BLIND SCHOLAR 作:コンダクタンスタンス
一日に二話以上投稿されていたらミスったんだな、とお考え下さいませ
冒険者がパーティーを組む場合、重要なのはバランス。
攻撃ばかりでは、守備や回復に難があり。守備ばかりでは、攻撃に難がある。
「―――――“板金・招来”」
柏手が鳴り響き、巨大な金属の壁が立ち上がる。
その鏡面の様な表面に何十発ものトゲや、毒が付着するが表面を凹ませ若干溶かす程度でそれ以上のダメージは無い。
「今ですよ、二人とも」
「―――――“蒼天”」
「吹っ飛びな!」
攻撃を全て止められ、その間に襲い来る赤と蒼の業火は容易にサソリモドキの硬質な外骨格を赤熱化させ、尋常じゃない防御力を弱らせてしまう。
そこに迫る、六発の紫電を纏った弾丸。
破壊力というのは速度に比例するが、その弾丸は小ぶりであろうとも速度と強度を掛け合わせた破壊力でサソリモドキの頭部を吹き飛ばしていた。
「お見事」
「壁役がいるだけで違うな、やっぱ。お前が来てくれて助かったぜ、ヒロ」
「……ん。鉄壁……金壁?」
「色に関しては、僕の指定じゃありませんねぇ」
強敵であったはずだが、サソリモドキがヒロの扱う防壁に関して突破できない時点で勝敗は決していたと言っても過言ではなかった。
戦術、と言うほど高尚なものではない。後ろの方で、ヒロが座って術に専念しユエとハジメの二人が戦場を引っ掻き回す。それだけの事。
サソリモドキを打倒した三人は、一路素材諸々を引っ張って大部屋を出てハジメが作った隠れ家へ。
加工などは大部屋でもできたはずだが、ユエがその場に居続けることを嫌がった為だ。
「―――――さて、ヒロ」
「はい?」
「ユエの身の上は聞いた。次はお前の話だな」
「……ヒロ、どうしてここに居るの?」
「ふむ、そうですね…………発端は、ハジメ君が奈落に落ちた事から、でしょうか」
「俺か?」
「はい。実は―――――」
そこから語られたのは、ヒロのこの世界に来てからの肉体の変遷。
今も力が溢れている事や、視覚を除いた五感の発達。様々な術等々。
「―――――と、まあこんなものですかね。君を探しに来るのも理由の一つではありましたけど、僕としては自分の体を知る意味もありましたし」
「…………ステータスプレートは持ってるか?」
「ええ、在りますよ」
「見せてくれ」
ハジメに促され、渡されるステータスプレート。
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船坂 ヒロ 17歳 男 レベル:40
筋力:523
体力:681
耐性:722
敏捷:1[+418]
魔力:2087
魔耐:1324
技能:■■[+飲食克服][+聴覚強化][嗅覚強化][+触覚強化][+味覚強化][+影武者][+■■思想][+弱体無効][+自動修復・体][+構造把握・体][+解体術][+癒術]・言語理解[+触読][+触解][+探求][+研究]
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「……文字化け?」
「いや、これは最初からだな。それよりも、これは…………言語理解の発展系か?多分目が見えない分を補うためだな」
「強くなってます?」
「少なくとも、あの勇者の五倍のステータスはあるぞ。魔力に至っては二十倍だしな。ただ、この敏捷はどうなってる?」
「どう、と聞かれても僕は見ていませんから。どうなってます?」
「増強分が書かれてるが、基本は1のままだな」
「成る程…………恐らく、僕の足が不自由だからでは?走れませんから、数値が増してもそもそもあまり意味をなしていないという事です」
「あー……それなら、納得だ」
「……あの魔法は?」
「多分、この文字化けしてるところに秘密があるんじゃないか?その点どうだ、ヒロ」
「ハジメ君の考えている通りではないでしょうか。僕としては、使い勝手がいいのでそこまで考えていませんでしたね。どちらかと言うと、モンスターを調べる方が多かったですし」
口元を綻ばせたアルカイックスマイルを浮かべたヒロに、ハジメはガリガリと頭を掻く。
どうにも、目の前の友人は自分の事に関して頓着しない。目が見えなくなる前からそれは変わっておらず、目が見えなくなってからはむしろ悪化しているのではと思えるほどに。
そもそも、人一人生きているのかも分からない奈落の底へと探しに来るだけ頭がおかしい。これだけの力が最初からあるならば未だしも。
「……本当に、頭が良いのに馬鹿だなお前」
「……ハジメ、失礼」
「良いんですよ、ユエさん。ハジメ君もカッコよくなりたいお年頃なんですから」
「グフッ!?て、テメー、ヒロ!」
「どうしました?
「悪かった!馬鹿って言ったの謝るから止めろ!」
湿っぽくなるかと思えば、この仕打ち。ハジメの黒歴史が掘り返されるのだった。
+*+*+
「……がんばれーハジメー」
「いや、すみませんねハジメ君」
「くっそ!何でこんな事になってんだ!」
大きな荷物の上に毛皮を引いたものを背負い駆けるハジメ。その毛皮の上には、ユエとヒロの二人が載っており風を切っていた。
彼らを追いかけるのは、恐竜のラプトルの様なモンスターの群れ。その頭にはお揃いの様にして一本の花が植わっている。
別段和みはしないものの、何らかの作意を感じる状況だ。如何に強くなったとはいえ、ハジメの弾丸は有限。ユエの魔力も有限。唯一、ガス欠しないヒロも居るが相手がどれだけ居るのかが分からない以上じり貧な事には変わりがない。
結果、三人は逃げている―――――のだが単純な敏捷値がハジメに劣っている二人が追い付けるはずもなく、このような運搬方法を採るしかなかった。
「……む、ハジメ君。前の亀裂へ」
「おおおおおおッ!」
ヒロが示した壁の亀裂、その横穴へとハジメは飛び込み、すぐさま錬成で穴を塞いで後続を断った。
「…………はぁ、撒いたか」
「その様ですね。そしておそらく、この部屋に元凶が居るかと思います。ニオイがしましたから」
「便利な鼻だな。とりあえず警戒しとくか」
「背中合わせになりましょうか。僕は視覚が役に立ちませんけど」
「その、時々返しに困る事言うんじゃねぇよ。義眼でも作るか?」
「一応、僕の目はありますから。流石に機能停止していても抉り取りたくはないですね」
苦笑いして頬を描くヒロに、呆れたようなハジメ。二人のやり取りは、日本に居た頃からこんなものだ。
しかしここで、ハジメが気づく。
「お前ら、上だ!」
彼が言うと同時に、飛来してくる何か。
「―――――“浮水・招来”」
鼻と耳でそれをあらかじめ察知していたのか、ヒロが空中に水の塊を出現させピンポン玉の様なそれらを受け止める。
「これは…………何でしょうか?石、などではなさそうですが…………」
「……ボール?」
「こんな迷宮の中で卓球してる奴は居ないだろ。とするなら、さっきのモンスターを操ってた元凶の攻撃になる訳だが…………」
「スンッ…………似たようなにおいは、あそこからですね」
言って、水に浮かぶボール?を嗅いだヒロはある方向を指差した。
それは、この部屋の奥。
そこに居たのは、
「……醜悪」
「ドライアド……いや、アルラウネか?植物のモンスターだな。それにあの花。奴が元凶らしい」
「植物のモンスターですか。興味深いですね」
エセアルラウネに向けられる三つの意。そのどれもが好意的とは言えない。
ハジメは走りまわる元凶故に、ユエは無駄にこの場を引っ掻きまわされた為。ヒロは学術的な興味から。
恐らく、彼女はモンスターの中でもトップクラスに運が悪いのだろう。
「ギッ―――――!?」
声にならない悲鳴が部屋に響き、直後には紫電が走り、吹雪が吹き荒れ、無数の黄金がその亡骸を縛り上げていた。