帽子をかぶっている少年は深夜に夜の街を徘徊していた。暗い中、薄い灯りで照らされている路地裏を見つけると入っていく。しばらく歩いているとニット帽を被った姿勢の悪い男を見つける。
「教えろ、ここら辺で白い革ジャンを着た奴を見なかったか」
「あ?てかお前何モ、グブッ」
彼は喧嘩腰になった男に対して蹴りを繰り出し、胸部を足で押さえつけていた。帽子を被ったその顔から覗かせる目は氷のように冷たい目をしている。
「見たかと聞いているんだ。テメェの御託なんかどうでもいい」
「し、しらねぇよ!てか、そんなもんケーサツに聞けばいいだろ!?」
「アイツらに捕まんねぇから探してんだろうが。わかれ」
冷めている声を出した後、男を離すと同時に踏みつけていた。踏んでいる足を外すと力強く男を蹴り、その場を去ろうとしていた。すると音を聞きつけたのか人が集まってきていた。といってもこの時間。こんな薄暗い路地裏にいるのは真っ当な人間ではない。皆が皆、凶器のようなものを持っている。タバコの匂い、酒の瓶、ポケットからはみ出ている白い粉の入った小さな袋。やはりまともな連中じゃないと確信を得た彼はため息を吐いてから頬を歪ませる。
「いいぜ、遊んでやる。逃げるなよ?」
それからはあっという間だった。彼を囲んでいた集団は山を作るように重なっている。彼は落とした帽子を拾い上げ、土汚れを払い落としてから被ると路地裏を出る。見上げた空は星が見えない曇り空だった。
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目が覚めた。俺は体を起こすと自分が住んでいるアパートだということ認識する。
そういえば昨日遅くまで調べ物してたんだったか。最後は馬鹿どもに絡まれたけど、たまには体動かさないとな。
布団から出て朝自宅を始める。時刻は八時半。朝食は……作るのがめんどくさいのでいつものとこ行くか。こんなことあいつの前で言ったら怒られそうだけど。全ての朝自宅を済ませて俺は家を出る。この時間に出れば開店くらいに入れるか。バイクを使って俺は羽沢珈琲店に向かう。やっぱり夏はバイクの風だよな、体限定だが。バイクによる疾走で風が涼しく感じる。ただし顔はヘルメットで隠れているの正直蒸れる。しばらくして俺は店を前にする。店の中に入っていくとエアコンの涼しさを感じる。バイクの風もいいが室内はエアコンに限るな。
「いらっしゃいませー。あ、鳴海先輩、おはようございます」
「おう、おはよう。いつもの席空いてるか?」
「はい、注文は…アイスコーヒーでいいですか?」
「流石だ。あと今日の新聞ってあったりするか?」
「はい、少々お待ちください」
羽沢に礼を言っていつも使わせてもらっている席に着く。少しするとすぐにアイスコーヒーと新聞がやってきた。今日は人が少ないのか俺以外客はいない。しかしやることは変わらないので冷コーを飲みながら朝食を決める。
「羽沢、サンドイッチのタマゴとハムサラダ頼む」
「はい!」
あいつも若いのによく頑張ってるよな。夏休みだってのに親の手伝いとか偉すぎると思う。さて、そんなことよりも調べ物しますか。調べるものは決まっている。メモリに関することだ。新聞に載っていないだろうと思われるが関連することは乗っている。奇怪な事件は意外と目盛りが関わっていたりすることが多い。そういったことを手当たり次第探して自分で調べにいく。外れることもあるが大体は当たっている。しかし今日は載っていなかった。ハズレかと思いつつ四コマ漫画を読みながら冷コーを啜る。すると人影が差し込んでくる。
「お待たせしました。サンドイッチのタマゴとハムサラダのセットです」
「ああ……って何笑ってんだ?」
「ふふ、鳴海先輩でも四コマ読むんだなって」
「あ?ああ…まぁな、期待していたものがなかったら読むわ」
「何か調べ物ですか?」
「まぁな。歴史調査大発見的な」
巻き込むわけにもいかないので適当にホラを吹いておく。
「意外と歴史に興味があるんですね」
「意外とってお前なぁ………準備しとけ、客が来るぞ」
「え?」
羽沢が生半可な返事をした瞬間っ扉からからんからんと音が聞こえてくる。声からして女の人が一人といったところか。
「こんにちは〜」
「ほ、本当に来ましたねっ」
「まぁな。ほらお客様だぞ」
「は、はい!」
いらっしゃいませなどと言いながら羽沢は駆け足で向かっていった。今日はどうするかと考え始めた瞬間、目の前の椅子が引かれる音がする。すると目の前には水色の髪をした女がいた。どっかで見たことがあると考えていたら向こうから声がかかった。
「あの………相席してもいいですか?」
「構わないが…お前アイツと一緒にいた奴か」
「はっ、はい。松原花音っていいます」
「お、おう。そういえばアイツにあったか?俺はしばらく会ってないんだけどよ」
嘘だがあえて黙っておくことにする。姿も雰囲気も変わっていたなんて知ったらどんな反応するかわからないからな。
「あ、昨日会いました……」
「ホントか!」
「はい…でもなんだか快斗君じゃないような感じがしてぇ………」
気づいたのか。そんなに分かりやすいくらいになっていたのかそれとも隠そうとしないのか。気になるところではあるな。
「他は?なんか気づいたことはあるか?」
「…なんか……怖いな、って」
「怖い?」
「はい、よくわからないけど怖かったんです。あの頃の快斗君はもういないような気がして」
もういない、か。確かにその通りかもしれない。何よりそれはこれから本物になる。あの頃どころかこれからもいなくなるが。彼女の目には不安がこもっているように見える。恐怖を感じているようにも見える。
「そうか。もう一つ聞いていいか?」
「は、はい」
「そん時、他に男がいなかったか?白い革ジャンを着た奴とか」
「白い革ジャンはいませんでしたけどぉ…名護さんならいましたよ」
ならその現場を新一も見ているということか。ならアイツにも話を聞いてみるか。よし、やることは決まった。ここを出るかと席を立とうとする俺に松原は話しかけてくる。
「あ、あのっ」
「なんだ?」
「名前…聞いてなかったなって」
「そういえば言ってなかったな。俺の名は鳴海 京だ」
「え、あの名探偵のですか!?」
「知っている奴がいてよかったわ。知人はそんなニュース知らないっていうからな」
「そうなんだ………」
「話は終わりか?なら俺はもう出るが」
「あっ、じゃあもう一ついいですか………?」
出ようとした俺をまた引き止めてくる。正直俺はもうコイツに用事はないんだが大人しく席に着く。
「…いいぞ」
「あの、快斗君を助けてくれませんか?」
「………は?」
「よくわからないけど、多分困っているんだと思います。あの時も私にずっと謝ってきてて………本当は優しい子なんです。強くて、かっこよくて、ギター弾いてる時とか皆で楽しんでる時が一番いい顏をしてて………」
謝ってきて、と聞いた瞬間俺は席を立ってレジに向かう。その後のことはあまり耳に入ってきていない。というよりかは入れないようにしていた。
「ま、待ってください!」
「アイツなら助けない」
「な、なんでですか!?」
「そこまで教える義理はない」
「でも探偵さん、なんですよね?」
「それがどうした。探偵だからって人を助けなきゃいけないなんて言わないよな?」
「ッ!」
威圧をかけると黙り込んでしまった。松原には申し訳ないけど俺はアイツを殺すと決めた。だから止めさせはしない。なんと言われようと俺はアイツを殺す。羽沢が困った顏をしているが気にしないでくれと伝えるとすぐに会計をやってくれた。金払いも済んだので外に出ようとすると腕を掴まれる。松原だ。この後に及んで何をするのか問おうとすると口が開かれた。
「じゃ、じゃあ私が依頼します!」
「はぁ!?」
「探偵さんに、『快斗君を助けて』って依頼します!」
何を言っているんだコイツは。って、言いたいところだけど機転がきいてやがる。確かに探偵として依頼されたら断りづらくなるだろうな。だがしかし。
「探偵は絶対依頼を受けなければならないという事はない」
「そ、そんなぁ!」
「じゃあな」
無理矢理剥がすように腕を離して店を出ていく。チッ、なんだか胸糞悪りぃ。なんでアイツのことでこんなことになんなきゃ行けねぇんだよ。
バイクに乗って街を走り回る。その時だった。錠前が鳴り響く。一度路肩に止めてから錠前を開く。場所は意外と近くは示す反応は多い。数的にマスカレードだと思われたがまた別の場所にファンガイアの反応が見られた。錠前の通信機能を使って新一に連絡する。お互いに専門とする敵の方向に向かうことにしてバイクを走らせた。
向かった先にはやはり大量のマスカレードが群がっていた。返信しようとすると足元にナイフが刺さる。そのナイフから視線を戻すと既にマスカレードは消えていた。代わりに例のバカが目の前に立っている。
「
「そんな記憶ねぇな。それより今日こそ殺してやるよ」
「まだそんなこと言ってたのか。全く、呆れたもんだぜ!」
やってきたナイフの攻撃は前に戦った時よりも重くなっていた。でも感じる。この力はコイツ自身の力じゃない。何かを取り込んだような、取り込まれたような力だ。考え事をしながら俺は拳を打ち込もうとすると間に割り込むかのような咆哮を耳にする。俺達はその方向を向くと一体のファンガイアがいた。新一の方にいた奴かと思うと新一が姿を見せる。しかもファンガイアと鍔迫り合いをしながらだ。咆哮を上げながらやって来た奴を快斗と距離を取るように避けると新一と背中合わせになる。
「新一、あれはなんだ?」
「どうやらもう一体いたみたい」
「なるほどな」
「そっちは……快斗君がやったのか」
「皮肉にもな」
「本当に………殺すの?」
「何が言いたい」
「僕は…快斗君が戻って来れる人だって信じてる。だから殺さないでほしい」
戻ってくる?そんなこと信じられない。一度力に狂えばソイツはもう戻ってこない。俺はそういう奴をこの目で見た。だからこそ俺は奴を殺すと決めたんだ。
「止めるなっていったよな?」
「物理的には止めてないよ」
「そういうことじゃねぇ」
「もし…引き戻せるって思ったら、殺さないで」
「嫌だと言ったら?」
「京君はきちんと判断出来るって知ってるから」
そういうことじゃねぇんだよなと思った瞬間、新一はファンガイアに向かって突撃していた。そういうことじゃない。つまり俺の独断で決めると言っている。もちろん今の俺はコイツを殺す事しか考えていない。銃口をヤツに向けると横からさっきのファンガイアがやってくる。一撃で終わらせようとメモリをマグナムに装填始、骸骨を作り出す。
『スカル、マキシマムドライブ!』
骸骨を飛ばし、ファンガイアを閉じ込めた後にマキシマムドライブを撃ち込む。ファンガイアはステンドグラスとなって木っ端微塵になった。だがこれで終わったわけじゃない。
「お前やっぱ強いよな。けど今は俺の方が強い!」
「やっぱりまた力を取り込んだか!」
「アレは本当にすげぇ、力が湧いてくる!」
それからはヤツの連撃が始まった。スピードもパワーもこの前よりも遥かに上がっている。短期間にこれだけパワーアップしてまともでいられるのか?体はどうなっているのかと一瞬気にもなったがすぐにカウンターを打つことにする。しかしカウンターまでも読まれて逆に攻撃を受ける。どういうことだ、反射神経までも上がっているのか。俺が顏を上げた瞬間ヤツの姿は見えず、代わりに体に強い打撃が走った。勢いが強い所為で壁に打ち付けられる。体が言うことを聞かないので視線だけ上にあげるとそこにはヤツがいた。
「どうだ、これが今の俺だ」
「て、テメェ………グッ」
「立たせねぇよ。前のやつは結構響いたからな、アレさえ喰らわなければ俺は勝てる」
立つことを許されず、俺は胸を踏みつけられる。その強さは増していき、俺の体は壁にめり込んでいく。
「まずは一人か。二度と戦えないようにしてやる」
快斗がエターナルメモリをベルトから取り出そうとした瞬間頭を抱え始める。痛みのせいなのか悲鳴のようなものまであげるようになった。
「なんだこれ……頭が………ッ!」
何が起きてるか分からなかった。いや、想定出来る範囲では理解はしているんだろう。けれど目の前のやつを見てどうするべきか悩んでいる自分がいる。殺すべきなんだ。力で狂った奴は殺した方がいい。そうすれば誰も傷付かず当人も救えるはずだ。なのに銃口を向け、引き金に指をかけるところで止まっている自分がいる。なんでだ。何を迷っているんだ。
『快斗君を助けて』
『引き戻せると思ったら、殺さないで』
くそ、こんな時に奴らの言葉がつっかかってくる。そうこう悩んでいると痛みが治まったのか、それでも息を切らしている快斗は黒いマントを俺にぶつけてきた。マントを剥がすとその場に快斗はいなかった。
────何故だ、なぜ俺は殺せなかった。
その言葉だけが頭の中を走り回る。いつの間にか返信が解除されていた俺は新一と合流することなく一人バイクに戻って家に戻ることにした。家に着くとすぐにベットに転がり寝ようとする。けれどいつまで経っても二人の言葉が頭の中を駆け回っていた。
壁の色を変えるとしたら?
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色分け
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上塗り