僕たちの宝物   作:今井綾菜

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読者の皆様、あけましておめでとうございます。
昨年の年末は忙しくて更新できませんでしたが更新再開いたします。
“僕たちの宝物”もあと残すところ数話、最後までお付き合いいただければ幸いです


第拾参話

僕たちの実質の敗北から1時間後、僕たちはなのはちゃん達の組織に連行、もとい保護させることとなった。

精密な身体検査を行い、僕たちへ与えられた部屋に着いたのはちょうど1時間が経過したところだった。

 

「それにしても、お前があのユーリとやりあえるとは思ってもみなかったぞ」

 

「僕1人で戦ったわけじゃないしね。みんながいたからあの程度だったけど本当ならもっと被害が出てたはずだよ」

 

シュテルとレヴィ、ディアーチェと話しつつ僕は呼ばれてからずっと思っていた不快感を言葉にした。

 

「姿を得てからずっと記憶に靄がかかったような気がするんだけど、みんなはどう?」

 

「ボクもそれは思ってた。なーんか気持ち悪いっていうか無理やり閉じ込めてるような」

 

「そうですね。私もそれはずっと思っていました。あのユーリという少女を見てからそれが一段と強くなる感覚も」

 

「ふむ、やはりお前達もか。心にポッカリと穴が空いたような感覚、あまりいい感情ではないな。それに、あやつ泣いておった」

 

噛みしめるようなディアーチェの言葉に僕たちはその時の光景を思い出して顔を俯けた。

 

「どちらにせよ我等4人とユーリとイリスの間に何かあったことはほぼ確定的だ。ならばその記憶を取り戻すのが先決と言いたいところだが……客が来たようだな」

 

ディアーチェの視線の向けた先、つまるところここの部屋の扉が開いてそこから夜天の主であるはやてちゃんと守護騎士達が入ってきていた

 

「大事な話しとったとこ?」

 

「いいや、区切りは良かったから構わん」

 

「そっか、ほんなら早速本題に入ろっかな。さっき、ユーリが私たちに渡そうとしたページ、その紙片を解析してたんやけどなかなかうまくいかんくてなあ」

 

困った困ったとわざとらしくディアーチェにいうはやてちゃんに数年の間見ていた僕は逞しく育ったなとクスリと笑った。

 

「それで、夜天の魔導書の中にいた我等に修復を、というわけか」

 

「まあそんなとこ、王様達ならできそうやなって持ってきたんやけど、どう?」

 

「出来ないこともないだろう。ちょうど地頭はいいレヴィがおる。レヴィ、この紙片修復できるか?」

 

ディアーチェに呼ばれて駆け寄ってきたレヴィは渡された紙片を見て少し唸る。

 

「出来ないことはないと思うけど、時間かかるよ?」

 

「構わん、いい暇つぶしにはなるだろう」

 

「はーい、そういうことなら任せて!」

 

早速修復を始めたレヴィの隣にシュテルが座って仲良く話しているのを見て僕とディアーチェは頷いてはやてちゃんの方へと向き直った。

そして、はやてちゃんを見てまだ渡してないものがあったと思い出してジャケットと一緒に格納されていた夜天の魔導書を取り出した

 

「はやてちゃん、これ返すね」

 

「これ、夜天の書……?イリスが持ってたのは……?」

 

「偽物といっておったろうが、どういう原理かはわからんがこやつがイリスから本を奪ったのだ。ありがたく受け取っておけ」

 

話をちゃんと聞かんか戯けがと続けるディアーチェに僕は笑って本をはやてちゃんの腕の中に返した。

 

「察しの通り僕の素体は初代リインフォースだ。はやてちゃんには一度会ってると思うけど、彼女が天へと還る前に彼女から直接因子を受け取った。その中の1つに夜天の魔導書の管制権があったから返してもらっちゃった」

 

もちろん、渡した瞬間に管制権は二代目ちゃんに返したから問題はない。あの本を管制出来るのは祝福の風の名を持つもの達だけだ。

 

「ありがとうっ……ほんまに、ありがとう!」

 

夜天の魔導書を大切そうに抱きしめながら放てちゃんは涙ながらに“ありがとう”と繰り返した。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、クロヴィスくんはどーやってあの子に、リインフォースにであったん?」

 

「僕とクロハネ……あ、リインフォースか。彼女に出会ったのは外の時間にするともう30年以上前だね。僕とクロハネは出会ってからはクロハネが消えたあの日までずっと他愛もない話をしてただけだよ」

 

僕にとっては昨日のように思い出せるクロハネと話し続けた日々、僕にとっては今まで生きてきた中で最も長く一緒にいたのがクロハネだったと言える。心の底から親友だったと断言できるほどの人だった。

 

「ほう、その話。我にも聞かせよ」

 

「別にいいけどそんな面白い話じゃないよ。クロハネ……彼女達のいう夜天の魔導書の初代管制融合機の人との話だし」

 

「よい、お前はその友の姿をとっているのだろ?お前にとってかけがえのない友の存在ならば我も知っておかねばならん」

 

ディアーチェの言葉に僕は嬉しくなって頷く。

レヴィとシュテルはお菓子を食べながら修復をしているし時間ならまだかかるかと思った僕はクロハネとの日々を話し始めた。

 

「始まりは本当に奇跡みたいな出会いだった。僕は夜天の魔導書中を彷徨ってたんだけど、そこで偶然彼女のいる空間に足を踏み入れたんだ。それが僕と彼女の出会いだった」

 

僕はその日々をゆっくり、物語を語るかのように語っていく。

 

他愛のない話をした。

彼女の知る本当の歴史を聞いた。

時折、拗ねる彼女を宥めたりもした。

叶わなかった約束も沢山した。

 

照れ屋で寂しがり屋で泣き虫な親友との日々を思い出して語って行く中で僕は今になって後悔で心が締め付けられた。

あの最後の時、僕はきっと見送る以外の選択肢もあったのに……

 

トンと僕の肩に誰かの手が乗っかった。

 

「もうよい。辛い思い出なら語らなくともよい。お前の泣く姿など我は見たくない」

 

「違う、違うんだよディアーチェ。辛い思い出なんて何もない。毎日が楽しかったんだ!僕は彼女に生きていて欲しかった!結局叶わなかった約束だって沢山したんだ!僕は……クロハネに貰うばかりで何も返せなかった……!」

 

「ううん、クロヴィスくん。それは違う」

 

右手をはやてちゃんに握られて僕ははやてちゃんを見た。

 

「リインフォースがクロヴィスくんのことなんて言ってたか知っとる?」

 

僕はその言葉に首を振った。

あの最期の時、僕は彼女達の会話を聞くのが怖くて映像だけを見ていた。何を最後に話したのか、僕は知らなかった。

だから、あのとき最後に2人が何を話したのか僕は知る由もなかった。

 

「クロヴィスくんのこと、自慢の友だって私に言っていったんよ。クロヴィスくんが探してるユーリのことも任されてな。リインフォースにとって、クロヴィスくんはかけがえのない友達だったんよ?」

 

抑え込んでいた別れの悲しみが波となってまた僕に襲いかかる。彼女達は2年と月日を経た別れ。

僕にとってはつい先ほどのように感じる別れ。

まだ、心の整理なんて付いてなかった。

そんななかでこんな言葉をかけられたら僕はどうしようもなかった。

 

僕はまた泣いた。

 

ただあの時と違うのは1人ではなかったこと。

隣にディアーチェとはやてちゃんがいてシュテルとレヴィが心配そうにこっちを見ている。

僕はたくさんの人に見守られながらただ泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、クロが泣いてたから言いにくかったんだけど修復、終わったよ?」

 

「ごめん、ありがとレヴィ」

 

「いいのいいの、クロはあんまり泣かないからね。たまには沢山泣いたらいいと思うよ」

 

レヴィに頭を撫でられるのはなんだか不思議な感覚だ。

いっつも追いかけ回してたからタックルされてばかりだった気がする

 

「とりあえず再生してみよっか」

 

はやてちゃんがそう口にしたのと同時にレヴィがその記録を紐解いた。

 

 

 

 

 

“私たち惑星再生委員会は〜”

 

“人がいる”

 

“私はユーリです”

 

“この子は夜天の魔導書、危険な力もありますけど私は……こういう魔法の方が好きです”

 

“すごいすごい!ユーリの魔法は奇跡の力だよ!この星を救うことのできる力!”

 

イリスとユーリの笑う日々がそこには記録されていた。

その中で僕が見ていて敵意を覚えたのは

 

“しょちょーも一緒に遊ぼう!”

 

“遊びましょう!”

 

“ああ、今いくよ”

 

ユーリとイリスに微笑みかけるこの男だった。

しばらく微笑ましい日々が続いていたと思えばとたんにノイズが走った。

 

「あっれー?ここのデータ壊れちゃってる。再生できる場所まで飛ばそっか」

 

レヴィが首を傾げて次の再生できる場所までとばした瞬間

 

“どうして!ゆーり!”

 

“わたしが……やりました”

 

1人の男の死体の前で泣きじゃくる2人の少女の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……」

 

「この前に何があったかわからへんからなあ」

 

「何があったにしろあの男の死が2人の決定的な亀裂となったのだろう。家族を奪われたというイリスの言葉はあの男の死のことを言っているのだろうな」

 

「でも、ただ殺すだけだったら泣かないでしょ。何か理由があったのかもしれないし…」

 

「どちらにせよ捕まえて事情を聞くしかないだろ。あたしらはその為に管理局やってんだ」

 

重苦しい雰囲気の中、一度解散の流れとなった。

レヴィのバルニフィカスは修理が必要だし、シュテルのルシフェリオンもメンテナンスが必要だ。

 

それぞれが次の作戦までのあいだに必要な場所へと向かう中、僕は船の甲板の人目のつかないところに移動していた。

 

僕の中にあるもう1つの夜天の魔導書……いや、それに類似した魔導書を呼び出す。

 

夜天の魔導書との相違点といえば表紙が紫色なところだろうか、それ以外に見た目の違いはない。

だが、記されている魔法は夜天の魔導とは正反対のものばかりだ。

 

「キミが残したこの魔導書……なんの意味があるのか僕にはわからない。けど、この身体の“管制融合機”としての役割を果たすなら僕は……」

 

魔導書を左手で触れて消して僕は空を見上げる。

記憶の片隅にある大切な記憶、霞んでいてはっきりしないけど僕の目的は何も変わらない。

 

「必ずキミを救う。ユーリ、記憶は定かじゃないけど僕の探していた人がキミだとはっきりとわかる」

 

僕の中に宿る3つの魔剣

その全ての力を使ってでも、僕の全てを使っても必ず救ってみせる。

 

「目指したこの道の果てで、何が待っていても……」

 

みんなで笑える世界を作る。

その為に僕は戦い続ける

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