しのぶ視点
暫く進んでいると、進路上に冨岡さんと隊士の子がいた。
隊士の子は何かを庇っている。
あれは……鬼か。
(むむ、冨岡さんが危ない。急がなくちゃ)
走っている脚に力を込める。
それだけで私はぐんと速くなる。
息をつく間もなく鬼の首元に刃が…あ。
(マズい!この速度だと折れちゃう)
鬼を殺すのは構わないけど柱の日輪刀は基本的に特別製だ。
折れたら出来上がるのに時間が掛かる。
(くぅ!間に合え!)
なんとか身体を捻り軌道を変えることに成功したが、ギャリギャリと嫌な音がした。
折れてはないみたいだけど…。
ん?冨岡さんが日輪刀を構えている。
と言うことはさっきのは刃が刃を滑った音でしたか。
………良かった。いや本当に良かった。
最近気血アップとかで身体を強化して振るうから、日輪刀から嫌な音がしてましたし…いつか本当に折ってしまいそうで怖い。
それはそれとして…
「冨岡さん?どうして邪魔をするんですか?出る前には鬼とは仲良く出来ないとか言ってたくせに…そんなんだからみんなに嫌われるんですよ」
まぁ、アイリスさん辺りはそれも個性と笑って受け入れるでしょうけど。
炭治郎視点
誰だ?
隊服を着ているって事は鬼殺隊なのは間違いけど…。
この人は強い。
全く動きが見えなかった。
富岡さんのお陰でなんとかなったけど…どうする!?
「さぁ富岡さん。そこをどいてくれます?」
「………俺は(鮭大根を作ってくれるから少なくともアイリスには)嫌われていない」
…………え?!
今?!今否定する所ですか富岡さん!?
「あぁすいません。嫌われている自覚がなかったんですね。それはすみません」
「アイリスは(毎回採るのが手間な野菜を頼むしのぶの愚痴を聞くことがあるから)お前の事を苦手に思っている」
「………………は?」
い……今のは俺でも分かるぞ。
富岡さん…今あの人に言っちゃいけない事を言った気がするぞ!?
「(その点俺は頼むと毎回快く鮭大根を作ってくれるから)俺の方が好かれている」
ちょっと馬鹿にしてる様な笑顔で勝ち誇ってません冨岡さん?!
絶妙に腹立たしいぞこの表情は!?
相手の女の人も怒りでこめかみ辺りがひくついているし!
「私は四六時中一緒にいますからね!冨岡さんと違って良い所も悪い所も目に付きやすいですからね!」
「今更だが(婚姻前の男と女が1つ屋根の下なのは)どうかと思っている」
「鬼をやったあと覚悟しておけよ冨岡ァ!!」
マズい!すごい怒ってる!
九分九厘冨岡さんのせいだけどなんとかしなくっちゃ!
九分九厘冨岡さんのせいだけど!
「動けるな?」
「え?」
「(正直無理難題を言っているのは分かるがここはお互いの為に)真っ直ぐ走れ」
「冨岡さん…」
「(俺の数少ない友人の)アイリスなら(自慢の手料理でこの場を)何とかしてくれる。行け」
「冨岡さん…!」
ちょっと拗れてしまったけれどマズい状況には変わりない。
冨岡さんの言うアイリスって人がどんな人なのかは分からないけれど、ここは真っ直ぐ行った先にいると信じるしかない!
「すみません!ありがとうございます!!」
俺は禰豆子を連れて走る。
真っ直ぐ!真っ直ぐ!
途中で禰豆子の為の箱を持っていくから少し寄り道したけど真っ直ぐ走る!
アイリス視点
「うーん。これ僕が来る必要あったかな?」
到着した隠の子達と合流し、後処理の手伝いをしてるけど、彼らでも十二分に対処できている。
血鬼術を受けた人達もキチンと処理出来てる。
善逸は少し危なかったけど原作でもちゃんと間に合ってたしなぁ。
「薬膳さん」
「ん?」
カナヲちゃんが話しかけてくる。
カナヲちゃんは僕の事を薬膳さんと呼ぶ。
多分薬膳料理ばかり持ってくるからだろう。
「あらかたの指示は終わったので辺りの鬼を斬ってきます」
「うん。分かった。行っておいで。しのぶちゃん達が戻ってきたら鴉をとばすから」
「はい。行ってきます」
そう言うとカナヲはすぐに森の中へと消えていった。
暫くすると鎹鴉から禰豆子と炭治郎を確保しろという伝令が届いたが、そこはやはり継子と柱。
伝令から間を置かず二人の鎹鴉がやってきて、目標の確保に成功したので人を寄越して欲しいと告げられた。
………すげー顔あわせにくいけど行くか。