二機の合体によって誕生した悪夢の如き破壊兵器・ギガネオヒマンモス。
もはやヒューマギアとしての面影などない。この世に存在してはならない怪物が、全身から破滅的な駆動音を上げてビル街を蹂躙し始めた。
緩慢ながら確実な一歩が道路を踏み砕き、全身各部に生成された砲台からは自由自在に動くアンカーが射出される。
巨象の変化を見てとったバルキリーが、バルカンに通信を繋ぐ。
「不破! アレが見えているか!?」
『見えてる! 何なんだアレは、銃撃もまるで効かねえぞ!』
通信機器越しに、ショットライザーの銃撃音が聞こえた。マギアの装甲をも貫く弾丸は、一発たりともギガネオヒマンモスを傷つけることはない。あまりにも分厚い装甲が弾丸を弾いてしまうのだ。
「私は空中から攻撃し、可能な限りヤツの足を止める!」
『なら俺は地上からだな……任せるぞ、刃!』
通信が終了すると、バルキリーの手には新たなプログライズキーが握られていた。
『サンダー!』
『オーソライズ! Kamen Rider. Kamen Rider.……』
地上での機動力に特化したバルキリー・ラッシングチーターに対し、大火力攻撃に優れるライトニングホーネット。変身に用いれば、稲妻のように飛翔するスズメバチの翼をバルキリーに与える。
ショットライザーをベルトに固定し、バルキリーが引き金を引いた。
『ショットライズ! ライトニングホーネット! Piercing needle with incredible force.』
放たれた銃弾が炸裂し、バルキリーの装甲が一瞬にして切り替わる。左右非対称の橙色から、全身を満遍なく覆う黄色と黒へ。
背中から青い光の羽を広げると、バルキリーは地面を蹴って大空へと飛び立った。その姿はまさしく、冷徹にして凶猛たるスズメバチの女王。
貫く針は、驚異的な力を秘める。
仮面ライダーバルキリー・ライトニングホーネット。
全身からミサイルを放ち、バルキリーはギガネオヒマンモスの側面部にある砲台を攻撃する。大口を開けた砲口に、スズメバチ型ミサイルを大量に送り込むと、内部からスクラップを吐きながら白い砲台が爆散した。
「一基ごとの耐久力は大したことはないな……ならば!」
ショットライザーの弾丸を弾く装甲とて、
『サンダー!』
バルキリーがショットライザーを持った右手を振り上げると、全てのミサイルが黄色い電光を纏い始めた。スズメバチの兵隊が、今か今かと女王の命令を待ち望む。
『ライトニングブラスト!』
スズメバチが一斉に降下し、ギガネオヒマンモスの全身を囲むようにして爆発した。追撃に太く鋭い針がショットライザーから射出され、マンモスの背中に乗ったネオヒマギアを守る防壁に突き刺さった。触腕が形成する白い防壁がガラスのように砕け散り、破片を通じて強烈な電撃がネオヒマギア本体を襲う。
ギガネオヒマンモスの側面部に存在していた砲台が機能を失った。バルキリーは狙いをネオヒマギアに定め、直下の目標を狙い撃つ。
「昨日の借りは返させてもらうぞ!」
◆◆◆◆◆◆
『ショットライズ! パンチングコング!』
バルキリーとの通信を終えると、バルカンはパンチングコングへと形態を切り替える。耳元に軽く手を当て、ゼロワンとの通信が始まった。
「ドラスがあのデカブツの中にいるのか?」
『不破さん!? ……ああ、そうだ。多分、今あのマンモスを制御してるのはドラスだと思う。マギアを吸い込んだのも、ひょっとしたらエネルギーを補給するためかもしれない』
或人はドラスマギアが最初に出現した時のことを覚えている。研究所のヒューマギアを喰らうようにしてエネルギーを吸収し、力を増す。ドラスマギアとしての特殊能力である。
「つまり、あの中を叩けばドラスの野郎に辿り着くわけだ」
バルカンは地上から凄まじい爆発と閃光を目撃した。バルキリーの放った大量のミサイルが、ギガネオヒマンモスの周囲で一斉に爆ぜたのだ。
「俺は地上から攻撃し、可能な限りアレの力を削る。ドラスを引きずり出すのは……飛電の社長、アンタに任せるぞ!」
脚に力を込め、バルカンが勢いよく駆け出す。遮るマギアの雑兵を撥ね飛ばしながら、巨象の前脚を目指して走り去った。
バルカンとの通信を終えると、ゼロワンは両手の錨を胸に仕舞ってギガネオヒマンモスと睨み合う。ブレイキングマンモスの駆体を以てしても、見上げるような巨体である。頭部の機能を最大限に発揮し、僅かな時間でスキャニングを終わらせると、右肩に何かが乗った。
「勝さん!」
「僕も力を貸そう。あの怪物をここで食い止める」
「ありがとうございます! よし、ここからは俺達も攻めるぜ!」
肩に乗ったのは、地上で戦っていたZOだった。
心強い味方だが、いくらZOが強くとも相手は山のように巨大である。しかし、二人の心には一片の曇りも無かった。
ZOを肩に乗せたまま、ゼロワンが大きな歩幅で大地を走る。射程圏内に捉えた瞬間、マンモスの長い鼻が真上から振り下ろされる。走行の勢いを乗せた跳躍から、ゼロワンは上から来る影をアッパーカットの要領で殴りつけた。巨大なる多節の鞭が波打ちながら跳ね上がる数秒のうちに、ZOがゼロワンの肩から飛び離れる。マンモスの鼻を階段のように駆け上がるZOに対し、ゼロワンはバックステップで距離を取ると同時に両脇の錨を投擲した。
ブレイキングマンモスの備える『錨』、それはマンモスの牙を模したモノ。投げ放たれた灰色の牙は、ギガネオヒマンモスの顔を何度も斬りつけた後に、頭部から生える二本の黒い牙を根元から斬り落とす。
漆黒の牙が落下し、深々と地面に突き刺さった。曲線の軌道を描いて飛来した錨が、ブーメランめいてゼロワンの両手に戻る。
或人は確かな手応えを感じたものの、牙の付け根が白く変色して新たな砲台を作り出す。轟音と共に放たれる二つのアンカーが、ブレイキングマンモスの胴体を抉る。
「ぐあッ!?」
一撃で内部機構を貫かれた。更に鏃の形をした先端が
僅か20センチの隙間を覗けば、穴の中で黒い風が渦を巻いている。何もかもを吸い込む穴から、何やら得体の知れないモノが噴き出ようとしていた。何が出てくるにしろ、70メートルの巨体が吐き出す物質を至近距離で吹き付けられれば、衛星ゼアの後部ユニットを原型とするブレイキングマンモスのボディとて四散五裂は確実である。
アラートを鳴らし続けるコックピット内にあって、ゼロワンは自らの窮地を理解すると、自らの思考と繋がった
ブレイキングマンモスの駆体が、芯を失ったように膝をつく。破滅的に勢いを増し続ける渦風は、解放の秒読みに入っていた。
蠕動する鋼の鼻が膨らみ……
「今だァーッ!」
灰色の機械巨人の姿が、
『プログライズ! ブレイキングマンモス!』
霧散したはずの巨人が、空中に姿を現す。落下の勢いに任せて、再び現れたゼロワン・ブレイキングマンモスが、ギガネオヒマンモスの鼻を踏みつけた。長大な鼻が地面に叩きつけられ、大きな亀裂を作る。
アンカーに繋いでいた重量を失ったことに加え、この一撃で巨象は大きく体勢を崩す。前方につんのめったギガネオヒマンモスの赤い両眼が、拳を構える小さな人型を目撃した。
顔面にしがみつき、上半身を大きく捻って右拳を握り締める存在。仮面ライダーZOがそこにいる。
「ハァァァァ……!」
ZOの右腕に緑色の光が満ちる。己の体内を循環するエネルギーを、自らの感情を昂らせることによって爆発的に増幅し、右腕に収束させているのだ。ZOの口元に牙が展開し、後頭部から余剰エネルギーを逃すが、輝きは一層強くなる。放出した余剰エネルギーをも、右腕に巻き込んでいるのだ。
ギガネオヒマンモスが転倒する、5秒前。
一際大きな輝きと共に、ZOが右拳をマンモスの顔面に突き出した。
例えるならば、雷撃。
絶大な衝撃と、猛烈な熱を以て、遍く全てを打ち払うモノ。
人間大の戦士が放つ全力の拳でありながら、自然の暴威に匹敵する重く大いなる一撃を受けた機械の巨獣は、根本から長い鼻を千切れさせながら、自らの身体を大きく後退させた。
牙と鼻を失った鋼の獣が、虚しく鳴き声を上げる。スクラップ混じりの煙を噴く象の鼻が、力無く地面に横たわっていた。
千切れた鼻から足を下ろし、ゼロワンは再び構える。ブレイキングマンモスの損傷は再起動を経てある程度回復したものの、出力を通常の8割程度に落としていた。完全復旧には少しばかり時間がかかる。
通信機器から信号を送り、ゼロワンはイズを呼んだ。
「プログライズキーの交換ですね?」
「思ったよりダメージを受けてる。少しの間だけ休ませたい」
「承知しました」
ブレイキングマンモスの駆体が光となって消える。地表に立ったゼロワンがイズからキーを受け取った時、強化された聴覚が地中を掘り進む何かの音を聞いた。
「イズ……地面の下だ! 何かがいる!」
「それだけではないようです。空中に動体を確認、これは……プログライズキーの反応です」
イズが言い終えた瞬間、十字路の中心が爆発を起こした。
巨大な銀色のサソリが地面を突き破ると同時に、紫色の人型へと変ずる。次いで空から飛来した無数の羽根が、ダーツのようにギガネオヒマンモスの顔面へと突き刺さる。空中でマゼンタの戦士へと変わった影が、紫の戦士の傍らに着地する。
ゼロワンとA.I.M.S.は彼らを知っている。ただし、協力し合える味方ではなく、倒すべき敵としてである。
人類絶滅を掲げる滅亡迅雷.netの戦士、仮面ライダー滅と仮面ライダー迅。二人が無数の
つづく。