僕たちの宝物   作:今井綾菜

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第4話

『おい、クロヴィス』

 

珍しくディアーチェが僕のことをちゃんとした名前で呼んできた。彼女の顔を見るところ普段の二割増して鋭い目をしてることろをみれば相当に大事な話だろうと察しはついた。

 

『どーしたの?』

 

『お前、変な人形が敷地内にいるのを知っているか?』

 

それは先月シュテルに言われた例の人形のことを指しているのだろう。たが、それを僕が知っていると口にしていいのだろうか

 

『目撃したのは我だけではない。我が見たときにはシュテルもレヴィもいた。故にお前にも問いかけておこうかと思ってな』

 

ディアーチェが見たときにシュテルもいたなら僕も話してもいいだろう。それに僕だって日がなずっとユーリやイリスの膝の上にいるわけではない。

 

『僕も見たよ。見たのは荷運びしてるような場面だったけど』

 

『お前もか、何故それを我に言わん』

 

『僕らじゃどうしようもないじゃないか』

 

『……それはそうだがな』

 

『僕たちはユーリやイリスが危険な目にあったときに相手に噛み付くことくらいしかできないよ。僕たちにもユーリみたいな魔法が使えたり、イリスみたいにフォーミュラを使えるわけじゃないからさ』

 

ディアーチェはその後すぐにいつも通りキャットタワーの一番上に向かっていき、そこで僕たちをずっと見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫にも睡眠中は夢を見るんだなとここのところわかった事がある。見始めたのはつい最近だが、毎度同じようで違う光景が僕の眼前には広がっていた。

 

時には天使の羽をモチーフにした鍔を持つ透き通るような青色の劔

 

時には炎を纏った不滅を思わせるオレンジ色の劔

 

時には優しい風を連想させる美しい翠色の劔

 

その全てを見た後に全てを守護するような純白の劔を順に見ていくことになる。

 

なんてことはないただひたすら剣を眺めるだけのつまらない夢だった

 

自分でもなんでこんなわけのわからない夢を見るのかわからないし、もしそれが人間であった頃の僕に関係があったとしてもあまり興味はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ス」

 

眠っていたら誰かに頭を撫でられているのに気がついた。

片目だけを器用に開けると電気を消した暗闇の中で僕の頭を撫でているのが誰なのか猫特有の暗視で理解できた

 

(今日はイリスかあ)

 

「あら、起こしちゃった?ごめんね。ちょっと目が覚めたからあんた達を少し可愛がろうと思ったんだけどクロヴィス以外はみんな固まって寝ちゃってたから」

 

『イリスってたまにこうして撫でてくれるんだよなあ』

 

「あたし、あんた達のこと怒ってばかりだけど嫌いなわけじゃないのよ?あんた達にどう思われてるかはわかんないけどさ」

 

『みんなイリスのことが大好きだよ。流石にユーリには敵わないけどさ』

 

「あんた達って私達の言葉を理解してるのかしら?話しかけたら必ずすぐに返事するように鳴くじゃない?『にゃー』って」

 

『実際、通じてるし理解はしてるんだよね。僕たちとの意思の疎通はユーリが作ってる魔法が完成してからいっぱいしようね』

 

僕のこの言葉は伝わらないけど、なんとなくイリスは感じ取ってくれたのかニカッと笑って頷いた。

 

「言葉はまだわかんないけど、今のはなに考えてたか分かった。ユーリの作ってる魔法が完成したらいっぱい話そうって思ったわね?」

 

『すごいね。まさにその通りだったよ』

 

「今度はなんで分かったのって感じかしら。クロヴィス、あんた顔に出やすいのよ、まるで人間みたいに表情変わるからあたしでもなんとなく考えてることわかるようになってきたのよ」

 

くすくすと笑うイリスに僕も短く鳴いて笑い返した。

その後はイリスの話を聞き続けているとどんどん空が明るくなっていった

 

「あっ、もう日が昇っちゃってる。クロヴィスに話してると返事してくれるみたいに鳴くからつい話し込んじゃうのよね。それじゃあ、続きはまた今度聞かせてあげるわね」

 

イリスや話してくれる話はとても面白くて僕の方も聞き入ってしまう。つい、ふつうに返事をするように鳴いてしまうから彼女もどんどん話してくれて気がつけば朝方なんてのも結構あった話だ。

 

『また、たくさん聞かせてね』

 

「それじゃあ、あんたは寝なさいな。あたしはこれからユーリを起こして仕事に行ってくるから。帰ってきたらまた続きを聞かせてあげるわ」

 

僕をディアーチェの近くに下ろしてそのままユーリの眠る部屋に向かうイリスに軽く手を振って僕はその場で丸くなった。

 

『長い話だったな』

 

『起きてたの?ディアーチェ』

 

『途中から聞こえていただけだ。安心しろこやつらはピクリとも動かなかったからな』

 

『それはそれでどうかと思うけどね』

 

『冗談だ、軽く目は覚めたようだがお前達が楽しげに話しているのを見てすぐにまた眠りについたわ』

 

『そっか、そしたら僕は眠たいから寝るよ』

 

『ああ、シュテルとレヴィには起こさぬように言っておく。我も近くにいる故、存分に眠るといい』

 

ディアーチェの背中に頭を乗せて僕は眠りにつく

 

『おやすみ、ディアーチェ』

 

『ああ、おやすみクロヴィス』

 

こんな日々がもっと続きますように。

僕は心にそう願いながら眠りについた。

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