IF:ZERO-ONE VS ZO   作:TAC/108

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B Part-2

マギアの一団が高層ビルを飛び回る。群れを成す虫のように、黒々とした塊が建造物の合間を飛び移っていた。突如出現した巨象すら、この一群にとっては対岸の火事も同然である。

集団に追われていたのは二人の若い男だった。滅亡迅雷.netの幹部、滅と迅である。極めて高い戦闘能力を持つ二人は、雑兵程度ならば変身せずとも相手にできる。

 

とはいえ。

「飽きてきちゃったなー。そろそろ変身しようかな」

ビルの屋上に着地しつつ、迅は遊びに飽きた子供のように呟いた。飛びかかる一機を刀で斬り飛ばしながら、滅が無表情に返す。

()()()()もこれまでか。ならば——ん?」

ヒューマギアとしての機能が、風を切る音を滅に伝える。類似する音の波形は、旅客機の飛行音だった。次の瞬間、二人の視界に巨大な影が落とされる。

「ほう……ついに現れたな、ゼロワン」

影を落とす者、その正体を察して滅は口元を歪ませる。高速で飛行する巨大戦闘機、ゼロワン・ブレイキングマンモスが彼らの頭上を通過していった。

凶悪さを滲ませる笑みを作りながら、懐から奇妙な装置を取り出した。ジャッキを思わせる機構を備える、黄色と黒の小ぶりな機械を腰に据えると、()()()()()()()()()が出現し、ベルトを形作る。

 

『フォースライザー!』

 

「ゼロワンも来ちゃったね、じゃあ僕らも——やろっか!」

遅れて同じ装置を着用した迅が、拳銃をホルスターに納めてからマゼンタのプログライズキーを起動させた。滅も静かに納刀し、前方に立つ一機に刀を投擲してから紫のキーを手に取る。硬質な鞘が正確に一機の腹を貫くと同時に、二つのキーが自らの能力を示した。

『ウィング!』

『ポイズン!』

展開もしないままにベルトに装填するや否や、ベルトが低く禍々しい音を鳴らし始める。赤く発光する基部と合わせて警報を思わせる。

このベルトの名は滅亡迅雷(めつぼうじんらい)フォースライザー。古い技術で作られた、()()()()()()()使()()()()()()()()()()変身ベルトであり、プログライズキーの行使に認証(オーソライズ)を必要としない。なぜならば——。

 

「変身」

滅は、氷の如く冷徹に。

「変身!」

迅は、自由なる鳥めいて楽しげに、ベルトが備えるレバーを引いた。

 

『フォースライズ!』

装填されたプログライズキーが()()()()()()()()、二人のベルトから二体の機械獣が飛び出した。迅のベルトからはマゼンタの光を放つハヤブサが、滅のベルトからは紫に光るサソリが形成される。群がる有象無象を吹き飛ばしつつ、迅の身体をハヤブサが包み込み、滅の胸にサソリの毒針が突き刺さった。

 

『フライングファルコン!』

『スティングスコーピオン!』

 

激しく光を放ちながら二機と二頭が融合する。拘束具にも似た導線が、装甲と化したハヤブサとサソリを全身各部に固着させ、異形の変身が完了した。

迅はマゼンタの身体と、鋼の翼を持つ姿に。滅は紫の身体と、毒蠍の棘を持つ姿に変わっていた。更に滅の右手には、かつてA.I.M.S.の基地から強奪した鞄型兵装・可変弓アタッシュアローが握られている。

 

『Break Down.』

 

低く重苦しく、開戦を告げる声が響き渡る。

仮面ライダー(ジン)・フライングファルコン。

仮面ライダー(ホロビ)・スティングスコーピオン。

人類殲滅の騎士達が、稲妻よりも(はや)く戦場に降り立つ。

 

◆◆◆◆◆◆

 

誰もが空を見上げていた。

上空より影を落とす、巨大なソレを見上げていた。

戦闘の手を止め、敵味方の別なく全ての存在が空に視線を向けている。影の主は大きく旋回しながら、自身よりも遥かに大きい巨大な大機械獣に突撃を仕掛けようとしている。

「あれは……ゼロワンの巨大戦闘形態……!」

バルキリーは空を見上げながら、巨影の名を呟く。強力な援軍の出現に、彼女は我知らず胸を撫で下ろした。

直線軌道上に二機が並ぶ。ジェット噴射が猛烈な勢いを生み、狙い定めたように機首がマンモスの頭部に激突した。高速で飛行するブレイキングマンモス・高速機動形態(ジェットフォーム)の機首が、何者をも刺し貫かんとする衝角となって巨象の頭部に大穴を開けた。衝撃に地面が震えるが、同時にA.I.M.S.の隊員達が喝采の声を上げた。

衝突の直前に、空中を飛んだ小さな影があった。二つの影は突撃するゼロワンから飛び降りると、バルキリーの眼前に着地した。

「不破と……飛電の社長秘書か!?」

「半日ぶりだな、刃」

「奪われたキーは全て奪還いたしました」

バルキリーの前に現れたのは、ゼロワンの背に乗って駆けつけたバルカンとイズであった。バルカンが黄色のプログライズキーを取り出し、バルキリーに手渡す。

「ライトニングホーネット……取り戻してくれたのか」

「連中を騙すためかは知らんが、厄介なモン渡しやがって」

飛電本社ビル前での戦闘にて、唯阿が敵に奪われた……否、敢えて奪わせたプログライズキー。暴走するネオヒマギアを通してドラスに捧げられた、ライトニングホーネットの力が、再びバルキリーの下に戻ってきたのだ。

「苦労をかけたな……わざとキーを渡すような真似までして——」

「細かい説明も謝罪も要らん。俺は俺のやり方で、ヤツからキーを分捕っただけだ。今はそれで良いだろ。それよりも、せっかく取り戻したお前の力で、目の前の連中をブッ潰す。そうだな?」

「不破……わかった。ここからは私も協力しよう」

乱暴な言い方ではあったが、深く詮索しなかったという事実が、唯阿に僅かばかりの安堵を与えた。

 

空中で身を捻り、人型に変形したゼロワンがイズ達のいる方を向く。

「不破さん、イズ! 大丈夫!?」

「問題ありません。プログライズキーを取り替える場合はお呼びくださいませ」

「コッチも問題ない。そんなことより……何なんだ、アイツは!?」

前方、山の如く聳え立つ黒い影を見据えながらバルカンが言う。

漆黒の機動兵器は眼下の喧騒を気にも留めず、四脚をゆっくりと前に進める。鉄骨よりも重い脚が地面を踏みしめる度、衝撃が道路を走る。

サイズ比は巨大戦力たるブレイキングマンモスと比べても10倍近い。事実として、地に足をつけたゼロワンですら、巨象の頭部を()()()()()()

ライダーの集う一点に、新たな影が降り立つ。先程までマギアと戦っていた、麻生勝/仮面ライダーZOであった。

「勝さん!」

ゼロワンが機動兵器のコックピット越しに呼びかける。

「その声は或人君か! 凄まじい巨体だな……」

「巨体は向こうも同じですよ。それじゃ、アイツをどうやって倒すか……って、アレは!?」

物理的には誰よりも高い視点を持つゼロワン。彼だけが見つけられたものがあった。

——巨象の頭部に立つ、ドラス02の黒い影である。

 

◆◆◆◆◆◆

 

本来の形からの逸脱が見られるとはいえ、ドラスマギア……現在のドラス02は、ゼツメライズキーに保存された『ドラス』および『ネオ生命体』のデータから発生した存在である。つまり、ドラスが可能とすることが、後継を名乗るドラス02にできない道理はない。

痛ましい破壊の痕を刻んだ全身が、再び元の形を取り戻す。もっとも、姿形こそ以前のままとはいえ、今のドラス02は大きく力を減じていた。仮面ライダーから入手したプログライズキーを奪還されたドラスは、データこそ盗めても、キーの発するエネルギーを失っている。今の状態は、いわば張子の虎であった。

 

形状変化。この能力が、ゼロワンほど大がかりな移動能力を持たないドラス02を激戦の地たるビル街に、誰に気づかれるでもなく到達せしめた所以であった。

ゼロワン達が市街地に現れた巨大機動兵器——()()()()()()()()()の情報に気を取られている隙に、全身を折り畳んで小さな金属球のような姿に変身して身を隠したドラス02は、ジェットフォームに変形して目的地へと向かったゼロワン・ブレイキングマンモスの背に乗った。ゼロワンがギガマンモスマギアに突撃したその瞬間に、ドラスはマンモスの頭部に飛び移り、元の姿に戻ったのである。

 

巨象の頭部から全てを見下ろしつつ、ドラスの駆体が液状に変じていく。機体色の黒に溶け込むようにして彼が至ったのは、()()()()()()()()()()()を動力として埋め込んだ、巨大な制御室であった。隅から隅まで張り巡らされたケーブルが、赤く光りながら脈動する。背を壁につけると、独りでにケーブルが赤黒い玉座を作り出す。導線を背中から接続したドラスに、膨大なエネルギーが供給され始めた。

 

事ここに至って、ドラス02は冷静な思考を取り戻していた。

傷を癒さねばならない。滅亡迅雷.netの本拠地、デイブレイクタウンから入手した大量のマギアと、ゼロワンに撃破されたものの駆体は残った暴走マンモスマギア。二つを組み合わせて作った最大最強の兵器・ギガマンモスマギアの制御権限は、暴走マンモスマギアを生み出したドラスの手にある。

 

ヒューマギアから強大なマギアを生み出せるのなら。

より強大なマギアの糧として、()()()()()()()ことなど造作もないのだから。

 

◆◆◆◆◆◆

 

ゼロワンがドラスの消失を確認した、わずか数秒後。

眼前に立つ70メートルの巨体が、節々から赤い光を放ち始めた。頭部のカメラアイが一際強く発光し、咆哮するかのように全身から軋む音を立てる。

何かが来るという予感だけを、その場の全員が共有していた。

 

一瞬の沈黙を破ったのは、誰あろう巨象自身であった。

 

振り上げる勢いに任せ、長い鼻を最大限に伸長させると、鼻先の巨大な穴から、強烈な引力が発生し始めた。地上に散らばっていたおびただしい数のマギアを、無傷のものから微塵に砕かれたものまで無差別に穴へと吸い込んでいく。

縦幅にして3メートル前後の穴は、通気孔であると同時に巨大な吸引孔であった。マギアを優先して吸い上げるが、凄まじい引力が周囲の建築物に張られた窓ガラスすら砕いていく。ガラスの破片や窓枠をも吸い込んでなお、吸引力が変わることはない。停車していたA.I.M.S.の車両が1台、巻き込まれるように穴へと消える。

「させるかァァァーーーッ!」

雄叫びと共にゼロワンが駆け出し、下を向いた鼻を蹴り上げる。両脇に備える一対の錨を手に持つと、鎌のように振るって何度も鼻を斬りつけた。半ばまで吸われていたA.I.M.S.の車両がガラス片と共に吐き出され、吸引が止まった。ゼロワンが両手で安全に受け止め、乗車していた隊員に脱出を促す。

 

一帯を埋め尽くすほどのマギアが、半数以下にまで数を減らしていた。マギアを吸い込む巨大兵器という異様な光景と、各所で響き渡る悲鳴やサイレンが事態を混沌へと導く。

バルカンが隊員達に指令を飛ばす。負傷者の救護と、一般市民の避難援助。呼びかける声は半ば怒号であったが、不破自身は冷静だった。A.I.M.S.の隊長としての判断力が、戦闘中という熱狂の只中でさえ思考の一端に冷静さを備える一因となっていた。

 

危地にあってなお冷静さを残していたのは不破だけではない。機動力を活かし、落下する建築物の破片を砕くバルキリーは、街を駆ける中で更なる異変を目の当たりにする。

市街地に現れて以来、明確な行動を起こしていなかったネオヒマギアが頭部から触腕を伸ばして巨象の駆体を高速で登っていたのだ。触腕を錨としてあっという間に頭頂部に登り詰めたネオヒマギアは、ゼロワンの突撃で開いた穴に自らの下半身を埋め込んだ。傷口が一瞬にして塞がり、ネオヒマギアの上半身が溶けるように沈む。

「どこに消えた……?」

地上を駆けつつ見えない姿を追いかけるバルキリー。マンモスの右側に回り込み、落ちてくる破片を足場に跳躍すると、長大な背中の一部が何やら蠢いているのが見えた。

 

次の瞬間、波打つ背中を突き破るようにして巨大な装置が出現した。

イカの頭部を彷彿とさせる基部を持つモジュールの頂点から、ネオヒマギアの上半身が突き出ている。モジュールを円状に囲むのは、ネオヒマギアのそれよりも遥かに長大な触腕であった。

呼応するように巨象の胴体部分に、白い砲台が出現する。砲口の一つが煙を噴きながら白いアンカーを放つと、速度と重量が凄まじい威力を生み出し、アスファルトの路面が大きく抉れた。

 

「何なんだよアレ……マンモスがイカを背負ってるのか……?」

あまりの異常事態にゼロワンが呆れ気味に洩らした。イズは疑問と受け取り、自らの機能に基づく分析結果を伝えた。

「衛星ゼアにデータを送信したところ、あの巨大兵器の構築に使われているのは無数のマギアであるという推測が出ました。恐らく、ドラスの備える何らかの能力により、自由自在に変形する機能を実現しているのではないかと」

「じゃあ、アレも元は一体のマギアだったの!?」

「そういうことになります。そしてあの形状、原型は或人様が戦ったマンモスマギアではないかと」

自らが仕損じたことを察し、或人は激しい怒りを覚える。

マンモスマギアに改造されたヒューマギアは、元を正せば飛電インテリジェンスを守る警備ヒューマギアの一体だったのだ。或人にとっては社員も同然の存在、その成れの果てが恐るべき破壊兵器だったという事実に、トドメを刺せなかった自分と、元凶たるドラスへの怒りが湧き上がった。

 

マンモスマギアを基にして生まれた、漆黒のギガマンモスマギア。そこにネオヒマギアが合体し、黒い巨獣は更なる変身を遂げた。

黒と白のツートンカラー。マンモスとネオヒボリテス、二つの絶滅種を組み合わせた鋼の合成獣(キメラ)

古代の生命が、現代の悪夢と化して蘇る。

即ち——。

 

絶滅機動決戦形態・()()()()()()()()()である。

 

つづく。

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