IF:ZERO-ONE VS ZO   作:TAC/108

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A Part-1

「ダァッ!」

気合の声と共に、鋼と鋼の激突する音が響く。早朝の飛電インテリジェンス本社ビル前で、不破諌/仮面ライダーバルカンとドラスマギア改めドラス02(ゼロツー)の戦いは続いていた。

バルカンの得物はアタッシュカリバー。本来は飛電(ひでん)或人(あると)/仮面ライダーゼロワンが用いる近接戦闘用の装備だが、変身能力を失った或人の意向により不破に貸与されることとなった。

対するドラス02は徒手空拳。特別な能力は一切使わず、ただ純粋な性能(スペック)のみで戦っていたが、それでもバルカンの猛攻を軽々と凌ぎ切る。基礎性能で遥かに上回る以上、バルカンが勝る可能性など万に一つも存在しない。それがドラス02の電脳が弾き出した冷酷な試算であった。

上段からの振り下ろしを左腕で防ぎ、空いた右手でバルカンの顔面を殴りつける。自動車の衝突にも勝る衝撃を受けて、バルカンの視界が歪んだ。青く光るバルカンの左眼に灰色のノイズがかかる。

「テメェ……やってくれるじゃねえか……!」

左半身の制御が僅かに狂ったことを察知し、両手持ちにしていたアタッシュカリバーを右手だけで構え直す。アタッシュカリバーがある分リーチではバルカンが上回るが、逆に言えばバルカンがドラスを上回るのはその一点のみ。形勢が彼の優位に傾いたことは全くない。

 

制御システムの完全復旧まで3分はかかるだろう、と不破は直感していた。それは『圧倒的な強さを誇るドラス02を相手に、3分間持ち堪える必要がある』という意味である……本来ならば。

しかし、不破諌という男は良くも悪くも()()ではなかった。

「3分か……やってやる」

視界の左半分がノイズに霞む中でも、彼の声色から闘志が消えることはなかった。姿勢制御のズレた回転跳躍から、アタッシュカリバーの刃を振り下ろすと、ドラス02の防御に弾かれる。衝撃にカリバーを手放し、無防備の腹に貫手が突き刺さる——かに思われた。

「ぬうッ!?」

ドラス02の右眼から火花が散った。後退しつつ眼前に視線を動かすと、右手だけでエイムズショットライザーを構えるバルカンの姿があった。僅かな一瞬でベルトに固定したショットライザーを外し、至近距離とはいえ精確に一射のみでドラス02の右眼を撃ってみせたのだ。

「お前……」

ドラス02の電脳が未知の揺らぎを知覚する。『ドラス02』として技術的特異点(シンギュラリティ)……自我の獲得を成した彼は、人間的な感情をデータとして認識できる。しかし、この時のドラス02は、自らの内に芽生えた情動の正体についての回答を保留した。

明確な結論を出すためには、データが不足している。それがドラス02の答えだった。

 

バルカンは左手にショットライザーを持ち、空いた右手で地面に突き立ったアタッシュカリバーを引き抜いた。一刀一挺を以て異形の二刀流と成し、身を低くして両手を大きく広げた。

「仕掛けてこないなら、こっちから行くぞ!」

地を這うような高速移動で距離を詰め、バルカンが重さに任せてカリバーを振り下ろす。剣の一撃は避けられたものの、回避地点を予測してショットライザーで射撃すると、ドラスの脇腹に弾丸が突き刺さった。

ドラスは弾を脇腹から引き抜くと、潰れた弾丸を手指の力だけで球状に変形させ、指で弾いて撃ち出す。即席のベアリング弾はショットライザーから射出された際よりも速く飛翔し、バルカンの胸に着弾した。尋常ならざる弾速が驚異的な威力を生み出し、バルカンの身体が大きく仰け反る。

「ぐっ……ぬぬ……ハァッ!」

仰向けに倒れ込みそうになった身体が、気合の一声で踏み止まる。バルカンは手首のスナップを利かせてアタッシュカリバーの刀身を畳むと、腰を低くして攻撃の体勢に移った。

『チャージライズ!』

攻撃を阻止するために動いたドラス02の右足をバルカンがショットライザーで撃ち抜き、続けて連射しながら牽制をかける。生じた一瞬の隙に、青と黄の燐光を纏うアタッシュカリバーが抜き身を晒した。

『フルチャージ! カバンストラッシュ!』

縦に振り下ろす一撃が黄色の光刃として飛び、横に薙ぎ払う青い光刃が追従する。反応が僅かに遅れたドラス02に交差する二発が直撃し、鋼鉄の身体が爆煙に包まれる。

煙が晴れると、そこには無傷のドラス02が立っていた。

「こんなモンじゃ足りねえか……」

仮面の下で不破が呟いた。頭部システムの復旧率は70%を超えている。左側の視界が徐々に色を取り戻し、怒りを湛えたようなドラスの顔面を明瞭に捉える。

ドラス02はこの時初めて、単身のバルカンに対して構えを取った。両手を下ろし脱力した直立姿勢ではなく、明確に格闘戦を目的とした体勢となり、全身のエネルギー供給量を上昇させる。

「もうお前には、容赦しない」

至高の生命たる己に、眼前のライダーが傷をつける可能性を認めたことが、ドラス02に芽生え始めた誇りにヒビを入れた。溢れ出す感情の正体を、ドラスは理解した。

純粋な『怒り』だった。鋼鉄の顔面は表情を変えることなく、しかしながら確かにバルカンに怒りを伝えている。

「上等だ、こっちも全力でやらせてもらう」

『ブリザード!』

バルカンは水色のキーを起動させると、アタッシュカリバーが備えるスロットに装填した。空気すら凍る冷気が刀身から生じる。

『Progrise key confirmed. Ready to utilize.』

『Polar bear's Ability!』

『ブリザード』の能力(アビリティ)を持つフリージングベアープログライズキーを読み込ませ、刃を通してその力を発揮させる。その場で行った回転斬りの勢いを乗せて、アタッシュカリバーから冷気を纏う光刃が放たれた。

『フリージングカバンストラッシュ!』

横薙ぎの一閃をドラス02が手刀で叩き折るも、二つに割れた凍刃が軌道を変えて宙を舞う。迎撃しようとした次の瞬間、ドラスの目にアタッシュカリバーの刃が映った。

「何だと!?」

ドラスが驚愕の声を漏らす。凍刃が己に命中する可能性があるにもかかわらず、バルカンが接近戦を挑んできたからだ。

不規則に軌道を変えながら、二つの氷晶が飛翔する。直撃を避けるために回避動作が小さくなったドラスに対し、バルカンが強引に斬撃を当てる。肩口を深々と刃が抉り、触れた先から内部機関が凍結する。氷の刃は当たる寸前で砕け散り、無数の弾丸となって二人に突き刺さった。二人の両脚が凍りつき、至近距離からの移動を完全に封じる。

「ぐうッ……まだまだァッ!!」

冷気と激痛に苦悶しながら、バルカンがアタッシュカリバーを両手で強く押し込む。ドラスの胴体を刃が引き裂いていく。

「なぜこのようなマネを——」

「この距離なら剣だろうと弾けねえだろ……ハァァーッ!」

切開された胸に右手を突き入れると、掴み取った何かを勢いよく引きずりだした。氷に覆われたアタッシュカリバーを強引に引き抜くと、その拍子に両脚を封じていた氷が砕け散る。疲弊した様子のドラス02を蹴倒してから、バルカンは引きずり出したそれを——暗い灰色のプログライズキーを確認した。

「お前、そのキーは……」

「まずは一つ目、取り戻させてもらったぜ」

 

昨日、飛電インテリジェンス本社前の戦いで奪われた、パンチングコングプログライズキー。それがバルカンの手元に再び戻ってきたのだ。

「おのれ……人間ごとき、二流の生物が……」

ドラスの全身から光が洩れ、力を大きく減退させる。パンチングコングのデータこそ手に入れたが、キーの生み出す力を失った以上、弱体化は免れ得ない。

「返してもらうぜ、俺達から奪った全てをな!」

アタッシュカリバーを地面に突き立て、バルカンがパンチングコングキーを起動した。

『パワー!』

『オーソライズ!』

ショットライザーに装填されたキーを差し替え、装備を圧縮した弾丸を撃ち放つ。

 

『ショットライズ! パンチングコング! Enough power to annihilate a mountain.』

 

弾丸を裏拳で粉砕すると、青い装甲が素体諸共組み替わり、屈強な上半身を持つ黒いパワードスーツを形成した。装甲の隙間から熱気を放ち、纏わりついた氷が一瞬で蒸気に変わる。鉄塊の如き巨躯が煙を吹き上げる様は、さながら蒸気機関車めいている。

仮面ライダーバルカン・パンチングコング。山すら吹き飛ばす双腕を携え、怪力の王が戦場に舞い戻った。

「行くぞドラス……()()の力を見せてやる!」

 

つづく。

 

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