アイリス視点
「ぐおおおぉぉぉ!?く、おのれええぇぇぇ!!!」
苦しがっているが恐らく今だけだろう。
珠世様は一応無事だけど肉体の損傷も激しい。
原作の最終形態には近いけれど、恐らくはそこまでは
「くくく……はははは………!!!」
何だ?
「なるほど…これが童磨の求めていたグルメ細胞と言うやつか!」
はっ!?まさか…使ったのか!?人間を戻す薬に!
グルメ食材を!?
「素晴らしい!良いぞ!実にいい!なるほど!貴様等も良い仕事をしてくれる!最早禰豆子などどうでもいい!太陽の下でも活動できそうな気分だ!!」
なんてこった…最悪の…いや、そうでもないな。
アイツは気付いてないみたいだがやはりそうだった。
だがこの事は知られるわけにはいかないな。
「………すみません。アイリスさん」
「いや、そうでもないよ。寧ろやりやすくなった」
「え?」
「…なんでもないよ」
そう…これは奴に知られるわけにはいかない。
絶対にだ。
「無惨がグルメ細胞を…!」
「どうするんだよ…炭治郎〜…」
「大丈夫さ」
そう言って僕は前に出る。
「生きている限り死は訪れる。生命の根幹に根ざす真理には何ものも逃げられない。それを思い出させてやろう!」
なに。その不安はすぐに消し飛ぶ。
「無駄だ。私は最早完璧な存在だ。死ぬがいい異常者共よ。天災である私に平伏せぬのならな」
「虱も1000余年も生きればこんなにもイキがれるんだね。一緒使わない知識を有難うよ」
「ぶっ殺す」
最後のラウンドが幕を上げる。
「水の呼吸!参ノ型!流流舞い!」
「炎の呼吸!伍ノ型!炎虎!」
冨岡くんと煉獄さんの力と技によるコンビネーションが無惨に迫る。
「甘いわ!」
無惨は両手から生やした血の茨でそれを捌き、カウンターを入れる。
「ちっ!」
「むん!」
冨岡くんは何とか躱し、煉獄さんは切り払う。
「獣の呼吸!弐ノ牙!切り裂き!」
「花の呼吸!伍ノ型!徒の芍薬!」
「蟲の呼吸!蜻蛉ノ舞!複眼六角!!」
しのぶちゃん達の技が一斉に放たれる。
「ぐっ!?」
「死に晒せ!このド外道があああぁぁぁ!!」
しのぶちゃんの怨嗟の声と共に全ての攻撃は命中する。
「無駄だ!完璧な存在の私にこの程度の攻撃や毒が通用するか!」
「なっ!?」
「嘘だろおい!」
「日輪刀を…!」
うわぁ…日輪刀を取り込んだよ。
自殺行為だろ。
「ふふふふ……はははは!!!見たか!もはや私に敵などない!あの太陽すら私にとっては弱点になるまい!」
やはり気付いてないな。
その方が都合がいい。僕は今動けない。
この技は放つのに時間は掛かるし、斜めにしか放てない。
オマケにその場から動けなくなる。
然し威力は絶大だ。
その時がお前の最後だ。
「くっ…!それでも!」
「まだだ…まだ俺達もいる!」
不死川兄弟も立ち上がり、無惨へと立ち向かっていく。
先に負傷した皆にグルメ食材を与えて正解だった。
順次回復していくだろう。
「貴様らは眼中に無い」
「うるせェ!行くぞ玄弥ァ!」
「あぁ!想像散弾…!」
「風の呼吸!」
無惨はつまらなさそうに構えるが
「恋の呼吸弐ノ型!懊悩巡る恋!」
「蛇の呼吸伍ノ型!蜿蜿長蛇!!」
左右から蜜璃ちゃんと伊黒の攻撃が迫る。
前の二人に対応すれば左右の二人の攻撃を受ける。
後ろに引いても前の二人の攻撃を受けるから同じ事だ。
普通ならダメージを追うだろう。
「壱ノ型!塵旋風・削ぎ!!」
「炸裂榴弾!!」
だけど今の無惨は普通じゃない。
轟音と共に激しく土煙が上がるが
「………何!?」
晴れた後にあった光景は、左右の攻撃を両腕で受け止め、玄弥の具現攻撃を肌を硬質化して防ぎ、実弥の日輪刀を歯で抑え込んだ無惨の姿だ。
「こんなものか……ふん!!」
「きゃあああああぁぁぁぁぁ!!」
「うおおおおおぉぉぉぉ!!」
そのまま乱暴に振り回し、蜜璃ちゃんと実弥を森の中へ放り投げる。
「兄ちゃん!!!」
「甘露寺!!」
「お返しだ…はっ!!」
身体に残っていた散弾は力を込めて逆に弾きだす。
「ぐわあああぁぁぁぁ!!!」
「があああぁぁぁぁぁ!!!」
玄弥くんと伊黒が動かなくなったのを確認し、僕の方へゆっくりと向かってくる無惨。
「貴様だ…貴様と竃門炭治郎さえいなければ…この時代も何の不自由なく…人を喰らい、生き永らえていただろう」
そうかよ。
「だが…ふはは…変化と言うのも悪くない。この様な変化もならいつでも歓迎だ。実に気分が良い…そこでだ人間」
無惨の顔が人間のそれに戻る。
顔だけは良いからなコイツ。
「お前も鬼にしてやろう。未来永劫私に仕えられる名誉だ」
「………答えはノーだ。地獄に堕ちろ」
「岩の呼吸!弐ノ型!天面砕き!」
悲鳴嶼さんの技が無惨に向かって炸裂するも、それを難なく避ける。
「無駄な足掻きを…」
「霞の呼吸…漆ノ型!朧!」
無一郎くんの朧が無惨を捉える。
大ダメージが与えられるが、無惨はそれらを直ぐに修復する。
「無駄だと言っている」
「ちっ…!」
「雷の呼吸…壱ノ型…」
「むっ?」
「霹靂一閃・神速」
目にも留まらぬ速さで無惨に迫る善逸。
さしもの無惨も防ぎきれないと判断したのか、避ける為に跳んだ。
「ふはは!惜しかったなぁ!だが残念だったな!私の方が早かったようだ!」
「くっ…!」
「素晴らしい…素晴らしいぞこの体は!もっと早くに出会いたかった!そうすれば上弦なぞ必要なかった!増やしたくもない雑魚どもを増やす必要もなかった!最早この世に鬼は私一人でいい!そして!」
無惨が僕の方を見る。
「その門出として!貴様の血肉を食らってやろう!死ね!!アイリ……ぐぉっ!?」
最高潮のテンションの中、空中へと跳んだ無惨はある地点でピタリと止まる。
それは僕の右斜上だ。
そこにはある物のイメージが出来上がっている。
「な…なんだ…これは…う、動けん!!!???」
「上に飛んでくるとは思っていたが、まさかこう上手くいくとはね…LUKが高くて何よりだ」
それは目標へ狙いをつける為のバレルだ。
3本の爪が空に向かって真っ直ぐ伸びている。
「が…ぐ…くそ…!離せ!離せぇ!!」
「自分から飛び込んでおいて離せなんて我儘なやつだ。なに。気にしなくてももうすぐ離してやるよ」
拳に力を込める。
ありったけの力を。
「音速2倍…」
これまでの怒りと
「1000……万トン!!」
「や、やめろ…!やめろやめろやめろ!!」
これからの未来と
「4兆ジュール!!!」
「鳴女ーー!何をしている!!猗窩座!私を助けろ!黒死牟!こいつを斬れ!!誰か!誰か私を助けろぉ!」
人間の勇気を込めて!!
「必殺!!」
「やめろおおぉぉぉ!!死にたくない!死にたくなああああぁぁぁぁぁい!!!!」
「神の杖!!!!」
空気をも突き破らんとする轟音と共に、神の杖は放たれた。