青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十六夏 偽の力は

「おいどういうことだよ!」

「どうしたの?」

「アイツを倒そうとしたら頭が…ッ!」

「大丈夫かい?」

「大丈夫なわけねぇだろ!これのせいでトドメもさせなかったんだぞ!」

「落ち着いて、多分急に強くなったから脳が追いついてないんだよ」

「そう……なのか?」

「うん、だからあのカプセルに入れば大丈夫。元通りになってまた戦えるよ」

「元通りって……!」

「あぁ、大丈夫。強さは変わらないから」

「なら……良いんだけどよ………」

 

「ハハッ、考えが甘いんだよなぁ。そんなんだから後で後悔することになるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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あの戦闘の後、京君と快斗君の姿は見当たらなかった。どちらも無事だろうとは思うがどこか不安なところもあった。京君の殺すと言った時の目は本物だったし、快斗君も言葉も本気のように聞こえた。だから二人が今どうなっているのか不安である。そして数日が経った今、お嬢様達が練習している裏で僕は霧切さんと連絡を取っていた。

 

「こちら名護です」

『新一君、霧切だ』

「お疲れ様です。何かわかったのですか?」

『ああ、例の快斗君という子の所在地が判明した』

「本当ですか!?」

『ああ』

 

 見つけることが出来たのならば快斗君を引き戻す方法も考えつく。しかし霧切さんの返事の仕方に少しばかり疑問を持つ。なぜかはっきりしていない、それどころか何かに苦しんでいるような声色だった。

 

『見つかったんだが少々危険な状況にある』

「快斗君の身に何かあったんですか?」

『それに関してはわかっていない。だが彼は相当危険な相手と手を組んでると思われる』

「危険な相手、ですか?」

『先日、潜伏先に保護のために数人を派遣したのだが全員が重症の状態で帰ってきた。復帰までに少なくとも一ヶ月かかる』

「そのような人達がいたのですか?」

『いや、一人だ。全員そのたった一人(・・)にやられた』

 

 この情報を聞いている限り快斗君を引き込んだのは単独犯と考えられる。けれど一人で快斗君をあそこまで変えてしまうのか?

 

『証言によるとメモリを使用していたらしい。しかも見たことのないベルトをつけていたとのことだ』

 

 メモリ、ベルト、この二つを考察の要素に入れると単独犯という考えが消されかける。そういうものは一人で用意できるはずがない。となるとやはり複数、いや、組織的犯行に至るか。となるとバックにいる存在は自ずと出てくる。

 

『君も気付いているだろうがおそらく園崎が裏にいると考えられる』

「やはりですか」

『しかし事前調査によると潜伏先には例の子と危険人物…Xとでも言おうか、彼ら二人しかいないらしい』

「ではXは単独行動をしているとでも?」

『そういうことになるな』

「なるほど。ご協力ありがとうございます」

『いや、元はと言えばこちらの落ち度だ。気にせず使ってくれて構わない』

「怪我をした方々にはお大事にとお伝えください」

 

 了解した、という言葉を終えると同時に通話は切られた。X…やはり快斗君は何者かに操られている。どうにかしないと彼が戻れなくなってしまう気がしてならない。とりあえず頭を冷やそうとアイスティーを口に飲もうとすると錠前が鳴り出した。開くと今回はドーパントの反応が一つだった。現場は走って数分のところだったので急いでスタジオを出る。走っていくと建物が倒壊するような重い音が聞こえてくる。曲がり角を曲がるとそこには全身が赤く、武装という武装をし、片手に大剣を持ったドーパントがいた。大剣を大きく振りかぶり、放った斬撃波は見るだけでわかるほど強烈なものだった。すぐに変身して戦闘に入ろうとすると数本のナイフが装甲に刺さる。その方向を見ると変身した快斗君の姿があった。ただその姿は今までのものではなく、蒼い炎は赤くなっていた。

 

「もう来るなって言いましたよね」

「力を持っているのに人のために使わないのは愚か者のすることだからね」

「弱い人は死にますよ。すぐにね」

「快斗君、君が今何をしているのか僕にはわからない。けど今ならまだ引き返せる。手を組んでる人とは切るんだ」

「またか。またそれなのかよ、アンタはッ!」

 

 激情している快斗君はナイフをこちらに向けて走ってくる。突進してくるナイフを止めたのは僕ではなく京君だった。ナイフを盾骸骨(スカル・フェイス)で防ぎ、そのまま勢いを押し返した。

 

「京君、無事だったんだね」

「ああ。悪いがそっちは頼んだ。今度こそ殺してくる」

「!殺しちゃ駄目だよ、彼は絶対戻ってこれる」

 

 僕の言葉を無視するように京君は走っていく。ただ一瞬、京君に迷いがあるかのように思えた。

 

「じゃあ、君の相手は僕だよ」

『ウルセェ、邪魔スンナ。オレハコンナ社会ヲブッ潰スンダ』

「そんなことはさせない」

 

 剣を構えて戦闘体勢に入る。剣を振りかざし、相手の剣と鍔迫り合いになる。純粋に力比べをしたら負けることが直感的に伝わってくる。大剣に押し潰されかけたところを剣を滑らせて胴に撃ち込む。背中に回った瞬間に剣を振り下ろして背中を斬ろうとするが硬い装甲がそれを防いでくる。装甲に気を取られているとカウンターの回転斬りを放ってくる。防御が間に合わず徐に喰らうことになった。体制を立て直し、警戒を強める。装甲の厚い敵の対処法は大体相場が決まっている。ただ悟られると機会を失いかねないので慎重に戦う。斬撃波を躱しながら敵に近づいていく。斬撃波はやがて止み、大剣で攻撃を仕掛けてくる。受け止めては流し、斬り込もうとすれば止められるということが繰り返される。だが根気よく戦い続けていれば勝機はあると思った瞬間、隙ができた。その瞬間を逃さず懐に潜り込んでイクサナックルを取り出す。取り出したナックルをドーパントの腹にぶつけてトリガーを引くと衝撃によってドーパントは吹っ飛ぶ。そして追い討ちをかけるように吹き飛んで転がっているドーパントを押さえつけて背中の装甲と装甲の隙間にイクサカリバーを銃モードにして銃口を押し付ける。装甲の熱い相手には隙間の肉を狙うのが一番である。故に押し付けた部分に向かって引き金を弾く。何度も何度も引き金を引き、すぐに再起しないようにする。グロッキーになった頃を見計らい、イクサナックルにフェッスルを装填してゼロ距離でブロウクン・ファングを放つ。ドーパントは爆発し、メモリと人が分離される。すぐに弦巻家の人がやってきてメモリと出てきた人を回収して行った。僕もすぐに京君達の方へ行こうと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 俺はあのバカを倒さなきゃいけない。いや、殺さなきゃいけない。この前は引き金を引けなかった。今でもその理由はわからないが今日こそは引いてみせる。

 

「よぉ、お前も懲りずに来たのか」

「ああ、この間の続きだ。手加減抜きでいくぞ」

「ぶっ殺してやんよ」

 

 お互い場を動かないまま数秒、そして同時の攻撃によって戦いは始まった。投げてきたナイフを撃ち落とし、近接戦が始まった。突き出してくるナイフは避ける場所を予測しているかのように刺してくる。刺された部分に痛みが走る。だが、やられているだけではダメージも入らない。隙を見て腕を掴んで懐に拳を打ち込む。離れようとしても腕を掴まれているせいで奴は離れない。勢いをつけて投げ飛ばし、地に着く前にマグナムで撃ち抜く。すぐに復帰する前に右手にエネルギーを集める。起き上がった瞬間に拳を突き出す。

 

「石破天驚拳!!!」

「その技はっ!」

「ハァァァァァァァァ!」

 

 奴が気づいた瞬間にはもう遅かった。爆発が起き、煙が晴れるとそこにはヤツのマントだけがあった。

 ────もう終わった。これでアイツも救われた。

 

これで終わった(・・・・・・・)、とか思ってなぇよな?」

 

 背中から悍ましい気配がした。振り返った時には遅かった。顔面に拳を喰らい、俺は地面を転がった。まさかあの体勢から石破天驚拳(俺の技)を避けたってのか!?スピード…いや、転移か?じゃないとあれは避けられなかったはず!

 

「あのマントは攻撃を無効化できるんだよ。あらゆる熱、電気、打撃を無効化できる。そう言われていたのに使っていなかった俺が馬鹿みたいだったぜ」

「テンメェ………!」

「動くなよ、間違って殺すかもしれないだろ」

「何故殺さない」

「………なんでだろうな」

「は?」

「まぁいい、そんなこと後で考えるわ」

 

 ヤツはエターナルメモリをナイフに装填してスイッチを押す。

 

『エターナル マキシマムドライブ』

 

 その瞬間に体に歪な感覚が走る。体が自由を効かないのはさっきからだったがさらにいうことを聞かなくなった。呼吸ですら苦しくなってくる。

 

「こいつの力はメモリの制御。言ってしまえばメモリの王様だよな。じゃあな、鳴海京。二度と、ここに戻って………ッ!?」

 

 ナイフを両手に逆手に持ち、振りかぶった瞬間頭を抱え始めた。手から滑り落ちたナイフは俺に当たることなく転がっていき、快斗は苦しみ始めた。その姿はまるで何かに取り憑かれているような、正気を保っているのがおかしかったくらいに見れた。

 

 

「ああぁ…あああああああ!!」

「何が、起きてんだ…?」

 

 愕然と見ていた俺は快斗に向かって銃口を向けるがまた引き鉄をかけた指が止まる。撃つべきなのか、それとも助けるべきなのか、そうやって悩んでいる間にもヤツは苦しんんでいる。苦しみを終わらせるためには引き鉄を引くしかない。

 ──引けよ、早く引けよ!それがやるべきことだろう!?

 震えている手を押さえながら狙いを定めた瞬間だった。

 

「あーあ、やっぱりかぁ」

 

 




 頭痛に耐えられない快斗
 悩み続ける京
 声のする方向にいた者とは

次回 『芝居』

壁の色を変えるとしたら?

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