ある日の休日、表でも動けるようになったこともあって今日は弦巻家の施設で模擬戦を行っている。
「そらっ!」
「ヘヤッ!」
因みに今は快斗君と京君が戦っている。京君の弾丸を快斗君が投げナイフで対抗して接近戦に持ち込んでいる。二人とも殴り合いは得意のようでいい勝負をしている。だがある程度すると互いに拳を近づけて終わらせた。
「また引き分けか」
「そろそろ一発決め込みたいな」
「新一さんなんかアドバイスありませんか?」
「そうだね………」
さっきの戦いを思い出しつつ快斗君が得意そうな戦法を考える。あまり僕自身が知らないことが頭をよぎったので逆に質問してみる。
「今快斗君が使えるメモリってどれくらいあるの?」
「そうっすね、ざっと15本くらいじゃないっすか?一気に使えるのはエターナルを除いて三本ですけど」
持ち歩いてるであろうメモリをその場に座り込んで並べられる。ずらっと並べられるあたりすごいなと思ったがどこから取り出したのかは気になった。白いメモリは普段使ってるエターナル。永遠の記憶らしいが本人も本来の使い道はわかっていないらしい。だがもう一つ白いメモリがあった。表面にはZの文字が書かれている。
「これは何のメモリ?」
「ゾーンっすね。空間に干渉する?っていった方がいいんすかね」
「お前そんな言葉が使えるのか」
「バカにすんなよ。これでも高校生だぞ」
「そういやそうだったわ」
「うーん、あれかな。壁にパンチしたら床から出せたりとか?」
「多分できますね。ま、やってみた方がわかりやすいっすよ!」
立ち上がった快斗君はすぐに変身してエターナルになる。ゾーンのメモリを持って二の腕にあるホルダーに入れると紫の線が宙に浮かび上がった。
「新一さんちょっと立ってみてください」
「う、うん」
言われた通り立ち上がるといつの間にか部屋の端っこに来ていた。そのまま何回か部屋のどこかに行ったり来たりする。
「こんな感じで作り上げた盤面上なら好きに動かせます」
「こんな便利なものあったんだな」
「ねぇ、これって空中にも適用できる?」
「といいますと?」
「えっとね、部屋全体に盤面を引くイメージを持つの」
「やってみます」
僕の移動を止めて集中し始めたようだ。手を横に広げて唸っている。閃いたのか手を合わせてパンッと音が鳴ると一面だった盤面が部屋全体に敷かれた。まるで紫のカゴの中のようだ。
「こんな感じっすか?」
「見事だよ、このままやってみよう」
「サンドバックおくぞ」
「ありがとう。快斗君、意識をそのまま保ったまま動ける?」
「いけるっす!」
「じゃあナイフを数本、サンドバックに当てるイメージで壁と天井に投げてみて」
「なるほど。そういうことっすね!!」
理解したのか勢いよくナイフを左と上の壁に投げると正面の方にある壁と右の壁からサンドバック目掛けて飛び出して突き刺さった。どうやらちゃんとわかっていたらしい。
「お見事!」
「こんな戦法は思いつかなかったぜ」
「あれっすよね。何もないところからナイフを出して混乱させるトリックっすよね!」
「そういうこと。盤面に数字とかが出ているからわかりやすいけどなかったらちょっと計算が必要だね」
「空間図形っすね。俺数学苦手ですけど図形系なら得意っすよ!」
「謎すぎんだろ。てことは俺にも使えるわけか」
「そうだね」
「でもお前はまず二本同時マキシマムドライブができるようにならなきゃいけないな」
「そっからか」
僕はメモリのことはよくわからないので詳しい話は二人に任せることにした。そのまま今日は快斗君の練習をして解散になった。お礼に飲み物を貰って飲み干したが訓練の後の炭酸はいいなと感じた。
解散後はお嬢様を迎えにいく予定だったのでそのままスタジオに向かう。時間を確認すると少し早いとわかったのでエントランスで少し仮眠を取ることにした。
「ふぅー、今日も疲れたね~」
「あこもうヘトヘトだよー」
「ですがその分以前より改善されたかと思います」
練習が終えた私たちは掃除をすませてスタジオを出た。今日は紗夜とリサが会計をしてくれている。いつもなら遅くてもこの時間に新一が迎えにくるのだが姿が見当たらない。また戦っているのだろうか。
「りんりん見てみて、あそこで小さい子が寝てるよ」
「ほんとだ…なんでこんなところに……?」
あこが指差す方を見ると幼い男の子がソファの上で寝ているのが見えた。よくみると可愛い顔つきをしているがこんなところで寝られるなんて相当眠いのだろう。でも何故か服は見覚えがあった。
「近くで見ると可愛いよ!」
「あ、あこちゃん、起きちゃうよ……(この子どこかで見たような……)」
「そうよあこ、もう少し静かにしてあげなさい」
「そういう友希那さんだって声大きいですよ」
「ん……」
互いに注意していると男の子が起きてくる。回りをキョロキョロ見るとなにやら驚いている。
「あ、起きた!」
「えっ……」
「お待たせしました」
「何してんのー?って、なんでこんなところに小さい子がいるの?」
「迷子、かもしれませんね」
「あっ、あの」
口を開いたかと思うと体をビクつかせて一度黙り込んでしまった。けどすぐにこっちを見て話し始めた。
「ここはどこですか?」
「えっ、知らないで寝てたの?」
「うっ、お、おねーさんたちはだれですか?」
「私たちの事は知らなくて当然ですが……」
「あら?これって」
男の子の横に置いてあったスマホを手に取ると見覚えがあった。電源をつけてみると雪の結晶の絵が描かれていた。
「どうかしたんですか友希那さん?」
「これ、新一のスマホだわ」
「え、でも新一いないよ?」
「けどこれは新一のだわ」
「ここに置いていったということでしょうか?」
子供の方を見るとさっきよりおどおどし始めた。具合が悪そうというわけではないが挙動が増えた気がする。
「な、なんでおねーさんたちはぼくのなまえをしってるんですか?」
「「「「「え?」」」」」
「あなたの名前って」
「ヒッ」
「紗夜~?相手は子供なんだから怖がらせちゃ駄目だよ~?」
「い、いえ、そんなつもりは」
「ご、ごめんなさい。こわくないです」
皆が紗夜に同情の目を向けている。流石に子供に同情されるのは傷付いたのか紗夜はダウンした。そんな紗夜を傍らにリサはしゃがみこんで新一(?)に話しかける。
「君の名前は?」
「な、なごしんいち、5さいです」
絶句した。数時間前までは私よりも身長が高かった新一が目の前で小さくなっているのだ。理解が追い付けない私たちの中で一人納得した人がいた。
「だから……なんだ」
「りんりんどうかしたの?」
「どこかで見たことあるなって…思ってたんだけど……小さい頃の新君にそっくりなの」
「もしかしてりんりん?でっでも、りんりんはぼくよりもせがひくいし……おねーさん?でもそんなはなしきいたことないし……」
小さい新一が頭を抱えて悩んでいる。やがてオーバーヒートしたのかふゆぅと倒れてしまった。
「わー!新兄しっかりして~!」
「あこ、ちょっと貸して」
ぐらぐら揺らされてた新一を受け取ったリサは新一の頭を撫でながら声をかけていった。そのお陰もあってか新一は落ち着きを取り戻した。
「どう、落ち着いた?」
「う、うん」
「今井さん……ずるいです………私も……したいのに…」
「今はそんなことしてる場合じゃないわ、ッ!」
突然鳴り出したスマホにびっくりする。手に持っている方を確認すると掛けてきたのは京だと分かる。何か知っているのかもしれないと出てみると聞こえてきた声は子供の声だった。
『おい新一大丈夫か!?』
「あなたは…?」
『湊か、新一はどうした?』
「今子供になってて大変なのよ」
『やっぱりか〜』
事情を聞く京の方も大変なことになっているらしい。でもなぜ記憶があるのか聞くときっかけが思い出せるらしい。向こうはニュースの殺人事件を見て思い出したとか。一体どういうことだと思ったがこっちも何かアクションを用意しなければと動くことにした。でも何ができるか考えたところよくわからなかったので出たとこ勝負に出た。
「新一」
「はっ、はい」
「思い出しなさい。あなたは私の執事よ」
「え?」
「湊さん急にどうしたんですか?」
「何かきっかけがあれば思い出せるらしいわ。だから新一に関係する言葉を並べてみましょう」
各自思い当たる言葉を探して新一に言っていく。
「仮面ライダー!」
「?」
「ヴァイオリン……」
「ひけるよ?」
「料理!」
「ぼくまだつくれない……」
「ここまでやっても無理とは……」
「では彼自身ではないものも含めて試してみましょう」
「そうね、じゃあ“Roselia”」
「ろぜ……りあ?うっ!」
小さくなった新一は頭を抱えて唸り始めた。なにか引っ掛かったのだろうか。そのまま言葉を続けていく。
「あなたはRoseliaのマネージャーよ」
「ぼくが、マネージャー?」
「このまま勢いに乗れれば」
「いけるよ!」
「じゃあ友希那さん、そのまま歌っちゃってください!」
「何故?」
「ここまで来れば……あとはそういう刺激で戻せるのが………定番ですので………」
言っていることはよくわからなかったがいう通りにワンコーラス歌った。歌うことに集中していたため最中の新一の様子はわからなかったが歌い終わると目を瞑って落ち着いていた。
「思い出せたかしら」
「───はい。思い出しました」
「えっ、じゃあもしかして」
「僕の名前は名護新一、十七歳。湊友希那お嬢様の執事です」
「戻ったー!」
「よかった………!」
「全く、人騒がせですね」
「申し訳ございません」
「とりあえず原因を突き止めましょう」
『それならもうわかったぜ』
ポケットから新一のスマホを取り出すと通話中と表示されていた。切ったと思っていたが間違ってスピーカーの方をつけていてしまったのだろう。だけどおかげで話が効率よく進みそう。
「え、誰の声?」
『俺だよ俺』
「お嬢様、その電話詐欺です。すぐに切った方がいいです」
可愛い顔していっていることは酷い。新一がしっかりしているからこういう反応ができるのだろうが話している相手はあなたの友人なのよ?
『詐欺じゃねぇよ、京だ京。仮面ライダースカルの京さんだよ』
「そんな自己紹介初めて聞いたけど京君なんだ」
『お前が記憶を取り戻してくれて助かったぜ』
「察するに京君も同じ状況?」
『ああ、そして犯人を突き止めた。あのバカだ』
「もしかして快斗君?」
『ああ、アイツの所の上司が直接来てるんだがアイツが渡してきた炭酸あったろ?それの中にこの薬が混じってたんだと』
「混ぜた犯人は快斗君…じゃないよね?」
『おっしゃる通りです。高城がやりました』
「黒服さんですか?」
何故この人はすぐに誰か判断できるのだろうか。実はさっきのもわかっていた?でもそんな風には見えなかったし。……とりあえず置いておこうかしら。
『名護様、この度はこちらの馬鹿どもが失礼しました』
「いえいえ、誰にでも失敗はあるものですから」
『いえ、高城はわざとやりました』
沈黙が訪れた。新一の優しそうな顔も真顔になっている。
「何の実験かは知りませんけど事前に話しておくよう言っておいてください」
『畏まりました。ご迷惑をおかけしました。それで元に戻す方法ですが』
「解毒剤があるんですか?」
『いえ、まだ試作品でしたので作っていないようです。ですが理論上明日の朝には元に戻っていると』
「すみません、プロフェッサーに言伝をお願いします」
『畏まりました。メモの準備はできていますのでいつでもどうぞ』
「くそったれ、と一言お願いします」
愛らしい顔から出てきた言葉は笑顔で言えるものではなかった。それを笑顔で言った新一に耐えきれず皆笑うのを堪えている。
「以上です。とりあえず快斗君には厳しくしないであげて下さい」
『それなりの処罰はさせていただきます。この度は誠に申し訳ございませんでした』
「いえ、お仕事お疲れ様です」
『そういうわけだ新一。このまま大人しくしてようぜ』
「そうだね。それじゃあまた明日」
電話を切ると新一はふぅとため息をつく。子供だからだろうか、普段と同じような仕草でも多少可愛く見える。
「さて、帰りましょうか」
「子供になっても切り替え早いね」
「人生切り替えだよきっと」
「五歳児に言われたくない言葉ですね」
「中身は十七歳です!」
「そういえば服はどうしたの?」
謎が深すぎる質問をすると過信位置が座っているところに紙が落ちているのが気づく。それを見ると“我々の方で変えさせていただきました”と書かれていた。おそらく新一の言っていた黒服さんという人たちがやったのだろう。ソファから飛び降りた新一はドアの方へパタパタと向かう。
「どうかしたんですか?」
「い、いえ、なんでもないわ」
「し、新君、迷子になっちゃうよ……」
何を心配したのか燐子はすぐに追いかけて新一の手を握った。遠くからと姉弟に見える。
「僕迷子にならないよ」
「……小さい子の手は握らなきゃ」
「面白そう〜アタシもやろうっと♪」
「リサまで何してんの!?僕子供じゃないよ!」
「何も知らない人からすればただの我儘の子供ですよね」
そのまま帰路に入って家に帰った。小さい新一は頑張って家事をするもあまり出来なかったので私も手伝った。申し訳ないと言っていたが子供だし仕方ないだろう。この機会に私も少し学ぼうとした。
一時はどうなるかと思ったがなんとかなって安心した。
だがしかし、帰り道で別れ道に入った時、燐子が少しだけ渋ったのを私は今でも覚えている。
歌騎士の第一部が終わったのでアンケートとります!全部幕間のネタですけど
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二人のバースデーやろ!
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パーティーしよ!ヘイセイヘイセイ
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誰か狂わせようぜ⭐︎