僕たちの宝物   作:今井綾菜

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第九話

私が、彼に出会ったのは本当に奇跡といえる事柄だったのだろう。彼と出会い、彼と話し、彼と過ごす中で私は生まれて初めて楽しいという感情を得た。

 

私、リインフォースの生は争いと研鑽の日々だった。

私が生まれたのはベルカの対戦の最中、1人の魔導学者が知識と力を欲して生み出したのが『夜天の魔導書』

その管制人格として私は彼のサポートをするために生み出された。

 

彼の生きる間、私は彼の護衛と魔導の研究の補助に勤しんだ。

彼の死の間際に彼の娘や息子の因子を魔導書に組み込み守護騎士システムとして人格を生成、当時の騎士団団長クラスの戦闘能力を持つ騎士を完成させ、私に自分の意思を継ぎ新たな魔導の知識を集め続けろと言い残して彼は他界した。

そこから私の無限にも思える転生の旅は始まった。

 

数百年もの間転生を繰り返し、魔導を集め続け挙げ句の果てに妄執取り憑かれた愚か者に改悪された私の前に1匹の黒猫が現れた。

 

その日から私と彼の不思議な日々が始まった。

 

 

 

 

 

彼と過ごしていく中で私と彼は友人となり他愛のない話や外の世界のことや私の過去の話や彼が体験してきたこと(猫目線)を話したりして時間はあっという間に過ぎていった。

これまで感じたことのない充実した友人との日々に私の心はどんどん穏やかになっていった。

 

彼と過ごしてしばらくした頃、彼が私にあだ名をつけてくれた。名前の由来なんて単純なものだったと今になれば思う。

おそらく、私の戦闘形態を一度見せた時に黒い翼があったからなのだろうと考えて仕舞えば笑えるようなものだった。

 

だけど、私は彼からもらったその名を大切にした。

クロハネ、名というにはあまりにも粗雑だが、友人同士のあだ名としてはそんなものでいいだろうと彼は言った。

 

それから、彼に名を呼ばれるのが楽しみになった。

名を呼ばれるたび私の心は踊った。

名を呼ばれるのがこんなに嬉しいことだとは思わなかった。

彼しか知らない私の名だけれど何故かそれが誇らしかった。

 

 

 

 

 

 

魔法の存在しない小さな世界の小さな国の小さな町で幼い少女が今回の主となった。

守護騎士たちを人として扱い、家族として接する彼女に私と彼は驚いたが自然とまた笑うことが増えていた。

 

しかし、そんな日々も一年と続かなかった。

主の体調が急変した。

理由は明白だった。

一定期間蒐集を行わなかったがために闇の書としての防衛機構が主の身体を蝕み始めたのだ。

 

守護騎士たちは主に隠れて蒐集を行い、流れるがまま管理局の魔導師と戦闘になり追われる立場となった。

 

やがてこの星の聖夜と呼ばれる日に闇の書は完成してしまった。此度もこの優しい主を呪い殺すことになると思うと胸が張り裂けそうになった。

だから、私は無二の友に願った。

 

“私のそばを離れないでほしい”

 

私が願ったそれを友はなんともないように答えを返した。

 

“うん、そばにいるよ。キミが望む限り”

 

彼のその言葉に私は救われた。

この私が孤独に対する恐怖を感じる日が来るなんて思ってもみなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは終わり、私は主からリインフォースという美しい名前をもらった。

しかし、主に生きて貰うためには私はナハトヴァールを連れて消滅しなければならない。

それを話すために私は再び書の中に戻り友にそれを話した。

 

だが、友は私を止めなかった。

止められると思っていた私はあっけにとられて止めないのかと問いかければ“友としては止めたいが融合機として選んだその道を止める資格なんてない”とのことだった。

彼の震えた声も必死に隠しているつもりなんだろう。

 

だから、私は旅立つ前に……この世から消える前にたった1人の友人に贈り物を渡すことにした。

 

私という存在の因子。

それはきっと彼がこの先に待ち受けるであろう戦いに備えてしてあげられる友としての私からの最大の恩返しのつもりだった。

 

私という存在がもつ戦闘技能や魔法の蓄積量、リンカーコアの総量やあげればキリがないが私という存在の全てを彼に託した。

 

きっと、人の姿をとるときには彼の家族たちに見合った姿になることだろう……その前に少しだけ細工を施したが……

 

彼との別れは私も彼もしみじみしたのは似合わないとあっけなく終わった。それもまた会えるかのように何事もなかったかのように……だが、それでよかったんだ。それで……よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外の世界に戻った私はすぐに儀式を始めた。

主はやてが来るのはわかっていた。

逝かないでと泣く主に私は私が逝く意味を説明して説得した。

優しい主だ、きっと私の願いと思いはわかってくれる。

だけど、ひとつだけわがままを言っても許させるだろうか

 

「では、ひとつだけ私からのわがままを」

 

「……うん」

 

泣き腫らした目で私を見つめる主に私は口を開いた。

 

「ユーリという少女を見つけて欲しいのです。少し前まで夜天の魔導書の防人をしていた少女です。私の友が彼女を捜しています……難しい願いなのは承知ですが、どうか……」

 

「クロヴィスくん……やね。リインフォースの友達っていうと」

 

「ええ、自慢の友でした」

 

「わかった……!必ず見つけ出すから!約束……するから!」

 

「ありがとうございます、我が主」

 

私は陣の中に戻り儀式を再開した。

その場にいる全ての人々に感謝を込めて私は空に還る。

だが、私が最後に思ったのは私にここまでの幸福を与えてくれた友のことだった

 

(クロヴィス……無限にも思えた孤独の中でキミが私の前に現れてから私は一度も寂しいと思ったことはなかったよ)

 

そして、私はこの世から1つの厄災と共に去った。

 

 

きっと、今頃彼は人の姿になっていたことだろう。

姿を見られないのが心残りだが……それは仕方ないことだ。

 

 

 

 

クロヴィス……我が親友よ

 

キミの辿る道が目一杯の祝福と幸せな日々に彩られますように

 

私はキミのことをずっと、見守っているよ

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