僕たちの宝物   作:今井綾菜

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今日からアフターストーリーを投稿していきます。
結果は
ユーリ→シュテル→ディアーチェ→イリス→レヴィ
の順番になっていきます。
第一弾としてユーリ√第1話です。




ユーリ√ そして僕は君の隣にいる
episode1


僕が目をさましてから数ヵ月後、僕はユーリと一緒に新しく建てた小さな家に2人で住んでいた。

みんなが住むフローリアン家の家からは歩いて5分くらいの場所にポツンとその家は建っている。

 

「で、その後はどーなのよ。ユーリと2人で住んでみて」

 

「僕が目をさましてからとあんまり変わんないかな。僕が眠ってる間に惑星の再生もかなり進んで人も戻ってきてユーリの仕事もあんまりなくなったみたいだし、家の裏に作ってあった畑を2人で育ててのんびりしてるくらい」

 

「ほんとにそんだけなのー?ほら、2人きりなんだし私たちと一緒にいるとできないこととかあるじゃない?」

 

「何を言わんとしてるかわからなくもないけど、ちょっと恥じらいを覚えようか、イリス」

 

そんな僕はユーリがディアーチェたちと買い物に行っている間にフローリアン家にて畑の手伝いをしながらイリスと他愛のない話をしていた。

 

「ま、でも実際。あんたが寝てる間に色々あったのよ。グランツは延命できたとはいえ5年で死んじゃったし、エレノアも今は知っての通りユーリによる治療中でしょ?エレノアの方はまだ初期段階だからなんとかなるけどね」

 

「僕の知ってる2人はまだ小さな子供だったからなぁ。立派な親になってたとはつゆほどにも思ってなかったよ」

 

「それは私も思ってたわ〜グランツとエレノアが?ってキリエとあった頃に考えてたもん」

 

「僕は面影があるかなくらいかな。顔合わせる機会は10年前はあんまりなかったし」

 

記憶の片隅にあるまだ小さかった少年と少女のことを何となく思い出して苦笑する。

こういう思い出は残ってる癖にほんとに大切なものばかり持っていくんだから僕の中にある魔剣にも困ったものだ

 

そうこう話してるうちに少し遠くの方から聞き慣れたエンジン音が聞こえ始める。

 

「あ、ユーリたち帰ってきたわね」

 

「だね、それじゃあお迎えに行こうか」

 

僕とイリスは立ち上がって近くの水道で顔と手についた土を落としてみんなの帰ってくる方へと歩いていく。

家の方まで歩いていくとユーリたちの乗った少し大きめの車はちょうど車庫にあたる場所に入ったところだった。

 

「戻ったぞ」

 

「お疲れ様、目的のものは買えた?」

 

「ぼちぼちといったところだな。外のものは最近はだいぶ出回るようになってきたがある程度揃えるとなるとやはり時間がかかる」

 

「そーよねぇ。とりあえず、ご苦労様♪」

 

ディアーチェとイリスがトランクに積み込まれた荷物を見て話をしていると僕の隣には当たり前のようにユーリが立っていた。

 

「ユーリもお疲れ様」

 

「私は大したことはしてませんから、ディアーチェとシュテルがリストを決めてレヴィがもの凄い勢いで回るだけですからね。私は魄翼を使って荷物を持ったくらいです」

 

そんなことを言いながらしっかりと僕の右手を握っているあたり、みんながいる前では控えるようにはなったがそれでもやっぱり甘えることは辞めないらしい。

 

「いいの?みんないるけど?」

 

「手くらいは繋がせてください。半日もクロヴィスから離れてたんですから」

 

僕が目覚めたその日のうちにユーリは《僕が目を覚まさなかった世界線》の夢を見たらしい。

その日から目が覚めたら僕がいないとか出かけて帰ったら僕がいなくなってるとかそういう風に考えてしまっているみたいだった。

 

だから、基本的には僕のそばから離れないし離れる時も誰かしら必ず僕の側にいた。

流石に僕もこの甘えっぷりというか、くっつき具合はどうかと思ったが、あの日見たこの世の終わりのような顔を思い出すと何も言えないでいた。

 

 

 

 

 

 

その日の夜、僕とユーリは日課になっているバルコニーで椅子に座りながら星を眺めていた。

 

「そういえば、クロヴィスは何で私を選んでくれたんですか?」

「どうしてって言われもね」

 

ユーリの口からこぼれた言葉に僕は考えた。

イリスとユーリと星を見にいった日、流星を見ながら同時に告白されたあの時、僕はユーリの手を取った。

イリスは少し悲しそうな目をしたけれどすぐに僕たちを抱きしめて祝福してくれた。

 

あの時、僕がどうしてユーリの手を取ったか。

あたらめて聞かれると少し困る。

 

「それがユーリだったからだと思うよ。僕が生きてる中で一番一緒に過ごしたのはこの姿の元となったクロハネだったけど、僕にとって一番大切な人って聞かれると僕はきっとユーリって答えると思う」

 

目を閉じて、再び開く。

満点に広がる星空を見つめながら僕はユーリの瞳を見ることなく言葉を続けた。

 

「僕に生きる幸せを教えてくれたのはユーリだ。僕に暖かい世界を教えてくれたのはユーリだ。僕を生かしてくれたのはユーリだ。だから、自然と僕はユーリの手を取ってたんだ」

 

ユーリを見ると顔を真っ赤にして俯いていた。

少し冷えたユーリの手を取って僕はまっすぐに瞳を覗き込む。

 

「僕はユーリのことが好きだよ。ほんとに大好きだ。だから、ってことでわかってくれないかな」

 

「あ……あう」

 

更に赤くした顔で俯くけど、僕はその顔を覗き込むように少し頭を下げてユーリの顔を見る。

 

「わ、私も……クロヴィスのことが好きです。でも、どうしてって聞かれるとやっぱり恥ずかしくて……言えなくて……」

 

「それでいいと思うよ。僕がこうして人の姿を取っていることが奇跡に等しいことなんだ。きっと、猫の姿のままじゃユーリが僕にこうして恋愛的な感情はむけてくれなかったと思う。だから、僕はそれでいい。ユーリが僕を好きでいてくれて、僕がユーリのことを好きでいられる。40年前には考えられないような奇跡じゃない?」

 

僕が笑ってそう問いかければユーリは頷いて笑った。

 

「そう、かもしれないですね。でも、奇跡でも私はこうして貴方と話せている。貴方に……その、好きだって言ってもらえる。それがたまらなく嬉しいんです」

 

こうして彼女が自然に微笑んだのを見たのは久しぶりだった。

何かに追い詰められるような顔をして、そして僕を見て安心したように胸をなでおろす。

そんな日々の中で自然とあまり笑わなくなっていたのは僕の中でずっと心に引っかかっていた。

 

こんなことなら目覚めない方が良かったと心の底から思っていた。

 

あの頃の僕の願いはたった1つ。

ただ、あの日々の中で笑っていたユーリに戻って欲しかった。

僕たちが遊んでいるところを見て笑って

イリスと他愛のない話をして笑って

僕たちに話しかけながら微笑んでくれたあの日々のようにキミに笑って欲しいだけだった。

 

だから、あの時僕は痛みなんて感じなかった。

欠けて落ちていく想い出に恐怖を感じなかった。

自分が誰だかわからなくなっても始めに誓ったことは何1つ変わらなかった、忘れなかった。

 

僕にとって陽だまりのような笑顔をずって見せて欲しい。

時には曇るかもしれないけど、その時は必ず僕がその曇りを晴らしてみせるから

 

「僕は、どこにも消えないよ。ずっと、ユーリのそばにいる」

 

そっと立ち上がって、目が覚めてからクロハネよりも大きくなった背丈のまま少しだけ背の伸びたユーリを抱きしめる。

 

「だから、安心して眠ってもいいんだ。今日のおやすみの次は明日のおはようが必ずあるから」

 

「本当ですか?約束……してくれますか?」

 

「うん、約束するよ。僕は絶対にいなくならない」

 

10年という月日はユーリにとって大きな傷跡になって残ったとディアーチェとイリスが口にしていた。

あの戦いの日、僕はユーリとイリスが飛び立つ姿を見送ってその姿を消した。

正式には紫天の魔導書の中で眠っていたわけだが、ディアーチェ達が翌日には再び体を構成して戻っていたにもかかわらず僕だけが“抜け落ちた記憶の修復”と“変わりすぎた体の構成”に時間がかかってしまったという。

それでも、結局は記憶の定着が上手くいかなくてこうして僕がみんなのことを覚えてて何があったかとか少しだけある記憶があるだけでもすごいことだとディアーチェは言っていた。

実際はクロハネが僕にとって大切な人の名前と少しだけの想い出のカケラを僕に与えてくれたからこうして何不自由なく過ごせているのだ。

ただ、それだってあるはずのない奇跡だったはずだ。

ユーリのまた夢のように僕が永遠に目を覚まさない未来だってあったはずなんだから。

 

ユーリは僕もすぐ目覚めるだろうと思って日々を過ごしていたが半月経っても一年経っても目覚めなかった僕に言いたい言葉を言えない辛さに押し殺されそうになっていたと聞いた。

 

たった一言

 

“助けてくれてありがとう”

 

それを伝えるのに10年もかかったと目覚めた日にユーリは語ってくれた。

どこか疲れ切った表情で、それでも明るく振舞っていたユーリを僕は見ぬふりはできなかった。

だからこそ、ユーリの告白を受け入れた後はここにこうして2人で過ごし始めた。

少しでもユーリの心の傷を癒せるならと少しでも笑ってくれるならと必死に頑張った。

 

そして、それは報われた。

ほんの少しだけど、まだまだ小さな一歩だけどユーリがちゃんと笑ってくれたんだから

 

「なら、安心できました。クロヴィスは……嘘はいいませんから」

 

うとうとと船を漕ぎ始めたユーリの背中をトントンと小刻みに叩く。

 

「ゆっくりおやすみ。また明日、いっぱい話そうね」

 

「はい……おやすみなさい。クロヴィス……」

 

すぐに小さく寝息を立て始めたユーリを抱きしめたまま僕は星空を見上げる。

ここのところずっとユーリの眠りが浅いのは知っていた。

僕が消えていないか、いなくなってないか心配と不安でまるで確認するかのように目を覚ましては僕の姿を見て服の端をつかんで寝っていたのを知っていた。

 

今日のことで安心して眠ってくれるなら僕はいくらでもユーリに大好きだと伝える。いなくならないと抱きしめて伝えるだろう。

 

ユーリがあの頃のように笑えるまでまだ時間はかかるかもしれない。

けど、僕たちには沢山時間がある。

だから、ユーリ。

これからたくさん想い出を作りに行こう。

君が心から笑えるようなステキな想い出を

 




導入としては少し暗めな感じでしょうか。
それでも、十年間会えなかった重みや苦しみや傷跡って凄いと思うんです。
次回から少し明るめな感じにしていきますのでお付き合いいただければ

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