「何でお前がその姿をとっている。その姿は既に故人のものだ。高町やテスタロッサ達のように彼女達の因子を取り込むことなどできないはずだ」
「その質問にはこう答えよう。僕は彼女から直接因子を与えられたというだけだよ。君たちは知らないだろうけど僕は少なくとも数十年は彼女とともにいたからね」
夜天の将に対して僕は事実を述べる。
「あたしたちはオメーを知らねえ……けどリインフォースのやつと一緒にいたっていうならあたしたちのことも知ってるはずだろ。ここでやりあわねえって選択肢だってあるはずだ」
「それは出来ない相談だ。起こされた以上、一度くらいやっておかないと何を言われるか分からない。それに、僕はこれでも初陣でね、この先のためにも僕が何を出来るのか知っておきたいのもある。彼女から託された力を君たちに振るうのは気がひけるが少しだけ付き合ってほしい」
鉄槌の騎士の問いかけに僕は首を振る。
そして、その答えを聞いた彼女たちは再び臨戦態勢に入る。
「だったら、最後に聞かせて欲しいんだけど。それ、夜天の魔導書よね?私たち、それを奪われたんだけど何であなたが持ってるの?」
「それは簡単な話だよ。リインフォースが持ってた管制の能力でゲスト登録されてたものを奪い返したんだ。この戦いが終わったら君たちの主に返却するよ」
「それを保証するものは?」
「僕の親友に誓って」
その言葉に守護騎士たちは納得したのか首を縦に振った。
僕は右手に持っていた夜天の魔導書を宙に浮かせ、その代わりに蒼色の剣を手元に呼び出す。
「その剣は……!」
「貴女は知っているみたいだね、烈火の将」
「知らないはずがない……それは、その剣はベルカの騎士にとっては神聖な剣だ」
「そういえば彼女もそんなことを言っていた。それじゃあ、始めようか……」
僕は再び高く舞い上がり、夜天の魔導書を開いて魔法を行使する。クロハネが最も得意としていた純粋な魔力のみによる範囲攻撃魔法『デアボリック・エミッション』
「っ!初っ端からめんどくせぇ魔法を!」
「みんな!私の後ろへ!」
シャマルが一際大きな風の盾を前面に展開して『デアボリック・エミッション』を防ぐ。
しかし、それは想定済みだ。
この魔法を行使した直後は辺りが暗闇に包まれるため視界があまり良くない。その隙をついてくるのは僕も知っている。
「わかってるよ、視界の外から攻撃してくるのは」
『プロテクション』を左右に展開して、維持している魔力を強制的に暴発させる。
「……なるほど、リインフォースの因子を受け継ぐとはそういうことか」
「彼女自身はもっと巧みな技を使うと思うよ。たとえばこんな風に」
夜天の魔導書を開き、再び『バルムンク』を展開する。
それも、追従の特性を持たせて
「刃以って血に染めろ……穿て、ブラッディダガー」
そしてそれを後を追うように『ブラッディダガー』を発動させて逃げ回る騎士たちに向けて放つ。
シグナムが自身に迫り来る光の剣と血の短剣をひたすら剣で叩き落としているがそれだって限界がある。
「機動外殻への対応で本来のデバイスを使わないからこうなる。貴女のレヴァンティンにあるシュランゲフォルムなら十分に対処できた筈だ」
「痛いところをついてくれるな。だが、この程度でやられると思ってくれるな!ヴィータ!」
「ああ!こいつで……どぉーだ!」
「っ!」
蒼色の剣を前に出して迫り来る鉄槌を抑え込む。
だが、今度は左からザフィーラが迫り来るのを視界の端で捉えて先ほどよりも数倍強度を上げた『プロテクション』で対抗する。
「流石に1人であたしたちを相手取ろうってのがそもそも間違いなんだよ!お前の元のやつだってそう簡単には勝てねえだろうさ!」
「確かにキミたちは僕の知る中でも最も強い騎士たちだ。だから油断なんてしないしそのための対策も無数に考えた。戦い方だって彼女がくれた記憶の中に残ってる……」
「お生憎様だな!あたしたちは2年間の間にもっと連携が取れるようになったんだよ!」
その言葉とともにグラーフアイゼンを拘束していた全てのパーツが弾け飛んだ。それが意味するのは彼女の持つ鉄の伯爵の本領を発揮できるようになったということで
「ブチ抜けぇぇええええ!」
「……くぅっ!」
鉄槌を加速させるようにブースターを全開にして僕を押し込む。そして、更にガラ空きになっている右側から巨大な炎の剣を構えたシグナムの姿が見えた。
「紫電……一閃っ!」
「させる、かあ!」
それに対抗するように僕も蒼色の剣の出力を増すために燃料を投下する。それに応じるように輝きを増した剣をヴィータを押し返してから一閃してザフィーラの体勢を崩した瞬間蹴り飛ばしてヴィータにぶつけてそのままシグナムの剣を受け止めた。
「確かに威力は高い……貴女の技量でみれば制限された剣でもこれほどの剣技を扱えるのは頭が下がる。けど……!」
「なにっ!?」
輝きを増したままの剣でシグナムの剣を押し返す。
そして振り切ったその勢いのまま僕は体を回転させてそのままシグナムへと剣を振り下ろす。
覚醒剣・蒼穹無限
その最後の一撃は魔剣に満ちた魔力をエネルギーに変換して放出することで敵を屠るまさに必殺の一撃、それを放出するのではなく紫電一閃のように刀身に纏わせて振り下ろした。
「これ、でええぇ!」
「くっ!」
「させない!」
振り切った剣は強靭な風の盾に防がれる。
その盾を切り裂いた時には既にシグナムの姿はシャマルの横にいた。
その事実を確認して軽く舌打ちしそうになるがそれよりも先に僕は自分の身体に起きた違和感に首を傾げた。
(おかしい、思い出が無くなってない……寿命が削れた感覚はあった……だけど、瞬間的に補填されるような感じが……)
初めて使った時に起きた思い出の欠落と自分の中から何かが抜け落ちるような感覚。それが、いまほぼなかったと言っても過言ではなかった。
(どちらにせよロクなものじゃない。あまり使わないに越したことはないけど……加減して勝てるような相手でもない。かといってもう一度今みたいな大技を許してくれる相手でもない)
視線を戻せばシャマルが全員の治癒を終えて僕を見ていた。
守護騎士たちは全快で僕は若干の違和感を覚えたまま……
部が悪いかと聞かれれば頷くがそれはこの身体を与えてくれた友への侮辱に当たるだろうか。
ならばと僕は左手を前に出してその名を呼んだ。
「僕の元へ
左手に唐突に炎が現れその姿を剣へと変える。
紅の暴君と呼ばれた剣が何かを守るために新たな力を得て生まれ変わった不滅の炎を纏った剣、ベルカの伝承にある三本ある魔剣のうちの一振りが僕の手の中にあった。
同時に今度は何かが欠落する感覚。
僕の中にあった大切な日々がいくつか消えて無くなった。
「伝承の剣を二振りも持つとはな」
「ああ、ベルカに生きる者としては敬意と畏怖を抱くところだが……」
「そんなこと言ってる余裕なんてねえだろ。一本でもやべえのに二本なんてシャレになんねえ」
「流石に伝承の魔剣二本は防ぎきれるかわからないかも」
おもいおもいに言葉を紡ぐ騎士たちに僕はまっすぐ向き合う。
思い出が消えるときに起こる激痛。
初めてこれを味わった時は本当に気を失ってしまったが今度は人の姿だったからか……それとも痛みに慣れた身体だったからなのかは分からないが1回目の時に比べればだいぶ楽だった。
少なくともこの人たちの前でそんな無様を晒す羽目にならなくてよかったと心の底から思えるほど
「さて、第2ラウンドを始めようか」
剣を両手に構えて夜天の魔導書を腰につけられていたブックホルダーに収納して騎士たちに肉薄しようとしたその時
少し離れた海上で光の柱が立ち昇った。
それと同時にとても懐かしい感覚がする。
“貴方の名前はクロヴィスです!”
脳裏に僕に微笑みながら手を差し伸べる誰かの顔が映った
「行かなくちゃ……っ!」
騎士たちのことを置き去りにして僕はその方角へと飛び立つ。
「お、おい!待てよ!」
「私たちも追うぞ!」
「ああ!」
「ええ!」
僕の後を追う騎士たちをおいて僕はクロハネ自身が持っていた高速移動系統の魔法を発動させる。
「……
トップスピードはレヴィやフェイトちゃんにだって負けない速度で光の元へと駆ける。
そして、たどり着いたところで見たのは
死屍累々とした光景と光を灯さない瞳で涙を流しながら僕を見つめる金髪の少女とその後ろでほくそ笑む赤髪の少女だった。