気がついたら猫になっていた。
いや、比喩とかそういうものではなく本当に猫になっていた。
頭の中に人間の一般常識や知識はあるから元人間だとは思われるが、こうなるまでの記憶が一切ない。
周りには自分を囲むようにそして守るようにして丸まった自分と同じような姿の猫。
辺りを見回して状況を確認してもここがどこかはわからない。
ただ暗くて、寒くて、そしてとても寂しい感覚
ピタ、と自分の頭をなにかが撫でた。
瞳を開けば緑色の瞳の猫が『がんばれ』と一声鳴いて自分の頭を撫でてくれていた。
『ありがとう』の意味を乗せて小さく鳴けば緑色の瞳を閉じて小さくうなずいて自分も瞳を閉じた。
つぎに目を覚ますとそこは暖かい室内だった。
硬い地面だったのが柔らかい毛布に変わっていた。
そして、なんだか体のほうも初めて目が覚めた時のように重たくない。寧ろ飛び跳ねることができそうなほど調子がいい。
隣を見るとあの緑の瞳の猫が目の前にいるヒトに向かって威嚇していた。
あの時丸まっていた他の2匹はまだ眠っている。
あの子はまだ目を覚ましていない自分たちを守るように金髪の女の子を必死に威嚇していた。
「えっと、私悪い人じゃないですよ?」
「ユーリ、それじゃあ伝わんないわよ。寧ろ警戒されちゃってるじゃないの」
「そんなあ」
落ち込むユーリと呼ばれた彼女をみて笑う赤髪の少女に未だ警戒を緩めない緑目の猫
そんな絵面をみてしょうがないと自分は立ち上がる。
ゆっくりと歩き出して緑目の子の前へと出てユーリちゃんの差し出した手を舐めた
後ろから『オイ馬鹿者!』と罵られたような鳴き声が聞こえたが状況を見るに彼女が自分たちを助けてくれたのだろう。
ならば、自分たちはそれに応えなければ
後ろを振り向いて『この人たちは大丈夫だよ』と鳴けばあの子からは『本当に警戒心のないやつだな』と呆れられたような答えが返ってきた
それに対して自分が指を舐めた彼女だが目をキラキラさせてうずうずしている。
おや、これは選択を間違えたかな?
次の瞬間、自分の体は彼女に抱えられて宙を舞っていた。
結論から言おう、高い高いを連続でやられるものではないと。
ユーリちゃんの腕の中で抱かれながら自分はしみじみそう思った。緑目の子に助けを求めてもその目が『自業自得よな』と助けてはくれなかった。
ちなみに他の2匹も目が覚めていてブンブン回されている自分を見て顔を真っ青にしていた(猫視点)
「貴女がシュテル、貴女がレヴィ、貴女がディアーチェで貴方がクロヴィスです」
あれから約1週間、この部屋にも慣れてきた頃ユーリちゃんから自分たちの名前をもらった。
青色の瞳を持つ頭のいいシュテル
紫色の瞳を持つ元気一杯のレヴィ
緑色の瞳を持つ自分たち3匹を守ってくれるディアーチェ
そして赤色の瞳を持つ末っ子ポジの自分改め僕がクロヴィス
『クロヴィスー?言いにくいからクロでいい?』
『せっかくユーリがつけてくれた名前を秒であだ名にされた』
『良いではないですか。私達だけがわかるあだ名』
『クロヴィス、お前もあだ名がついたか。我など名がついてもどうせ呼ばれるななど変わらぬわ。シュテル、レヴィ、我の名を呼んでみよ』
『『王さま(我が王)』』
『ほらな』とどこか諦めた様子を醸し出すディアーチェに僕はなんとも言えない顔になる
「なんですか?4人で内緒話ですかー?」
イリスちゃんがいなくて僕たちに構ってもらえないユーリちゃんは頬を膨らませながら僕の頭を優しく撫でた
『あっ!クロずるーい!』
『ユーリからの撫でを独り占めするとは』
『お前ら…………(呆れ)』
これが今の僕の日常だった