アバンタイトル
研究職支援型ヒューマギア・
滅亡迅雷.netの構成員である
無表情の滅に対し、迅は恐れと怒りの混ざった視線をドラスマギアに向けている。滅が迅を制し、腰に提げていた刀の柄に手を添えた。
「何のマネだ?」
「言ったハズだ。
滅の顔が僅かに歪む。それは想定外の事態であると同時に、「ドラスマギアはラーニングの結果として、滅亡迅雷.netを離反する」という予測が実現した瞬間であった。
滅亡迅雷.netの拠り所である『アーク』への反逆行為。本来ならば有り得ないことではあるが、『ドラス』の特異性がヒューマギア由来の学習能力と結び付き、滅亡迅雷.netにとって最悪の事態を現実のものとしたのである。
「お前がマギアである以上、どうあってもアークには従わざるを得ない。滅亡迅雷.netからの離脱を試みるならば……滅ぶのは貴様だ」
「全てが違うな。もはや
ドラスマギアが左腕を天に伸ばす。超常の引力か、あるいは予測の結果か、その全身を空からの落雷が貫いた。全身を引き裂くような熱量と衝撃に耐え、膨大な力を稲妻から吸収する。
確かな手応えを感じながら、ドラスマギアが左腕を振り下ろす。機能を停止していた無数の残骸が、目に赤い光を宿しながら一斉に蠢き始めた。
「滅、どうしよう! お友達が……お友達じゃなくなっちゃった!?」
「お前のお友達じゃない。
「そんなぁ……」
迅が大きく肩を落とす。シンギュラリティの萌芽か、ヒューマギアの機能に留まらない『人間的な』悲しみを迅はこの時確かに感じていた。
「既にドラスは滅んだ。お前が新たなドラスだとでも?」
滅が刀を鞘から抜いた。どうあっても戦闘は避けられないという演算機器の声に従い、反逆者に剣を向ける。
滅の問いに、悪魔が答えた。
「新たなドラス……そうだな。僕はかつて在りしネオ生命体の遺志を継承する存在。名付けるならば……ドラス
光が疾る。拡散する熱光線が白刃の一閃にて霧消すると、そこにドラスの姿は無かった。同時に無数のマギア達が蠢きながら四方八方に散らばっていく。滅は納刀しつつ、襤褸布めいた黒い衣服を翻した。
「行くぞ、迅」
「これからどうするの、滅?」
「簡単なことだ。
滅亡迅雷.netの反逆者、即ちは敵対者の抹殺のために。
二人のマギアが、呪わしき残骸の都市を去っていく。その姿は父と子に似て、しかしながら人が見るには些か歪なものであった。