僕たちの宝物   作:今井綾菜

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第拾弐話

広がるのは死屍累々とした光景。

海中から突き出した無数の槍に貫かれ、誰もが苦悶の声を上げている。表すのならばまさに地獄というのが正しいのだろうか

 

 

「クロヴィス……お前も来たか」

 

「懐かしい声に呼ばれた気がしてきたんだけど。これは……」

 

僕たち4人はこの光景に唖然とする。

後から遅れてやってきた守護騎士たちは無事だったが彼女たちの主であるはやてちゃんやレヴィの元であるフェイトちゃん、それにあの時ナハトヴァールを凍結させた黒髪の少年もあの槍に貫かれていた。

 

「「主!」」

 

「はやて!」

 

「はやてちゃん!」

 

駆け寄る守護騎士たちにはやてちゃんは安堵の声を漏らすがその声はやはり苦しそうだった。

 

「来たのね、あんたたち」

 

「来たとも、それより。その娘はなんだ。光の灯らぬ瞳で涙を流すその娘をお前ばどうするつもりだ?」

 

ディアーチェの問いに赤髪の少女は答える

 

「復讐よ、私から幸と家族全てを奪ったこの子に対しての」

 

「お前の勝手な復讐に関係のない人々を巻き込むなど」

 

「それ自体がこの子への復讐になるのよ。この子自身の手で最も忌むべき力で他人を傷つける。それが復讐の一歩目」

 

ディアーチェが彼女と話している間に僕は周りの人たちを救出する方法を探し出す。

シュテルとレヴィも辺りを見回してどう動くべきかその答えを探している。

 

「そして、最後にはこの子の力であんたたちを殺す。それで私の復讐はおしまい。たくさんの屍の上で泣き喚く姿を見ることが私の目的よ」

 

「我等がそのように簡単にやられると思っているのか?」

 

「やれるわよ。ユーリの力はそこらの魔導師なんかが太刀打ちできるものじゃないもの。あんたたちの素体がいくら強くてもすぐに握りつぶされて終わりよ」

 

ディアーチェが時間を稼いでいる間にどうにかしたいが方法が見つからない。いや、きっと魔剣の力を使えばどうにかなるんだろうけど……

 

視界の端に赤髪の少女に抱かれた桃色の髪の少女が見える。彼女たちに念話でも飛ばしてみようかと考えた瞬間、桃色の閃光が金髪の少女……ユーリに向かって放たれた。

当然、ユーリはその閃光を周りに滞空しているユニットで防御する。

 

だが、それが狙いだったかのようにその閃光が散った後には閃光を閃光たらしめていた粒子がこの空域に広がった。

 

フォーミュラと魔導による彼女の生命力を奪う魔法の無効化。

 

それを成したのはあの時、クロハネと死闘を繰り広げた不屈の心を持つ少女だった。

 

「……この力、フォーミュラ?っ!アミティエの!」

 

「今度こそ、なにも奪わせない……必ず、救ってみせます!」

 

ここに不屈の魔法使いが現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イリスさん、私たちと来てください!きっと力になりますから!」

 

「力になってほしいことなんてなにもない。ユーリ、危険度の高い順に排除して」

 

「《入力確認、排除行動準備》」

 

なのはちゃんの問いかけに対して出したイリスの答えは拒絶、そしてそれに対しての対応だった。

 

そしてユーリが向いたのは現状で最も彼女の脅威となり得るなのはちゃんだった。

 

「《敵対勢力確認、排除開始》」

 

彼女がなのはちゃんの方へと突撃するのと同時に僕もなのはちゃんの目の前に飛び出す。

サイドに浮いている腕のような形に変形したユニットを両手に持った剣で受け止める

 

「え、リインフォース……さん?」

 

「この姿に驚くのはわかる。僕の姿については後で説明するから今は一緒に彼女を止めるのが先決だ!」

 

「あっ、はい!」

 

なのはちゃんの返事を受けて僕はまた剣に燃料を投下する。

今度は少し多めに記憶と命を燃やしたつもりだった。

だが、僕の中で消えたのは全く違うものだった。

 

(……今消えたのは、僕の思い出じゃない……?クロハネが残した戦争の記憶が消えていってる……そして、燃やした寿命も燃やした寿命が即座に補填されてる。不滅の炎(フォイアルディア)を抜いた時には確かに僕の思い出も命も燃やしたのに……こっちに関しては全く理解できない)

 

だが、今はそんなことを考えている余裕はない。

二振りの剣に補填されたエネルギーをそのまま前方に放出してユーリの姿勢を崩す。

その瞬間を見逃さずなのはちゃんの砲撃が彼女に直撃する。

 

「即席のコンビだけど、よろしく頼むよ」

 

「はい!えっと、私はなのはです、高町なのは!」

 

「僕はクロヴィス、クロハネ……リインフォースの友人で彼女から直接因子をもらってこの姿をとってる。彼女の持っていた戦闘技能はそのまま持ってるから役には立てるはず」

 

「なるほど、それは頼もしいです!」

 

態勢を立て直して僕たちに迫るユーリから距離を取るように並走して飛びながら僕たちは軽い自己紹介を済ませる。

それと同時に僕となのはちゃんは左右に分かれてユーリを挟み込む形をとって同時に彼女を捕縛して同時に魔法陣を展開する

 

「N&C中距離挟撃コンビネーション!」

 

「クロッシング・レイ!」

 

「「ファイア!!」」

 

強力なリングバインドの上から強力なチェーンバインドで身動きを封じてなのはちゃんの持つ純粋な魔力砲撃と僕の光属性に変換した魔力砲撃を同時に放つ即席コンビネーション

 

間違いなく直撃したはずの砲撃にビクともせず高火力の砲撃同士がぶつかり合って相殺しあった中心部からユーリは傷1つつかずに飛び出して僕の方へと飛んできた。

 

『クロヴィスさん……くん?私の方は後3分が限界みたい!まだ細かい調整とか終わってないから……』

 

なのはちゃんの声が僕の頭の中に直接響いた。

使ったことがなかったけどこれが念話だろう。

それに返すように僕もなのはちゃんに向けて魔力に乗せて言葉を送る

 

『了解!だったら、後3分で助ける!名前に関しては呼びやすい方で!』

 

『うん!』

 

なのはちゃんと交差し、ユーリを挟み砲撃。

僕が切り込み、その隙になのはちゃんが砲撃。

なのはちゃんが砲撃してそれを防御して怯んだ好きに僕が切り込み。それを繰り返し、様々な魔導を組み込んで僕となのはちゃんはユーリへと攻撃するも全て周りにあるユニットと彼女の持つ防御力の高さから全てほぼ無効化されてしまう。

 

残り3分と言われてからカウントした時間を見れば後2分。1分の間で様々な方法を高速戦闘の中試したけどそのどれもが決め手に欠けていた。

 

『なのはちゃん……収束砲撃、いける?』

 

『いける……けど。一発が限界』

 

『それでいい。僕が時間を稼ぐから今の戦闘で散らばったの全部集めて、全力全開で撃って!』

 

なのはちゃんが頷くのを確認して僕はまたユーリへと飛び立つ。クロハネの残した二刀流の技に『バルムンク』や『ブラッディダガー』多重展開して同時に放つアレンジを加えた『クラウソラス』等ありとあらゆる戦術を試すが決定打に欠ける。

そして、空に輝く星にユーリが気がつきそれを止めに入る……だが、それを許さないのは僕だけじゃない

 

「クロの邪魔はさせないよ!」

 

「ナノハ!時間は私たちが稼ぎます!あなたは収束に専念しなさい!」

 

ここには雷光と星光がいる。

雷と業火が道を遮り2人の影がなのはちゃんとユーリの前に立ちふさがる。

そして、僕たちを統べる王がいる。

 

「クロヴィス、王たる我の命を待たずして駆け出した無礼は不問にする。今は奴を止めるぞ!」

 

凛と響いたその声と同時にユーリの周りを暗黒の魔法陣が埋め尽くしそこから無数の砲撃が彼女に向けて放たれる。

爆煙が晴れるかと言う前に今度は業火の一矢が爆煙の中心へ吸い込まれていった。

 

「私たちも黙っているわけにはいかない。助太刀させてもらうぞクロヴィス」

 

「あたしたちの戦い方が頭に入ってんだ。連携、いけんだろ?」

 

拘束された剣ではなく本来の炎の魔剣(レヴァンティン)を携えたシグナムと鉄の伯爵(グラーフアイゼン)を担いだヴィータが僕の横に並ぶ。

 

そして、空にはさらに2つの輝きが増えていた。

デバイスを改修して新しい形態を手に入れたバルディッシュ・ホーネットから放たれる『ホーネット・ジャベリン』

 

そしてさらにもう1つは代用のデバイスを使った魔法だろうか。僕と夜天の魔導の出した答えは複数照準型殲滅魔法の『ウロボロス』だ。おそらく管制は二代目の祝福の風がやっているのだろう。ターゲットは1人だけだからチャージに時間もかからないはずだ。

 

その間を稼がないといけない。

僕たちは目を合わせて頷いて飛び立った。

僕たち4人の中で守護騎士の2人と合わせられるのは僕だけ。

だが、守護騎士たちに関してはそうとも言えないのだ。

僕たちは元となった因子の影響を受けて戦闘技能やその他の知識を得る。つまるところ、似たような戦術を取る僕たちに元となった3人を間近で見てきた守護騎士たちは自分の判断で自由に連携を取ることができる。

 

残りの約1分、それを稼ぐために僕たちは全力を出した。

レヴィの隣に着いたのはシグナム、そしてシュテルの隣に着いたのはヴィータだった。

そして、僕は真っ直ぐにユーリへ向かって飛び立つ

 

軌跡(ミーティア)』を使って瞬間的に最大加速にまで至った僕はその速度のまま両サイドに滞空しているユニットへ剣を叩きつけた。

 

そして僕とユーリの頭上からレヴィが《バルニフィカス》を《バルディッシュ》の“ライオットブレード”に近い形状にさせて振り下ろしてきた。

さらに僕の背後からはシグナムが『紫電一閃』を構えて接近してきているのがわかった。

 

「「クロっ!(クロヴィス!)」」

 

2人の声と同時に僕は即座に転移魔法を展開してディアーチェの横に飛んで次の準備を始める。

 

上空と正面からの襲撃、不意をついたはずのそれにもユーリは何なく対応してみせる。だが、それだけでは終わらない。

動きを止めたその瞬間を見逃さないように今度は左右からシュテルの砲撃とヴィータの鉄槌が迫っていた。

 

「《想定外の事象を確認、機鎧を二機追加して対処》」

 

機械的に呟かれるそれと同時に出現した2つの機械的な翼に鉄槌と砲撃は防がれる。だが、それを待っていたかのように天空から漆黒の直射砲撃がユーリに降り注ぐ。

前後左右を押さえつけられたユーリは身動きが出来ずにそのまま砲撃に押されて地面に叩きつけられる。

 

「「「「クロ!(クロヴィス!)」」」」

 

夜天の魔導書から選んだ3つの拘束系魔法を同時展開させる。

『鋼の軛』で四方を囲み、『レストリックロック』で四肢を固定し、『チェーンバインド』で『レストリックロック』と『鋼の軛』を繋いで拘束した。

 

それを確認した4人が一斉にユーリから離れた直後。

 

 

 

3つの光が降り注いだ。

 

 

 

《ウロボロス》《ホーネット・ジャベリン》《エクシードブレイカー》その3つを一斉に放つ新たなトリプルブレイカーとでも呼べるそれは非殺傷ではあるがゆえにユーリを殺してしまうことこそないがその破壊力は街1つ消せるレベルの砲撃だった。

 

《カウント-9なんとか撃ちきれました》

 

その声と同時に僕たちは全員、身を守るように滞空しているユーリへと向かう。改めて全員の顔を合わせる結果となりはやてちゃんは僕の顔を見て驚愕に染まった顔になるが目の前の少女が目を開けたことで彼女の方を見た。

 

「……うん」

 

そして、今度は目を開いた彼女が驚愕した顔になる。

僕たち4人の顔を見て順番に見たあと僕たちの名前を呼んだ。

 

「まさか、あなたたちは……シュテル、レヴィ、ディアーチェ、クロヴィス?それに、貴女は?」

 

「私は八神はやて、夜天の魔導書の主です」

 

「はやて!お願いがあります!ディアーチェ達をどうか……それにあの子、イリスを……ぐうっ!」

 

激痛が走るであろう身体で一枚のページを作り出したユーリの下腹部を刃物が貫いた。

 

「「「「ユーリ!!!!」」」」

 

「喋らないで、嘘はもう聞きたくない」

 

手元に本を取り出して、その中の魔法を行使して僕たちを払いのける。

 

「夜天の魔導書!?どうしてそこに!」

 

「アンタがどうやって原典を取り戻したかは知らないけど、こういう可能性は考えてコピーは作っておいたの。便利な力よね、魔法って」

 

僕の腰についているブックホルダーにはきっちり収められている夜天の魔導書に触れて安堵するが、現状はそれどころではない。

 

「…………いりす」

 

「ユーリ……」

 

小さく呟くユーリに僕たちは彼女の名前を呟くことしかできなかった。

 

「完璧には作りきれなかったけど精々役に立たなくなるまで使わせてもらうわ」

 

僕たちを蔑んだ瞳で見下した直後イリスとユーリは既にその場からいなくなっていた。

 

結果的に言えば、僕たちはイリスからユーリを救えなかった。

 

僕たちは負けたのだ。

 

 

 

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