BLIND SCHOLAR   作:コンダクタンスタンス

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話進んでねぇ…………!それどころか、ここまで会話文を書いたことが初なんですけど…………!












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 動物にとって、頭はコックピットで心臓は動力部に当たる。

 

「ふむ、成る程…………これは何とも、興味深いですね」

 

 触診の様にザラザラとした硬い質感の皮膚に触れながら、ヒロは感嘆の声を漏らしていた。

 彼の興味、その尽くは目の前の二頭を持ったティラノサウルス擬きへと向けられており、見えないからこそしつこく触れていた。

 必要以上に、手に持ったメスはそれほど振るわれてはいない。精々が筋繊維に添って浅く切り込まれている程度。

 これは何も、魔物を思いやっての行動―――――ではない。

 貴重な生体サンプルを必要以上に浪費しないための行為であり、筋繊維に添って切るのは切った後に引っ付けて皮膚を癒着させやすいから。

 そんな連れの嬉々として魔物を解剖しようとする背中を見ながら、ハジメはため息をついていた。

 

「…………ハァ、いつからアイツはあんなにマッドサイエンティスト染みた感じになったんだか」

「……どういう事?」

「元から、素質はあったと思う。大体、ヒロは他人に興味が無いんだ。自分の懐に収めた奴以外はな」

「懐?」

「要は家族や、友人だな。基本敬語で人当たりも良いんだが、アイツ自身は割とドライだし」

 

 好きの反対は無関心とはよく言ったもの。相手の事を考えるからこそ、好悪それぞれの感情が浮かぶし、向けられるのだ。本当に相手の事に興味が無ければ、そもそもそれら感情だって向けられる事は無い。記憶の端にも引っかからないだろう。

 船坂ヒロという少年は良くも悪くも相手のへのスタンスは殆ど変わらない。常に敬語で話し、露骨に睨んだりもしない。ただ、笑みを浮かべて頷き相手の欲しいであろう言葉を返す、それだけだ。

 人当たりは良いし、世渡り上手に見えるだろう。しかし本質的には、身内以外にはそんな態度しか見せないというだけの事。

 例外としては天之河だが。彼の場合は、友人であるハジメに実害を与えていた為除外。人間的には興味を持っているが、その人物像や個人としては割とどうでもいいと思っていたりする。

 

 さて、ハジメがヒロの人となりを改めて分析している中でも、ヒロ自身の探究心は止まらない。

 極太の針金で雁字搦めにした魔物。その二つの頭部の間に手を通したり、背に上って首の筋肉を触れて確かめたりなど、興味の赴くままに動き回っている。

 

「―――――ありがとうございました」

 

 そうして暫く経てば、彼の興味も満たされた。

 特に重点的に見られた頭部などは、メスによって一部開かれており中身が見えるが、その際の出血はほとんど見られない。

 技能にある構造把握・体、そして解体術と触解によって触れただけで相手の色調こそ分からないが表面的な形は愚か内部構造まで生物限定で読み取れるようになった事により、血管は愚か神経や毛細血管に至るまで傷つけることなく切り分ける事に成功していた為だった。

 最後は、地面から生えてきた樹木が絡みつき魔物から搾り取って地面に埋めて終了。浮水で手を洗い、振り返った。

 

「お待たせしました、ハジメ君、ユエさん」

「おう。待ちくたびれたぜ。何かわかったか?」

「そうですね…………頭が二つあっても利点とすれば首を落とされても即死しない事、そして眠るときの安全位といったところ、という事ですかね」

「……どういう事?」

「まず、頭が二つあるという事は、脳が二つあるという事です。無論、頭をブラフにその喉元や胴体に脳がある可能性もありましたが、先程の魔物は頭それぞれに脳がありました。これは単純に処理能力が二倍になるという事です。ですが、体を動かすのが脳の役目であるならば持ち腐れにしかなりませんがね」

「なんでだ?処理能力が上がってるんだろ?」

「ええ、確かに上がっています。けれど、それは完全に脳味噌同士が繋がり互いが互いに高め合うならば、という前提が付きます。要は、一つの機体に二つ別のコックピットが設けられて、そこにそれぞれ別のパイロットが載っているような状態なんですよ」

「成る程……ダブル〇ントリー方式か」

「アレより融通は利かないでしょうね。何せ、生身の肉体を扱うんですから。まあ、走れている点を加味すれば脳同士は直結で繋がり、思考共有など成されている可能性はありますが。若しくは、そもそも知能レベルが低すぎて、食う、寝る、性行為、といった三大欲求に忠実過ぎるだけかもしれませんが」

「……?魔物は頭が悪い?」

「どう、でしょうか。少なくとも、種によって差はあると思います。ただ、四足歩行の動物よりも二足歩行の動物の方が頭が良い、と言いますか脳が大きい場合が多いですね」

「……どうして?」

「これは、人間の進化を考えれば分かりやすいかと。僕らは完全な二足歩行です。こうなると全身の体重は真下に、つまりは両足に掛かりますね。バランスも良いです」

「ん」

「ですが四足歩行の獣を見てください。彼らの場合胴体こそ、四足で体重分散が可能ですが頭を支えるのは基本的に首だけです。こうなると必要以上に重い頭は逆に邪魔になってしまうんですね」

「……なんか、学校の授業受けてる気分になって来たぞ、オイ」

「僕に教師は務まりませんよ。ほんの雑学や、基礎知識ばかりの所に僕自身の見解を混じらせていますからね。本物の先生には論破されるような薄い内容ですよ」

「でも、面白い。続きは?」

「ありがとうございます。さて、どこまで話しましたかね…………ああ、四足と二足の脳の大きさでしたか。先程の論を翻すようですが、脳の大きさと知能指数は比例しないんです」

「あ?どういうことだ?」

「僕はあまり好きではありませんが、現地球上では人類が最も頭が良いとされていますね。その後に続くのは、チンパンジーやボノボ、ゴリラなどの霊長類。ですが、彼らと同程度の知能が観測された生き物がいるんですよ」

「……なに?」

「ワタリガラスと呼ばれる種です。彼らは実に器用。ある実験では記憶力と観察能力など含めて人間の四歳児程度、それ以上の結果を見せたとか」

「烏?あの烏だよな?」

「ええ、そうです。後は、海中哺乳類であるイルカやシャチは頭が良いと言われていますね。特にシャチは、群れでの狩りを得意にしていますし、流氷の上に居るアザラシを波を起こして海に落とすという手法は有名かと」

「……どんなの?」

「では、模型を使いましょうか」

 

 言って、ヒロは両手を打ち合わせた。

 浮かび上がる水の塊。それがユエの目線ほどの高さへと動き平面に広がる。

 そして、更に地面から小さな樹木が現れると姿を変えてシャチを五頭、アザラシを一頭、それぞれミニチュア模型として形を成した。

 更にさらに、平べったくなった水の上には流氷を模したのか小さめの氷が現れており、その上にアザラシのミニチュアを移動。海中にシャチをセットした。

 

「まず初めに、シャチたちは、このアザラシが乗る流氷を細かくするところから始めます」

 

 アザラシが転がりまわっても十分な範囲の氷が半分に割れ、さらに半分に割れる。

 

「次に、海中へと逃げられないように流氷の周りを囲むように、そして背びれが見えるようにして泳ぎ回ります」

 

 シャチの模型が動き、氷の周りを取り囲む。

 

「暫く周り、獲物であるアザラシが十二分に怯えたところで、シャチは海中へと引っ込むんです」

「……逃げちゃわない?」

「いいえ。野生の世界では、臆病でなければ生きていけません。それは何も、怖いからすぐ逃げる、だけではなく時に状況を冷静に把握する事でもあるんです。もっとも、野生動物の中には逃げる事に必死になり崖下に転落するものも少なくはありませんけど」

 

 言って、シャチの模型が動き海中へと待機。

 そこから陣形を整えると横一列になって流氷より少し離れた場所へと浮上。そのまま隊列を組んで勢いよく流氷へと泳いでいく。

 シャチの体格は平均的に六メートル前後、重量は二トン後半と言ったところか。最大級ならば十メートルに迫り、体重も十トンに達する。

 そんなシャチが隊列組んで一方向へと泳げば、それだけで小型の波が出来上がる。

 この波が、氷へとぶつかれば波に巻かれた小舟の様にその表面が海水に浚われていく。当然ながら、陸上のアザラシにこれを耐える術は無く、海中へと落され、シャチによってバラバラにされてしまった。

 

「このように、ですね」

「……コレ、ハジメたちのところの生き物?」

「ええ、そうです。といっても、僕の記憶をもとに再現したものでしたからデティール迄は凝っていませんけど」

「いや、十分だろ。面白かったぜ、ヒロ先生。いや、船坂先生か?」

「ん。先生」

「あ、待ってください…………本当に、そう言うのはガラじゃないんです…………!」

 

 恥ずかしい、と顔を両手で覆ってしまったヒロ。先程までペラペラと回っていた口も閉ざされてしまう。

 知識欲が爆発し、そのまま教師の様な態度をとってしまったが如何せん、彼自身は人にものを教える事に向いていないと思っている。

 

 奈落での一件から頭一つ分は大きさの違うハジメは、蹲って動かなくなってしまったヒロの首根っこを掴むとバイクの後方へと乗せ直した。そして自分自身も、同じくバイクに乗り直す。

 何か忘れているような気がしないでもないが、気のせいだろう。

 

「いやいやいやいや!ま、ま待ってくださいよぉ!?」

 

 残念ウサギが、バイクの前に飛び出してきた。

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