二学期の初めって色々ありますよね
第一話 新学期
八月が終わり、新学期が始まった。夏休みが終わると垢抜けた人が出るというけどそれは本当のことらしい。クラスのあちこちを見ると真面目だった人がメイクをしていたり、ギャルと呼ばれてた人が真面目な感じに戻ってたりしている。一体何があったか気になるところではあるけど放っておこう。HRが始まろうとする直前に京君が教室に入ってくる。どうやら寝坊したらしい。因みに寝坊の原因は宿題を一つ完全に忘れていたのだとか。おかげで少し眠そうにしていた。
チャイムが鳴り、HRが始まった。今日の日程は始業式、宿題の提出、LHRとのことだ。隣で面倒くせぇとか呟いている人がいるけど気にしないでおこう。HRが終わり講堂へ移動する。学校での時間が執事の仕事を半分くらい忘れられる時間だ。その代わり目はいつも以上に光らせなきゃいけない。いくら学校と言えど絶対的安全の保証はないのだ。何かが来たときのために気を抜かないようにしなければならない。ただ、前に気を張っていたら京君に顔が怖いと揶揄われたのである程度に済ませるようにしている。そんなことを片隅に講堂での始業式を受け教室に戻る。席に着くと担任が来るまで暇になるので皆雑談タイムになる。
「なぁ新一~始業式とかオンラインでよくね?」
「確かにその方が人口密度による気温上昇は避けられるね」
「そこまで考えてなかったわ。ただ単に面倒かっただけ」
「君ね……」
「はーい皆さん宿題集めるんですがその前に報告があります」
報告?HRの最中に宿題を集めるとは言っていたけど他にもやることが増えたのだろうか?
「皆さんに転校生を紹介します!一人は一学期の最中に来る予定だったんですけど諸事情があって今日来ます。もう一人は今日から入る子です」
京君と同じタイミングの人と新しく来る人か。どちらにせよクラスメイトなら仲良くなれると良いな。担任がどうぞーと言うと前のドアが開かれて女の子がが入ってくる。制服が間に合ってないのかいつもは見ないような制服だった。ここは元々女子校だし女子が入ってくるのは当然と言えば当然か。髪はどちらも黒色でロングと二つ結び。顔を見てみると信じられなかった。むしろ二度見してしまったくらいだ。何故か知ってる顔が二つある。
「自己紹介お願いします」
「切姫夜架です、よろしくお願いします」
「春川魔姫……よろしく」
名前を聞いた瞬間クラス中が盛り上がった。可愛いだの綺麗だのお人形さんみたいだの声が上がっている。ただそれとは真逆に僕はゾッとした。倒れはしないが正直驚いている。何故彼女らがこんな所にいるんだ?信じられなさ過ぎて頭が痛い。
「どうした新一?顏が真っ青だぞ」
「大丈夫、問題ない」
「新一!?どこに居らっしゃるんですか!?」
夜架ちゃんが僕の事を探し始める。一瞬どうしようかと思ったが念の為いつも持ち歩いている特殊眼鏡(第三章第一夏参照)を掛けて誤魔化すことにした。いくら彼女らでも眼鏡を掛けていないイメージのせいで僕だということはバレないだろう。
「いましたわ!ある………新ー様ー!」
何故バレた?一瞬で変装したのに?それにその呼び方何?一瞬『主様』って言おうとしたよね?
「今行きますー!」
「コラ、皆困ってるでしょ」
「えっと…お二人は名護さんのお知り合いですか?」
「まぁ……」
「じゃあすぐに馴染めそうですね。お二人の席はあっちです」
二人は支持された方向に歩いていく。片方は腕を引っ張られながらだが。彼女らが席に着くまで教室はざわざわしていた。なんで新学期早々こんなことになってるんだ?高校生活ってこんなにも大変なものなの?
「じゃあ皆さん宿題集めますよー」
皆何事も無かったかのように宿題を提出し始める。課題は持ってきているが持って行く気力が湧かない。
「では私が持っていきます」
「いやいや、それは流石に……なんでこっちにいるの!?」
いつの間にか夜架ちゃんが僕の机に顔と腕を置いている。気配を感じ取れなかったところからやはり彼女は本物だと思われる。
切姫夜架───名護家の暗殺部隊の一人。別名『
「だって新様のお荷物を運べるなんて滅多にないではないですか」
「そんなこと知らないよ」
「そんな!新様のせいでこんな体になってしまったのに……よよよ」
「新一、一体何したんだ?」
「何もしてないよ」
「ふーん、お、呼ばれたみたいだぞ。ついでに俺のも出してきてくれ」
「本来なら断りたいところだけど今日は多めに見てあげるよ」
「サンキュー」
京君の宿題を受け取って僕は教壇に届けにいく。その際に担任に「どういう関係ですか」と聞かれたが正直なことは答えられなかった。だから適当にただの知り合いですよと答えると何故かクスクス笑っていた。なぜ笑っていたか不思議に思いながら席に戻ると夜架が僕の席に座って京君と談笑していた。
「何してんの?」
「いや何、コイツ本当にお前のことよく知ってんだな」
「当たり前です。新様が小学生の頃からいましたから」
「あの頃はそんなに話したことないけどね」
「たとえ少ない時間でも新様といた時間は忘れられませんわ」
そう言いながら何故か下腹部に手を当てている。周りの女子が何故か顏を赤らめて反応しているが一体どういうことだ?
「新一お前、まさかコイツにガキを孕ませたのか?」
「そんなことしてないよ!」
「コイツの反応明らかにそうだぞ。愛人に子を孕ませてもらったような顔してるしよ」
「あの時は本当に嬉しかったですわ。新様が自分から言ってくださって……」
「言ってない言ってない!変な妄想しないで!ってまさか皆信じてたりしてないよね!?」
周りを見ると皆正面に姿勢を戻す。え?まさか濡れ衣着せられたりしてる?信用も落ちてない?ジェットコースター並みに。終わったかもしれないと思い始めた瞬間後ろから京君の笑い声が聞こえ始める。夜架ちゃんもクスクス笑っているようでそれを見た瞬間全てを理解した。おそらく揶揄われたのだ。
「ハハハwww面白すぎるだろwww」
「ああ、顏を真っ赤にしている新様も愛おしい」
「二人ともあとでお灸を据えようか」
「あ、はい、スミマセン」
「新様直々にしていただけるのなら私は構いませんわぁ。いっそのことその勢いでこの体をむちゃくt(へぶっ」
言葉が切れたかと思うと夜架が頭を叩かれていた。その後ろには魔姫ちゃんがいた。呆れたような目で夜架を見ている。すぐにこちらに向き直し会釈をしてくる。
「ごめんなさい、今度からコイツに首輪つけておくから」
「魔姫ちゃん、私新様以外からそういうのをもらう趣味はないわ」
「僕でも付けようとは思わないけどね。ありがとう魔姫ちゃん。厳しくするのはいいけどあまり酷くしちゃダメだよ?」
「アンタは甘すぎるのよ」
春川魔姫────別名『
しかし、こんな日常とはかけ離れている二人がどうして
「ということで皆さん二学期も頑張っていきましょう。ではLHRなんですが、三週間後に行われる文化祭の出し物を決めたいと思います。できれば配役まで決めてくれると後々楽になりますよー」
あとは学級委員に任せたということで担任は教室を出ていく。どうやらまだ仕事があるらしい。学級委員の二人が出てくると話し合いが始まった。希望のある人は手を上げるよう促すとクラス中からワイワイ声が上がる。皆さっきまでめんどくさそうにしてたのに元気だなと思う。
「メイド喫茶がいいー」
「いやチャイナ喫茶を希望するわ!」
「和服喫茶でしょ!!」
いや皆喫茶店好きすぎでしょ。もう少し無いの?お化け屋敷とかさ。
「縁日とかやりたいです」
「お化け屋敷やりたいー!」
「タピオカ店とかいいなー」
やっとまともなの出てきたなと思い始めた時に京君から声をかけられる。
「新一はやりたいものねぇの?」
「実は去年チェキを一緒に撮ろう的なのやってたんだけど僕は参加してないんだよね」
「仕事か?」
「まぁね。お嬢様が熱出しちゃって」
「じゃあ今年は出れるといいな」
「そうだね」
そろそろ出るものも無くなってきたことを委員の二人が確認すると元気のいい声が聞こえてくる。その娘は立ち上がるととんでもないことを言い始めた。
「新様を崇められる飲食店がいいと思いますわ!」
何をいってるんだあの娘は。
「皆さんもお気づきでしょうが新様はとてもカッコいいお方ですわ。私なんか彼の方を見ているだけでご飯三杯はいけますもの」
また暴走し始めたかと頭を痛めると複数の方向から「確かに」という声がポツポツと聞こえ始める。皆して何を言っているのだろう。悪ノリも大概にしないとろくなこと起きないよ?
「このクラスには新様がいらっしゃいます。その味を、魅力を最大限活かすためにはやはり新様を表に出す他ございませんでしょう!」
『確かに』
「確かにじゃないよ皆!?」
「鳴海君は?鳴海君のファンだってこの学校にはたくさんいるよ?」
「では鳴海さんも表に出し、飲食店を開きましょう!そして私たちの楽園を開くのです!」
その言葉にクラス(ほぼ)一同がその意見に賛成した。歓声は響き正直耳が痛かった。だけど僕たちはそれ以上に信じられなかった。僕達が主役のカフェ?僕ってどちらかと言うと厨房に立つ側の人間なんだけど。京君に関してはさっきから口を開いたままで動かないし。なんでこんな事になったんだろう………
時間は経ち、あっという間に学校は終わった。結局出し物僕達メインのカフェになった。メニューとかは今度決められるらしい。今は家にいるが正直学校のことは考えたくなくなってきた。始業式ということもあって今日のお昼ご飯は家で作ることになっていた。まだ外は暑かったので冷やし中華にしようと今作っている。ちょうど出来上がった時、呼び鈴が鳴り響く。急いで出て行こうとするとお嬢様が既に扉が開けていた。誰だろうかと外を見てみると転校して来た二人がいた。
「隣に越してきた者です。よろしくお願いします」
「すみません、隣には今井さんのお宅があるのでそちらではないでしょうか」
「いえ、今井さんのお宅とは反対側に越してきたのですわ」
「………」
「新一、上がって貰いなさい」
「まぁ、いいのですか?」
「ちょっと夜架」
「よろしいのですか?お嬢様」
「ええ、話したいこともあるし。貴女達お昼はまだでしょう?」
「ご馳走していただけるんですの!?」
「流石にそれはまずいんじゃ………」
「問題ないわ、作るのは新一だもの」
それはそうですけどね?この人達一般人じゃないですよ?裏ではとんでもない人たちですよ?
「新様のエプロン姿……色々とご馳走様ですわハァハァ」
「それはもうお腹いっぱいということかしら」
「ご馳走はいただきますわ!」
「いいんですか?」
「ええ、構わないわ。新一、二人の分も用意できるかしら」
「材料はまだありますので可能ですが、本当によろしいのですか?」
質問を受け流すように答えながらお嬢様はリビングに戻っていく。お嬢様が決めたことなら仕方ないと僕も台所へと戻っていく。食卓についた彼女らは何やら雑談しているようなので僕は料理に集中し始めた。
壁の色を変えるとしたら?
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色分け
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上塗り