ジャンプワールドオールスターズ 鬼滅の刃編   作:犬原もとき

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幸せの味ってなんだろうね 鬼殺隊隊士の金髪の剣士

善逸視点

 

「………出てこいよ。居るんだろ?」

散り散りになった俺は一人…いや、一人じゃないか。

そこに居るもんな。

「出てこいか…威勢が良くなったもんだなぁ。えぇ?」

「そういうお前は随分ちっぽけになったな」

獪岳。

上弦の陸で…俺の元兄弟子。

「爺ちゃん…師範が死んだよ。あんたが鬼になったせいでな」

「あ?だから何だ?泣いて悲しめっていうのか?」

「介錯はつけなかった。あんたの分と合わせて…長く苦しむようにって師範からの申し出だった」

「そうかよ。清々するな」

「……ッ!あんたは!そんなことしか言えねぇのかよ!」

「当然だろうが!俺を正しく評価しない奴なんてな!どーでもいいんだよ!」

あぁ…もう駄目だな。

「獪岳…鬼になったお前をもう兄弟子とは思わない」

「あぁ?」

「適当な穴埋めでなった上弦の使いっぱしりに用はねぇって話だよ」

「あぁ!?もう一遍言ってみろや!!!」

鬼が斬りかかってくるがまるで遅い。

俺は身を翻す訳でもなく、ゆらりと少し動く。

それだけで鬼の攻撃は逸れていく。

「な…!」

「どうした?足でも悪いのか?」

「っ!のやろぉ!!」

2度、3度。

鬼は刀を振るうけど俺には掠りもしない。

鬱陶しいから蹴り飛ばす。

「うぐぉ!?」

「止めとけよ。お前じゃ俺には勝てない」

「ぐぐ…!やかましい!」

雷の呼吸独特の呼吸音がする。

「雷の呼吸!弐ノ型!稲魂!!」

弐ノ方稲魂。確か一息で瞬きの内に5連撃する技だ。

普通なら厄介だ。

だけど俺は知ってるから。

日輪刀を抜いて全て弾いた。

「ちっ!」

鬼が距離を取りまた呼吸を始める。

苛立たしいな。

お前如きが師範の…爺ちゃんの呼吸を使うなよ。

「参ノ型!聚蚊成雷!」

鬼が俺の周りを取り囲む。

聚蚊成雷って集まった蚊のことを指してたんだっけ?

あぁ、なるほど。鬱陶しいな。

俺は一瞬で襲いかかってくる鬼を

「ぐぉわっ!?」

全て切り払った。

「ば、馬鹿な…なぜだ!どうしてお前みたいなカスが、俺の攻撃に対応できるんだ!」

「…知ってるからだよ」

「知ってる…あぁなるほどな…そう言うことか!あの耄碌クソジジィめ!やっぱり贔屓してやがったな!型の弱点を教えてやがったんだな!だから俺に教えなかったんだな!?最強の壱ノ型を!!」

「………」

なんて言葉を掛けたらいいのかわからないな。

なんというか…。

「哀れすぎて何も言えねぇよ」

「あぁ!?」

「爺ちゃんは贔屓なんてしなかったよ。知ってるのはそれがどんな技かってだけで、弱点なんか教えてもらえなかった」

「やかましい!!ならば…雷の呼吸!」

またなにかするのか。

「肆ノ型!遠雷!」

「遅え」

「なっ…!?」

遅過ぎる。

俺はもう既に鬼の後ろにいる。

「猿真似は終わりか?」

「なんだと!?」

「猿真似は終わりかって聞いてんだよ。お前如きが爺ちゃんと…獪岳の真似をするな」

「……っ貴゛様゛あああぁぁ!!」

鬼が怒り狂う。

巫山戯んなよ。

怒り狂いたいのは俺の方だよ。

「死ねぇ!陸ノ型!電轟雷轟!!!」

避けられるが敢えて受ける。

俺の体にヒビの様な傷が入る。

「ふひ、ひゃっはっははは!!終わりだ!お前はもう終わりだ!俺の剣戟を受けた奴はなぁ!そうやって罅が入る!そうなるとどうなると思う!?」

わざと当たってやった攻撃が嬉しいのか、満面の笑みで俺に説明してくる。

「死ぬんだよ!血鬼術による火傷だ!あり得ねぇがなにか対抗策が有るならやってみなクソが!ねぇだろうな!お前は所詮無能だからな!ひゃーはっはっはっ!!」

そうかい。

「態々ありがとよ」

「ひゃーはっはっはっ……は?」

もう俺の傷は塞がっている。

当然だ。

こいつは俺の手紙も真面目に読まなかったんだろうな。

俺もグルメ細胞保有者だ。

適合率は確か全体の3割だった筈だ。

「ば…ばかな…そんな…」

「グルメ細胞って奴だよ。お前は知らされてなかったみたいだけどな」

「なんだよそれ…なんだよ…巫山戯んな!巫山戯んな!!ずりぃぞ!なんでお前が…!!」

「ホントなんでだろうな…あの時偶々蝶屋敷にいたからかもな…」

「巫山戯んな…巫山戯んなちくしょう!お前ばっかり!どうして俺じゃないんだ!!」

「………ッ!あんたが振り払ったんだろうが!!」

そうさ。あんたはいつもそうやって来た。

脇目も振らず一心に。

ただ爺ちゃんに褒めてもらいたいから。

ただ爺ちゃんに凄いと言われたくて。

それを叶えるだけの実力があったのに。

それを手にするだけの努力をしてきたのに。

「あんたが零したあんたの過ちだ!!誰のせいでもない!あんたがやったことだ!!」

「俺の何が悪い!生き残る為なら俺は鬼にだってなる!なってやった!なのに何だお前のそれは!そんなのがあるんなら…俺は…!」

いまさら…!

「今更後悔するんじゃねぇ!!!獪岳!!!」

ごめんよ爺ちゃん…

「雷の呼吸…!」

ごめん…

「漆ノ型!」

「ッ!雷の呼吸!!」

俺達の道は分かれた!

「火雷神!!!」

 

鬼の…獪岳の首が飛んだ。

あぁ…この技を隣で見てほしかったな。

知ってるか?

グルメ細胞ってさ…好きな物を食うと成長するんだぜ。

それ聞いたときにさ、俺思ったんだよ。

なんて平和な奴なんだって。

オマケにグルメ食材って元がすっげー美味しいんだ。

一粒10万円のお米とか本当にこの世の食べ物なの?ってくらい。

好きをたらふく食べたら、また別の好きを食べる。

好きって一つじゃないしな。

そうやってたらいつかは誰かと重なる。

奪い合う事もあるけど分け合う事もある。

俺は…俺はさ。兄貴。

「皆で食べた方が…もっと美味しかったと思うよ」

爺ちゃん…俺…ごめんよ…。

頑張ったけど…駄目だった…。

もう会えないけど……!?

「善逸!」

え?うそ?あそこにいるの…え?

「爺…ちゃん…?」

生き…てない。薄らぼんやりしてる。

幽…霊?

「お前は…」

あぁ…でも…でもこの声は

「お前は…!」

あの顔は…!

「お前はわしの誇りじゃ……!!」

「爺ちゃん!!!」

涙を流した俺の、俺達の爺ちゃんは

言うだけ言って満足気な顔で

鳴柱の名の通り、轟音と共に消えていった。

 


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