ジャンプワールドオールスターズ 鬼滅の刃編   作:犬原もとき

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お待ちしておりましたよ兄上 あの世在住の日の剣士

アイリス視点

 

「ちいぃ!!」

速い!

弐拾から始まる型を使われだしてから、一方的にダメージを負っている。

種は分かった。

新月から始まる月の呼吸の型は、僕ですら追うのが難しい神速の太刀だ。

辛うじて朧雲や雨雲で威力を弱めてはいるけど、それでも驚異的だから、避ける事を強いられる。

幸いにもHPが大きいから大事にはなってない。

けれどそれも時間の問題だ。

「月の呼吸 弐拾伍ノ型 新月・月魄災渦」

「…ッ!雲の呼吸 中層の型 雨雲!!」

ノーモーションの斬撃!

雨雲は分厚い雲をイメージした防御の技だ!

肌に刃が触れた所を一気に弾く!

「…っう!」

ダメージを貰うけど仕方ない!

そんなの織り込み済みだ!死ななきゃ安い!

「月の呼吸 弐拾壱ノ型 新月・宵の宮」

かわせる!

跳ぶ!

「月の呼吸 弐拾弐ノ型 殊華ノ弄月」

ナメるなよ!

「雲の呼吸 上層の型!筋雲!3層!」

舞空術で空中でも動けるんだよ!こっちは!

くそ、だがこっちもうかうかしてられないぞ。

現在HP 7258/686585

もうこれだけしかない!

黒死牟と界王拳4倍の代償。

界王拳を解除すればまだ戦えるだろう…だが!

アレを気取らせるわけにはいかない!

 

黒死牟視点

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

息も絶え絶えと言ったところか。

確かに驚異的な実力だった。

はっきり言おう。

あの赤い闘気による自傷が無ければ、私が彼の立場だった。

私に迫る実力者と言っても過言では無い。

「賞賛しよう……異国の剣士よ」

「はぁ…はぁ………何が?」

「貴様の腕前だ…私と同等……いや…それ以上だったやもしれん」

「………」

「猗窩座の言う事なら……隅にでも捨て置くがいい。奴は……貴様の力を…手に入れた経緯だけを見て…憤慨しただけだ。力とは……素材だ。結果…ではない。貴様は間違いなく……与えられた力を我が物にし…使い込んできた。故にこそ………私に迫れた」

そうとも。

私とてそうだった。

切っ掛けは緣壱への嫉妬だった。

奴は優れていた。恐らくは貴様もだろう。

こうしてみれば分かる。

貴様はあの時の私だ。

実力の前に膝をついている。

私があの時の緣壱だ。

実力を手に立っている。

だが貴様は…違うな。

真っ直ぐに私を見ている。

どうしてそんなに綺麗な瞳で私を見ている。

だから童だと勘違いした。

まるでようやく遊び相手を見つけた様な瞳じゃないか。

そうか…そうなのか…。

そういうことなのか緣壱?

お前は…ただ遊んで欲しかったのか?

「ようやくだ…」

「何…?」

「はっきり言うよ。正直もう終わりかと思った」

「どういう…意味だ?」

「界王拳は倍率に合わせて体力を削り、身体能力を上げる諸刃の剣。安定している4倍ですらダメージを貰えばすぐ危うくなる。童磨位なら余裕でも、あんたを相手にしてたらこうなるのは分かってた」

「…………」

分かっていて挑んだのか。

何故…。

待て。

こいつは先程なんと言った?

「だから僕は賭けた」

こいつは!

「あんたが対応への対応策を持っている事に!」

まさか!!

「っ!月の呼吸……」

「雲の呼吸 奥義!!」

間に合うか!?

「参拾ノ型!!」

「積乱雲!!!」

童の叫びが耳に伝わった瞬間、斬撃が私に襲いかかる。

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!????」

それはまぎれもなく、私が今で放ってきた月の呼吸の数々ではないか!?

 

アイリス視点

 

「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!???」

「いよおっし!!!」

成功した!

雲の呼吸 奥義 積乱雲!

蓄積されたダメージを何倍にも増幅させ解き放つ最強のカウンター技!!

物理ダメージでないと効果を及ぼさないから、黒死牟や猗窩座の様な敵でない限り真価を発揮しない。

ダメージを受けないといけない上に射程距離が短い。

難点ばかりだけど威力に関しては群を抜く!

「黒死牟ーーーー!!!」

「ぐぅ!!??」

「日ノ本一の侍の頸!!貰い受ける!!!」

「!?」

「雲の呼吸!上層の型!!」

さらば!強き男よ!!

「筋雲!!!!」

 

黒死牟視点

 

一閃。

暗闇を切り裂く一筋の線が。

私の頸を両断する。

一瞬の油断と言えばそうかも知れない。

だが私はその一瞬だけ、彼に緣壱でも私でもない日ノ本一の侍 愛流守を見た。

愛の流れを守る…名は体を表すと聞くが…。

この私に流れる愛すら守るというか。

そうだな。

確かに私は。

私と縁壱の縁は。

同じ愛から生まれたものだ。

 

アイリス視点

 

「はぁ…はぁ…!」

ギリギリだ!

本当にギリギリだった!

黒死牟が油断していたら!

もしも胡座をかいて対応策を用意していなかったなら!

あの一撃は出せなかった!

止めはさせたはずだが…どうだろうか?

「………強き剣士よ」

飛ばされた頸から声がする。

身体が崩れているから、そう長くはないだろう。

「私は…君に何か残せただろうか?…日ノ本一の侍と…称してくれた君に…」

原作の黒死牟…厳勝の心残りはそうだっけな。

……そうだな。

「勿論。貴方は僕が出会った中で最強の剣士だ。貴方と戦えた事。其れそのものが何よりの誉れだ。その上勝ったのだからこれ以上のものは無い」

「………そうか………そうか」

嬉しそうに、噛み締めるように呟く黒死牟。

互いにギリギリの戦いだった。

恐らくはメタ読みで雲の呼吸を編み出していなければ、負けていたのは僕だったろう。

それを差し引いても最強に相応しい男だった。

「見たことない天才よりも、私は貴方こそが終生の強敵です」

「………」

「さらば我が強敵。さらば我が宿敵。さらば…さらば」

「あぁ…さらばだ…あぁ…口惜しや…」

最早一念と言った所だろう。

口元と涙を流す目を残すだけだ。

「貴公と…もっと…試合…を…」

最強の剣士は…そこで消え去った。


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