玄弥視点
「霞の呼吸 弐ノ型 八重霞!」
「恋の呼吸!伍ノ型!揺らめく恋情・乱れ爪!」
「蛇の呼吸 壱ノ型 委蛇斬り」
「風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪!」
「岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚」
柱の皆が辺りを蹴散らしていく。
だが
「全然突破出来ないや」
「きゃー!?また来たわ!」
「うじゃうじゃと鬱陶しい。全く鬼というやつはこれだから嫌いなんだ。往生際の悪い。さっさと首を差し出せばいいと言うのに…」
「伊黒さん。そう言うの後にしてくれますかィ?」
「然り。今はかの協力者を助けるが先決」
柱を持ってしても、この高密度の血の棘は突破しきれない。
そして奥には肉の繭。
そこに協力者が取り込まれかけている。
急ぎたい。早く助けてやりたいけれど…。
(焦るな不死川玄弥…焦りは食義を乱す。それに落ち着いた考えも出来なくなる)
荒れ狂う焦りと燃えたぎる怒りを感じるのは良い。
だが今は蓋をして待つべきだ。
何かある…絶対に…この状況を打破するものが。
「やはりここは一点突破しか…」
「誰が行くというのだ。この棘の網は何層にも成っている。考えもなしに突っ込めば柱でも無傷ではすまんぞ」
「とはいえ他に方法も思いつかねェ」
「きゃー!こっち来ないでー!」
「薬膳殿が来るが早いか、私達が力尽きるが早いか」
………いや、その二択じゃ有りませんよ。悲鳴嶼さん。
道は俺が…!
「動くんじゃねェ!三下隊士が!!」
「!?」
兄貴…!
「てめぇが何やってもどうにかなるわけねェだろ!そこで大人しく震えてろ!!」
「兄貴…」
「俺に弟は…」
「こんな時に諍いを持ち出すのはやめてよ。実弥さん」
時透さん…。
「今彼を遊ばせておく理由はないんじゃない?彼がなにか思いついたと言うのなら、やらせてみようよ」
「どうせ無駄だ。下級隊士の考えることなんざ…」
「その下級隊士の手も借りなくちゃダメなんだよ。いい加減にしなよ」
最もな言い分に兄貴も押し黙る。
そうだ…俺は何やってるんだ。
俺はここに、鬼殺隊としてきたんだ。
兄貴に認められる為だけじゃない。
俺や兄貴…炭治郎達のような人をこれ以上出さない為に来たんだろ!
震えるな!怖がるな!
弁えるな!尻込みするな!
今がその時だろ!
「皆さん。俺に考えがあります」
「〜〜〜〜ッ!!!馬鹿野郎ゥ!そんなの認められるか!」
やっぱり兄貴には反対されるよな…。
「危険だよ玄弥くん」
時透さん…心配してくれてありがとうございます。
「……………然し現状最も打破できる可能性を秘めている」
悲鳴嶼さん…涙を流してくれて感謝します。
「何でもいいから早くしなくちゃ!」
甘露寺さん…その…しかたないとはいえあんまり激しく動かないでください…その…胸が…。
「実弥の感情がどうだと言うのも、時透の先程の言葉の矛盾もどうでもいい。そこの下級隊士がそんな事が可能ならそれをやらせるべきだ。そしてあわよくば死ね。甘露寺をいやらしい目で見た罪で死ね。せめてもの情けでどこぞの元柱の好みの様に派手に死ね」
「伊黒ォ!ウチの玄弥に死ねってのかテメー!」
兄貴ィ…。
「とにかく!今は玄弥くんに任せましょう!大丈夫!あの時も玄弥くんはちゃんとできたんだもの!!今回もきっと大丈夫!」
甘露寺さん・・・!
「・・・・だが」
「・・・風柱様」
「・・・あァ?」
「俺は確かに未熟です。この中では一番弱い。それは分かってます」
そう。それは知っている。だけど
「敵は目の前にいます。俺達鬼殺隊が生まれてからずっと追ってきた元凶です。今討てば全てが終わります」
あの日の惨劇がなくなるわけじゃない。
俺が兄貴のことを・・・化け物と言ってしまった過去がなくなるわけじゃない。
「俺は鬼殺隊です。例え弱くても俺だってアイツの頸を落とすためなら、命だって賭けられます!!」