青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第九話 お嬢様のbirthday

「新一、今のところもう少し強くお願いできる?」

「畏まりました」

「もう一度行くわよ」

 

 今日は主人であるお嬢様の誕生日だ。もちろん誕生日プレゼントはちゃんと用意してあるのだが何かやりたいことはあるかと聞いたら、当日の練習は午後からだからそれまで僕とセッションしたいとのことだった。当然断る理由も無くセッションをしていた。最初は余興程度かと思っていたがやっているうちにそんな考えは覆された。今日はヴァイオリンを使って久しぶりの合わせではあったが前に歌っていた時よりも遥かに上手くなっている。

 

「時間はあとどれくらい?」

「お昼の時間を入れましてあと一時間ほどです」

「わかったわ。あなたはそろそろいけるかしら?」

「演奏の方でしたらいつでも問題はございませんが」

「じゃあやるわよ」

 

 それからまたハードなセッションが再開された。久しぶりだった分かなり厳しめだったが求めるものに答えるくらいには出来ただろうか。時間が経って片付けをしながらラウンジで昼食を取っていると他のメンバーがやってくる。

 

「へぇ〜そんなことがあったんだ」

「うん、お嬢様と二人でやるのは久しぶりだったから楽しかったよ」

「あなたが練習しているところはあまり見ないのだけどよく応えられたわね」

「恐縮です」

「やっぱそこら辺は天才肌なのかな?」

「そんなんじゃないと思うけど」

「体に染み付いている………とか?」

「多分そんな感じ」

「すっごーい!新兄ちょーすごいじゃん!」

「楽しく話しているところ申し訳ございませんが時間ですよ」

 

 紗夜さんの号令で皆がスタジオに入っていく中僕は反対方向へ歩き出す。元々練習後はお嬢様のバースデーパーティーを行う予定だったのだ。その為のケーキを取りに行くのだ。ただし練習が終わる三十分前には戻ってくるように言われたのでスピードを上げていく。頼んでいる店の味の評判はいいのでこっちのことで気にすることはない。何せ元軍人がパティシエをやっているらしく時間とかには厳しいとのこと。しかしそのおかげもあってか味も絶賛されている。この情報を手に入れてくれたリサには感謝だ。店の前まで着くと黒服の人たちと鉢合わせになった。

 

「名護様、お疲れ様です」

「黒服さんたちこそお疲れ様です」

「お買い物ですよね」

「はい、黒服さんたちは…もう買われたのですね」

 

 手荷物を見ると袋に入った白い箱が見える。

 

「はい。名護様はご予約されているのですか?」

「そうですね、これから受け取るところです」

「ここのケーキを食べたことはございますか?」

「いいえ、初めてです」

「でしたら是非召し上がってください。ここのは弦巻家でも絶賛されています」

「そうなんですね。楽しみです」

「お忙しいところ失礼しました。我々はこれで」

「いえいえ、お疲れ様です」

 

 黒服さんたちを見送って店の中に入る。しかしあの御家でもそこまで絶賛されているとなるとかなり評判は高いと見えた。店の中に入って予約していたケーキを注文するとパティシエと思われる人が出てきて事細かに説明してくれた。一流はここまでするのだと感心しつつ受け取るとフランス語で見送られる。世の中すごいなと思いつつもその足でcircleまで歩いて行った。

 時間は指定された時刻の五分前、上々といったところだろうか。部屋の前まできて一度音が鳴り止むのを待ってから部屋に入る。

 

「ただいま戻りました」

「おかえり〜」

「予定時間の五分前ですか、流石いったところです」

「ちゃんとケーキを受け取ってきましたよ」

 

 手荷物を置いて椅子に座ろうとすると呼び止められる。そのまま楽器を持ってこいと言われたのでケースから出して皆に近づく。

 

「これで全員揃ったわね」

「あの一体何をするんですか?」

「今から残りの時間を使ってこの六人で音を合わせるわよ」

「今からですか!?」

「実は友希那に誕生日に何かやりたいことある?って聞いたら新一も含めて全員でセッションしたいって言ってさ」

「言ってくれればよかったのに……」

「友希那さんが……新君には黙っていようって……」

「お陰で面白い反応が見れたわ」

「確かに新鮮な反応でしたね」

 

 少し複雑な気持ちもあるけどお嬢様が楽しめたならまあいいかと流すことにした。ヴァイオリンを肩に乗せ手首を軽く回して準備運動をする。

 

「それで、何を合わせるんですか?」

「そうね。せっかくだし、熱色スターマインなんてどうかしら」

「いいと思います!」

「私も賛成です………」

「私も同じです」

「じゃあ早速やろうよ♪」

「ええ、あこカウントお願い」

 

 元気な返事をしたあこちゃんはスティックを叩いてカウントを取ると一気に演奏が始まる。飲み込まれないように意識を持ちながら弦を弾いて音を合わせる。決して周りを崩さないよう気を配りながらも存在を証明できるように音を奏でていく。ワンコーラスで一度切って話合いに入る。

 

「すっごーい!新兄すごいよこれ!」

「うん、ちょっと緊張したけど合わせられてよかった」

「気配りしてるのが…すごく伝わってきた………」

「けれど自分をきちんと出せている分、ヴァイオリンに長けているのですね」

「もしかして午前中もやってたの?」

「熱色スターマインは少しだけしかやってないよ。皆の演奏に合わせるところを考えながらやってたから少し大変だったけど」

「悪くはなかったわ。だけど次は調和をとりつつもう少し出てきなさい」

「畏まりました」

 

 指示通りに応えられるように頭の中で構想を練る。演奏が始まると同時に僕の音を流し込んでいく。皆で演奏をしているとあっという間に三十分は終わっていた。部屋の片付けを済ませパーティーの準備を始める。準備を終えてそれぞれが席に着くとパーティーは始まった。

 

「「「「「友希那(さん/お嬢様/湊さん)誕生日おめでとう(ございます)」」」」」

「皆ありがとう。これからもよろしく」

「じゃあ毎回恒例のプレゼントから始めましょう!」

 

 テンポ良くプレゼント譲渡会が始まると皆持ち合わせてきた物を取り出してお嬢様に渡していった。季節柄マフラーを渡す人や手袋を渡す人がいた。尚、今回も大丈夫だ。お嬢様の誕生日プレゼントは先月から考えてきた。今年は寒波も予想されると言ってたので温かいものにしようと既に買ってある。他の人とも被らないよう調整はしたので問題はない。

 

「次新兄だよ〜!」

「白金さんの時は大丈夫でしたし今回も大丈夫でしょう」

「やっぱりそんなイメージを保たれているんですね」

「まぁアタシのときすごかったからね」

「その時は未熟だったといっていたわね」

「ええ、ですがもう大丈夫です。お嬢様、改めまして誕生日おめでとうございます」

 

 持ってきていた紙袋を渡して自席に戻る。袋から中身を取り出しているのを見て気になってはいたのだなと思った。しかしこちらを意外そうな目で見てくる。

 

「コート?」

「はい、今年は例年より寒くなるそうですから」

「やはり成長しているんですね」

「なんで紗夜さんが泣いてるんですか?」

「親心………?」

「そんなんじゃありません!」

「ありがたく受け取っておくわ。さ、早く食べましょう」

「それもそうだね〜それじゃあいただきまーす♪」

 

 買ってきたケーキは今までに食べたことのない味だった。さすがは本場で鍛え上げてきた味なのだろう。パティシエの顔を見たときは奇しくもなったが人は見かけによらずというし、美味しいからなんでもいいだろう。

 

「少し時間あるし何かしない?」

「いいですね」

「何するのー?」

「セッションは……先ほどやりましたし………」

「なら一度やってみたかったことがあるの」

「やってみたかったこと?」

「やり方はよく知らないのだけど、王様ゲームというのをやってみたいの」

 

 王様ゲーム__くじを全員が引き、中にある印のついたものを引いた人が王様となりそれ以外の人はそれぞれ番号の書かれたくじを持っている。王様は好きな番号を指定してその人に対して命令を下せるというゲーム。

 たまにやばい人が出るから気をつけろと橋本さんに言われていたがまさかこのタイミングでやるとは思っていなかった。

 

「面白そう!やりましょうよ!」

「ですがくじがありません」

「あ、アタシ割り箸持ってるよ」

「なんで持ってるのさ」

「クラスでたまにやるんだよね」

 

 最近の女子高生はいろんな事に適用してる気がする。いや、もしかしてリサだけか?ジャラジャラと割り箸を混ぜて一人一人引かせていく。

 

「それじゃあルールは簡単、赤い印がついた棒を持っている人が王様、番号の棒を持ってる人は指示通りにするってことで」

「わかったわ。それじゃあいくわよ」

「「「「「「王様だ〜れだ?」」」」」」

 

 皆で赤い印のついた棒を持っている人を確認するとお嬢様だった。流石本日の主役、引きのレベルが違う。

 

「何なりとご命令を」

「そこまでかしこまらなくていいよ」

「そうなの?」

「あくまで……遊び…だから………」

「それで、湊さんはどういう命令を?」

「そうね、最初だし軽いものでいこうかしら。3番の人が嫌いな食べ物を言う」

「げっ、あこが3番です〜。えーっとあこが嫌いな食べ物はピーマンとか苦いものです」

 

 あこちゃんの苦手なものを聞いてまだまだ子供ね、などと言っているがお嬢様の食べるご飯には苦い野菜を入れることがある。しかしそれをいつも避けて食べているので食べるようにいっているのだが聞いてくれなくて困っている。だがたまに隠れて紛れ込ませていると気付かずに完食している。一体どちらが子供なのかわかったものではないと苦笑いをする。

 くじが回収されてかき混ぜられる。全員が一本ずつ引いて準備が整うと掛け声を揃えた。

 

「「「「「「王様だ〜れだ?」」」」」」

「やったー!あこです!」

「おっ、面白そうだね」

「わかりやすい命令でお願いします」

「ふふん任せてください。闇の堕天使たるあこが命令するのは……2番と5番があこに平伏す!」

「2番はアタシだね」

「5番は私ですね」

 

 選ばれたのはリサと紗夜さんだった。平伏すということもあって二人は膝をついて忠誠を誓うような姿勢をとっていた。意外となんでもありなんだなこのゲーム。

 またすぐに回収されて次のゲームが始まった。

 

「「「「「「王様だ〜れだ?」」」」」」

「アタシだね♪何にしようかな〜」

「今井さんなら安心できますね」

「危険なことがあるんですか?」

「たまに………ね?」

「ヘ〜」

「それよりリサは決まったかしら」

「決まったよー♪4番の人は王様に膝枕する!」

 

 はぁと軽く頭を抑えている紗夜さんを片目に見ながら自分の番号を確認する。ゾッとしながらも平然を装うことにした。

 

「4番は誰〜?」

「僕です」

「今井さん……やりますね………」

「こんな確率本当に当たるんですね」

「え、本当に新一なの!?」

「そうなるね。王様の命令といえど流石に恥ずかしいんじゃないかな?」

「新一、そう言って逃げようとしたって無駄よ」

「そうですよ!なんたって王様の命令は………」

「「「「絶対ッ!」」」」

 

 皆すごい息ぴったりだなと感心しながらも命令を出した本人の顔を見る。すごい赤くしてるけど大丈夫なの?命令される側よりも命令する側がこうなってしまっているけど?

 

「そこは今井さんの自業自得です」

「そういうこと言わないでよ紗夜〜」

「(私が王様になればああいうことも………)諦めてください………」

「燐子今絶対何か考えてたよね!?」

「ほら、早くしなさい」

「ハハハ………僕のでよろしければ……」

 

 枕の代わりになりやすいよう足を閉じて座るとリサが恥ずかしながらも頭を太ももの上に置いてくる。寝心地はどうだと聞くと大丈夫といってきた。そういってる本人は顔を真っ赤にして抑えているけれど。

 

「では続きをしましょうか」

「え!?アタシこのまま続けるの!?」

「せっかくですから堪能していてください(?)」

「いいなぁリサ姉、寝ながらできるなんて」

「あこちゃん多分そういうことじゃないと思うよ?」

「じゃあいくわよ」

「「「「「「王様だ〜れだ?」」」」」」

「わ、私です………!」

 

 りんりんなら問題ないだろうと考えた瞬間その希望は打ち砕かれた。光を灯していた目からハイライトが消え去りニヒルな笑みを浮かべている。まるで別人を見ているようにりんりんの表情は変わっていた。

 

「では………今井さんはこれから30分間、立て札をかけて正座で……お願いします……」

「どうしたの燐子、なんか怖いよ!?」

「駄目よ燐子、番号で指定しなくては」

「そ、そうだよ。王様ゲームは番号で指定するんだから羨ましいならそう言えばいいのに」

「では……3番の人お願いします……」

 

 僕の膝を枕にしているリサのくじを見てみるとそこには3と書かれていた。さっきまで余裕そうな顔をしていたリサの顔は一気に青ざめていった。むくりと起き上がると急いで部屋を出ていく。しかしここでりんりんから恐怖の一言が放たれた。

 

「ダメですよ今井さん、逃げたら………王様の命令は………?」

「絶対ッ!」

 

 絶対の一言により捕まったリサはミニホワイトボードに【私はやましいことを考えました】と書かれ、首から下げた状態で正座をしている。少し涙目になりつつも反省していますというような格好に少し笑えてきた。王様ゲーム、なかなかの趣向の遊びだなと気を引き締めると次のラウンドが始まった。

 

「「「「「「王様だ〜れだ?」」」」」」

「やっと私ですね」

「紗夜さんってことは何かきついことやらされるんじゃ………」

「私をなんだと思っているんですか。そうですね……では次の王様は本当の王様になりきってもらいましょう」

「あら、意外ね」

「たまにはこういうのも悪くないんじゃないでしょうか」

 

 次の王様自身に命令を下すとは、ある意味呪いみたいなものだよね。

 

「でも……王様に命令するのって……アリなんですか………?」

「王様も番号みたいなもんだしいいんじゃない?」

「ですがこれではルールに抵触してしまいますね………では今1番を持っている人が王様になった時でいいでしょう」

「あ、僕ですね」

「優しそうな王様になりそうだね」

 

 まぁ大丈夫だろうと思い次のラウンドを始める。

 しかし、フラグというのはいずれ回収されるものだった。

 

「「「「「「王様だ〜れだ?」」」」」」

「あっ、僕ですね」

「こんな展開もあるものですね」

「じゃあ新兄、王様になれ〜!」

「もうなってるけどね。それじゃあ先代(?)の王様の命令を実行します」

 

 一度深呼吸をしてから足を組んでゆっくり目を開いた。

 

(何、この空気の重さ……!?)

(これが名護さんの演技………)

(く、苦しいよ………)

(も、もしかして………)

(本気になっちゃってる………!?)

「では命令を下す。2番は今日一日敬語を禁止する」

「は、はい………」

「し、新一、もう………いいよ………」

「うん、わかった」

 

 いつもの表情に戻すと皆が一気に息を吸い込む。そんな呼吸我慢して何してたんだろ。←コイツのせい

 

「っは〜。まさかあれ程とは………」

「息止まるかと思った〜」

「皆普通に呼吸してよかったのに何してるの?」

「あなたの威圧がすごかったのよ」

「ははは、お戯を」

「結構……本物だった………」

「本当だよ〜……あれ、そういえば新一って前まで………」

「王様だった………あー!」

「本物ではないけどね」

「だとしてもですよ!あんなレベルだなんて聞いてないですよ!」

「紗夜さん、敬語禁止ですよ?」

「今はそんなこと!」

「王様の命令は?」

「「「「絶対ッ!」」」」

 

 紗夜さんは下唇を噛むようにして目を逸らした。時間も時間なので片付けをして今日の日は解散になった。今日はお嬢様の誕生日パーティーだったがたまにはこうやって皆で楽しむ日があってもいいのではないのかと考える。

 家に着いて家事を済ませた後に自室にあるものを持ってお嬢様の部屋に向かう。三度ノックするとお嬢様が出てきた。

 

「何か用?」

「改めましてお誕生日おめでとうございます」

「ええ、ありがとう」

「こちらを」

「もうプレゼントは貰ったわよ?」

「もう一つにございます」

 

 持ってきた青い箱を渡してお辞儀すると開けていいかと聞かれる。どうぞと答え得るとすぐに開け始めた。中からは紫に光る宝石が出てくる。

 

「これは?」

「アメジストにございます。意味は高貴……お嬢様にふさわしいと思いまして」

「こんな高いもの受け取れないわよ」

「いえ、そこまで高くないので。もしつけるのを躊躇うようでしたら閉まってくださいませ。いずれ付けるその時まで」

「わ、わかったわ……でも嬉しいわ、ありがとう」

「お気に召されれば嬉しゅうござます。それではお休みなさいませ」

「待って」

「いかがなさいましたか?」

「今日くらいは……名前で呼んでちょうだい」

 

 前に言っていたことだろうか。少し慣れない感じもするので恥ずかしいのだが誕生日となれば致し方あるまい。誕生日の日の人の言うことは聞かねばならないだろう。

 

「……かしこまりました。おやすみなさいませ……友希那……様」

「あなた最後に様って」

 

 最後の言葉を聞く前に扉を閉めて自室に戻った。流石に主人の名前を突然呼び捨てにするのは気が引けたのでああさせて貰ったがこちらも突然言われたのでこれで勘弁して欲しい。

 でも今日は楽しかったし、久しぶりに気楽に寝れそうな気がする。旦那様、お嬢様は成長なされました。また会えた時、ちゃんと祝ってあげてくださいね。

 




尚後日紗夜さんの話によると敬語を使えないのは結構苦しかったという。

次回から新章始まります。秋ですね……

歌騎士の第一部が終わったのでアンケートとります!全部幕間のネタですけど

  • 二人のバースデーやろ!
  • パーティーしよ!ヘイセイヘイセイ
  • 誰か狂わせようぜ⭐︎
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