青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第四章 私の歌と僕の剣
第一閃 The dream you had


 目を開けた。僕が今立っている場所は暗く、赤くぼやけていた。何が起きているんだろう。

 ──ここはどこだ?

 理解が追いつかない。何かに動かされる様に歩いてく。少し歩くと街の様なものが見えた。けれどそこにいつもの風景なかった。建物は崩れ、鉄骨などは丸見え、大きな火事が起きている。

 ──ここは戦場か?それとも被災地か?

 その答えはすぐに見つかる。だって目の前に死体が転がっているから。焼け爛れた死体。不思議と気にしなかったのか歩いていく。だけど歩く先には死体が増えていく。血の海に辿り着いた時、爆発音が近くで聞こえる。

 やっと気づく、これが普通の事態ではないことに。急いで爆心地へ向かう。悲鳴が聞こえてくる。悲鳴が聞こえた場所、爆心地へ着くと女の子の死体が転がっていた。その遺体は半分が消えている。爆発で焼けたのか血は出てこない。だけどその近くには瓦礫の中から腕が出ていた。まだ生きているかもしれないと瓦礫を退けるとそこに体はなかった。ただ、腕が一本あるだけだった。

 ここでまた気づく。お嬢様達はどこだ?どこにいる?巻き込まれていなければいいのだが。

 

「お嬢様ー!お嬢様ー!」

 

 声を張って探す。瓦礫と火の海をかき分けて走っていく。すると宙に浮いている人を見つける。いや、浮いているのではない。棒に刺さっているのだ。しかもその人はターコイズブルーの髪での髪の長い人、紗夜さんだった。

 急いで棒を傾けて手が届く位置まで持ってくる。

 

「紗夜さん!しっかり!」

 

 その言葉を言っても無駄だった。わかっていたのに言ってしまっていた。彼女が刺さっていた部分は心臓ですでに脈はなく、虚な目をしていた。少なくともここにいたらかわいそうだと紗夜さんを抱えて走る。でも走ろうとした時に見てしまった。

 ───なんでここにあるんだ?

 そこにはリサがいつもつけているブレスレットがあった。お祭りの時にあげたブレスレット。近くには瓦礫の山、地面にはぶちまけられたような血の跡。

 ──そこにいるんだ。きっと─────

 血の量を見る限りもう助かってない。紗夜さんを抱え、ブレスレットも片手に走る。

 ──誰でもいい、生きててくれ。少しでもいいから!

 炎の勢いが強くなってくる。一度止まると目の前に二つの真っ黒な遺体を見つける。特徴的なツインテールの女の子、それを抱えるように動かない女性。それは間違いなくあこちゃんとりんりんの遺体だった。

 また、間に合わなかった。みんな死んでしまっている。でもまだお嬢様を見つけてない。二人の近くに紗夜さんを置いて立ち上がる。すると僕を覆う様な影ができる。その影は喋り出す。

 

「また、誰も救えなかったな」

「貴様は…!」

 

 見覚えがあった。僕がこの世で一番恨む相手、復讐の対象とする化け物の姿だ。その化け物は左手でお嬢様を右手で剣を持っていた。お嬢様は諦めているように力が入っていない。虚ろなな目で僕を見る。

 

「なんでこうなったかわかるよな?」

「………………」

 

 認めたくなかった。それは僕がまだ弱いからだ。あの日に同じ過ちを繰り返さないと決めたのにまたやってしまった。結局僕は何も変わってない。

 

「大丈夫だ、お前もどうせすぐ死ぬからな」

 

 その言葉と同時にお嬢様の体は貫かれて僕の方に投げられる。受け止めて声をかける。すると口が開かれた。けれども喉も切られてるため空気しかやってこない。その姿を見て体が震える。何も出来なかった無力さにいたく震える。下を向いた瞬間、声が聞こえる。

 

「新一」

 

 いつも聞いていたお嬢様の声。希望を抱いた瞬間それは絶望へと変わる。

 

全部貴方のせいよ

 

 その言葉を聞いて目が覚める。どうやら夢だったらしい。いや、夢でよかった。そうでもなければ今頃どうなっていたのかはわからない。少なくとも冷静ではいられなかったはずだ。

 辺りを見回すと自分の部屋だということがわかる。けれどシーツがぐっしょり濡れている。シーツどころか身体中汗びっしょりだ。まるで夢の中の炎の暑さが現実にそのままあったみたいだ。布団から出る。秋も半ばということもあってか汗まみれの僕の身体に少しばかり寒さを感じる。せめてシャワーを浴びないとと浴場に向かう。着ていたパジャマを洗濯カゴに脱ぎ捨てて浴場に入る。シャワーを流す。けど体は動かずただシャワーに打たれていた。

 たとえ夢でも、あんな目に遭うのはごめんだ。みんなを守らないといけないのに、何もかも失うなんていうのは嫌だ。目の前で何人も死んで、誰一人として救えない。その結果を招くのが自分だというのが一番嫌だ。目の前の鏡を見るとそこにはまるで涙を流しているような僕の顔があった。浴室から出て時間を確認するとすでに朝の四時になっていた。これから寝ると朝支度に影響を出しかねないので寝ないで制服に着替える。普段は五時から支度を始めるのだが一時間早めに起きてしまった分少しだけ余裕を持とうとした。しかしさっきの夢のせいかゆっくりするのが嫌になっている自分もいる。どうするべきか悩んだ時、スマホに一通のメールが来た。差出人は魔姫ちゃんだ。

 

『向こうからアンタ宛にメッセージが来た。十分後に来れる?』

 

 向こうというのはおそらく霧切さんだろう。僕はすぐに行けると返事を返して隣の家に行く。家の外に出るとまだ空は暗かった。朝焼けすら始まっていない空。あの時はたくさん見ていたのになんだか懐かしく感じる。インターホンを鳴らすとすぐに迎えが来る。指示に従って家に入ると鍵を閉められる。そのまま中へと足を運んでいくとリビングに着く。リビング自体も暗く、灯りと言えるものはテレビの液晶が薄暗く光っている程度だった。

 

「連れて参りました」

『ご苦労』

 

 画面越しに聞こえる声はやはり霧切さんだった。二人は後ろで膝をついて座っている。僕は立ったまま話を聞くことにした。

 

『こんな朝早くからすまない』

「いえ、ちょうど目覚めたところでしたので」

『そうか、少し顔色が優れないようだが大丈夫か?』

「問題ありません」

『失礼した、本題に入ろう。先日、執行部隊第七班がファンガイアを一体捕獲することに成功した』

「捕獲、ですか?」

『ああ。生体の調査をするためにな』

 

 確かに今までただ倒してきたけど色々と不思議な点はある。園崎の作るガイアメモリは人間というベースだがファンガイアはどうなっているかわからない。ついでに上下関係なども調べるつもりだろう。いや、もうやっているか。

 

『既に把握しているかもしれないが彼らはだいたい四つの種類に分けられている。インセクト、ビースト、アクア、リザードという四クラスに分けられているとのことだ。そして彼らには()が存在する』

「王ですか」

『あくまで聞き出した情報だがな。どこまで信じられるかはわからないがとりあえず考えておく程度にはいいだろう』

「そうですね」

『そして王を含み、側近の者どもをチェックメイトフォーと呼ぶらしい』

 

 チェックメイト……まるでチェスだな。そして王を含むものならキング、クイーン、ルーク、ビショップの四つだろうか。

 

『捕獲したファンガイアは容姿などについては言ってなかったがそれでも強さが段違いとのことだ。十分に気をつけたまえ』

「御忠告感謝します」

『そして園崎の方はまだ情報を掴めていない。調査は引き続き行っていく。切姫君、春川君時期に任務を言い渡す。それまで待機してくれ』

「「はっ」」

『そういえばだが新一君、詩姫(ディーヴァ)という名を聞いたことがあるかね?』

「ありますが……それがどうかしましたか?」

『ファンガイアの中で噂になってるらしい。眉唾程度だが『詩姫を殺せば大きな報酬が貰える』とか』

 

 詩姫、お嬢様が過去にファンから呼ばれていた名前だ。しかし何故その名前の人物が狙われている?危険を冒したか…反乱だろうか?どちらにせよ念の為警戒だな。

 

『あくまで噂だ。もしかしたら奴らの中に同じ名称を持った者もいるかもしれない。奴は信じていないらしいが一応頭の中に入れておいてくれたまえ』

「ありがとうございます」

『今回は以上だ。それと新一君には後に贈り物があるから二人から受け取ってくれ』

「畏まりました」

『では失礼する。活躍を期待している』

 

 画面がプツンと消えると部屋全体も暗くなる。数秒経って電気がつき、部屋が明るくなる。とりあえず家に戻ろうと足を玄関に運ぶ。靴を履いて二人にまた後でと言って家を出ていく。時刻はちょうど五時、普段なら起床時間だが今日は既に起きている。湊家に戻り、静かに家に入る。おそらくまだお嬢様は寝ているだろう。なるべく音を立てないようにと家事をやっていく。そして全ての作業が終えても時間は余ってしまった。いつもなら学校で読むが時間もあるため僕は広告を見て今日買う物の確認をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けた。見渡す景色は灰色の荒野だった。雲が霞がかっている空。建物なんて全部消されたような荒野。

 なんでこんな所にいるんだろう。一体何故?どうして?

 そんな疑問を掻き消すように後ろからの気配を感じる。振り返ってみてみるとそこには黒い山があった。そこまで大きくない山。だけどその形は普通の山と違って歪だった。飛び出ている所々が腕の様な物や棒のような物見える。だけど逆光のせいなのか、それとも元々なのか黒くてなんなのかははっきり見えない。けれど山の上に人がいるのが分かった。誰だかは分からない。けれど何かを持って座っている。私は正体を知りたくて山に近づいていく。けれど数歩歩いたところで止まってしまった。恐怖を感じたわけじゃない。ただ進めなかったのだ。目の前に壁があるように、ここから先には行かせないかのように進めなかった。何が起きているかさっぱり分からなかった。上を見上げると誰かは私を見ていた。見下すあの人は立ち上がった。

 

「あなたは……誰?」

 

 気付けば声を漏らしていた。しかし帰ってきたのは沈黙。そして私を見る目は冷たくなった。実際には目は見えていない。けれども視線を感じた。まるで全てを捨て、諦めがついたような、希望を捨てた目。そんなふうに感じた。その瞬間私の動きは止まった。私の背の方から日でも出て来たのだろうか、あの人の姿が鮮明に見えてくる。足下から光が照らされる。やがて首元まで来ると何処かで見たことがある服装に見えてきた。そうだ。あの服は最近彼が着ていた。でも少し違うような気もする。光が鼻まで来ると見たことある輪郭が見える。やがて全てが見えたとき私は視線を外せなくなる。だってそこには────

 

 新一の姿あったから。

 

 何度も疑った。山はまだ黒いままだが新一は棒のような物を持ったまま立ち尽くしている。虚ろな目、普段の笑顔からは考えられないような顔。けどその顔は何処か悲しげにも見えた。声をかけようとしても声が出ない。彼は私を見ると困ったような顔をして後ろを向く。そして私がいない方へと歩を進め、山を下りていく。私は急いで追いかけようとするが壁が私を阻む。叩いても壊れる気配はない。やがて新一の姿は見えなくなっていく。けれども見えなくなる直前、顔だけをこっちに向けて口を動かしてくる。何を言っているかは分からない。けれど言ってる内容は入ってきた。

 ────来るな。

 その一言は私に衝撃を与えた。けどその瞬間私の目は覚めた。どうしてあんな夢を見たのかしら。あんな……ってあれ何を見たんだっけ。でも何かを失うような夢を見た気がする。でも忘れるということはあまり関係のない夢だったのだろう。時計を見ると五時を回っていた。まだ時間的に寝れると思い私は二度寝しようとした。しかし目を閉じてても寝れる気配はしなかった。仕方ないので体を起こして椅子に座る。新曲の案でも浮かばないかと頭を回すが夢のことが気になる。夢は何かのメッセージなんて前にテレビで見たけれど、内容を忘れる夢なんて意味があるのかしら。例えあったとしても意味が分からない。けれどいつもと違う違和感がある。そのことを考えている内に私は二度目の眠りについた。

壁の色を変えるとしたら?

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