これからも多くの人に読んで貰えるよう、気に入って頂けるよう精進していきます!
「あーあ、やっぱりかぁ」
声がする方を見ると信じられない奴がいた。俺のずっと探していた敵。白い革ジャンを着た男。親友を殺し、力に狂ってしまった男。
「もう少し遊べると思ったんだけど」
「アンタ……」
「ちょっとだけ期待してたんだけどさ、やっぱり駄目だったか」
「どういうことだよ、俺は強くなったんじゃねぇのかよ!あのカプセルに入ったら頭痛だって治るんだろ!?」
「馬鹿か君は」
「……は?」
「そんなの嘘に決まってるじゃないか。大体そんなんで本当に強くなれると思ったのかい?めでたい頭だなぁ」
快斗は力が抜けたように座っている。目の前にいる奴はまるで道化のように笑っている。でも笑っていることなんて俺にはどうでもよかった。激情にかられることもなくただ見ている自分が不思議で仕方なかった。
「君。いや、お前みたいな弱い奴が強くなるなんて到底不可能なんだよ。どうだ?少しでも強くなれたって思えて幸せだったか?」
「嘘だ…そんな………じゃあなんで俺に手を出したんだよ………」
「そんなの決まってるだろ?お前みたいな弱い奴が更なる絶望に落ちるのを見たかったからだよ。まぁ三文芝居にもならなかったけど」
「テンメェ!」
気がついた時には俺は銃を撃っていた。その銃弾すらヤツは軽々と躱していく。
「なんでお前がキレてんだよ。てか久しぶりだな、京。元気にしてたか?」
「よくそんな呑気に俺の前に出てきたな………ずっと探していた分手間が省けた。ぶっ殺してやるからそこ動くなよ」
「おおこわいこわいwまだ根に持ってんのか?
最後の言葉を聞いた瞬間俺は走り出していた。銃を乱射し、ヤツを逃そうとはしなかった。しかしアイツもただ現れただけではないことなど考えていなかった。
「久しぶりに遊ぼうか……変身♪」
『ナスカ』
その言葉と同時にメモリを巻いていたベルトに挿し込み、青い怪人と姿を変えていた。撃った銃弾は自分に当たる分だけ躱して剣を振り下ろしてくる。冷静さを失っていた俺は防御も間に合わずに直撃する。
「うぐっ!」
「この姿、見せるのは久しぶりだな」
「テメェ…やっぱり捨ててなかったか…!」
「捨てるわけないだろう、こんな素晴らしい力」
「だがそれでアイツは死んだ!」
「それがどうした?この力の本質を理解していない京達のせいだろ?」
笑うように話してくるアイツと話していると冷静さが欠ける。鉄砕拳の構えを取ろうとすると右側から発砲音が聞こえる。右を向くと新一がイクサカリバーで銃撃を行っていた。構えながらもこちらにやってくる。
「京君、あの人は?」
「人類の中でクソオブクソの野郎だ」
「もしかして例の?」
「新しい人が来たね。それじゃあ名乗りを上げておこう。俺の名前は
「皇…獅郎………」
「では貴方が京君の友人を殺したと」
「そゆこと♪まぁ俺も友人の一人なんだけどね」
「ふざけるな!どの口がほざいてやがる!」
銃口を向けるとヤツは不穏な動きを見せる。それまで無かったはずの翼を広げ、宙に浮く。
「今日はもう幕引きにしよう。その方が面白みが出る」
「ま、待ってくれよ!アンタがいなくなったら俺はどうすればいいんだよ!?」
「うるさいな」
「!?」
「さっきも言ったけど、お前みたいなのが強くなれるはずないだろ?三文芝居にもならないつまらない時間だったし」
「君は……本当に
「そうだけど、君は………なかなか面白そうだね。今度会った時に少し遊ぼうよ。それじゃあね♪」
「待て!逃さねぇに決まってんだろ!」
飛んでいくヤツに向かって俺は銃を撃っていくが当たることはなく見えなくなっていった。銃をしまい、メモリを抜いて回りを見ると新一は変身を解除していた。新一は快斗の方へ駆け寄り、変身したままの快斗は座り込んだままだった。
「快斗君、大丈夫?」
「俺は……なんのために………?」
「快斗君?」
新一が快斗の肩に手を置いた瞬間その手を振り払い、距離を取るように跳ねた。そしてしばらくの沈黙があった後、立ち上がり、メモリを起動させてホルダーに差し込んだ。
『インビジブル』
音が聞こえると快斗の姿は見えなくなっていった。その場には俺と新一だけが残り、沈黙が訪れる。俺は帽子を伏せて帰ろうとすると新一が声をかけてくる。
「京君、これからどうするの?」
「…獅郎を探す」
「快斗君のことは?」
「……わからない」
「え?」
声が漏れるように聞き返してきた新一に俺は何も言わずその場を去った。暫く歩いているうちに俺は言葉を一つ漏らしていた。
「なぁ千尋、俺はどうしたら良いんだ……?」
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京君を見送った僕はスタジオに引き返すことにした。今日得た情報だけでもかなり大きい。まず快斗君の異変に関わっていたXの正体は間違いなく皇獅郎で間違いないと思われる。そして彼は絶望を楽しむ側の人間、絶望で人を狂わせるタイプの人間。よりによってあの人と同じ側の人間か。厄介だな………。さらにあのNascaのメモリ、おそらくまだ機能が隠されていると思われる。現時点で確認されている能力は剣技、飛翔能力のみ。あとは本人の身体能力だが、京君の射撃を避けることができていることから目と反射神経はかなりのものだと考えられる。総合的に考えると彼は今まで戦ってきたファンガイアやドーパントの中で最上級の強さと考えられる。ただ、今最優先でやらなきゃいけないことは快斗君を元に戻すことだ。しかし彼も行方をくらましてしまった今また探しださなきゃいけない。さて、どうやって探し出そうか。
そう考えているうちにスタジオの目の前に着いてしまった。とりあえず通常業務に戻ることにする。余裕が出来たときにまた考えることにしよう。スタジオの中に入っていくと鉢合わせるようにお嬢様達に会う。
「あら、新一どこに行ってたの?」
「少し、散歩にですね……」
「そう。これからミーティングよ」
「かしこまりました」
今日行ったことのまとめと次回に向けての課題、次の練習の予定日を聞かされて解散となる予定だった。今日もバイトがあるとリサは先に帰っていく。じゃあ私達も帰りましょうとお嬢様が言うとあこちゃんが止めてきた。何か連絡を忘れたのだろうか。
「どうしたんですか宇田川さん」
「何かあったの?」
「あのっ、実は三日後にリサ姉が誕生日なんです!」
「そう……なの………?」
「うん、だから皆でサプライズしませんか?」
「サプライズ?」
「はい、そうしたらきっとリサ姉も喜ぶと思うんです!」
個人としては賛成だがお嬢様達はどうだろうか。あくまでRoseliaはバンド、馴れ合いは必要ないとか言い出すのではないのだろうか。
「わ、私は……やっても良い……と思います…」
「ありがとうりんりん!りんりんなら絶対協力してくれると信じてたよ!」
「別にあなた達でやるのなら構わないわ」
「そうですね、個人でお祝いするのならいいと思います」
「えっ、でも皆でやった方が絶対喜びますよ?」
「必要性はないと思うわ」
そう告げるとお嬢様はその場を去るように背を向けて歩いていった。僕は皆に一礼してからお嬢様の跡を追いかける。特に何も言葉を交わすこともなく歩いていく。でも、お嬢様は幼馴染のリサを祝わないのだろうか?それだけは気になった。お嬢様ならリサが一番喜ぶやり方を知っているのではないかと。
「お嬢様」
「何?」
「よろしかったのですか?」
「誕生日のこと?なら問題はないわ」
「どうしてですか?」
「別に祝わない訳ではないもの。個人でやればいいじゃない。それにRoseliaは馴れ合いの場所じゃないわ」
「ですがお嬢様、仲間同士の関係を深めておくことも演奏能力の向上につながるのではないでしょうか」
「……考えておくわ」
そう言いつつも悩んでいる様子を見る限りお祝いについて考えているのだろうか。やはり中身は優しい人なんだろうな。
とか考えてる場合じゃないな。僕もせめて贈り物ぐらいはしないと。でもその前に快斗君の方も解決しないとな。あと二日、それまでにやらなきゃいけない事がたくさんある。これはどうにかしなければな………。
──────────────────────────
「………い」
?
「………けい」
誰だ?
「京」
懐かしい声がする。ただそれはもう二度と聞けるはずのない声だった。ハッと目を開くともう二度と会えないはずの存在がいた。
「久しぶりだね、京」
「千尋……」
獅郎に殺されたはずの千尋が目の前にいた。生き返った?いやそんなことはありえない。だって千尋は俺の目の前で死んだ。あの馬鹿野郎に殺されたんだ。そうなるとここは夢か。よく見ればあたりは暗いし。
「京のことだからもう気づいているだろうけどここは夢の中だよ」
「ああ、だとしてもなんでお前がいる?」
「そうだね。僕は君の知っている三枝千尋じゃない」
「だよな。幽霊が俺に憑くことがない限り本人じゃないだろうな」
「あれ、知ってたの?」
「まあな」
なんて言えればよかったんだろうけど生憎そんなことはない、ただの直感だ。探偵としての理由にしては下の下だな。などと自重しながら会話を続ける。
「一応聞くがお前は誰だ?」
「うーん、探偵の前で言うのもなんだけど君の写身かな。非現実的だけど」
「つまりもう一人の俺的な」
「そういうことだね。どういう問題で僕が生まれたのかはわかっているはずだとは思うけど」
そうだな。俺が一番聞きやすく答えを共に出す者として多分千尋の姿が映し出されたんだろうな。だから俺は
「なあ千尋、俺はどうするべきなんだ?」
「何をだい?」
「俺は………獅郎を殺す。これは絶対だ。けど、
「そうだね」
「千尋ならどうするべきだと思う?」
千尋は悩む仕草を見せながらもすぐに答えを出してくる。
「どうだろうね」
「は?」
「さっきも言ったけど僕は君の知っている本当の三枝千尋じゃない。だから答え自体は千尋が考えることとは言い切れない。けどさ、
そう言って目の前の奴は俺に向かって指を指してくる。ビッと決めたかと思うと顏を緩めて言葉を綴る。
「『思い出とかそういうのは置いといて、京が一番後悔しない選択をするべきなんじゃないかな』って」
その言葉を聞いてハッと気づく。そうだ、千尋はいつだって俺のことを信じていてくれた。俺が選んだ選択をちゃんと認めてくれた。勿論、意見が反対になることもあった。けどその度にちゃんとその理由を見つけ出してくれていた。だから俺はいつの間にかアイツに相談するようになっていたのか。信じてくれる友のことを俺も信じていたから。だけど、もうその友もいない。なら俺はお前無しでも自分を信じなくちゃいけないんだよな。
「そうだな。サンキュ千尋、助かった」
「その様子だと僕の役目も終わったかな」
「ああ、
「また相談相手が必要になるかもよ?」
「いや、それは俺の中だけで済ませることじゃない」
「?というと?」
「さっき気付かせてもらった。相談したいことがあったらお前じゃなくてもいいからな………俺にはもう仲間がいる」
仲間がいる、自分で言うのも恥ずかしいが嬉しいことでもある。やっと気づけたんだからな。この言葉を伝えると千尋は驚きの表情を見せたがすぐに笑ってみせた。
「そっか、ならもう大丈夫だね」
「ありがとうな。そしてさよならだ」
「うん、じゃあね」
千尋が手を振ると視界は真っ白に染まり次に目を開けると自分の部屋の天井だった。さて、時間はと…もう七時半か。シャワーを浴びて朝飯食いに行くか。
シャワーを浴びて寝汗を洗い落とした俺は羽沢珈琲店に向かう。扉を開けるといつも通り羽沢が接客対応に来る。
「先輩おはようございます」
「おう、おはよう」
「良いことでもあったんですか?」
「ん?なんでだ?」
「ここ最近思い詰めた顏をしてたのに、今日はなんだかいい顔してますよ」
「そうか?いや、そうなのかもな」
「あ、席ご案内しますね」
「おう」
歩き始める前に注文をいつも通りで頼むと羽沢は笑顔で返事をした。なんだかこっちまで気が緩んでしまいそうだ。そうやって案内された席に着くと人の気配を感じる。向かいの席を見てみるとそこには水色の髪をした女がいた。柔らかかったはずの目つきは睨んでいるようだった。
壁の色を変えるとしたら?
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色分け
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上塗り