そこで読者の皆様にアンケートを実施します。
アンケート次第でエンディングが分岐しますのでよろしくお願いします
2人の少女は大空を駆け抜ける。
目的の場所はこの先に見える戦闘が行われている場所。
魔法とフォーミュラの融合を果たした強大な砲撃が乱射されている戦闘区域へと全速力で駆け抜けていた。
「さっきさ、クロヴィスにはああ言ったけど……ユーリにはやっぱり言っておきたいことがあるの」
「……?なんですか?」
ユーリは俯きながら隣を飛ぶイリスに首を傾げて問いかける
「ユーリにはひどいこと沢山したから……話を聞かなかったし、たくさん傷つけた。あの子達とも戦わせてたくさん泣かせたりもした。許してくれるなんて思ってないしあたしはユーリに殴られても仕方ないと思ってる。けど、せめて謝らせて欲しいの。ホントにゴメン」
ユーリの顔をしっかりと見て謝るユーリに彼女はクスリと笑って言葉を返した。
「それを言うなら私もそうですよ。私はイリスのこと一度殺してしまってますから。これくらいのことは覚悟してました」
でも、とユーリは続ける。
「クロヴィスの様子を見ると私たちを救うために払った代償は計り知れないと思います。私たちが確認できただけでも記憶の殆どを失ってるみたいでした。私たちを救ってくれたように、今度は私たちがクロヴィスを支えていかないといけないんです」
「……そうね。その為にも、負けられないわけか……」
「負けませんよ。私とイリスなら」
「うん、あたしもユーリとなら誰にだって勝てる。たとえ相手が所長だって」
2人の少女はその言葉を最後に更に速度を上げてその空域まで飛び去っていった。
ユーリやイリスを配下に置き、自身に立ち向かう少女たちですらウイルスコードで支配することができると思った瞬間、フィル・マクスウェル……もとい『侵略武装マクスウェル』はふと、違和感に気がついた。
ウイルスコードが目の前の少女たちに一切効くそぶりがないことに
(何が起きている……この白い粒子が関係しているのか?)
並列思考でそんなことを考えながらなのはとフェイトを圧倒していくマクスウェル。
ウイルスコードでこの子供達を支配下に置くことはここでなくともできる。ならば、先に動けなくして仕舞えばいい。
そう考え、今まで以上の速度でなのはへ接近して武器を振り下ろした瞬間。
無数の赤い槍が降り注いだ。
「っ!何者だ!」
「わかりませんか?マクスウェル」
「ユーリ!」
「ユーリちゃん!」
紅蓮の翼から無数の赤槍を展開させてマクスウェルを睨みつけるユーリとなのはとフェイトを自身と同レベルのアクセラレイターを使って回収して安全地帯まで運んだイリスを見てマクスウェルは舌打ちした。
「ユーリもイリスも、これはどう言う冗談かな?私たちは家族、そうだろう?」
「そうですね。数十年前なら確かにそう言えたかもしれません。ですが、私とあなたはあの日に決別しました。そうでしょう?」
「あたしも、あたしの親であった所長は……あの日に罪を暴かれてユーリに殺された。あたしの所長はもうこの世界にはいない。貴方は所長の姿をした只の群体と同じだわ!」
「いけないな、親に向かってそのような口を利いては」
やれやれと呆れたように首を振るマクスウェルにイリスは目を閉じて覚悟を決めた。
そして、ポケットから試験官のようなものを取り出してフェイトへと渡す。
「これ……」
「私のもってるオリジナルのナノマシンよ。アミティエから受け取ったやつなんかよりも強いやつだから使うなら少しだけ使いなさい。それと、ここから丁度真上の衛星に最後の群体のあたしがいるわ。衛星砲の守護用の奴だから宇宙まで上がんなきゃいけないけど……」
「大丈夫です!私とフェイトちゃんで止めてきますから!」
両手でグッと握りこぶしを作ったなのはにイリスは微笑んだ。
「あの人との決着はあたしとユーリでつける。2人には悪いけど宇宙の方を頼むわね」
「「はい!」」
飛び去った2人を見送ってイリスはユーリの隣へ並び立ち、マクスウェルを見つめ、剣を構えた。
「イリスもユーリも私のところへ戻って来る気はないのかい?」
「ありません、たくさんの犠牲を払って私を助けてくれたあの子のためにも」
「“私”の幸せはもう過去にはないわ。私とユーリのために全てを投げ打ってくれたあの子達のために私はこれから生きる!それが、私の幸せで!私に出来るあの子たちへの償いだから!」
確固たる意志で2人の少女は目の前の男に言い放つ。
マクスウェルは不敵な笑みを浮かべて首を振った。
「やれやれ、言葉でわからないか。ならばここから連れ出してまた私の子供にしてあげよう!」
ノーアクションでアクセラレイターを発動させたマクスウェルに対してユーリとイリスも同時に動き出す
「行くわよ!ユーリ!」
「ええ!終わらせましょう!イリス!」
そして、地上で最後の戦いが幕を開けた。
紅の翼……魄翼から勢いよく無数の槍が射出される。
フォトンランサーを優に超えるその速度を持って20を超える赤槍が意思を持ったようにアクセラレイター・オルタをフル稼働させて逃げるマクスウェルへと殺到する。
「厄介だな、まだこれほどの魔法を隠し持っていたとは……」
「そうね、私もこれほどの魔法をまだもってたとは思ってなかったわ」
「なにっ!?」
マクスウェルの独り言に答えるように同じくフル出力のアクセラレイターを使ったイリスが現れてマクスウェルに蹴りを入れ、追従してきていた赤槍の中へと吹き飛ばす。
「ぐあああああっ!」
迫り来る赤槍は寸分たがわずマクスウェルへ直撃し、その全てが着弾と同時に魔力爆発を起こす。
「やった?」
「まだです!」
明らかに大きなダメージを負ったマクスウェルだが、爆炎の中から現れたその姿に損傷は見られない。
「流石にこの程度ではやれませんか」
「当たり前さ、私のこの体はそこらの群体とはそもそも基本スペックが違う。通常の群体の数百倍のコストで私は自分の身体を作ったからね」
未だに余裕の表情のマクスウェルにユーリとイリスはあからさまに嫌な顔をする。
「傷つくな、そのような顔をされては」
「そうですか、ですがイリスの負った心の傷はもっと大きいです!…………行きなさい!セイバー!」
魄翼がその姿を剣に変えてマクスウェルへと襲いかかる、
だが、マクスウェルは迫り来る紅蓮の剣を避けて切り払っていく。
「相手がユーリだけじゃないこと、忘れてない?」
「忘れてないとも、油断は一切していない」
飛んでくる紅蓮の剣を叩き落としながら不意に現れたイリスに対しても焦ることなく的確に対応していく。
イリスは手に持った武装を次々と変化させてユーリの放つ無数の魔法に合わせるように戦場を駆け回る。
「紫天の書、私とのリンクはどのくらい進みましたか?」
《解、現在89%です。盟主ユーリとの完全リンクまであと5分ほどで完了します》
「わかりました。それじゃあ私とイリスのリンクは?」
《解、現在98%です。盟主ユーリと盟友イリスとのリンクまであと30秒》
紅の矢を飛ばしながらそれの中を駆け巡りマクスウェルと戦うイリスを見つめながらユーリは紫天の書とのやりとりを数秒行う。
そして、その言葉を聞いてすぐにユーリとイリスの中で“カチリ”と何かがハマったような音が聞こえた。
そして、2人は同時に口角を上げる。
この男に“勝つための手段”の1つがここに出来上がった。
イリスという存在はその存在上“魔力”というものを扱えない。
ユーリという存在はその存在上“フォーミュラ”というものを扱えない。
たとえ、イリスが持つナノマシンをユーリに与えたとしてもユーリの身体の内側からそれを強制的に消滅させるだけの力を彼女の身体は持っている。
ならば、お互いに持つ力をお互いの技に乗せればいい。
ユーリがイリスの攻撃に魔力を乗せ、
イリスがユーリの攻撃にフォーミュラを乗せる。
高町なのはが1人でやっていたことをイリスとユーリ2人で行う。
効率が悪い、と言われればそれまでだ。
成功率が低い、と言われても終わりだろう。
一方的な憎しみが長い間続いてそれが少女を傷つけた。
言葉を伝えられずに友を殺め、長い時を経て傷つけられた。
だが、それでも心が繋がっていた時間は少女たちも長かった。
「「イリス(ユーリ!)」」
お互いに考えることがわかる。
次に何をする、ユーリの魔法の軌道やイリスの駆け抜けるその軌跡がお互いに全て観えていた。
イリスとユーリ、2人の力は数秒ごとに進化していく。
戦いの中で2人はさらに加速していく。
矢を放つ速度、剣を振るう速度、剣を飛ばす速度、魔法を発動させる速度、武器を切り替える速度。
その全てが数秒ごとにマクスウェルの許容範囲を超えていく。
「……なんなんだ!なんなんだキミたちは!」
額に汗を垂らし、追いつかない思考の中でマクスウェルは悪態を吐く。先ほどまでは確かに対処できていた。
だが、これはなんだ。
途端に自身の観測範囲を超える反応を見せた2人にマクスウェルは動揺を隠せない。
そして、このまま最悪の事態が自分の中で導き出される。
「私が……イリスとユーリに、負ける?」
既に虎の子である“アクセラレイター・オルタ”はフル出力で使っている。身体の負荷も気にかけずに限界を超えるような出力で使用しているはずなのに、自分の身体には次々と傷跡が増えていく。
「負けて……たまるかあああぁああああ!」
《紫天の書、リンク100%です。盟主ユーリ、盟友イリス。さあ、新たな運命の始まりです》
叫ぶマクスウェルと同時にユーリとイリスの間に機械的な魔導書の声が響く。
「魄翼っ!」
ユーリの背後に翼のように滞空していた魄翼が勢いよくマクスウェルを握るように捕まえる。
「これで終わりです、マクスウェル!」
「私は罪を償って、大切な友達と家族と一緒に歩き出す!」
“あたしを生み出してくれてありがとう、所長”
言葉には出さない。
だが、その言葉をしっかりと胸の中で呟いて目を開けた。
「イリス、手を握ってもらえますか?」
「うん、もちろんだよ。ユーリ」
しっかりとお互いの手を握りそして空いた方の手でイリスの持つライフルへと手を伸ばす。
2人から溢れ出す魔力とフォーミュラの余剰エネルギーが燦めく星のように2人の周りを包みこむ。
ライフルの先端にエネルギーが充填されるのと同時に2人の周りに無数の魔力スフィアが現れる。
赤、青、紫、白、四色の魔力スフィアは既に20を超えるほどの数が2人の周りに滞空している。
「これが私たちが前に進むための最後の一撃です!」
「いっけえぇぇぇえええ!」
カチリと2人の指が引き金を引いた。
その瞬間、手に持ったライフルから発射されたフォーミュラと魔法の合わさった砲撃とともに炎、雷、闇、光の属性を持ったスフィアから無数の光線がマクスウェルに向かって放たれた。
魄翼に掴まれ、身動きの取れないマクスウェルは為すすべなく光の中に包まれる。
ユーリとイリスが放った一度だけの奇跡。
魔法とフォーミュラの融合、ディアーチェたち4人の持つ属性のスフィアから放たれる中距離殲滅コンビネーション『デスティニーズ・プレリュード』
轟音と爆風の中からマクスウェルの叫ぶ声が聞こえるが、自分たちの放った技の威力が尋常ではないことくらい2人ともわかっている。
ユーリはマクスウェルへの着弾が確認できた時点で魄翼を自身の元に戻して自分とイリスを守るために魄翼で防壁を作って被害を防いだ。
それと同時に遥か上空の宇宙でも爆発が起きた。
2人の少女が桜色と金色の流星となって降りてくるのがイリスとユーリにも観えている。
爆発が収まり中心地へ向かえば手足が吹き飛び、外装が剥がれ無惨な姿になったマクスウェルが地に転がっていた。
「イリス、ユーリ。君たちにはしてやられたよ。まさかここまでの力を隠し持っているとは思わなかった」
既に視界もかすれてよく観えていないであろうマクスウェルが剥き出しになったカメラでユーリとイリスを見る。
「私たちはもともとこんな力を持ってたわけじゃないです。クロヴィスが託してくれたこの本があったからたった一度の奇跡を起こせただけ」
「奇跡、か。そのようなもの、私はついぞ信じることはなかったよ」
吐き捨てるように、しかし感慨深いようにマクスウェルはそんな言葉を吐いた。
「ユーリは私を許してくれた。キリエやクロヴィスたちにだってこれからきっちり謝って許してもらっていく。過去はもう戻らない、私たちと所長の過ごしたあの日々は、あの日にもう終わったのよ」
「そうだね、それを壊した本人が……私な訳だが。イリス、君はどうする?今ならば私をこのまま殺すこともできる。本当の復讐はそれで終わるよ」
目の前に転がる既に機能の停止寸前のマクスウェルを見てイリスは目をそらすことなく真っ直ぐに答えを返した。
「何もしない。貴方には『侵略武装マクスウェル』として罪を背負って生きてもらう。あの日、犠牲になったみんなのためにもここで殺して楽な道なんて選ばせてあげないんだから」
拳を強く握って涙を堪えてそう告げたイリスにマクスウェルは再び空を見上げて1つ、呟いた。
「そうか……イリスも強くなったね」
その声は遠い日の優しい彼の声音に重なった。
確かに今マクスウェルは無意識のうちにあの頃の自分のような気持ちでそう呟いたのだった。
「あの時、あの黒猫に邪魔をされたのは必然だったわけか……道理で、勝てなかったわけだ」
雪のように降り注ぐ白い粒子を見つめながら静かにマクスウェルはその瞳を閉じた。
次に眼を覚ます時は牢獄にでも入れられていることだろうと気を遠くしながら。
それから数週間後。
事件の後片付けやゴタゴタが終わり、ユーリやイリスをはじめとしたエルトリア組はエルトリアに帰ることとなる。
事件解決の翌日に復活したディアーチェ、シュテル、レヴィは“ある目的”のため自身たちの再生速度を最低限に抑え、“姿のみ”消滅前の姿で復活して、魔力に関してはほぼない状態でそのリソースを別のところへ回していた。
「クロ、まだ起きないね」
「仕方ありません、クロはああ見えて寝坊助ですから」
浮かんでいる紫天の魔導書をツンツンと突くレヴィを見てシュテルは同じように紫天の魔導書を突いた。
「お前たち、その辺にしておけ。そんなことでクロヴィスのやつの寝起きがさらに悪かったらどうする」
ディアーチェがエルトリアに持っていくための農業書や建築書を選別しながらシュテルとレヴィに呆れたように声をかけた。
「それにしてもあんたたちはクロヴィスのこと“クロ”って呼んでたのね?私もその名前で呼んでもいいかしら?」
「ダメだよ〜。それはボク達だけが呼んでいいあだ名!」
「ええ〜いいじゃないのよ!私も家族みたいなもんでしょ!?」
まさかのレヴィからの否定にイリスはレヴィに抱きついてお腹と顎の裏を同時に撫で回した。
「んっ!ちょっ……イリスっ!それダメっ……!」
「あんたがここ弱いの知ってんだからね!」
猫の頃からの弱点を攻撃されて完全にふやけてしまったレヴィを見てシュテルはそーっとその場から離れる。
今になって思い出したのだ、イリスの撫でテクは自分たちが一瞬で撃沈してしまうレベルのものだったと。
「さーてシュテルは……」
「わ、私はいいと思いますよ。クロのことあだ名で呼んでも」
「ふーん、そうなの?」
明日は我が身とはよく言ったものだ。
ここで首を横に振れば同じ目にあうのは必至。
ならばとそこで伸びて痙攣してるレヴィのようにはならないとシュテルは首を縦に振った。
「まあ、それはいいわ。それより、久しぶりに撫でさせなさいよ」
「えっ!」
ほぼゼロ距離にいた為、回避することも出来ぬままシュテルはイリスに捕まってそのままレヴィと同じ末路を辿った。
具体的にはよだれ垂らして虚ろな目で痙攣している。
「イリス、そこまでにしてやってくれ」
「わーかってるわよ。そろそろユーリも帰ってくるしね」
最後の処理を終えたユーリが部屋に戻ってくれば後は明日エルトリアへと帰還するのみだ。
残念ながら、クロヴィスのみがまだ復活できていない為全員で帰還ということは出来ないのだが。
「安心せい、あやつなら必ず眼を覚ます。頑張りすぎたから少し休眠が我らよりも長いだけだ」
不安そうな瞳で紫天の魔導書を見つめるイリスの頭にディアーチェは手を乗せて微笑んだ。
「あんたにそう言われるとなんか安心するわ。流石、あの子達の王様やってるだけあるわね」
「当然だ、我は王だからな」
ニヤリと笑ったディアーチェに誘われるようにイリスも笑顔になった。
プシュッと扉の開く音がすればそこには急いで帰ってきたであろうユーリの姿があった。
「ただいま戻りました!クロヴィスは……まだ、みたいですね」
部屋の中を見回して1人足りない事実を認識すればユーリはディアーチェの隣の椅子に座る。
「明日の出発時刻ですが、地球時間での午前10時だそうです」
「そうか、ならば今日はすぐ眠らなければならんな」
手元にあったコーヒーを一口すすったディアーチェはユーリの話の続きを待った。
「それでマクスウェルですが……」
ユーリの口から正式に決まったマクスウェルの処分がみんなに伝えられた。
管理局の軌道勾留場にて数十年の拘束を受けたのち本人の希望次第で管理局に従事との事だった。
「そっか」
「はい」
「殺されたりしなくて…………よかったっ……」
静かに涙を流すイリスをユーリはそっと抱きしめた。
そしてその光景をディアーチェとシュテルとレヴィは優しい瞳で見つめるのだった。
この後のクロヴィスに
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みんなと笑える世界で幸せを
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そのまま目を覚まさない