青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十四夏 酔い

「ハァ……ハァ………」

 

 二人から距離をとった俺は廃墟についてから変身を解除した。

 なんでだよ、なんで負けたんだよ!せっかく強くなったのに。弱い自分なんか消えたと思ったのに!倒せたのは雑魚どもだけ、アイツらは倒せなかった。それどころか京に…あんなにボコされて、強くなったなんて言えんのかよ!わけわかんねぇよ………どうして俺はこんなに弱いんだよ………。

 

「おや、帰ってきたのかい」

「アンタは………」

「強くなったのにどうしてこんなにボロボロなんだい?」

「それは…………」

 

 しゃがみ込んで聞いてくる奴に対してはっきり言い返せないでいる。言い返せないどころか言いたくない。それ自体が負けを認めているみたいで嫌だった。負けを認めたら弱いことを認めてしまう。

 

「無理して答えなくていいよ。仕方ないさ、アイツは味方にさえ隠し事をしているような奴なんだから」

「隠し事……というかアンタ、アイツのことを知っているのか?」

「知っているも何も、友達だよ♪」

 

 立ち上がって高らかに笑っている。その顔はとても楽しそうだった。まるで思い出話をする子供のように。

 

「友達?」

「ああ、ちょっと色々あって離れ離れになっちゃったんだけど、今でも俺は彼を友達だと思ってるよ」

「……というかアンタ、見てたのか?」

「まぁね、そんなことよりさ、話を聞かせてよ。見ているだけじゃわからなかったからさ、教えてくれないかな?彼になんて言われたんだい?」

「………前の方が強かったって。他人の力なんか使ってるうちは弱いって」

 

 椅子に座り込んで話すと俺は顔を抑える。怒りでこのままグシャグシャにしてしまいそうだ。話しているうちにまた怒りが溜まってくる。でもそれを消えさせるように声をかけてくる。

 

「そんなことないよ。他人の力でも使っているのが自分であればそれは君の強さだよ」

「………ほんとか?」

「ホントホント。だから君は強い!弱いなんてアイツの嘘だよ。死にたくないから本気出しただけだよ」

「でも……俺はそれに負けた………本気のアイツに負けた………」

「大丈夫だよ、君の本気はそのくらいじゃないだろう?」

「………」

「もっと力を出せるようにしてあげるよ」

 

 そう言って奴は手を差し伸べてくる。その言葉がとても心地よく感じて、俺はその先に希望があると信じて手を取った。そして廃墟の奥にあるカプセルの中に入っていく。カプセルの中でマスクを着けるとすぐに意識は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──弱者でも強くなる事はできる────

 世の中そう思っている奴が多いみたいだけどそんなことないんだよなぁ。弱者は強くなれないんだよ。なんでかって?結局最後には強者に負けるからだよ。どんなに強くなっても終わりには強者からの圧倒的な力に負ける。だからどれだけ頑張っても弱者は最後に絶望する、力こそがモノを言わす。それは武力だけじゃない。権力も同じだ。ずる賢い政治家は強者になる。真面目にコツコツ頑張ってきたヤツらは最後にそいつらに裏切られる。そして絶望させられる。

 でもそんな世界間違ってる。だって一番強いのは暴力なんだから。武力だって結局は暴力が元になってんだから、結局は暴力なんだよ。

 その暴力はどうやって決められるかって?そんなの簡単だ。才能だ。力の才能さえあれば勝つことは容易い。弱者にはそれがない。だからこうやって(・・・・・)力を求めにやってくる。面白いよな。そうやって自滅の道に走ってる奴の三文劇を見るのは絶望している時の顔だけは素晴らしいんだから。

 

「ハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 カプセルに手をついて俺は笑う。あまりにも惨めで笑えてくる。弱者(こういう奴が)求めてくる強さというのはただの幻想。そしてそれは時に見えない牙と化す。俺はカプセル浮かんでいる顏を見ながら言う。

 だから俺は名付けた。弱者が求める力は

 

「麻薬って言うんだよ」

 

 と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に着いてポストの確認をする。すると物件のチラシのほかに一つの封筒が入っていた。その封筒を見て誰からなのか確信する。名護家の紋章、つまりは霧切さんからだろう。名護の者としての依頼故にきちんとしたのだろう。家の中に入り、冷蔵庫に食材をしまってからすぐに部屋へと向かう。その封筒を開けると中には契約書が入っていた。そして契約書以外にもう一枚手紙が入っていた。契約書はこの間の話に関することだった。しかし、手紙の方には違う言葉が書いてあった。

 

『プレゼントは受け取って貰えたかな?』

 

 その言葉を読んだ瞬間、怒りで手が震えた。まさか霧切さんが仕組んだことなのか?そう思いすぐにスマホを手に取ってある番号を打ち込む。耳に当てるとコーツ音が聞こえてくる。電話をかけた相手は三コール以内に出て声をかけてきた。

 

『もしもし霧切だ』

「名護新一です」

『新一君か、契約書に不備でも』

「単刀直入に聞かせてください。快斗君に手を出したのは貴方方ですか?」

『新一君、何を』

「返答によっては今すぐそちらに向かい、名護家を壊します」

『待ちたまえ、何をいっているんだ君は!?第一、その快斗君とやらは誰なんだ!?』

「その様子……知らないというのですか?」

『知っているも何も、理解が追いついていない。状況を説明してくれ』

 

 僕は今の状況を霧切さんに伝えた。全て伝え終わると霧切さんは電話越しに重いため息をついてくる。

 

『なるほどな、つまり仲間の一人が今操られていると』

「はい、そして今大きな可能性が貴方方に向けられました」

『根拠を聞かせてもらっていいかね?』

「先程契約書が届き、同封されていた手紙に『プレゼントは受け取ってもらえたかな?』と書かれておりまさかと思い掛けた次第です」

『ハァ……完全にタイミングを間違えたな。それとこれとは無関係だ』

「本当ですか?」

『ああ、真実だとも』

「では嘘だと判明した場合、覚悟しておいてください」

『わかった。ただこちらでもそれなりに調べてみよう。分かり次第連絡する』

「ご協力には感謝します」

 

 お礼を告げて電話を切るとため息をついた。冷静じゃなかったな。よく考えればそんなことしない集団だということはすぐわかるはずなのに、動揺してしまった。全く、もう少し冷静になってくれ。ドアを開けて部屋を出るとお嬢様の姿があった。

 

「お嬢様……」

「どうしたの新一、いつものあなたらしくないわよ。それに顔の傷………」

 

 お嬢様が僕の顔に触れてくる。いつもはそんなことしないのにどうしてだろうか。触られたところに少し痛みが走る。でも大したことはなかった。

 

「鎌鼬ですかね」

「かまいたち?」

「はい、突発的な風の現象によってできる切り傷です」

「そうなの?難しい事は分からないけど、気をつけなさい」

「失礼しました」

 

 顏を上げると既にお嬢様はこちらに背を向けて自室へと戻っていた。気を取り直して僕は階段を下っていく。台所に着き、料理を始める。あまり考えていなかったが冷蔵庫の中身を見て今日の夜ご飯はミネストローネにする事に決めた。

 夜ご飯を終え、片付けをした後に僕はシャワーを浴用とする。服を脱ごうとすると体から悲鳴が聞こえる。多分、今日の戦闘でかなりのダメージを負ったからだ。切り傷はさっき言われた所にしかなかったが体には痣などが沢山あった。受けたところが全部服で隠れてて助かった。もしバレたりしたら余計な心配をかけさせるところだった。しかしお嬢様が僕のことを心配するのだろうか。でもさっきは心配していたし、やはり考えたりはするのだろうか………やめだ。そんなわからないことで悩んでいる暇があったら早めに休憩に入ろう。まだ仕事は残ってるしそれを片付けてからになるだろうけど。そして、シャワーを浴び終えて残りの仕事を終わらせてから就寝に入った。

 翌日、いつも通り練習が始まると僕は部屋を出てサークルのエントランスに向かう。やることもないのでソファに座っているとまりなさんから声をかけられる。

 

「やっほー、新一君」

「まりなさんこんにちは」

「今日も練習?」

「僕が、ではないですけどね」

 

 確かに、などと言いながらしばらく雑談をした。すると荷物運びの仕事が残っているとかでそっちに戻るというので手伝うかどうか聞くとお願いされた。暇も同然だったので手伝いに行くと、大量の段ボールがあった。何が入っているか聞くと近頃やるライブの広告やエントリー用紙などが入っているとのことだった。数部もらっていいか聞くと終わった後に持ってっていいとのことなのでそれのお礼も兼ねて手伝いを始める。二人でやったおかげかすぐにダンボールは片付き、仕事はなんなく終えた。約束通り広告を貰ってエントランスに戻るとお嬢様から『終わったので来て欲しい』と連絡が入る。部屋に戻ると片付けが始まっており、それの手伝いに呼ばれたらしい。すぐに行動に移り、片付けを手伝う。しかしほぼ終わっているため掃除しかやることはなかった。やがて掃除も終わり、受付なども終わらせると簡易ミーティングに入った。

 

「次回の練習は明後日、その時にまた合わせるわよ。各自明後日までに復習しておくこと」

「わかりました」

「りょーかい♪」

「わかりました!」

「……はい…!」

「他に連絡ある人はいるかしら」

「すみません、僕からいいですか?」

「いいわよ」

 

 僕は先ほどもらった広告を出して皆に配り、話し始める。

 

「先程、まりなさんから頂いたのですが近頃ライブがあるそうです。参加は自由で状況によりますが一バンド三曲が目安だそうです。皆さんいかがですか?」

「おぉー、なんかマネージャーっぽい!」

「あこ、これ出たいです!新曲をお客さんに聞いてもらいたいですし!」

「確かに一度試してみたいですね」

「私も……やってみたいです………」

「決まりね。そのことも次回やりましょう。期限はまだなんでしょう?」

「はい、締め切りは今月末と書いてありますし、大丈夫だと思います」

 

 さっきの事もまとめて今日は各自解散となった。リサは今日はこれからバイトとのことで帰り道はお嬢様と二人だった。お嬢様の熱中症予防として日傘を挿して歩いていると声をかけられる。最近はなんだか会話する数が増えたような気もする。

 

「あなたは普段何をしているの?」

「普段…ですか?」

「ええ。練習の邪魔にならないようにしてくれるのは助かっているわ。でも最近気になっているのよ」

「ああ、Roseliaの練習の時間は少しばかり休憩させていただいてます」

「…あなたでも休みは必要なのね」

「………僕も人間ですよ?」

 

 お嬢様は僕をなんだと思っているのだろうか?これでも人間やってるつもりなんだけど、それっぽさがなかったのだろうか。

 

「冗談よ、今日のお昼ご飯は何かしら」

「今日は冷麦にございます」

「そう、帰ったらすぐ食べれるの?」

「可能ですが、どうかなさいましたか?」

「なんでもないわ」

 

 お腹でも空いているのだろうか。夏は食欲が減りやすいってよく聞くけど、疲れているのなら誰でも食欲は湧くか。松原さんに出会う。声をかけようとすると壁から出てきた腕に強引に引っ張られるように吸い込まれていった。お嬢様と目を合わせて後を追うようにすると変な男の人たちに絡まれていた。松原さんは目に涙を浮かべて顏を横に振っていた。その姿を見て留に行こうとするとお嬢様が肩に手を置いてくる。

 

「何をしようとしているの?」

「彼女を助けようとしています」

「………好きにしなさい」

「ありがとうございます」

 

 渋々といった感じだったが、許可が降りたので路地裏に入ろうとするとさっきとは違う光景を目に入れる。絡んでいた男の人が壁にぶつけられていた。背に片腕を回され、その腕は今にも折られそうなくらいに曲げられていた。やっているのは勿論松原さんではない。さっきまでいなかったはずの快斗君だった。

 

「快斗君、そこまでにしてあげなよ」

「新一さん、コイツは花音さんに手を出そうとした。タダで返すわけにはいかない」

「わ、私は大丈夫だから、ね?」

「………」

 

 快斗君が腕を離すと男の人は逃げるように走っていった。その姿を見送ると快斗君はこちらを睨んでいた。

 

「か、快斗君、無事だったんだね」

「花音さん、お久しぶりです」

「どこ行ってたの?心配してたんだよ?」

「それは言えないんですけど………それより、安心してください」

「ふぇ?」

「俺、もう誰も傷つけないくらい強くなりましたから」

「「!!!」」

 

 その言葉を聞いた瞬間わかった。彼はまた変わってしまった。いや、正確には変えられたのだろう。何者かわからない者に。

 

「やだなぁ、そんなに見ないでくださいよ。嫉妬ですか?」

「………」

「まぁ強い俺になら仕方ないっすよね。とりあえず今日はここでさよならです………もう二度と、戦場で会わないことを祈ってますよ」

 

 そう言った彼は瞬きする間に消えていた。両サイドは壁に囲まれたこの場所から移動して消えるなんていうのはほぼ不可能。なら何かを使ったのだろう。考えても仕方ないので松原さんを連れて路地裏を出ることにした。路地裏を出るとお嬢様がその場で待ってくれていた。

 

「さっき背の高い男の人が走って行ったのだけれど」

「その人は気にしなくて大丈夫ですよ。それよりお嬢様はお怪我とかありませんか?」

「問題ないわ。その人は?」

「ちょっと巻き込まれちゃったみたいで。どうやら約束があるみたいなのでその場所まで送っていこうと思います」

「それが良いかもしれないわね」

「あの、私のことは大丈夫ですよぉ……」

 

 そういうわけにもいかないだろう、とお嬢様に先に謝罪してから送り届けることにした。けれど送っている最中、快斗君のことを聞かれることがあったが何一つキチンと答えることは出来なかった。

 

壁の色を変えるとしたら?

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