青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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Seven noise 引き裂く雷

「若い子たちがこんな雨の中何をしているんですか?」

 

 この場に似合わない声は声を弾ませて問いかけてくる。声がする方を向くと黒い傘を刺したスーツの男が立っていた。服装や立ち姿から見て中年紳士といったところだろうか。しかし表情は心配しているのではく愉快なものを見ているような顔だった。

 

「お気遣いなく」

「そうだ、すまねぇがアンタには関係n「おじさん?」日菜、知り合いか?」

「うん。前に一回だけ会ったんだけどおまじないをくれたの」

「覚えてくれてたんですね。嬉しいです」

 

 紳士はそのままこちらに近づいてくる。近づいてくると穏やかな表情からは考えられない悍ましさを感じる。本能的に構えを取ろうとすると小さく右手を上げてくる。

 

「その様子だと願いは叶いそうですね。せっかくですから、おまじないを完成させる手伝いをしましょう」

「どういうこと……?」

 

 満面の笑みを見せた男は上げた右手の袖から小さいものを取り出し軽く握った。

 

『ウェザー』

 

 手にあるものがガイアメモリだと分かった時には既に時遅く、メモリは首元に挿さっていた。みるみるその姿を怪物に変えるといつしか見た白いドーパントになっていた。

 

「まさかテメェ!」

「井坂深紅郎…!」

「覚えていてくれて光栄だよ仮面ライダー諸君。さぁ、有言実行と行こうか!」

 

 持っていた傘を放り投げその手を上に掲げると黒い雲が僕たちの頭上を覆う。僕と京君は咄嗟に変身してそれぞれ近くにいる子たちを庇うと紅い雷が間に落ちる。紗夜さんの無事を確認してから立ち上がり戦闘態勢をとる。

 

「邪魔をしないで欲しいな。彼女たちの手伝いをしているだけなんだ」

「これのどこが手伝いだ!」

「いやいや、彼女らが望んだことだよ。髪の長いお嬢さんは誰かを消したいと考えたからメモリを渡した。そして髪の短いお嬢さんは誰かとの仲直りを望んだ。なら答えは簡単です。お互いがお互いに殺されればいい。そうすればずっと一緒にいられますし消すことだって出来る。まさに一石二鳥ですね」

 

 意味が分からなかった。理解したくもない。ただ僕が彼に向けたのは怒りを超えた何かだった。

 

「誰かを消したいのはその人が持つものに憧れているから、つまるところ師弟愛ですね。そして仲直りしたいというのはその人との関係にある愛のせい。彼女らは自らの持つ愛の力によって動いていたんですよ」

「お前のわからん愛はどうでも良い。それと日菜に何をした」

「愛の力だからこそなせるとっておきのおまじないですよ。彼女らが姉妹だというのは思わぬところでしたがより興味深くなりました。ある種シナリオ通りです」

「貴方、一体何を仕組んだ!」

「一つの戯曲を作っただけですよ、研究者なりにね。勿論あなた方仮面ライダーも含まれているんですよ。お姉さんがドーパントとなり妹を殺そうとする。それをあなた達と言う抑止力が阻止し仲直りさせようとする。そして仲直りさせ、ある程度経った時にお姉さんに不幸が襲いそれを見た妹さんが暴走してお姉さんを殺した後に自分も死ぬ。たったこれだけですよ」

「ハッ、犯罪者検定一級でも取れんじゃねえの?でも残念だが日菜はガイアメモリを持ってないぜ。昨日念のため確認したがな!」

「それはそうでしょう。なんせ私が最高のタイミングで渡す予定でしたから」

 

 怪物は手から今までに見たことのないメモリを取り出した。メモリの頭の部分にはまるで蝙蝠の羽のようなものがついている金色のメモリ。ぷらぷらと揺らすと日菜さんが腕を引っ込める。彼女らを守るように前に並ぶと男はそれを隠す。

 

「まぁ少なくとも今ではないでしょう。ですが仮面ライダーの諸君にはここで退場してもらいましょう」

「そんなこと出来ると思う?」

「挙げられた舞台には最後までいる派なんでな!」

 

 京君が銃撃すると白い怪物の前に黒い影が現れて全て弾いた。それは一度剣を大きく振るうと京君の方に一気に近づいて金属音を鳴らす。

 

「なぁ京、相手してくれよ。俺は今、腹の虫の居所がすこぶる最悪なんだ!」

「獅郎!?今はお前の相手をしている場合じゃない!」

「知るかよ!」

 

 京君はそのまま皇に連れていかれこの場には僕と怪物と氷川姉妹が残った。イクサカリバーを構えて切り込む準備をする。守りながらの戦い、できる限り彼女らに危害を与えないように配慮しなければならない。しかしここは狭い路地裏でそこまでうまく立ち回れるかと聞かれると正直五分五分といったところである。だがそんな悠長なことを言っている場合ではなかった。

 

「貴方の目的は何ですか?」

「ガイアメモリの研究ですよ。人の心がどれだけガイアメモリの可能性を見せてくれるのかのね」

「斬ります、覚悟してください」

「今のあなたに私は斬れません。私がここから一歩も動かなくてもね」

「舐めたことを!」

「待っていたぞ!この瞬間()を!!」

 

 走り出した瞬間に聞こえた声は上から降ってくる。それは僕に直撃し押し潰そうとしてくる。イクサカリバーでなんとか防ぐものの振り下ろした剣の扱いが上手いのか重さが徐々に増してくる。何処のどいつだと顔を見ると知っている顔がそこにはあった。その事実が受け入れ難く下唇を噛む。

 

「……どうして、どうして貴方がここにいるんですか!宗方さん!」

「そんなもの決まっているだろう!全ては貴様と死合うためだ!」

 

 重さをうまく受け流して壁の方に投げると受身を取って着地する。相手は日本刀を一振り握った武人。鎧という鎧はつけておらず武将のような格好をしている。

 宗方 武仁(ムナカタ タケヒト)──執行部隊において単独行動権が許された数少ない人の一人だ。武器は日本刀以外使わないことからミスター武士道とも言われていたがその剣捌きは常人の領域からかけ離れていた。幾度か交わったことはあるがどれも時間切れにより引き分けで終わっていた。つまり一度も負けたことなく勝ったことのない相手であるということ。

 

「何故そんな!」

「貴様は俺と俺との決闘を捨てていった。しかしそのようなことはあってはならない!我々は戦わねばならない、そう俺の武士道が叫んでいる!」

「今は退いてください!そのことについてはのちに埋め合わせをします!」

「そうして逃げることは許さぬぞ!」

 

 日本刀の剣撃は止まらず僕とウェザーの距離を離していく。ツケが回ってきたのだと感じながらもどうにかあの男を止める方法はないかと横目で見ると男は右腕を空に上げていた。なんの構えだと気をとられると前からの薙ぎ払いに当てられる。受け身をとって地に手がついた瞬間、暗雲が頭上に来る。それは広範囲的に広がり僕目がけて赤い光を放出する。気づいた時にはすでに遅くその雷をまともにくらう。

 

「流石に油断していましたか」

「貴様、どういうつもりだ」

「はて?なんのことですか?」

「俺の決闘に水を差すとはどういうことだと聞いている!」

「今回の作戦は再起不能にすることだと伝えたでしょう?手段は選ばないと」

「そんなこと聞いていない!こんな事なら俺は帰る」

 

 宗方さんは刀を一度振り下ろし刃を納めると路地裏の外へと行った。予想外の出来事に混乱を隠せず、さらにはダメージを負ってしまい上手く動くことができない。それでも立ちあがろうとすると白い男は手を叩いて高らかに笑う。

 

「流石はあの英雄だ。データでしか知りはしなかったがこれほどとは。なるほどなるほど、ならば少しシナリオを書き換える必要がありそうですね」

「何を………っ」

「絶望をより深くするんですよ。その為にもこの子は貰っていきますね。後で招待状を送らせていただきますよ」

 

 男は日菜さんに近づき腕を掴むと雲を発生させて消えてしまった。辺りに一帯の雲が晴れた時この場には僕と京君と紗夜さんしか残っていなかった。紗夜さんが落ち着いていられるはずもないと考えると意外にも静かだった。紗夜さんの方を見ると彼女は意識を失っていたのか倒れていた。ボロボロになっている体に鞭を打って立ち上がらせ弦巻家と連絡を取る。すぐに回収班が来て僕達を連れて弦巻家に連れて行った。高城さんのいるところに着くと怪我の処置を行いながらもブリーフィングが始まった。

 

「白いドーパント、夏の時に現れた井坂というやつがウェザードーパントとなって俺たちに襲撃を仕掛けてきた。当然止めようとしたが獅郎を含む伏兵に足止めされた俺たちは日菜を連れ去られた」

「そんなことがあったのかよ」

「お前そん時何してたんだよ」

「別の場所にドーパントが出てた。倒しはしたけどソイツ結構強かったからもしかしたら」

「ああ、おそらく快斗の足止め用に用意されたんだろう。しかし君たちがやられるということはかなりの戦闘能力だぞ」

「ウェザー、天気の力を持っているんでしょう。実際それでやられましたし」

「さて、状況はだいたい理解した。問題は氷川日菜をどうやって奪い戻すかだ」

「それに関してはおそらく向こうから動いてくれます」

「どうしてっすか?」

「去り際に言ってたことだな」

「うん、招待状を送るって言ってたから多分罠を張ってる舞台に立たされる」

「そう言ってる間に届いたみたいだね」 

 

 プロフェッサーは電子キーボードをピピピッと叩くとモニターに白い画面が映される。そこには電子で書かれた文字が羅列してあった。

 

『明日12:00に羽丘スタジアムにてシナリオの終幕を迎える。招待状についている案内に沿ってくるように』

 

 全員が読み終えると次のページに移り地図が表示された。スタジアム本体とその周りの駐車場に赤い線が引いてある。地図を見る限り罠が仕掛けられていることは確定だろう。

 

「この情報ってどこから届けられたんだ?」

「どこから侵入したのかは知らないがその分キツイ仕返しはしないとだね。さてライダー諸君、君達はどうしたい?」

 

 答えは言わずもがなといったところだった。二人の目を見るとやる気に満ち溢れていた。

 

「勿論行きます」

「くっだらないことしてくれたんだ礼はしてやらねぇとな!」

「黙って引き下がれるほどの器ではないんでな!」

「じゃあ作戦会議といこうか」

 

 それからしばらくそれぞれの意見を出し合い乗り込むための作戦を話し合った。順序まで完成してあとは明日に備えるだけの状態になった時少しだけ追加事項を提案すると快く受け入れてくれたので三人に感謝した。会議も終わった事で部屋を後にして紗夜さんのところに向かった。この前とは違いちゃんとした部屋にいるらしい。部屋の前で待機していた黒服さんに許可を取り部屋に入る。

 

「大丈夫ですか紗夜さん」

「今はなんとか落ち着きました。ですが名護さんは怪我をしてらっしゃるじゃないですか」

「仕事柄仕方ないことなので致し方ありません。それより紗夜さん、提案があります」

「なんですか?」

「明日、日菜さんを迎えに行きませんか?」

「え?」

 

 キョトンとする紗夜さんに今までの経緯と作戦内容を伝える。当然戦場の中に連れて行くことを話すと表情が変わった。

 

「──ということです。どうしますか?」

「今更、あの子が許してくれるでしょうか?」

「は?」

「私は、あの時動けなかったんです。あの子にあの怪物が迫ってきているのに守ってあげることすら出来ませんでした……」

「それは仕方ありません。相手は普通理解し難いものですから」

「私はあなたに教えられて罪と向き合うことが出来た。けれどあのことはまだ向き合えていません。なのにそんなことをして」

「ならいっそ、全部ぶちまけた方が早いんじゃないですか?」

「………どういう意味ですか?」

「助けたかった気持ちも疎ましかった気持ちも全部伝えてその上で謝罪すればいいじゃないですか」

「ですがそんなことして」

「やってみなきゃわからないじゃないですか。それに結局どうするかは貴女次第ですから僕は提案することしか出来ません。だからこれ以上はその件に関しては手を出しません。だから聞きます。紗夜さん、共に行きますか?それともここで帰りを待ちますか?」

 

 手を差し出すと戸惑う表情を見せる。だがそんなに経たない内に彼女は僕の手を掴んだ。

 

「行きます。私にあの子を救わせてください」

「畏まりました。この手、必ず日菜さんに差し出してあげてください」

 

 この後のスケジュールを伝達して僕は部屋を出る。残りの時間を翌日きちんと動けるようにするために軽く体を動かしたり落ち着いていられるようにと色々とやることをやって時間を過ごすことにした。決戦前夜、何度この機会が訪れてもこの緊張感だけは変わらないものだと静かに感じた。

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