青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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Third noise 刃交じる花咲川

「では己が武士道に従い、お相手致します」

 

 結果として僕達は竹刀を構えて試合の準備体制を整える。いくら相手が女子といえど本気を出さなくては武士道に反すると言われ本気でやることを約束した。教員二人の元試合が取り仕切られる。

 

「では一本先取試合、花咲川高校若宮イヴ、羽丘高校名護新一、構え」

 

 深呼吸をしてから相手を見据える。

 

「始めっ!」

「「ヤーーー!!!」」

 

 掛け声と同時に迫り面打ち一本を決め込む。防がれることも考えたが速さを出して追いつけないように面を取った。竹刀を構えて向き直すと膝をついたイヴちゃんの姿があった。一本の旗が上げられ、立ち上がって礼をすると試合は終わりを迎えた。

 

「勝者羽丘高校!」

「お疲れ様」

「お疲れ様です!シンさんはやっぱり強いです!」

「そんなことない、と言いたいところだけどありがたく受け取っておくよ」

「でも悔しいです。いっぱい練習したのに……」

「大丈夫だよ。イヴちゃんの踏み込み、良いものだったからもしスピードを上げてなかったら鍔迫り合いになっていたかもしれない」

「そうなんですか?」

「うん、ちょっと焦っちゃった。だから気にしないでとはいえないけど踏み込みとかに自信を持っていいと思うよ」

 

 面を外したイヴちゃんの頭を撫でながら言葉をかける。実際油断していたらもう少し長引いていただろう。ただ本気を出すという約束だったので油断はできまいと気を引き締めていて正解だった。着ていた防具と竹刀を返して元の制服の姿へと戻る。

 

「シンさん、どうしたらもっと強くなれますか?」

「やっぱり日々の鍛錬かな。日々是精進、基礎こそなりて奥義となる。基本的な練習を重ねていろんな人と戦ってみるといいよ。そうすれば絶対強くなれる」

「ゼッタイですか?」

「絶対だよ」

「じゃあもしよければまた今度お相手願えますか?」

「勿論いいよ」

「本当ですか!?」

「疑わなくても大丈夫だよ。武士に二言はないって言うように嘘はないから」

「流石はシンさんです!ブシドー!」

 

 教員に帰ることを伝えて体育舘を出る。手を振ってくるイヴちゃんにちゃんと返事をしてから出て扉を閉めると錠前が鳴る。ちょうどひと段落ついたからいいもののと思いつつ開くと場所は花咲川(ここ)だった。方角を見ると本校舎の方らしい。ベルトを巻いて警戒態勢を作ろうとすると連絡が入ってくる。

 

『新一さん、花咲川で出たみたいです』

「みたいだね。快斗君今どこにいるの?」

『学校にいますけど新一さんはどこに?』

「偶然にも現場の学校にいるよ」

『それは驚きっすね。今どこにいるか教えてくれれば迎えに行きます』

 

 場所を教えて待機していると一分かからず快斗君がやってくる。2回の窓から飛び降りてきたのは驚いたけど効率がいいといえばその通りだ。反応を示す場所に最短のルートで行くと女子生徒が二人倒れていた。近くには最近見たコウモリのドーパントがいる。しかし僕の方を見ると慌てている様子を見せる。

 

「今回はドーパントか。しかもここにいるってことは」

「それは後で考えよう。倒せばわかることだしね」

「そうっすね。二人を任せていいですか?俺が足止めしておきます」

「了解、二人を置いてきたらすぐに戻るから」

「その前に終わらせる勢いでいきますよ!」

『エターナル』

 

 変身する快斗君を横に二人を抱えて校舎内に入る。意識確認をすると返事はないがちゃんと呼吸をしているあたりただ気を失っているだけだろう。そのほかに所見で見られるところ軽く見て現場に戻る。

 現場に戻ると雨が降ってきた。状況を見るにそこまで苦戦はしていなかった。しかしこの間と違い相手の動きがちゃんと戦闘に適応していた。僕もイクサナックルを装填して戦闘に参加する。

 

「おかえりなさいっす。さぁ久しぶりに二人で行きますよ!」

「そうだね、今すぐにでも終わらせよう」

 

 拳を構えて突っ込むと羽を広げて宙に舞う。そのまま上を見上げると飛んで逃げてしまった。追いかけようとする快斗君を止めて変身解除する。

 

「なんで急に逃げたんだ?これからだって言うのに」

「何か事情があったとかじゃないかな。時間とか…」

「うーん、謎っすね。雨降ってきましたしとりあえず中に入りましょうか」

 

 校舎の中に逃げるように入り込むと先ほど倒れていた女子生徒の姿が目に映る。髪を染めていて制服を着崩している。俗に言うギャルという部類の人間なのだろう。未だに気絶している。着ている制服は所々土で汚れている。

 

「この人達のこと知ってる?」

「あー、多分うちのクラスのギャルどもですね。さしてこころの世話で忙しいので喋ったことはそこまでないっすけど」

「何か悪いことしてるとかの噂は?」

「聞いてないっすね。なんでそんなことを?」

「あのドーパント、この前僕のとこにも来たんだ。その時に似たような人が襲われてて」

「なるほど。そういえば新一さんが戦闘に加わった瞬間逃げていきましたけどそれと何か理由が?」

「そこはわからない。前回は拙い戦い方だった上にすぐ逃げたし、今回は変身したら逃げちゃったから」

「どういうことなんですかね。あともう一つ気になることがあって」

「それってやっぱり」

「はい、ここにいた事っすね。普通部外者は入れないはずなんですけど……そういやなんでここにいるんすか?」

「ちょっとお届け物で」

「大体わかりました。で、それは置いといて、犯人はこの学校の教師か生徒、もしくは警備員とかの誰かになるんすよね」

「そうなるね。あまり信じたくはないけど」

「こんなところで何をしているんですか?」

 

 ギャル二人組の前で壁に寄りかかって話していると反対方向から声歩が聞こえてくる。そっちの方を見てみると紗夜さんの姿があった。さっきは気づかなかったがちゃんと風紀委員の腕章をつけている。

 

「げっ、氷川先輩」

「人の顔を見てげっとはなんですか、失礼ですね」

 

 紗夜さんがキッと睨むと快斗君は僕の後ろに隠れてしまった。

 

「まぁまぁ落ち着いてくださいよ」

「私は大丈夫です」

「ほら、快斗君も」

「無理っすよ。俺あの人苦手なんすよ」

「なんでさ、あの時は普通に喋ってたじゃん」

「いや、あの時は少し調子に乗ってたというかなんというか……俺あの人に目付けられてるんすよ」

「それはなんで」

「それは後々話しますよ。でもちょっとだけでいいんで後ろにいさせてください」

 

 無理に出そうとすると時間がもったいないと思い断念する。紗夜さんの目は相変わらず睨んだままだが話を再開することにした。

 

「全く、こんなところで何をしているんですか?それにその人たちは?」

「それがですね、先程までドーパントがここに現れてて撃退したはいいものの何が目的だったんだろうと話し合っていたところです」

「ドーパントって、例の怪物ですか!?」

「そうっす。それで前回新一さんが戦った時と状況を比べて似ている点を探してたんですよ」

「待ってください、それではこの学校の誰かが怪物になってるってことですか!?」

「残念ながらそうなります」

「二人はなんで落ち着いてられるんですか」

「ドーパントになる人は大体恨みとか妬み、その他負の感情が強い人が多いらしいので…」

「そうなると学校の誰かがなってもおかしくないんすよ。なったらなったでちょっとめんどくさいんすけどね」

 

 理解したのかため息をつきながらこっちを見てくる紗夜さんは再び口を開く。

 

「とりあえず状況はわかりました。それでその人たちは……ってこの子たち」

「知り合いっすか?」

「ええまぁ。よく服装チェックで引っかかってるので注意しているんですが治らなくてですね」

 

 快斗君を睨む目が強くなる。なるほどそういうことか。確かにある程度着崩しているし風紀委員として見逃せないのも無理はない。でも怖いなら治せばいいのに。

 

「いや、制服真面目に着ると本職感出てきて楽しめないんすよね」

「それは少しわかるかも」

「何を話しているんです?」

「「イヴェッ、マリモ」」

「とりあえずしばらくは警戒が必要ですね」

「ですね。紗夜さんは何かあったら連絡してください。学校にいる時なら快斗君に頼めばどうにかしてもらえると思うので」

「任せてください!」

「大道さん頼りにしてますよ」

「う、うっす」

「なんでそんな反応するんですか!」

「そういえば快斗君こころさんは?」

「先輩たちに頼んで先に帰らせました。その方が安全なので」

「それは安心だ」

「とりあえず先輩たち呼んでこの人たちに事情を聴いて貰いましょう。そんで俺たちはここで解散で」

 

 快斗君の言葉に同意して僕達はその場を離れた。念のため紗夜さんに何故いたか聞くと風紀委員の仕事がようやく終わって帰ろうとしていたところだとか。

 帰ろうと外に出るとさっきまで降っていたはずの雨は止んでいた。

 

「通り雨だったんですかね」

「みたいですね。では今日は練習がないので私はここで」

「待ってください、送りますよ」

「ですが名護さんはお仕事が」

「それとこれは別です。あんなことがあった後で女の子を一人で帰らせるほど僕は冷たくありませんよ」

「そうですか?ではお言葉に甘えて……」

 

 バイクのもとに行きヘルメットを渡す。僕もヘルメットを装着すると早くしてくれと急かすように声をかけてくる。この間のような遠慮よりかは楽しみにしてる子供のような声にも聞こえた。

 

「それでは目的地は紗夜さんの家で大丈夫ですか?何処か寄りたいところとかあれば」

「いえ大丈夫です。運転よろしくお願いします」

「畏まりました。しっかり捕まっててくださいね」

 

 エンジンを起動してバイクを走らせる。雨は止んだものの水溜まりが所々にあるのを見て滑らないよう気を付けて走る。

 

「運転上手ですね」

「お褒め預かり光栄です。気分はどうですか?」

「かなり良いです。これから毎日送り迎えして貰いましょうか」

「それはお嬢様に怒られてしまいますので」

「そうですね。失礼しました」

 

 …やはり様子がおかしい。普段ならこんな冗談を言わないのに。気を紛らわせようとしているのだろうか。

 

「紗夜さん、最近困ったこととかありました?」

「何故急にそんなことを?」

「なんとなくです」

「珍しいですね。普段ならちゃんと理由を持ってくるのに」

「そうですか?僕でも直感は使いますよ。それでどうなんですか?勿論話したくなければ大丈夫ですけど」

「いいえ、大丈夫です。最近学校の風紀が乱れてる気がして」

「なるほど」

「特に服装の乱れが多いんです。さっきの被害者たちもそうですが大道さんも少し……」

「確かにそれは風紀委員として見逃せませんね。快斗君には少しだけ言っておきます」

「ありがとうございます。すみませんなんだか……」

「そんなことありませんよ。さて、着きましたよ」

 

 バイクのスピードを下げてマンションの前に停車する。場所は一度行ったことがあるから覚えていた。よく覚えていたなという目で見られたが気にしないでヘルメットを受け取りバイクの中にしまう。

 

「ありがとうございました。今度お礼をさせてください」

「お気になさらず、紗夜さんも何か分かれば教えてください」

「はい。それでは失礼します」

 

 ヘルメットのシールドを下ろしてバイクを再び走らせる。まさかりんりんにお願いした初日に紗夜さんに会うことになるとは思いもしなかったけど情報は得られた。

 やはり紗夜さんに何かあったと考えられる。日菜さんと喧嘩しただけなら多分あのようにはならないと思う。約半年しか見ていないがそれくらいは分かる。であれば彼女を変えたキッカケはなんだろうか。姉妹喧嘩に上乗せできる要素、過去に何かあったことが今に繋がっているのだろうか。そういえば紗夜さんの過去はあまり聞いた事がない。日菜さんに対して嫉妬がある?くらいのことは聞いたことはあるが。

 家に着いてバイクから降りるとスマホが鳴る。掛けてきた相手を確認するとりんりんだった。

 

「もしもし、名護新一です」

『し、新君……』

「りんりんだよね?もしかして今日の分の報告?」

『う、うん………』

「話すの苦手だったらチャットでも良かったのに。でもありがとう」

『ううん、大丈夫……それでね、今日見てた感じなんだけど……氷川さん、ここ最近調子がいいみたいで……』

「普段との変化とかあるかな?いつもならこうなのにとか」

『笑顔が増えたような気がする………かな。そういえば……委員会の仕事をしてる時、溜息ばっかりしてるような………?』

「なるほど、ありがとう。助かったよ」

『うん………!』

「もしよければこのままあと数日だけお願い出来る?ちゃんと報酬は用意するから」

『い、いいよそんなの』

「いやいや、これは個人のお願いだから当たり前のことだよ。欲しい物とかあったら考えといて、基本的にはなんでも用意できるから」

 

 りんりんから返事が来る前に電話を切る。多分あの子はいい子だから遠慮するに違いない。だから断られる前に電話を切った。反省はしていない。

 あとは明日また日菜さんに話を聞いて仲介役としての仕事をこなしますか。そう言って僕は家に入り今日の残りの仕事をした。




小ネタ情報
大道快斗は実は紗夜さんが苦手。風紀委員の仕事でよく目をつけられ快斗はその度に逃走している。尚、花咲川のガールズバンドをやっているものの中で苦手な人物は紗夜以外にもう一人いる。

「だって怒ったあの人怖えんだもん!」
「こんなところにいたんですね!大人しく捕まりなさい!」
「いやあああああああ」
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