青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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今週で!この章!終わります!


第十三閃 Rechain

「私と、契約しなさい」

 

 ライオンの攻撃をどうにか食い止めている中、湊さんはおかしなことを言い出した。何故こんな時にそういうことを言うのだろうか。

 

「すみません、今手が付けられないんですが!」

「書類とかそういう細かいことはいいわ。今はただ契約を結んでくれればいいの」

「具体的な内容は?」

 

 質問を返すと考え込んだ。まさか内容を考えていなかったなんて言わないよね。流石にそんな悪ふざけ今されたら僕でもキレそうなんだけど。

 

「私の執事になること。でも前みたいな執事じゃないわ」

「例えば?」

「えっと……あなたの仕事を手伝うわ!」

「他は?」

「1週間に一回休暇を与えるわ」

「契約を結ぶに当たってのあなたのメリットは?」

「それは………家事をやってもらえること、困ったら助けてもらえること」

「では僕のメリットは?」

「そっ、それは………」

 

 突然黙り込んでしまった。やはりそうだ。あの人は多分思いつきであんなことを言ったんだ。とりあえずまともに話すためにライオンの懐にナックルを打ち込んで圧縮弾をゼロ距離でぶつける。それに吹き飛ばされたライオンは痛みに悶えている。一度変身を解除して湊さんの元へ行き、彼女を瓦礫の裏に連れ込む。

 

「なっ、何を」

「湊さんあなた何も考えていないんですか?」

「あ、あなた…!」

「契約というのはお互いがメリットデメリットを持つ、ギブアンドテイクの関係を築くことです。今のあなたは僕にそれが可能ですか?」

「ッ!」

 

 また黙り込んでしまった。でもこれは事実だ。そうでないと世の中の契約関係は成り立っていない。

 でもそんな細かいことをすぐに考えるのはこの人には無理だろう。いっちゃ悪いがこの人はそこまで賢くない。音楽のこと以外になると本当にポンコツなのだ。

 だからこそ、打開策も含めて僕は提示する。

 

「湊さん、貴女がどこまで考えていたかはわかりません。ですがこの状況で難しいことを考えるのは貴女には無理です」

「馬鹿にしないで!それくらいのこと……」

「いえ、実際貴女だけでなく僕も余裕がありません。ですからこうしましょう」

「?」

 

 僕は呼吸を整えながら膝を突き、自分の切り札を出すための契約内容を伝える。

 

「今、この一瞬だけ、僕に命を預けて(・・・・・)ください」

「え?」

「そうすれば、必ず、あの怪物を倒して貴女を守り抜くことを約束します」

「それは本当なの?」

 

 恐る恐る声を出してくる彼女は信じられないように目線を泳がせている。

 

「はい」

「あなたは生きて帰ってくるの?」

「必ずや」

「信じて、いいのよね?」

「二言はありません」

 

 意思が決まったのかいつもの目つきに戻って僕に手を差し出してくる。その声はさっきまでと違いとても凛々しい声だった。

 

「わかったわ。その契約、結びましょう。その代わり、必ず帰ってくるのよ」

「仰せのままに………ありがとうございます」

 

 顔を上げると湊さんの表情は晴れていた。ナックルを手に持って瓦礫の裏から出ると既にライオンが待ち構えていた。息を荒くしていることから相当怒っているのが目に見える。

 

〈ここからはBLACK SHOUTを聴きながら読むのをオススメします〉

 

「遅かったなぁ白騎士ぃ!」

「ええ、お待たせしました。戦う前に一つ、申し上げておきます」

「なんだぁ?命乞いかぁ?」

「いえ、簡単なことです」

 

 イクサナックルを手に当て、コール音を聞き終えて装填する。イクサシステムを身に纏い、イクサカリバーの切先をライオンの顔面に向ける。

 

(なんだこの威圧感………さっきまでこんなんじゃ!)

(あれは、本当に新一………?今までと全然違うじゃない!!)

「その命、神に返しなさい」

 

 この言葉に反応したのかマスクの十字架が開かれた。真っ向から向かってくるライオンの拳を避けて斬りつける。その手を止めず連続で斬りつけていく。拳はもう怖いと感じなかった。もはや当たりもしない。敵の当たらない攻撃をいなしつつ斬り裂いていく。

 

「なんだこの強さは!?」

「今日こそ貴方を仕留めます。確実に」

「なんで急にこんな、グハッ」

「もう、攻撃はさせません」

 

 腕を掴んでそのまま腹に膝を打つ。三度打ちつけて放り投げると立てるのもやっとの状態になっていた。フェッスルをベルトに装填する。剣を構え直し、辻斬りのように何度も斬り裂いていく。何度も斬りつけていくとライオンは立ち尽くすだけになっていた。

 

「お前はなんで戦うんだ…!」

「罪滅ぼしと守りたいもののため、そして」

 

 最後の一言を告げる為にイクサカリバーを振り上げる。

 

「貴方達の様な悪から、皆の明日を勝ち取るために!!!」

『ジ・ャ・ッ・ジ・メ・ン・ト・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

「“BLACK SHOUT”」

「白騎士が、黒を語るのかッ!!」

「誰が呼び始めたかは知りませんが、僕は白のように綺麗ではありませんよ」

「クッソがァァァァァァ………!申し訳ございません、我が王ォォォォォォォォ!!!」

 

 後ろを振り向くとピキパキと固まる音がし、数秒立たないうちにガラスが割れる音がした。降り注がれるガラス片が僕を包む。音に気づいたのかお嬢様が瓦礫の裏から出てくる。

 

「終わったの…?」

「ええ、ご協力ありがとうございました。それでは」

「ま、待って!」

 

 その場を立ち去ろうとすると呼び止められる。

 

「私と契約をっ」

「先ほども申しましたが、僕のメリットはなんですか?」

「それは……」

「…はぁ、ではメリットはいいです。生活費とかはどうするんですか?」

「それは、お父さんに協力してもらうわ」

 

 目はまだ泳いでいるがそれでもまっすぐこちらに視線を向けようとしている。やはり頭を使うことはあまり向いていなさそうだなと思いつつ彼女に近づく。

 

「全く、困った御方だ」

「っ!」

「ロミオとジュリエットでも五日間かかってますよ。それを四日でなんて」

「それじゃあ」

「今からお話ししに行きましょうか、湊さん」

「………」

 

 元気を取り戻したように見えたがすぐに俯いてしまった。もしかしてもうお嬢様と呼んでもらえないと思っているのではないか。

 

まだ(・・)、契約を結んでませんからね」

「!ええ!」

 

 嬉しそうな顔をしながら歩き出した僕のそばに寄ってくる。置いてきたバイクの元に向かいヘルメットを被る。予備を渡して湊家を目指してバイクを走らせる。道中で四日間どこで暮らしてたか、どんな感じだったかなどと質問攻めにされた。興味を持つと止まらなくなるのもこの人の癖だったと思い出す。

 話しながら走っているといつの間にか目的地に到着する。バイクを降りてインターホンを鳴らすと旦那様が出てきた。とりあえず中に入れとリビングに案内される。ソファーに座ると本題に入った。

 

「友希那と一緒なんて、何かあったのかな?」

「お父さん、お願いがあるの」

「何だい?」

「新一と、もう一度契約して欲しいの」

 

 旦那様は一度こちらに目線を送ると手に持っていたコーヒーを一口飲んでテーブルの上に置く。そして足を組んで姿勢を変えた。

 

「お互い、ちゃんと話し合えたのかい?」

「ええ」

「はい」

「新一君はいいのかい?ここに住めば、また友希那の世話をしなくてはいけないし負担が増えることになるが」

 

 その言葉を聞いた湊さんはこっちを見てくる。けど対して気には止めなかった。

 

「勿論です。そのことも考慮しましたが、前と比べても大したことではありませんので」

「失礼ね」

「なら、そのお願いは承諾しよう」

「いいの?」

「そもそも、こうなる原因を作ったのは俺でもある。それに新一君がいなくなって友希那は寂しそうにしてたしな」

「余計なこと言わないでいいから」

「ハハッ、すまないすまない」

「では旦那様、前の契約書はお持ちですか?」

「あー、持ってるけど別にいいだろう」

「何故です?」

「前の契約書、まだ取り消しの印鑑を押していないんだから続行でいいかなって。そしたらもう、新しく契約する必要はないだろう?」

 

 余裕の笑みを浮かべつつコーヒーを口に運んでいく。確かにそうだと思った瞬間力が抜けるように感じたがシャキッとせねばと背筋を伸ばす。一方お嬢様は力が抜けたように項垂れている。

 

「それじゃあ、休暇を終わりにして働いてもらおうかな」

「かしこまりました。では早速お夕飯を」

 

 席を立って冷蔵高のあるキッチンに向かう。冷蔵庫を開くと見事に何も入っていなかった。顔を二人の方へ向けると視線を逸らしている。

 

「一体どういうことですか?」

「いや、作ってみようとしたんだが君のようにうまくいかなくてだな」

「この数日のご飯は………」

「出前と惣菜よ。昨日のお昼はリサに作ってもらったわ」

「……いつもより時間をいただかせていただきます」

 

 すぐに湊家を出て近所のスーパーに向かう。きちんと食べられるものを作るため今日はポケットマネーを無視して買い物カゴに突っ込む。大丈夫、武器(銀行のお金)の貯蔵は十分だ。買ったものをエコバックに詰め込んで急いで帰宅。手早く料理を開始していく。夜八時、テーブルの上にハンバーグと野菜、オニオンスープとデザートを三人分用意した。

 

「美味しそうだな」

「お召し上がりください」

「「いただきます」」

 

 二人はそれぞれ箸で掴んだものを口に運ぶと驚いた表情をして食を続ける。

 

「やはり、新一君の料理はうまいな」

「ええ、慣れていてアレだったけど、数日食べていないだけでこうなのね」

「お褒め預かり光栄です」

「君も早く食べたまえ」

「ではありがたく」

 

 僕も料理を食べ始める。自分で作ったものとはいえ美味しいと感じる。ある程度食べていくと旦那様が話しかけてくる。

 

「今日はこのまま泊まっていくかい?」

「いえ、家のものを整理しようとかと。全て持ち帰ってしまったので」

「ごめんなさい…」

「いえいえ、お嬢様が謝ることではございません」

「では明日からまたここでの生活が始まるんだな」

「はい。またお世話になります」

「いやいや、お世話になるのはこっちだよ。ま、明日から俺またいないからよろしくだけど」

「そうなの?」

「ああ、さっき電話が入ってきてな。急遽行くことになった」

「畏まりました。お気をつけくださいませ」

「ああ、二人も気をつけるんだぞ」

 

 返事をして頷くとご馳走様と返ってくる。洗い物はやっておくから帰りたまえと言われ、言うことを聞く。玄関に出て見送ってくれたお嬢様に挨拶をする。

 

「気をつけなさい」

「はい、ありがとうございます。あと、申し訳ございませんでした」

「その話は、もうやめにしましょう」

「ですね、それ「その代わり」はい?」

「二人の時は、その、名前で呼んでちょうだい」

「お嬢様をですか?」

「他に誰がいるのよ」

 

 果たして主従でその関係はいいのだろうか?だがそれ以外の何かを感じながらも考えた結果。

 

「……善処します」

 

とだけ言い残してバイクを走らせる。後ろから何かを言われたような気がするが風でかき消されたため聞こえなかったことにする。帰路の最中は何も考えることはなく家に着くとすでに九時を回っていた。スマホを伏せよとした瞬間電話の着信音が鳴る。

 

「もしもし」

『もしもし、新一様でいらっしゃいますか?』

「一条さんですか?」

『はい、今お時間よろしいですか?』

「構いませんよ」

『先日、猪宮が捕らえられたとお聞きしまして』

 

 やはり元とはいえ同僚の話は気になるかと思いつつ話を進める。

 

「おっしゃる通りです。お話はしました」

『されたのですか?お怪我は』

「強化ガラス越しでしたので何とも」

『それはよかったです。それで得た情報の確認をさせていただきたく』

 

 了解と言い、言われた情報の真偽を確認した。今日の殲滅任務の話は聞いていなかったので後日改めて伺おうとメモを取りながら話を続けていく。メモを全て取り終えて確認を終えると一息落ち着いたような声が聞こえる。

 

「これで今日の仕事は終わりですか?」

『ええ、明日は休みなので遅めにあがろうかと』

「なるほど。して、おやすみは一日ですか?」

『今回は有給使ったので二日です』

「一条さん、取引しませんか?もちろん報酬は支払います」

『何をなさるつもりですか?』

「証人のお仕事です。少し、過去の話をしようと思いまして」

『なるほど、でしたら無償でお受けさせていただきます』

「ですがせっかくの休日が」

『貴方様のために使えるのでしたら本望です』

 

 本望という言葉を聞いて納得した。これ以上何を言ってもこの人の意見を変える事は出来ないだろう。昔から本望という言葉を使った時は絶対意見を変えないのだ。致し方あるまいと腹を括る。

 

「では明日の夕方六時にこの間セッションしたライブハウスに来てください」

『かしこまりました。必要なものとかありますか?』

「写真とかがあれば、少しでいいです」

『畏まりました。それではおやすみなさいませ』

「はい。おやすみなさい」

 

 電話を切って雑に横になる。荷物を片付けなきゃと思いもしたが大して出していないことを思い出した。そしてそのままシャワーだけ浴びて寝ることにした。明日からまた前の生活だ。だけど少しだけ、新しい生活になりそうだ。

歌騎士の第一部が終わったのでアンケートとります!全部幕間のネタですけど

  • 二人のバースデーやろ!
  • パーティーしよ!ヘイセイヘイセイ
  • 誰か狂わせようぜ⭐︎
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