青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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お待たせ致しました。骸探偵の続編です

「なんでこうなった」


第七話 骸探偵京 ワイルドカード 前編

 せっかくの休日、本当なら部屋でゴロゴロしていたいところだが仕事に来ていた。お袋達が生活費を出してくれてはいるが小遣いは自分で稼ぐしかない。じゃないと足りない。そんなこと言ったら怒られそうなのでこうして仕事を続けている。探偵をしている副次的な理由はこれだけだけど。

 今日の依頼はある政治家からの依頼だった。円谷平司、結構有名な政治家だ。俺もテレビや新聞で見たことはあるがたいして知らない。政治に興味がないからな。そんな奴からアポイントメントを取られる。有名人(?)から何事かと立ち上がり奴等の拠点に向かった。

 建物の正面に着いたはいいものの誰も迎えに来ないので玄関ドアを開けて中に入る。

 

「こんちはー探偵でーっす」

「だ、誰ですか!?」

「あ?自己紹介したろ今」

「もしかして鳴海京君か!?」

 

 女の後ろから声がして覗いてみると白髪のオッサンがいた。どっかで見たことがあると思ったら新聞やテレビで見たことがあることに気づく。

 

「アンタが円谷平司であってるな?」

「その通りだ!よく来てくれたな!」

「依頼は無為に捨て置けねぇからな」

 

 違う、本当は小遣いが欲しいだけだ。いつもはもっと真面目に取り組むが今日はそっちの目的の方が強い。だって依頼人が政治家なら…な?

 

「とりあえず中に入ってくれたまえ!」

「はいよ」

 

 訳のわからないような顔をしている女を放っておいて奥の部屋へと入っていく。中はどうやら依頼主の事務室らしい。座るように促されて高級そうなソファに腰をかける。へっ、このソファいくらしたんだろうな。

 

「それで依頼内容は?電話では言っていなかったが」

「依頼って何ですか?」

「混乱を避けたいが故に直接話そうと思ってな」

 

 意外と賢い選択をしているらしい。もし郵便局にいたらバレるかもしれないしな。それ故に電話、しかもも一度名探偵の鳴海京に会いたいとしか言ってなかった。何をしたかは知らんが。

 

「実はこれが昨日ポストに入っていたんだ」

「封筒……脅迫状か。中身は誰が見た?」

「私だけだ」

 

 意外と賢いなコイツ。仮に自作自演だとしてもこいつ以外の指紋がないから捜査しにくい。徹底的証拠があったら別だが。手紙を開いてみると暗号文のようなものが入っていた。だが奇妙なことに薄く花がプリントされていた。

 

「“我は罪人を裁く者

 懺悔の引き出しよりお前たちへ手紙を配ろう

 秘密はいつか明かされるもの也“

 か、暗号だな。心当たりは?」

「それが無いんだ。政治家だから何処かから恨みを買うのは分かっているがこんなものを出される覚えはない」

 

 もう一度文面を読んで意味を解く。

 最初の一文はほぼ確実に殺人予告だ。“懺悔“は“後悔させてやる“という憎しみだろうが引き出しからの手紙はまだ理解できない。最後は“隠し事は通用しない”という意味だろう。これは怨みとかの殺人だろうと断定する。

 

「アンタは隠し事をしていないのか?」

「していないとも。私は誠実さが売りだからね!」

「へーほんとかね、金の怨みどうこうは動機になりやすいからな」

「別に疑っても構わないが無駄なことだよ」

 

 政治家って生き物は表面はキレイだからな、中身がどうなってることやら。

 とにかく狙われてるかもしれないのでしばらく護衛することになった。メモリさえ関わっていなければそれでいいんだが前回が前回だったからなぁ。

 

「そういえばそこの女は?」

「あぁ、彼女は私の秘書だ」

「遠山奈々といいます。この度はご協力ありがとうございます」

「仕事だからな、ちゃんとギャラは貰うぞ」

「任せたまえ、恩人にはきちんと支払おう」

 

 まだ何もしていないがなと笑いそうになると事務所の電話が鳴り響く。遠山が電話を取ると違和感のある表情になってスピーカーにした。

 

『聞こえているか?円谷。私は郵便配達人だ』

「そのような人が何用で?」

『最初の手紙を用意した。明日の昼十二時にEー6倉庫に来い』

 

 言伝のみという訳のなのか言い切るようにプツンと音が鳴った。何事かとも思ったがとりあえず今日は警戒しておくようにと伝えて事務所を出る。念のため身辺調査をしておこうとバイクの元へ歩き出すと何かにぶつかる。

 

「す、すみません……」

「いやこちらこそすまない。考え事をしていた」

「いえ、こちらがきちんと見ていればよかったので。た、大変だ遅刻する!」

「遅刻?急いでいるのか?」

「は、はい。実は約束していて……」

 

 俺より少し年上くらいの男は手に花束を持って慌てていた。デートか?リア充だったら許さんといつもなら言っていたがそういう雰囲気も感じ取れなかった。

 

「遅らせる原因を作ったのは俺でもある。送って行くから乗ってけ」

「え、でも」

「遅刻しちゃまずいんだろ。乗れ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 礼儀正しいなと感じる一方落ち着かない様子が見られる。行き先を聞くと近くの大病院だというのですぐに向かう。病院に着くとそのまま青年についていく。本当は別れるはずだったがお礼がしたいからついてきて欲しいというのでついて行った。手続きを済ませて病室に向かうと女が一人ベットの上に座っていた。

 

「姉さんお待たせ」

「時間ぴったりだね、和也。その人は?」

「ちょっと色々あってここまで送ってくれた人」

「すみません、弟がお世話に……って、もしかして名探偵!?」

「えっ?ほ、ほんとだ!焦ってて気づかなかったけど名探偵の鳴海京だ!」

 

 今のタイミングで気づくのかお前。てかお姉さんの方はよくわかったな。

 

「テレビとかで何度か見かけて、それで……」

「なるほど、それは光栄だ。わかっているだろうがあえて自己紹介しておこう。鳴海京だ。探偵をやっている」

「わわわ、僕やばい人連れてきちゃった」

「人聞き悪いな」

「あっ、いえ、そんなつもりは」

 

 とりあえず落ち着けと促して二人の様子を見ていた。姉の方は病院に慣れてきているという感じが見られた。弟の方はオロオロしているところが多々見られるが特にこれといっては無さそうだ。

 

「全く。和也、時間を守るのはいいけど人の迷惑になっちゃダメよ」

「時間通りかどうかは知らないが俺が勝手に送っただけだから気にするな」

「あ、ありがとうございました」

「それよりえっと、和也さんは時間を守るタイプなのか?さっきも遅刻だとか言って慌てていたが」

「はい、弟は時間や約束を守るタイプなんです。それでドジを踏んじゃうのが傷ですけど」

 

 和也さんは苦笑いをしている。本人的にも痛いところなんだろう。

 

「そういえばだがお姉さんの名前は?」

「申し遅れました。私は古谷 静香(フルヤ シズカ)といいます。そちらは弟の古谷 和也(フルヤ カズヤ)です」

 

 二人揃って挨拶をしてくる。タイミングを見ても姉弟といえるほど似ていた。

 

「それで、失礼だとは思うが静香さんの方はなぜ入院を?」

「私、数週間前に交通事故に遭って、それで下半身が動かないんです」

「それは……すまない」

「鳴海さんは何も悪くないじゃないですか。それにただの事故だったんで大丈夫ですよ。いつか治りますって」

 

 言ってしまえばこれは下半身不随、神経に対して傷を負ったのだから治せるかどうかは言わなくてもわかるだろう。それでも希望を持ち続けるのは相当辛いことなのに頑張っている。現実を突きつけるのは俺の仕事ではないと帽子を深く被る。

 

「お気になさらないでください。私は大丈夫ですから」

「そうか……」

「そうだ姉さん、あのこと聞いてみたら?」

「そうね、探偵さんですもの。きっと解けるはずだわ」

 

 名探偵だからといっても解けないものはあることを知らないのだろうか。和也さんは床頭台の引き出しからカードのようなものを取り出した。

 

「これなんですけど」

「タロットカード?」

 

 渡されたものは死神の絵が描かれたタロットカードだった。このイラストなら確か意味は……

 

「はい。しかもそれは13番のカード、“Death”。意味は死です」

「やはりか」

「しかもそれが花束と一緒に届けられたんです」

「届け人は?」

「それがナースステーションで看護師さんが受け取っただけで。見た目は黒いジャンパーに帽子を被っていたって」

 

 正体不明か。それじゃあ誰だかわからないな。というより俺が知っているやつでも無さそうだが。とりあえず写真だけ撮ってカードを返した。

 

「しかしまぁ恨みでも買われてんのか?病人に対してそんなものを送ってくるなんて」

「間違えただけかもしれませんけどね」

「ちなみに二人のうちタロットに精通している人は?」

「私がタロットを好きだったのでどちらも意味を知っています」

「そうか、ならわかる情報があったら教えてくれ」

「帰るんですか?」

「ああ、調べ物があってな」

「それじゃあ僕も帰ります」

「気をつけてね和也」

「うん、ありがとう。また来るからね」

 

 俺は軽く会釈だけして部屋を出た。後から和也さんも追いかけてくる。駐車場まで軽く話していたが姉の元にはよく人が来るらしい。そんな人が死なんて文句をつけられるのだろうかと疑問が生まれるが一度置いておくことにした。駐車場に着いてヘルメットを被る。

 

「今日はありがとうございました。お礼をするはずがお願いを聞いてもらって」

「いいや、構わねぇ。その分もまとめて今度貰う」

「えっ、もしかしてギャラってやつですか?」

「一応それで食ってるからな」

「わ、わかりました。とびっきり美味しいもの用意します」

「そりゃ楽しみだ。そうだ、ついでに聞きたいことがあるんだが」

「な、なんでもどうぞ!」

「円谷って政治家を知ってるか?」

「知ってますよ。最近大きく出るようになって、でも前まではそんなに目立っていなかったような………」

「他の印象はどうだ?」

「言ってる事はいいと思いますけど、政治家って結局それ通りにやりませんよね」

「まぁな。とりあえず情報助かった。このことは誰にも他言しないようにな」

「わ、わかりました」

 

 以来のこともあるので連絡先だけ交換して俺はバイクを走らせた。一人程度だが情報を掴めた。あとはネットで少し探ってみるか。最近はネット新聞とかもあるだろうからそこから探るのもいいな。家に帰る前に羽沢珈琲店で生の新聞を読ませて貰いついでに夕食を済ませようかね。

 

「いらっしゃいませ〜……って鳴海先輩!」

「よっ、まだやってるよな?」

「ラストオーダーギリギリですよ」

「そいつはラッキー。コーヒーとカルボナーラを頼む」

「かしこまりました!」

 

 パタパタと厨房に向かう羽沢を見届けてから適当に席に着く。すると目の前に知らない男が相席になるように座ってきた。軽く会釈だけするとテーブルをドンと叩かれる。何事かと思ったら男の顔は険しいものになっていた。

 

「あ、あの、どうかしたんすか?」

「君は何者だ?」

「いやそれこっちのセリ」

「何者だと聞いている!」

 

 なんだこのオッサン訳わかんねぇと思うと低い声で話を続けてきた。

 

「うちの娘と仲良さそうに話おって、何者かと聞いているんだ!」

「む、娘って羽沢のことか!?」

「俺も羽沢だが?」

 

 まじかこの人ここの店主、つまりあいつの父親かよ!なんで急に絡まれてんだよ俺は。ただ飯食いに来ただけだぞ!?

 

「つぐみとはどういう関係だ?」

「そ、そりゃあ当然」

「貴様につぐみは渡さん!」

「まだ何も言ってねぇだろ!」

「お父さん何してるの!?」

 

 声のする方を見ると話題のご本人が来ていた。手にトレーを持っているあたり注文の品を持ってきたのだろう。だがさっきから出ている親父さんのオーラが強くなっている。

 

「つぐみ、この男はなんだ」

「学校の先輩だよ!」

「彼氏とかじゃないのか?」

「そんなんじゃないから!もう、あっち行って!」

 

 羽沢の必死の攻撃で羽沢の親父さんは厨房の方へ消えていった。落ち着いた羽沢はトレーごとテーブルに置いて目の前に座った。

 

「ご注文の品です」

「お、おう。助かった」

「すみませんお父さんが」

「い、いや、年頃の娘を持ってるんだ仕方ないだろ」

 

 その後も羽沢はため息をついていたが飯は美味かった。いつもの空間で食えなかったのは少し残念だが大人しく店を出て家に帰る。その後調べ物をしてから寝た。

 翌日朝十時に事務所に向かうと円谷と遠山がいた。妙に落ち着いている円谷に対して遠山は落ち着かない様子だった。

 

「おはよう、生きてるか?」

「物騒な挨拶だね。もちろん生きているし絶好調だ」

「それは良かった。予定時刻まであと二時間弱。倉庫まではそれほど時間もかからないし状況整理といこう」

「探偵っぽいな」

「探偵だからな」

 

 十一時過ぎまで昨日の解散後の状況と異変がなかったか、また予告状の再確認をしていた。しかしこれといって変わったことはなく再確認程度になった。時間もちょうどよかったので車を出してもらい指定された倉庫へと向かった。何か円谷にとって不味いものでもあるのではないかと遠山は気にしていたがいかなければわかるまいと円谷本人はずっしり構えていた。肝が据わってんなと思いつつ移動すると倉庫前に着いたのは十二時前。あたりに人気はなかった。

 

「念のため確認しておくが人から恨まれることはしていないんだな?」

「もちろんだとも」

「じゃあ今から何が起きても慌てるなよ?落ち着いて動かねぇと危ないかもしれない」

「鳴海さん、どういう意味ですか?」

「なに、念の為だ。……時間だ開けるぞ」

 

 大きな扉に手をかけた瞬間鉄とは別の音が頭に響いてくる。外から聞こえた音ではない、頭の中から聞こえた音だ。間違いない足音だ、死神の足音がする。

 まだ助けられるかもしれないと急いで扉を開けると残酷な現実が目の前にやってくる。

 

「な、なんだあれは!?」

「いやあああああああああ!!!」

 

 倉庫の真ん中に成人男性と思わしき十字架に括り付けられた遺体があった。少し出て開いている目の見る先は地面で焦っている様子が見られない。脱力したような姿でぶら下がっている死体。普通ではあり得ない状況に二人の顔は青ざめている。

 

「警察と救急車を呼べ、すぐに!」

「は、はい!」

「本当に恨まれごとはないんだよな!?」

「無いといっているだろう!それよりあれはなんなんだ!」

「死体だよ。まさかこんなところで出会うとはな」

 

 そこを動かないようにと指示をして俺は遺体に近づく。すぐに下ろせるかを確認すると十字架の後ろに杭がありそこに刺さっているモノのせいで一人では無理だということがわかった。無為に奴に手伝ってもらうわけにもいかないので警察を待つ。それまでに何かないかと探すとふと気づく。

 ──何故この遺体は逆さまなのか。ぱっと見で気付く事だがすっかり忘れていた。脱力感を見る感じ絞殺だと思われるがなぜ逆さまになっているのだ?

 首元を確認するとやはり絞められた跡が残っている。それも背中側が少し斜め上になっている。わざと逆さまにした?だとしたら何故?

 そんなことを考えているとパトカーと救急車の音が聞こえる。どうやら到着したらしい、間に合いはしなかったが。

 

「ちょっとー!現場で何を、ってまさか」

「まさかここら辺お前の管轄なのか?」

 

 やってきたのは遊園地の時にいた刑事だった。相変わらず呑気な顔をしているなと思いつつも捜査に協力することを伝えて助力してもらう。とりあえず遺体を下ろさせて色々と確認するが絞殺されて数時間以上経っていることぐらいしかわからなかった。

 

「しかし今回もまた酷い仏さんですね」

「あぁ、今回は完全に油断してたな」

「何かあったんですか?」

「詳細はそいつから聞け」

 

 円谷の方に指を指して俺は倉庫内の捜査を行う。一通り見ると普通の倉庫だったが扉の部分に細い糸のようなものがあった。それを辿ってみるとかなり長く遺体のあった逆さ十字の近くまで伸びていた。それは反対方向にも同じようなものがあった。

 

「探偵さんちょっと来てもらえますか?」

「どうした」

「これ見てください」

 

 刑事に案内されて遺体のあった場所まで戻ると残っている杭の部分を指差される。

 

「あれおかしくないですか?発見された時は逆さになっていたというのに杭のところに擦れたような跡があるんです」

「十字架を外す時どうだった」

「え?そういえばなんか浅く刺さっていたような……」

「浅く?」

「はい、深く刺さっているわけじゃなかったのでスポって抜けたんですよ。もちろんそれなりに力は要りましたけどね」

 

 糸は二本、十字架の擦れ跡………これなら確かに可能かもしれない。あとは死亡推定時刻と身元の確認だが………

 

「警部、遺体の身元と死亡推定時刻確認取れました!」

「でかした、教えてくれ」

「は、はい。身元は具土 勇男(グド イサオ)、22歳大学生。死亡推定時刻は早朝六時だと思われます」

「う、嘘だろ!?彼だったのか!?」

 

 後ろから声がすると思えば青ざめた顔をした円谷だった。

 

「知ってるやつだったのか?」

「彼は最近私に資金援助をしてくれたのだよ。それで私も大きく動けるようになって…」

「なぜ最初の時点で気づかなかった」

「気が動転してたんだ!君も見ていただろう!?」

 

 確かにビビりすぎなくらいにおかしくなっていた。いや普通はあれくらいなんだろう。慣れっていうのは怖いな。とりあえずやることは身辺調査だなと動こうとした瞬間倉庫内に電話の音が鳴り響く。全員が携帯を確認するとなっていたのは円谷のスマホだった。恐る恐る出ると顔色をより悪くする。俺は携帯を奪ってスピーカーモードにする。

 

「よぉ、郵便配達人」

『貴様は誰だ』

「探偵だ。そんなことはどうでもいいだろ」

『そうだな。最初の手紙は受け取ってもらえたか?』

「手紙っていう割には紙はないけどな」

『いいや、君たちは警察を呼んでいるはずだ。そうすれば必ず手紙は手に入る』

「そうかもな。それで?まだ終わりじゃないんだろ?」

 

 周りの人間は驚く顔をするがすぐに静かにさせる。

 

「手紙に書いてあったもんな、お前たちへって」

『流石は探偵だ。次の配達までに辿り着けるかな?』

 

 ブツッという音と主に電話は切れた。ロクでもない犯人は声の調子から楽しんでいるようだ。

 

「あの、どうしますか?」

「お前刑事だよな?」

「そうですけど経験豊富の探偵さんに聞いたほうがいいかと」

「はぁ………それじゃあ円谷さんの事情聴取だ。他に空いているメンバーで行動歴とかを洗い出せ」

「探偵さんは?」

「俺は遺体を見る。ほらすぐに行動だ、今にも次の準備は始まっているぞ」

 

 俺たちはそれぞれの場所へと向かい自分達の仕事を始める。許可をとって遺体を見させてもらう。今のところわかることを聞くとある程度情報が入ってくる。

・死んでから八時間経過している。

・死因は考察によるものらしい。

・それ以外の損傷は見られない。

 これだけ見ると自殺のようにも思えるが少なくともあんな自殺はできないだろう。

 

「よろしければ発見当時の写真見ますか?」

「いいんですか?」

「はい。協力するよう言われておりますし、何より下手にいじられなかったのでおそらくそのままの状態で取れているかと」

 

 写真を見せてもらうと他の疑問点に気づく。まずは足が揃って伸びていないこと。片方の足が膝で曲げられて後ろに回されている。そして両腕が後ろで組まれていること。十字架なら横の棒に括り付ければいいのになぜこのような形にしたのか。何の意図があるのかわからないまま他の手がかりを探すが特に出てくる事はなかった。

 これ以上は進歩が無いかと遺体のある部屋を後にすると刑事から電話がかかってくる。どうやら被害者の最近の行動履歴が割れたらしい。その情報をもとに俺はある人物の元へと向かった。インターホンを押すと俺と同じくらいの青年が出てくる。

 

「どなたですか?」

「こんにちは、いやもうこんばんわか?」

「何言ってるんですか。てか何者?」

「探偵だ、少し時間をもらえるか?」

 

 構わないといった男は俺を家にあげてリビングにある椅子に座らせる。

 男の名前は玉城 永遠(タマキ トワ)。男、22歳大学生。被害者の具土とは他より深い交友関係を持っている。とりあえず落ち着いて聞くように促してから事件のことを話した。

 

「信じられません、あいつが死んだなんて……」

「何か知っていることはあるか?恨まれていることとか」

「あいつ、金持ちだからっていろんなことやってたんで色んなところから恨まれても仕方ないですよ。ま、俺もザマァって思ってるし」

「友人なのにか?」

「バカ言わないでくださいよ、友人のフリですよフリ」

 

 悲しむどころか急に笑い出した玉城は狂っているかのようにも思えた。

 

「警察には黙っているんですけどね。あいつ、人を殺しかけたことがあるんですよ」

「はぁ?なぜ黙ってる」

「そりゃあもちろん金もらえたからですよ」

 

 金が貰えるのなら犯罪を黙っているのかと思うがそういう奴はこの世の中沢山いるから黙っておいた。その後も具土の愚痴を聞かされたが色々と恨みを買っていることはわかった。最後に円谷の話を出したがそこのつながりは知らないとの事だ。協力に感謝して家を出ると空が真っ暗になっているのに気付く。警察の方に一度連絡すると円谷の警護をするので今日は休んで明日以降の協力を願われた。

 その指示に従って俺は帰って寝ることにした。朝起きたら学校に連絡せねばなるまいと思ったがめんどくさいと思う自分もいた。

 

 翌日の朝、俺の意識を覚醒させたのはアラームではなく刑事からの電話だった。部屋にいたはずの円谷がいなくなっていたという。ただし部屋にはスマホがありそこには『早朝四時に事務所で待っている』とのメールが残されていた。俺もすぐに着替えて事務所に向かう。事務所の前には警察と遠山が入り口付近で待っていた。

 

「待たせた。行くぞ」

「はっ、はい!」

「あの、先生は大丈夫なんでしょうか?」

「それを今から確かめる。何があっても受け入れろ、今はそれしか言えない」

 

 扉を開けて奥の部屋へと足を運んでいくと椅子に座ってこちらに背を向けている円谷の姿があった。遠山が安心したような声を出しながら近づくと顔色を一気に悪くさせて叫び上げる。椅子を回転させると椅子に手を縛り付けられた状態で心臓にナイフが刺さっていた。

 

「遅かったか……」

「すぐに現場を封鎖してして!」

 

 刑事の一声で捜査は始まった。被害者は円谷平司、52歳政治家。死因はナイフで心臓を一突きされたことによる失血死(もしくはそれによる失血性ショック死)。足が組まれており、手は肘掛けの部分に固定するように縄を巻いてあり逃げられないようになっていた。それ以外は特に見つかる事はなかった。

 

「しかしまぁ昨日のに比べて幾分かマシというか……」

「ちゃんと見張っていればこうはならなかっただろうな」

「……返す言葉もないです」

「気にするなとは言えないが次に繋げろ」

 

 刑事をなだめながらも昨日の遺体との共通点を探る。強いていうなら括りつけられているぐらいだった。二人に対する動機はなんだろうかと考えた瞬間電話がなる。しかもなったのは仕事用、つまりスタッグフォンの方だ。知らない電話番号だったので回りに静かにするように指示をして電話に出る。

 

「もしもし、こちら探偵の鳴海京です」

『応答してくれたか、郵便配達人だ』

 

 まさかとは思ったが犯人からの電話だった。あまり刺激しないよう、情報を得られるように会話を続けていく。

 

「配達はこれで終わりか?」

『その様子だと二件目も受け取ってくれたようだね。だがまだ配達は残っている』

「これ以上殺す必要はあるのか?」

『間違った判断はあってはならないからな』

「自らが正義とでもいうのか?」

『そうは言わないさ。俺はただの配達人だからな』

「そうか、あと何枚の手紙がある」

『あと三枚だ。次は間に合うかな?』

 

 余裕のある笑い声が聞こえると電話は切られた。今の会話の中にヒントがあったはずだがどうにもわからない。しかし次があることは確定したので行動を起こさねばならない。

 

「鳴海探偵、何か策があるんですか?」

「ない」

「ない!?」

「何も分からないのに策なんて練れるか。だがやって貰いたいことがある」

「といいますと?」

「具土と円谷の関係を洗い出せ。どんなささないことでもいい。徹底的に探し出してくれ」

 

 刑事は返事をするとすぐに行動に出た。俺もじっとしているわけにもいかないと遠山の方に近づいていく。遠山は未だに現実を受けいられていないのか蹲って泣いていた。

 

「泣いているところ悪いが話を聞かせて貰えるか?」

「うぐっ……先生………」

「お前らの関係は政治家とその秘書でいいんだよな?」

「ひぐっ……はい、その通りです……先生は就職で困っていた私を助けてくれたんです……」

 

 つまりこいつにとって恩人が死んだわけだ。そうなるとこうなっても仕方ない。だが最大の情報源はこいつだ、今は動いて貰わねばならない。

 

「話を聞いた限り最近具土から援助して貰ったらしいがそれはいつの事か分かるか?」

「二、三週間前くらいです……でも私、あの人苦手でした……」

「何でだ?」

「私の事をなめるように見てくるのが嫌でした……」

「なるほど」

「でも先生には頭が上がらないようでした……」

「理由は?」

「分かりません。けどなんか先生にはいつも敬語だったと思います……」

 

 こうなると二人の間に何かを結ぶ関係があったとしか思えない。一度遠山のもとを離れると刑事がやってくる。

 

「何かつかめたか?」

「資金援助以外は特に見つからなかったのですが、具土の方が最近交通事故に関わっていました」

「交通事故?」

「はい、どうやら被害者は下半身麻痺を起こしているようです。事件の時に犯人が乗っていた車に乗っていたようです」

 

 下半身麻痺と聞いてすぐに知っているやつの名前が出てきた。

 

「いつの話だ?」

「二、三週間前の話です」

「犯人はどうなった?」

「それがおかしいんですよね。懲役無しの執行猶予のみで賠償金も既に払い終えてるんですよ」

「ソイツの名前は?」

 

 その名を聞いた瞬間腹が立った。何故なら昨日話した奴だからだ。急いで事務所を出ると人にぶつかる。今度はバランスを保って立ったままでいられた。

 

「すまない、急いでるんだ」

「えっ、あっ、探偵さん?」

「お前は……」

「すっ、すみません、急いでるんですよね」

「あぁ、人を探しにいくんだ」

「人……?」

「玉城永久ってやつだ」

「玉城さんですか!?さっき会いましたよ!」

「どこだ、連れて行け!」

 

 和也さんの協力もあってすぐに玉城を見つけ出せた。玉城はこれから遊びに行くかのような顔をしている。建物にが入りかけるところをギリギリで捕まえて裏道に連れていく。

 

「な、なんだよ急に!」

「お前、昨日具土が人を殺しかけたと言っていたよな?」

「言ったけどそれがどうかしたのかよ!?」

「実際はお前が殺しかけたんじゃないのか!?」

「はぁ!?」

「ま、待ってください鳴海さん!」

 

 詰め寄ろうとすると和也さんが間に入って止めてくる。やっていることの意味が理解出来なかった。

 

「何してんだ、こいつはお前の姉を殺しかけたんだぞ!」

「それは誤解です!」

「警察の方にそういう記録があったんだ。疑いの余地はないだろ!」

「それが間違っているんです!」

「は?」

「この人は……玉城さんはあの時運転していなかったんです。本当は運転していたのは具土さんなんです。けど自分の経歴を汚したくないからって玉城さんに罪を擦りつけたんです!」

 

 どういうことだと力が抜けていった。それから詳しく聞くと玉城は数週間前に裁判で執行猶予をつけられ賠償金を支払っている事実は知っていたが支払いをしたのは玉城ではなく具土だった。さらに姉の話によると運転手を見ておりそれは紛れもなく具土だったという。その時に円谷に現場を見られて具土は何かの取引をしていたらしい。これでやっと関係の始まりが見えた。だが警察が嘘の記録を残していることが信じられなかった。

 

「しかしまぁとんだ茶番だな。なぜお前は擦り付けられたのを黙っていた」

「受ければこれからの生活費は保証してやるって言われて………」

「けっ、金目的かよ」

「でも玉城さんは悪い方ではありませんよ。悪くないのにちゃんと謝りに来てくれたんです」

「そうかよ。だが姉の証言があるならなぜ警察に突き出さない」

「それが、何度も言っているんですが相手をしてくれなくて……」

 

 狂ってやがる……いくらなんでも腐敗しすぎだろ。なぜ警察はそれ以上の追求をしないんだ。正義を名乗るくらいならちゃんと犯人を捕まえろってんだ。

 

「それで、お前らに聞くがそいつらを殺したいとは思はないのか?」

「な、なんですか急に」

「まさか円谷さんまで殺されたのか!?」

「勘良すぎだろ。だがまぁその通りだ。この二人は二日連続で殺された。今知っている限りだと怨恨関係はお前ら三人が一番有力だ」

「三人?」

「ああ、正確には二人だが」

「それって俺と和也さんと……」

「こいつの姉の静香さんだ」

「姉さんは下半身麻痺をしているんですよ?できるはずがありません!」

「ああ、だから正確には二人なんだ」

「確かに憎んではいましたが殺すほどでは………」

「俺も同じだ。これ以上罪を被りたくもないしな」

 

 二人の供述は無罪を主張か。とりあえず次の被害を止める方に路線を変えようとする。だが具土が起こした事件のことが気になりさっきの刑事に連絡する。

 

「もしもし、鳴海だ」

『あれ、探偵さん?なんで電話番号知ってるんですか?』

「テメェが昨日別れ際にメモを渡してきたんだろうが」

『そういえばそうでしたね。それで何かわかったんですか?』

「まぁ色々な。例の具土が関わっていた方の事件、担当していた刑事に会えるか?」

『美登さんですか?あの人数日前から出勤してないんですよね』

「はぁ?」

『何も連絡がないんで気にはしているんですけど署内で人気低かったので適当にあしらわれてます。どうせサボりだろうって』

「クソかよ。じゃあ裁判官に会えるか?」

『裁判官?』

「いいから会わせろ」

 

 無理やり名前を聞き出しそいつの元へ向かった。裁判官松下 重治(マツシタ シゲハル)。交通事故の事件の裁判を行った。どこを判断したのか、再審はしないのかを聞き出しに行った。裁判官ならそれほど賢いはずだが何故誤審になっているのか分からなかった。アポイントメントを刑事に取ってもらい一時にレストランに集合になった。

 

「俺こういうところ何度か来てるけど慣れないんだよな」

「どうせ具土の奴と来てたんだろ」

「まぁな」

「あ、来ました!あの人です!」

 

 堂々たる歩き方をした姿で現れた三十代くらいの男は目の前の席に座ってくる。座り方までまるで誇りを持っているようにも思えた。

 

「はじめまして、だね名探偵」

「知ってて助かるぜ。松下重治で合ってるな?」

「勿論だ。すでに二人は知っているだろう。それで何用かな?」

「単刀直入に聞こう。こいつの判決を下したのはお前だな?」

「ああ、その通りだが?」

「こいつの事件、真相を知っているか?」

「知らないが、別に犯人でもいるのかね」

「その通りだ。真犯人は賠償金を払った具土勇男、こいつは助手席に座っていただけだ」

「ふむ………そうなると結構、いやかなりおかしな話になるね」

「その通りだ。だからお前の判決は」

「しかしだからどうしたというのかね」

「………は?」

 

 目の前の男は余裕の笑みを作って話し始める。

 

「ここは裁判場ではない。それに再審を玉城くんは望まなかった。それはもうこの件については触れられないということではないか」

「だっ、だからと言って!」

「それに今更こんな情報を出されても簡単に私が信じるとでも?」

「お前、正気か?」

「正気だよ。私は公平の元で審判を下す。それは場内でのみ適用され場外では適用されない」

 

 ここまで狂っているとは思えなかった。この事件は仕組まれている。狂いに狂った連中が作り上げた茶番にしか思えない。自らが楽に、安全圏で操作することしか考えてない。民間に正しさを見せる連中がとても正義とはかけ離れている。

 

「分かった。このことが真実かどうかはあんたが決めろ。しかしあんたの命が狙われている可能性がある」

「何?」

「この事件に関わった者が既に二人殺された。一人は消息不明だ」

「ふむ………なぜ私が狙われていると?そこの二人も同じではないのか?」

「それもそうだが二人にはこれから一緒に行動してもらう予定だ」

「「え?」」

「え、じゃねえよ。お前らも狙われている可能性がある。もしくはどっちかが犯人の時に動きにくくするためだ」

「な、なるほど………」

「それで私も同じだと?」

「俺たちが嫌なら警察と一緒でもいい。少なくとも今日は一人になるな」

「わかったよ、念には念だ。しかし君ではなく警察にお願いしようかな」

「わかった。事情は説明するから一人つけるようにする」

 

 気に食わない顔をされたが少しでも被害者を減らすための手段だから仕方がない。一人呼ぶようにお願いして読んでもらうと十分しないうちに護衛の警察官が来た。目立たない格好でお願いしてあるため問題はないはずだと告げると余裕そうな顔をして席を離れていった。

 

「なんなんですかねあの人、偉そうにしちゃって」

「捻くれた裁判官だったな。さて、飯にするか」

 

 少し高そうな飯を食べて二人とは別れる。どっちの家でもいいから今日は二人でいるように伝えて俺は円谷の事務所に向かう。何かヒントがあるのではないかと思い探すも特にヒントはなかった。円谷の殺人方法は簡単なものとしか思えないが具土の方は少し謎だった。殺人のトリックは解けている。しかし何故逆さまにならねばならなかったのか。そればかりが引っかかる。

 逆さまの吊るされた遺体。椅子に座っていた遺体。何かに準えているものなのかと考えるとそう思えなくもないが何か見落としているはず。何がわからないかわからなくなった時、入り口の扉が開かれた。

 

「悩んでいるようだな、京」

「!………まさかだよな……」

歌騎士の第一部が終わったのでアンケートとります!全部幕間のネタですけど

  • 二人のバースデーやろ!
  • パーティーしよ!ヘイセイヘイセイ
  • 誰か狂わせようぜ⭐︎
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