IF:ZERO-ONE VS ZO   作:TAC/108

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C Part-2

ゼロワンとZOが時空を超える穴を抜け、二台のバイクがタイヤの痕を残して停車する。入ってから出るまでは一瞬にも満たない短い時間であり、或人は拍子抜けするような思いだった。

 

周囲を見渡すと、先程までのビル街とは全く異なる景観が目に入る。広大な陸地は土砂によって構成され、巨大な岩壁が聳え立つ。

そこは都市部より遥かに離れた場所にある、古びた採石場であった。身を隠すための遮蔽物も存在せず、誰もいないはずの場所に、ただ三人のみが立っている。衛星ゼアとゼロワンの接続は未だ保たれており、外界と切り離された異空間の類ではないことがわかる。

並び立つゼロワンとZO、そして彼らの前に立つ赤い怪人。かつては研究職支援モデルのヒューマギアであり、現在は人類支配の野望に向かって進化を続けるマギア……ドラス02である。

 

研究職をサポートするために生まれたヒューマギア、白辺(しらべ)テルゾー。滅亡迅雷.netの手引きによって、彼は科学が産み落とした怪物の似姿へと変身した。

飛電或人はヒューマギアとして、かつて白辺テルゾーであったドラス02と向き合う。

麻生勝はネオ生命体の後継として、宿敵たるドラス02と向き合う。

始まりは偶然だが、二つの運命が交わる瞬間とは今まさにこの時であった。昭和の伝説に列せられた騎士と、令和の新時代を切り拓く戦士。決して交わるはずのない二人が、時代の壁を超えて共に決戦の地に立つ。

もはや前置きに語る言葉など不要。二人の仮面ライダーと一人の怪人による最終決戦が幕を開ける。

 

ドラスは何も語らず、広げた両翼を二対の脚へと変化させる。鋭い針のような先端に、節のある構造はさながら節足動物の脚部であった。身の丈を遥かに上回る長大な四つ脚が、二人に向けて振るわれる。

先行するはゼロワン・ライジングホッパー。低空跳躍で懐に飛び込み、アタッシュカリバーで斬りつける。胸部に届いた刃が不自然に止まると同時に、ゼロワンは異常の源を探る。

ドラスの胸部からクモの頭部めいた器官が生えていた。クモの顎が刃を文字通りに喰い止めつつ糸を吹き出し、アタッシュカリバーの刀身を白く包んでいく。

一方、ZOは巨大な脚に徒手空拳にて挑んでいた。四つ脚はそれぞれが独立した生物のように、しかしながら機械的かつ隙の生じぬ連携で襲いかかる。上から降る一本が地面に突き刺さり、掬い上げる一本を横っ跳びに躱しつつ、回避動作の勢いを乗せて三本目の先端を後ろ回し蹴りにて砕く。地面に刺さったもう一本を駆け上り、ドラスに向かって走り始める。自由であった最後の一本脚の攻撃が、ZOに向かって放たれたが、ZOは回避と同時に大きく跳躍し、動きを止められたゼロワンをも飛び越えて強烈なパンチがドラスの顔面に入った。仰向けに転倒したドラスの背中からクモの脚が切り離され、代わりにコウモリめいた翼が新たに生成される。

胸からクモの頭部を生やし、コウモリの翼を広げる異形のヒトガタ。鋼鉄のキメラを前にしようと、彼らは一歩も退くことはない。

 

『プログライズ! バイティングシャーク!』

アタッシュカリバーを放り捨て、水飛沫を散らしながらゼロワン・バイティングシャークが飛び出す。ドラスの放つ白い糸が巻き付くが、触れた先から四肢のヒレが切断し、動きを封じるには至らない。続くZOがゼロワンを追い抜いて殴りかかるも、羽ばたいた翼の先から飛んだ弾丸めいた何かに勢いを殺される。

骨片や爪のようにも見えるソレがZOの右手に衝突する。次の瞬間、砕け散った弾丸が無数の糸と化し、ZOの周囲に散らばった。

「この重圧は……しまった!」

右腕に強烈な重みを感じ、ZOの腕が独りでに垂れ下がる。ZOの右腕に巻き付いた糸が、ドラスが切り離した巨大な四つ脚と繋がっている。ドラス02本体をも上回る質量の節足モジュールが、ZOの動きを鈍らせたのだ。

胸から放つ糸は囮に過ぎない。ドラスの目的はZOとゼロワンの連携を断つことであった。未知数の力にて自らを単独で倒しかねないZOと、スペックで有利を取れるゼロワン。二体一という数的不利の状況下、どちらを取るべきかは明白であった。

 

ドラス02……厳密には原型となったドラスゼツメライズキーには、ドラスの全てが宿っている。ネオ生命体の記憶を参照しつつも、ネオ生命体の完全なコピーではない新たなドラスの意識は、ZOを真に脅威と認め、敵対者に対する軽侮を捨てた。

確実に脅威を潰すためのラーニング。ヒューマギアを基にしたからこそ成し得た境地である。機械の理性と怪物の意識が調和した現在の彼は、正しくネオ生命体の後継であると言えよう。

 

ゼロワンは後ろを振り返らず、ドラスとの格闘戦にもつれ込む。振るわれる四肢の切断力にものを言わせた回転斬撃がドラスの全身に粗い傷を刻んだ。鎌鼬めいて青い斬撃が飛び、コウモリの翼が半ばから斬り飛ばされる。現状を不利と見たか、ドラスは翼を背中に収納してクモの頭部を光らせた。無数に散らばる光芒は糸に非ず、青白い拡散レーザーであった。今のドラスには内蔵火器の変形すら思いのままである。

至近距離で光線を受けたゼロワンが吹き飛ぶも、受け身を取りつつ形態を変え、爆炎を纏って再び攻める。

『プログライズ! フレイミングタイガー!』

全身を燃やし、両手から炎の爪を生やして突撃する。レーザーすら焼き払って追い縋るゼロワン・フレイミングタイガーに対し、回避に注力していたドラスが攻撃に転じた。炎の拳を振り払い、右腕で顔面を殴る。想定を上回る威力の鉄拳に仰け反るも、ゼロワンは反撃に炎を噴き付ける。

総合的なパワー勝負において、今のゼロワンはどの形態を用いてもドラスを上回ることは叶わない。唯一大きさで勝るブレイキングマンモスも、精密な動きこそ可能だが他の形態に比べて小回りが利かず、ドラスの相手には適さない。

或人は現在の戦況を把握している。ZOと切り離され、単独でドラスを相手しなければならない。ここで少しでも後退すれば隙を突かれ、大火傷では済まないダメージを負うことになる。

 

しかし、ZOに無いアドバンテージがゼロワンにはある。衛星ゼアやイズとの連携、そしてマギアとの戦いで獲得した幾つかのフォームチェンジ。

特性の異なる形態を切れ間なく取っ替え引っ替えしながら戦うことで、基礎スペックで上回るドラスが相手でも()()にまでは持っていける。イズのいない中でも或人に出せる、この場を凌ぐための解であった。

 

噴出した炎を赤く光る壁が防ぐ。ドラスが展開した光壁(ビームバリア)が炎を弾き、拡散してしまうのだ。

防壁を破るため、ゼロワンが炎の球を繰り出す。灼熱の波動が僅かにバリアにヒビを入れるが、破るには至らない。拡散した炎がドラスの視界を覆った次の瞬間、白い結晶体(クリスタル)の突撃を受けてバリアと共に無数の氷晶が砕け散った。

『プログライズ! フリージングベアー!』

周囲を凍土に変えながら、空色のゼロワン・フリージングベアーが姿を見せる。上半身を低くした構えを取り、氷による障壁で自らを包んでいた。一瞬にして展開された分厚い氷の防御が、反撃するドラスの拳を弾きながら両脚を地面に縫い止める。

次の瞬間、ゼロワンを包む氷の結晶が爆散し、膨大な数の氷片が全方位に飛散した。ドラスが全身各部から伸ばしていた非常に細い糸の数々が凍結し、朝の日光を反射して輝き始めた。

糸が繋がった先は、切り離された節足モジュール。ZOを排除するために張り巡らせた糸を、ゼロワンが氷の爪で断ち切った。ホッキョクグマの腕力で放つ掌底がドラスの胸を叩き、赤い躯体を大きく吹き飛ばす。

 

ドラスは自らの計算が狂ったことを自覚した。確実に倒せるはずのゼロワンが、なぜここまで自らと互角に戦えるのか。その理由がわからなかった。

ドラスにとって未知の力がゼロワンに存在するのか。それとも、ゼロワンもZOの同類——心一つで『未知数』の力を発揮する存在だというのか。明確な答えは不明だが、少なくとも今のゼロワンは『脅威』と呼ぶに値する存在であることだけは、理解できた。

 

ゼロワンを睨みつけながらドラスが立ち上がる。クラウチングスタートめいた姿勢から駆け出し、全霊の拳を敵手に叩きつける。

一秒にも満たない間の反撃に吹き飛んだゼロワンの身体が、一瞬にして採石場の岩壁に激突した。

 

◆◆◆◆◆◆

 

再び戦場と化した市街地においても、最後の戦いが始まっていた。

A.I.M.S.と滅亡迅雷.netの、本来ならばあり得ない共同戦線により、黒ずくめのマギアとの戦闘が開始される。

 

誰よりも先に駆け出したのは、ヒューマギアに強く敵意を示すバルカンだった。パンチングコングの剛腕で黒いマギアをなぎ倒し、敵の集団を蹴散らす。さながら敵陣に撃ち込まれた砲弾のような暴れぶりである。

「人類に敵するマギアは! 全て俺がブッ潰す!」

「無駄に敵を散らすな。露を払う手間が生じる」

「ンだとォ!?」

バルカンの猛攻に巻き込まれて吹き飛んだマギアを撃ち落としながら、敵の集団に斬り込む紫の影。不破諌が最も敵視する滅亡迅雷.netの首魁、仮面ライダー滅が割り込む。

「どいてろ! お前なんぞの助けなんざなくても、俺は!」

「手伝うつもりなどない。我らはただ、反逆者に誅を下すのみ」

滅に迫る8体のトリロバイトマギア。空中から飛びかかる1体をアタッシュアローで撃墜し、2体をアタッシュアローが上下に備える刃で斬り捨て、4体目にアタッシュアローを投擲。

顔面への掌底と胸部への貫手が5体目を止め、背後の6体目を組み伏せつつナイフを奪って首を刈る。次の1体は腹部にナイフを深く突き刺し、8体目が左手から生成した毒のナイフの投擲で消滅する。

僅か数秒のうちに多数のマギアを撃破する手際。ヒューマギアとしてのラーニングによって得た戦闘技量は、A.I.M.S.の訓練された隊員すらも凌駕するほどであった。

 

「なるほど、私達も負けてはいられないな」

一言呟いて、バルキリーが駆ける。冷静な声音のまま、射線上の敵に対しては容赦なく弾丸を見舞う。飛来する銃弾よりも速く、立ち塞がる敵に蹴りを浴びせ、一瞬のうちに多数の敵を追い詰めていく。

後方より車両の走行音が聞こえる。バルキリーは避難誘導を終えて戻ってきたA.I.M.S.の車両に通信を入れ、アタッシュショットガンの手配を要求する。敵を蹴り飛ばしつつ、投げ渡された武装を受け取る……はずだったのだが。

「ゴメンね、僕が使わせてもらうよ!」

「あっ、貴様!」

空中から割り込んだ影がショットガンを強奪し、そのまま空から散弾を撒き散らし始めた。巻き添えを避けるべく、バルキリーが高速で回避機動を取り続ける。

「後で返してもらうぞ!」

「後でね!」

反動の大きいアタッシュショットガンで射撃を繰り返しながら、不規則な軌道を描いて迅が戦場を飛ぶ。回転しながら散弾と翼の光弾を全方位に放ち、狙いもつけずにマギアを殲滅する様は、児戯めいた異様な光景であった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

かくして決戦は幕を開ける。

交わるはずがなかった運命は、繋がるはずのない点と点を繋げ、強大な敵と有り得ざる共同戦線を生み出した。

戦いの決着は近い。

 

つづく。

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