おねーちゃんに、嫌いって言われた………どこで間違えたんだろう。なんでこんなことになっちゃったんだろう。もう何もかもが分からない。一人帰る道の中何かにぶつかる。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい…」
「元気がないですね………何かあったんですか?」
目の前のスーツのおじさんは聞いてくる。けど何も言いたくなかった。それでもおじさんは目の前に居続けて何かを考える仕草をとる。
「何があったかは知りませんが、腕を出してください」
「え?」
「これはおまじないです。きっと、今貴女が抱えている問題を解決してくれますよ」
そう言っておじさんは腕を離してどこかへ行ってしまった。自分の腕を確認すると何かの差し込み口のような模様がついていた。なんだか少し気持ち悪く思えたがすぐにどうでも良くなった。そのまま重い足取りであたしは家に帰っていった。
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ハロウィンが間近に近づいた平日、いつも通り僕たちは学校へ向かった。通学路の都合上リサと夜架ちゃん、魔姫ちゃんも一緒だ。皆で話しながら歩いている。
「新様、ハロウィンはどういう仮装がいいですか?」
「そっか、二人とも初ハロウィンか」
「私は参加しないわよ」
「そうなの?」
「魔姫も仮装しなよ、絶対似合うよ〜?」
「そういうの慣れないのよ」
「では新様、私はデンジャラスなビーストの格好をして参りますわ!」
「却下で」
そんな他愛もない話をしていると目の前に水色の髪の少女の姿が見える。いつもなら声をかけてきそうなのに後ろから見てもわかるくらい落ち込んでいるのがわかった。
「ヒナおっはよ〜♪」
「あ、リサちーおはよう」
「今日も元気ないけどどうしたの?」
「ううん、なんでもないよー。あ、麻耶ちゃんおはよー」
「おはようございます日菜さん」
遠くから見ててもわかるくらい元気がなかった。一体どうしたのだろうと思いつつもリサがいるからどうにかなるかとそっとしておくことにした。教室に入ってしばらくゆっくりしていると予鈴ギリギリに京君が入ってきた。
「おはよう、昨日は休みだったけど今日はギリギリだね」
「おはようさん。昨日は事件があってな……今日は寝覚めが悪いぜ」
「お疲れ様。その様子だとあまりいい締まり方じゃなかったみたいだね」
「ああ、むしろ最悪と言ってもいいくらいだ」
そっかと話を終わらせて授業を受けた。授業中の京君はきちんと集中できておらずどこか上の空だった。彼なりに重い事件だったのだろうと気にはなった。しかし口を出して良いことではないと思ったので心のうちにしまう。
お昼休みになってお弁当を持って屋上に向かおうとすると日菜さんに出くわす。朝のように元気がなかったのでつい声をかけてしまった。
「何か、あったんですか?」
「ううん、何もないよ」
「嘘ですね」
「嘘じゃ……ないよ」
「お話、僕でよければ聞きますよ」
「え?」
「いつぞやの恩返しってことで。それに、今の日菜さんはなんて言うか、るんっ♪ってしないです」
ちょっとだけ日菜さんの真似をしながら引き摺り込もうとするとプッと笑ってくる。笑い声はどんどん大きくなるので途端恥ずかしくなってきた。
「あはは、新一君面白いね。じゃあちょっとだけ聞いてよ」
「構いませんよ」
僕達はそれぞれのお弁当を持って食堂へ行く。向かい合うような形で席に座ってご飯を食べ始めた。最初はやはり戸惑うのだろうか、と思っていたがそんなことはなかった。
「最近ね、おねーちゃんと喧嘩したんだ」
「喧嘩、ですか」
「うん。それからおねーちゃんあたしの話を聞かなくなっちゃって。今までより関係が悪くなっちゃったっていうか………」
「なるほど。確かにそれは一大事ですね」
話をしていて気づいたが日菜さんはこんなに元気がなくなっているが最近の紗夜さんはそんなふうには見えなかった。平常運転を装っているだけだろうか。いや違う、最近紗夜さんの様子が変わった。練習に対して真面目に取り組んでいたのに楽しさを重視したような感じになりつつもあった。
「どうしたら仲直りできるのかなって………」
「ふむ…こうしてみると状況が似ていますね」
「え?」
「この間は僕が同じような質問をして、日菜さんが解決策を出して」
「ホントだ!お返しとか言ってたけど前と反対の立場になってるだけじゃん!」
「いやまあお返しではあるんですけどね。ですが今回に関してはうまく動けそうにありませんね……」
「なんでー?」
「少し様子見をしておきましょう。日菜さんたちのケースはかなりの時間がかかって今に至っている。なら僕の時みたいに早くに解決できるわけではないと思います」
「そうかもだけど……」
「任せてください、少し時間はかかるかもしれないですが必ず仲直りさせられるよう手伝います」
「ありがとう!少し楽になったかも♪」
日菜さんは弁当箱を片付けてすぐに食堂を出て行った。少し気になった僕はりんりんに電話をかけることにした。思いのほかすぐに繋がる。
『…もしもし……』
「もしもしりんりん?今空いてる?」
『う、うん…大丈夫だよ……』
「それはよかった。ちょっとお願いがあるんだけどいい?」
『どうしたの………?』
要件を伝えて了承を得ることに成功した。これで少しは情報を集めやすくなった。礼を言ってからお願いして電話を切った。なんだか今探偵みたいなことしてるな。ちょっとワクワクするかも。
「探偵の仕事にしては序の序だぞ」
「いつからいたの?」
「日菜が出て行ったあたりから」
「はぁ………」
「状況は大体分かった。現状俺は何もできなさそうだからアレだが、手伝えそうなことあったら言っていいぞ」
「依頼料取らなくていいの?」
「もちろん取ってやる、お前からな」
「はいはい、ダ○ツ一個でいい?」
「すぐにそのあたり出せるあたりイケメンかよ……まぁ、ことによれば増やしてもらうがな」
「じゃあ契約成立で」
その後軽く話ながら教室へと戻っていった。
とはいえ氷川姉妹の様子が気がかりだった。落ち込んでいる日菜さんは当たり前のような状態だが紗夜さんは違う。回りに心配させないよう無理に振る舞っているのだろうか。だとしても紗夜さんの性格ならもう少し表に出てきそうな気もする。
「おい新一」
「ん、どうかしたの?」
「次お前指されるぞ」
「え、ありがとう。どこの話してた?」
「シンがアスランに対して悪態ついてるとこ」
「ごめん、ありすぎてわからない」
「フリーダム墜としたところ」
「そもそもそれ現国じゃないよね?」
あの時のアスランの気持ちはかなり複雑だっただろうなと考えながら黒板を見て状況を察した。やっぱり違うじゃんと視線を送ると口笛吹いて誤魔化していた。しかし授業中だったため教員に注意されたけど。
授業を終えて荷物の片付けをしていると日直の子に頼まれ事をされる。どうしようかと考える前に引き受けてしまった。その様子を見ていたのかお嬢様がやってくる。
「なにを話していたの?」
「今日家の用事があって早く帰らなければならないから仕事を代わりにしてほしいと」
「あなた引き受けていたようだけど」
「すみません、湊さんに聞く前に引き受けてしまいました」
「構わないわ。あなたも少しは普通の人らしく生きてみたいでしょう。けれど、あれは多分」
「嘘かどうかは分かりません。けれど頼んでくるってことはそれだけ信用があるってことです」
「人がよすぎるのは他人に毒よ」
元々練習があったお嬢様は荷物をもって教室を出ていった。日直の仕事を引き継ぎ作業を一人で進めていく。そもそももう一人はどうしたと思って教室を見渡すと誰もいなかった。外を見ると空は曇りがかっていた。一応お嬢様に折り畳み傘を渡してあるから大丈夫だろうけど気を付けて貰いたいと思う。
日誌は書いてあったのでそれを提出するついでに鍵を閉めていく。担任に渡すと仕事はすぐに終わった。
下駄箱に向かおうとすると困った顔をしているグループを見つけた。
「何かあったんですか?」
「えっ、名護先輩!?」
「なんでこんなところに!?」
「いやここ学校ですし……先輩ってことは一年生?」
「は、はい」
「って話してる場合じゃないよ!どうするの、間に合わないよ!」
「何か急ぎの用事が?」
「部活の先輩が今日練習試合なのに忘れ物しちゃって……」
道具は見つけ出せたものの間に合うか分からず焦っているといったところだろうか。打開策はないかと模索する。
「うーん、場所は?」
「花咲川です。私たちの足じゃ間に合わないからどうしようって……」
「この時間から電車で行っても無理なんじゃないかなって」
「……わかった、その荷物僕に預けてくれないかな?」
「ど、どうするんですか?」
「僕が責任持って届けるよ。時間まであと何分?」
「あと三十分ですけど、さすがに先輩に押し付けるわけには」
「大丈夫、気にしないで。その代わり誰か顧問の先生に連絡を取って。他校に入校するから許可して貰わないと」
「じゃあお願いしてもいいですか?」
「いいよ、これは何部の?」
「剣道部です!」
剣道部と聞いて一瞬不安感が走ったが気にしないでおこう。荷物を受け取って急いで下駄箱に向かう。イクサリオンを喚んで校門を出るとすぐに停まっていた。そんなに早く来るものかと疑問を覚えつつもヘルメットを被ってバイクを走らせた。花咲川までバイクなら十分で着く。これなら中に入っているものも確認できるはずだと思う。花咲川の近くにバイクを止めて走って門を潜る。しかし門を潜ると警備員に声をかけられて止められてしまった。
「君、他校の子だよね?」
「羽丘高校から参りました。名護新一です。剣道部の練習試合で荷物を届けに参りました。連絡が行ってるはずですが」
「羽丘から?来ていないが……」
「何かあったんですか?」
「君は?」
「風紀委員の氷川紗夜です。名護さん、こんなところで何をしてるんですか?」
「羽丘の生徒の届け物です」
「先程連絡を受けました。取り込んでいるから行ってくれと言われましたがまさかあなたが来るとは……通して頂けますか?」
「どうぞ」
紗夜さんに案内されて体育館の方に連れていかれる。道中でため息をつかれたがなんとも言えなかった。
「こちらで行われていますのでどうぞ」
「今更ですがいいんですか?」
「あなたが渡した方が効率的だと思いますので」
それもそうだと体育館の扉を開く。すると剣道着を着た女子達がいた。今にも取り乱しそうなくらい焦っている人がいる。恐らくあの人だろう。
「失礼します、羽丘高校から荷物を届けに参りました」
「来た!って名護君!?」
「部員の子から預かりました。これを」
「あ、ありがとうございます……」
「ギリギリでしたね。試合頑張ってください」
お辞儀だけして離れようとすると教員らしき人に声をかけられる。感謝の意を伝えられたが問題ないと答えると見ていかないかと聞かれたのでお言葉に甘えることにした。
練習試合を見ていて思ったのはどの剣もちゃんと鍛えられていることだ。日々稽古に励んでいることが見て分かる。しかし時たまこうした方がいいと自分の中で色々と案が出てくるのが厄介だった。
「名護君、正座して見なくてもいいのよ?」
「いえ、ここは武道の場。ならば郷に従うのが理でしょう」
「若いのに偉いわね~ときとして経験は?」
「多少はあります」
「今度うちの部員とやってみる?」
「ハハ、お戯れを」
「うちの子達結構強いのよ~」
「もしその縁があれば、お相手いたしましょう」
フッと笑った瞬間に乾いた音が鳴り響く。羽丘の生徒が面を打たれたのだ。綺麗に面を入れたのはどうやら花咲川の一年生らしい。一年生にしては太刀筋が綺麗だった。才能あるなと感じるとその子は座って面を外した。顔を見た瞬間はあまり信じられなかった。
「あ!シンさん!」
しかも気づかれてしまった。仕方ないので後でというジェスチャーを送って落ち着いて貰う。しかしまぁあんなに綺麗な太刀を打てるのはビックリした。音的には聞いていて気持ちよかったが。
全ての試合が終わり立ち上がるとこっちに向かって走ってくる音が聞こえる。
「シンさーん!!」
「落ち着いてイヴちゃん。道着来てるから走りづらいでしょ」
「こんなところで会えるなんて嬉しいです!もしかして稽古をつけに来てくれたんですか?」
「ううん、荷物を届けに来たついでに見学していただけ。それに今僕は道着とか持ってないから剣道は出来ないよ」
「頼んだら貸して貰えないでしょうか?」
「流石にそれはね「いいわよ」えぇ……」
「やりました!許可を得ましたよシンさん!」
何故貸すのか聞くと単に面白そうだからだそうだ。もう少しちゃんとした理由が欲しいところだがめんどくさくなったので受け入れた。道着は男子部員の方にある予備を貸して貰い装着する。久しぶりに着けた道着は少しだけ重く感じ、逆に竹刀は軽く感じた。イクサシステムが起こした慣れなのだろう。
準備運動を済ませて試合場に移る。僕とイヴちゃんの試合が始まりを告げようとしていた。