また、この後のアフターストーリが欲しいと言う方がいましたらアンケートを設置しておきますのでご協力お願いいたします
何もない空間で僕は漂っていた。
瞳を開けることはできない。
四肢に力が入らない。
言葉を発することすらできない。
さて、僕は誰だっただろうか。
そんなことすら思い出せない。
なんでこんなところにいるのか。
どうして、こんなことになっているのか。
なにも、わからない。
そうして、このまま消えていくのだろうか。
だけど、それでもいいと僕の中の何かが告げている。
やらなければならないことは全てやったと僕の心が告げている。
“ああ、だったらもう大丈夫”
「だが、それではお前が救われないな」
“それをキミが言うのかい?”
懐かしいような声に僕は反射的にそう返した。
「私は十分救われたよ。あの暗闇の中で君に会えたのが私にとって1番の救いだったさ。君と過ごした日々が私にとっての宝物だった。だから、我が友“クロヴィス」
聞こえる声にその名を呼ばれた瞬間、全身に力が入った。
視界は開けて、口は自由に動く、言葉を発しようと目の前の女性へと視線を向ける。
僕と同じ姿、僕と同じ瞳、僕と同じ声の女性は微笑んだ
「私の分まで生きてくれ。あの世界で私の見ることのできなかった美しい世界をその目にたくさん刻んできてくれ」
美しく微笑み、僕の胸をトンッと押した。
先ほどとは違う明らかな浮遊感に包まれて僕と彼女の距離は離れていく。
お礼を言わなきゃならない。
だけど……彼女の名前が出てこない。
僕だけが呼んだ彼女の名前が…………っ!
彼女に手を伸ばして待ってくれと声を上げる。
だが、僕を見送る彼女はとても清々しいほどの笑顔で手を振っていた。
「…………ネ」
小さく、それでも確かに頭の中にそれが浮かんだ。
「…………ハネ」
僕はその名をきっちりと叫ぶように呼んだ。
「クロハネ!キミの代わりにたくさん美しい世界を見て回ってくる!キミが救った主の姿も!キミが見たいと言ったものを全てこの目に心に刻み込んでくる!だからその時は……!」
「ああ、待っているさ。だから、私に会いにくるのはゆっくりでいい。我が友よ、キミの行く道にたくさんの祝福があらんことを願っているよ」
僕から抜け落ちていた思い出が少しだけ戻ってきた。
細かい記憶なんかは思い出せない。
せいぜい僕の名前と大切な家族の名前くらいしか僕には思い出せない。
あとは、直前になにがあったか覚えてる程度だ
白い空間に僕1人。
だけど、不安はない。
ここから出る方法も今ならわかる。
『行くのか、我が主』
手元に純白の剣が現れて僕に問いかける。
「行くよ、ブランリュゼール。ここから始めるんだ。僕の命は」
手にそれが現れたというのに僕にはなんの影響もない。
この間までの代償が嘘のようにその剣が僕の手にあるのが普通のように感じる。
それはきっと僕の髪の毛先が翡翠色に変化してるのが原因なんだろう。きっと、彼らに認められたからこうなったに違いない。
「代償はもういいのかい?」
『主の見極めはもう終えたさ。これからは我らのことを自由に振るうといい』
「そっか、それじゃあ。頼らせてもらうよ」
ブンッと純白の剣を横に一閃する。
空間がひび割れ、崩れ落ちていく。
「いってきます、クロハネ」
“ああ、いってらっしゃい。クロヴィス”
親友に送り出されて僕は崩れていく空間を一歩前に出た。
フワッと、風が僕の髪を撫でる。
大きく息を吸えば花の柔らかな香りが胸いっぱいに広がった。
瞳を開けば一面に美しい花畑が広がっている。
天から溢れる優しい光が花畑と僕を包み込み、まるで僕がここにいるのを祝福してくれるように柔らかな日差しを浴びせてくれている。
「───」
遠くの方から声が聞こえる。
どんどん近づいてくるのを確認できたから誰が走ってきているのだろうか。足取りは急いでいるようで待ちきれないという感情がそのまま乗っかっているかのようだった。
「───ス、───ヴィス!」
何かと思えば僕の名前を呼んでいるようだった。
ゆっくりと背後を見ればここに来る前に少しだけ思い出せた大切な人たちがその瞳に涙を溜めて僕を見つめていた。
「───ただいま」
「おかえりなさい!クロヴィスっ!」
金髪の少女、ユーリが走ってきて僕の首に腕を回して抱きついた。それを受け止めるように手に持っていた剣を消して僕はユーリを抱きしめ返した。
「本当に……ほんとうに……おかえりなさいっ!」
「うん、ただいま。ユーリ」
僕の首に顔を埋めて泣きじゃくるユーリの頭を撫でながら僕は駆け寄ってきたみんなの顔を見て頷いた。
「みんなも、ただいま」
「ほんと、クロは寝坊助なんだから……っ!」
「私たちが……どれだけ、まったと思って……っ!」
レヴィとシュテルがユーリごと僕を抱きしめてくれる。
密かに2人が泣いているのを僕は見逃さなかった。
「ほんと、遅いのよ……クロヴィスっ!」
イリスが僕の背中から抱きついて顔を僕の横に出して綺麗な笑顔で笑っていた。
「あの日、お前が眠ってから今日で丁度10年だ。本当に長かった……長かったんだ……」
僕の頭に手を置いて、ゆっくりと撫でながらディアーチェはそっと涙を流す。それを払うように首を振って再び目を開いた。
「よく、帰ってきた」
「うん、ただいま。ディアーチェ」
気がつけば僕の背丈もクロハネよりも少し大きいくらいにまで伸びていた。人で言うところの20歳そこそこといったところだろうか。
周りのみんなを見ても最後に見た時とは全然違った。
きっちりみんな成長して一人前の女の子と呼べるくらいに綺麗に成長していた。その過程を一緒に過ごせなかったのは残念だけど、それは僕のわがままだろう。
今の僕にはみんなの名前と少しだけの想い出しか残っていない。
あの時、魔剣を継承したことを後悔するかと問われればきっと僕は首を振るだろう。
あの時、魔剣を継承したからこそ僕は親友に出会い。大切な人たちがこうして笑える世界を作れたんだから。
代償として剥がれ落ちた想い出は沢山ある。
沢山、いろんな人と約束をしたような気がする。
それももう、思い出せないけど。
それでも、僕にはこれから歩んでいける
大好きな人たちときっとこれからたくさんの思い出を作っていける筈だ。
だから──────
「そろそろ時間よね」
「ですね、観測結果的にあと何分もしないうちに見れると思います」
それから数週間後、僕はイリスとユーリに連れられて家から少し遠い山の山頂に足を運んでいた。
かつて僕がユーリとイリスとしていたという約束の1つである“星を見にいく”という約束を果たすために。
「ねえ、クロヴィス」
「ん?どーしたの?」
「あたしね、あんたに会えてよかったわ」
星空を見上げながらイリスはなんてことないように僕にそう告げた。その言葉にどんな想いが乗せられていたか、それは僕にはわからない
「僕もだよ。イリスに会えてよかったと思ってる」
「むー。私はどうなんですかー?」
少しだけふてくさったように頬を膨らませるユーリに僕は笑いながら答えた。
「もちろんユーリもだよ」
「ほんとですか?」
「もちろん」
その言葉に少し満足したのか僕の肩に頭をちょこんと乗せて重心を僕に預ける。
「……はあ、まったく。ユーリの甘えっぷりったらどうしたものかしらね。この2週間、ずっとじゃないの」
「数十年間、まともにクロヴィスと触れ合えてなかったですから」
「それ、私も同じなんだけどね」
呆れ返ったように星空に視線を戻すイリスにつられて僕たちも視線を空へと戻す。
その瞬間、
キラリと一条の流れ星をきっかけとしてこのエルトリアで数十年に一度見れるという流星群が空を埋め尽くす。
「……すっごいなあ」
「私とイリスがこれを見たのは出会ってすぐの頃でしたね」
「そうねぇ、それも50年くらい前になるけど」
僕がその光景に釘付けになっているとユーリとイリスはこれを始めてみたときの話を始める
「2人ともまだ若いんだから年寄り臭いこと言うのやめなよ」
「ひっぱたくわよクロヴィス」
「やめてあげてくださいね?イリス」
完全に目が座ってるユーリにイリスは少し顔を引きつらせる
「冗談よ」
「ならよかったです」
静かに3人で星を眺め続ける。
圧倒的な光景に心を奪われたようにその光景に釘付けになる。
ふと、隣を見れば幸せそうな顔で空を見上げる2人がいて僕はあの時の選択が間違いじゃなかったと今、確信した。
「ねえ、クロヴィス」
「クロヴィス」
僕の目の前に立った2人を僕は見つめ返した。
「私は」「私ね」
「「クロヴィスのことが───」」
無事、合計17話で完結いたしました。
毎話感想をくれていただいていた方々、本当にありがとうございました。感想をくれたおかげでモチベーションが上がってここまで来ることができました。
また、この作品に評価をつけていただいた皆様方にも感謝を申し上げます。高評価をくれた方々も厳しい評価をくれた方々にも本当にお礼を申し上げます。
この後のアフターストーリーは前書きにも書いた通り下記にてアンケートを行いますのでそちらにご協力をお願いいたします。
アフターストーリーで見たいものを選んでください。作者の気力の持つ限り順番でやっていきます。
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ユーリ√アフター
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イリス√アフター
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ディアーチェ√アフター
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シュテル√アフター
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レヴィ√アフター