青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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新章開幕です。もしかしたらこの章で今年終わる………?


第五章 Noise noIse noisE
First noise それぞれの異変


 俺は気晴らしに外に出ていた。ここ最近はずっと中で遊んでたが飽きてきた。もうある程度を除けば俺より強いやつはいねぇし面白味もない。京は遊びに付き合ってくれないしあのガキは論外だ。強いて言うならアイツは強いが、もう遊びでは済まされないだろうな。適当に立ち入り禁止のビルの中に入って屋上まで行くと街の景色が見えた。

 

「ハハッ、街の明かりは綺麗なのに中身は汚れてるんだよなぁ」

「そうだな。俺はそういうの嫌いじゃないけどな」

 

 突如現れた声に体が強張った。気配すら感じなかった。てっきり俺一人だと思い込んでいたのに現れた。顔も見えない、愉快そうな年上の男の声。

 

「お前、面白そうなもの持ってんな。ちょっと遊ばねぇか?」

「へぇー…いいの?お兄さん死んじゃうよ?」

「俺は殺すつもりねぇから安心しとけ。むしろお前は大怪我しないように、な?」

「ヘッ、その言葉そっくり返すぜ!」

 

 俺はメモリを差し込んでドーパントになる。先手必勝でエネルギー弾をぶつけるとそこに男の姿はなかった。どこに行ったか辺りを見回そうとすると横から爪が飛んでくる。

 

「結構見えんのか。俺、この暗さじゃ見えずらいと思ったんだけどな」

「マジかよっ!!」

 

 ブレードで防いでいる爪がどんどん重さを増してくる。タイミングを見て脱出しなければやられると思ったと同時に今度は尻尾のようなものが薙いでくる。防御が間に合わず横腹に真っともにくらう。すぐに体制を立て直すとすぐ目の前まで来ていた。爪を掛けられる前に羽を生やして飛ぶと回避に成功した。

 この時初めて男の姿を確認した。人ではない俺たちと似たような化け物の姿。

 

「飛べるのか。コイツは面白い」

「アンタ何モンだ?ドーパントじゃねぇよな?」

「俺はファンガイアだ。ちょっとイレギュラーのな」

 

 地に足をつけて羽を無くした瞬間戦闘は再開した。ただしすぐに迫られたわけではない。床が破壊されて宙に浮く感覚を覚える。

 

「これを狙ってたのか!?」

「このタイミングで飛べるか?」

 

 男の声は落ち着いていた。それも当たり前だ。何せヤツは瓦礫を足場にして跳んできている。普段脚力を使ってから飛んでいるから空中で急に飛ぶのは慣れていない。一か八か出来るかと試そうとしたが遅かった。

 右肩に重い一撃が来る。踵落とし、跳躍力を使っての威力の加算に耐えきれずそのまま墜落する。地面に激突しトドメを刺されるかと思ったが土煙が晴れてもトドメは刺されなかった。

 

「殺ろさねぇのか?」

「言ったろ、殺すつもりはないって」

「ケッ」

「死にたがりか?」

「そういうわけじゃねぇけどスッキリしねぇだけだ」

「そうか、久しぶりに面白かったぞ」

 

 男は元の姿に戻ると暗闇の中に消えていった。天井を見上げると月明かりが差していた。景色としては綺麗だが気に入らなかった。負けたことは悔しいが圧倒的な壁を感じた。

 

「あ〜!くそっ!」

 

 俺の虚しい叫びはビルの中に響いて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 私は妹にひどいことを言った。

 

「なんでこんな………!」

「どうかしましたかお嬢さん」

「あなたは…?」

「ただの通りすがりですよ。それより何かお困りですか?」

「私は……」

「誰かを超えたい、そう思っていますか?」

「なんで、それを!」

「それならこれを使うといいでしょう。そしてこれはおまじないです。あとは、お嬢さん次第ですよ」

 

 何かを腕につけた人は小箱のようなメモリを渡してきた。小箱から視線を逸らすと気が付けばいなくなっていた。メモリの淵の部分をを押すとあとは手に取るように分かった。メモリが身体の中に入っていくとき分かった。

 ──私はもう、あの子に引けを取らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「メモリの流通が再開したぁ?」

 

 プロフェッサーに呼び出された僕達はいつも通りブリーフィングルームにいる。最初の議題がこれだ。あまりいいニュースではない。

 

「あぁ。先日快斗が倒したドーパントが一般人だった」

「この間まで園崎ってやつらの部下だったよな?」

「その通り。しかし聞き出したところ大金を出して買ったんだと」

「金持ちだなぁ」

「あくまで推測だが、夏の時のように一般人に流すことで実験をしてると考えられる」

「わかりました。こちらでも情報を集めてみます」

「こっちも探ってみるわ」

「お願いする。そして引き続き怪物どもの撃退もな」

「わーってんよ」

 

 会議が終わって僕達はそれぞれの帰路に着く。ファンガイアの生態も研究中ではあるがドーパントの変身者もバラバラだからあまり掴めていない。資金問題はそもそもメモリの値が高いからだろう。バイクを走らせながら色々と考えていると、ふとある人の姿が目に入る。

 

「あれ、紗夜さん」

「名護さん、何をしているんですか?」

「少し野暮用が……ってそういう紗夜さんは?今日は練習のはず……」

「少し事情がありまして。今から向かうところでした」

「なら乗っていきますか?その方が早く着きますよ」

「そうですね……ではお言葉に甘えて」

 

 この間まで嫌われていたと思ってたのに急に受け入れてくれたな、なんて言ったら余計嫌われてしまうだろうか。大人しくヘルメットを渡して後部座席に座らせるとしっかり僕のことを捕まえている。発進してから暫くすると声をかけてきた。

 

「名護さん、この間はすみませんでした」

「なんのことです?」

「あなたの正体を知った時です。認められないとかなんだとか言って」

「仕方のないことですよ。紗夜さんはある意味正しい。普通の人としては正しい反応でした」

「では他の人はおかしいと言うんですか?」

「そういうわけではないんですけど……悪い言い方をするとそうなっちゃいますね」

「フフ、らしくないですね」

 

 らしくない。この言葉に違和感を覚えた。それに今の紗夜さんも何かおかしい。いつもならもっと真面目に話すのに今日は笑っている。色々と整理がついたのだろうか。だとしたらこちらとしては助かるのだが。

 

「もうすぐ着きますか?」

「え、ええ。もうすぐですよ」

「ありがとうございました。またバイクに乗せてくださいね」

「気に入りましたか。それはよかったです。他の皆には少し遅れると伝えといてください」

「わかりました。それではまた後で」

 

 バイクを置きに離れた駐車場に向かう。だがさっきまでの紗夜さんの話し方がどうしても気になる。何かを隠しているような、それとも彼女自身が変わってしまったかのような。circleの目の前に戻ってくると錠前が鳴り響く。反応が目の前の建物を示している。ただ強さは一人でもやれる程度とのことですぐに連絡を取って僕がいくことになる。もちろん二人には念のためすぐに出れるようにしてもらった。

 とりあえずお嬢様達の無事を確認しようとすると窓ガラスを破って人が投げ込まれてくる。その人を受け止めて逃すと蝙蝠のようなドーパントが出てきた。こいつ自体は圭君に初めて会った時以来だろうか。

 

「君は誰?circleの中から出てくるってことは………」

「ガァ!」

 

 言い終える前に攻撃を仕掛けてきたどうやら質問には答えてくれなさそうだ。変身して対処に移行する。

 

「新一!」

「お嬢様、皆!下がってて!」

「ウガァ!!」

 

 何度か斬りつけて攻撃する。もちろん反撃がやってくるがおかしかった。まるで近接戦闘に慣れていないような感じがしたのだ。怒っているのならもう少し乱暴でもおかしくはない。けどその様子も見られない。蝙蝠だから元々近接は苦手なのだろうか?油断しているとそれは空を飛んで逃げていってしまった。

 

「逃げられちゃったね」

「皆怪我はない?」

「大丈夫よ」

「問題ない…よ」

「新一は?」

「この通り」

 

 皆の無事を確認してから先ほど投げ込まれた子を確認するといまだに意識を失っていた。だが見た限り花咲川の制服を着ているため花咲川の生徒であることが判明した。りんりんに聞くと普段素行の悪い生徒だったという。

 

「皆さんこんなところで何を……ってなんですかこれ!?」

 

 後ろから来た声は紗夜さんだった。でもおかしい。さっき彼女はcircleの中に入って行ったのを僕は見届けた。

 

「紗夜さん遅かったですね!」

「ある意味正解かもしれないけどね〜」

「でもさっき中に入っていきましたよね?」

「私が入った時には化け物がいたので急いで名護さんに伝えに行こうとしたんです」

「なるほど、確かにそれならおかしくないわね」

 

 なるほどと納得する皆。同時に全員の無事を確認すると今日は危ないから解散することになった。念のため周辺の捜索だけして僕は帰宅した。

 帰宅して数時間、お嬢様が風呂から上がると髪を溶いて欲しいと仰った。とりあえず椅子に座らせて髪を溶いていると話しかけられる。

 

「上手いのね」

「お褒め預かり光栄です。これでもブランクがありますが」

「誰かにやっていたの?」

「はい、幼い頃妹がやって欲しいと」

「そういえば妹がいると言っていたわね。……もし良かったら聞かせてくれないかしら」

「妹の事ですか?」

「ええ」

 

 お嬢様が僕の話に興味を持つなんて珍しい。僕は手を止めずに話し始めた。

 

「そうですね……希璃乃(キリノ)はとても元気な子でした。いつも僕の背中をついてきて、笑ってばかりで……髪はお嬢様に似ていましたね」

「髪?」

「はい。白くて長かったです。それ故に溶いてくれといつも言われて」

「だから慣れていたのね」

「はい。ですがその時間も次第に……というかある時を境に殆どなくなってしまいました」

「それって…」

「はい、おそらくご想像通りかと。ですが月に一度、家族の時間がありましたので、その時はやっていましたね」

「ごめんなさい」

「大丈夫ですよ。もう自分の中では整理が出来てますから」

 

 奪われたときは本当に悔しかった。体力さえあれば立ち向かっていただろう。それに殺したのは僕のようなもの。だからこの復讐は仇であり贖罪でもある。

 そろそろ良いだろうかと髪から手を離して櫛を返す。

 

「終わりました。いかがですか?」

「……自分でやるよりも清々しいのは腹が立つわね」

「申し訳ございません」

「フフッ、冗談よ。あなたの話が聞けて良かったわ。よかったらまた今度聞かせてちょうだい」

「僕なんかの話でよろしければ」

 

 部屋に戻っていくお嬢様を見届けてから後片付けをすませる。お風呂に入って部屋に戻ると引き出しを開けた。

 中には筆記用具とかが入っているが本命はそこじゃない。その中にしまってある一枚の家族写真だ。家族の事を思い出すとたまにこうやって写真をみたくなる時がある。

 ずっと見ていると少し寂しくなるのですぐにしまうけど。けどたまに見ることで落ち着ける。そしてその度に思い出せる。やることをやった僕は布団に入ってすぐに眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 危なかった。あのまま戦っていたらおそらく大変なことになっていただろう。

 ──まだ駄目だ。まだバレるわけにはいかない。あの子を越えるまで、手放すわけにはいかないのよ。それにこの力があれば他の人だって認めてくれる。

 小さな小箱を持って夜の街に出る。これも証明するためなんだ。あの日からずっとこうしているが気分がいい。

 

「ねーねー彼女♪今一人?俺らと遊ばない?」

 

 夜の街ならこういうのがいる。今の私にとっては都合がいい。だってコイツらは、私の証明のためのイケニエになってくれるんだから。

 

「フフ、悪い人」

「おっ、その反応、OKってことでいいのかな?」

「せっかくですし、遊んであげますよ」

「清楚なフリして悪い子じゃーん」

「俺こういうタイプ好きなんだよなぁ!」

 

 …せっかく楽しくヤれると思ったのにテンションが下がってきた。

 

「あれ?どったの?」

「私が、悪い子?」

「だってそうでしょ。こんな時間に出歩いてんだもん」

「あれー?もしかしてわかってなかった?」

 

 逆鱗に触れられた。もうそれだけで充分だった。

 

「それは私が許しません。あなた達の根性を叩き直してあげます」

「もしかして正義とか信じちゃってるタイプ?」

「黙りなさい」

『バット』

 

 メモリを鎖骨の辺りに挿して姿を変える。私の姿を見た男達は怯えて逃げようとする。

 失礼な人たちですね、さっきまで散々人の事をナンパしてたのに。そんな悪い人達には私が罰を与えます。あぁ、やはりこうやって悪い人達を裁くのは心地いい。風紀員の仕事ではここまで出来ない。だからこそ気持ちいい。それに満たされていく。私は持って強くなれる。そうすればあの子だって……!

 しばらくして証明のための人形は壊れてしまいました。残念です、もっと遊べると思ったのに。

 その場を離れて家に帰る。勿論お母さん達に迷惑をかけないために窓から出てきた。これさえあれば意図も簡単だ。心地いいことをした後の睡眠は最高だ。私はベッドに寝転がって腕を伸ばす。

 

「待ってなさい、これさえあればあなたを越えて見せるわ……日菜」

 

 

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