもやってる。

 これでわかったろ?俺はもう二度と力で狂う奴を見たくない。だから本当に手遅れになる前に俺はあいつを殺す」

 

 京君の過去を知った。彼のライダーへの道のりは僕と似ているモノだった。

 人を殺す────それがどれだけのことなのか彼は相当わかっているはずだ。それでも殺すと言っているというとはその意思は簡単には変えられないだろう。

 

「わかってると思うけど聞くよ。──本当に殺す気?」

「ああ、殺してやる。だから新一、邪魔はすんなよ」

 

 そう言った京君は僕に背を向けてこの場を去っていった。僕はあたりを見回してみる。辺りには破壊された地面や瓦礫があるだけだった。

 ──力の間違った使い方。それがどのような結果をもたらすのか改めてわかった気がする。

 でもやはり疑問点が残る。快斗君のような子がそんな簡単に引っかかるのだろうか。そもそも何があってあんな風になってしまったのか。どうしてもそこだけが引っかかる。とりあえず僕も帰ろうと道を引き返そうとすると声をかけられる。

 

「ねぇ新一、さっきのはなんだったの?」

「こころ…様………」

「こころでいいわ!それで何をしていたの?」

「ちょっと………鍛えていただけですよ」

「あら、そうなの?」

「ええ、ですから気にしないでください。黒服の人も来ましたし、僕はここで失礼します」

 

 御令嬢に一礼してその場を後にする。振り返って歩き始めた瞬間気付く。拳を受けた腕の部分から痛みが走ってきた。……やはりあの強さはおかしい。どうにかしないと彼が危ない………。




 新一と別れた後俺は裏路地に入っていた。
 また、失敗した。あの時の失敗はもうしないと思ってたのに。もう誰も狂わせないって決めたのに。
 壁に拳を打ちつけると俺の手から血が垂れてくる。だが俺はそれを気に留めていなかった。近くにあった気配に気付き、そっちの方に意識は向かっていた。その方向に見えたのは白い革ジャンの一部だった。すぐに追いかけるとその姿はなかった。けど俺は怒りに震えた。
 まさか、アイツがいるのか?あの……あのクソ野郎が………!

壁の色を変えるとしたら?

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