善逸視点
蝶屋敷に連れて来られた俺達は、はっきり言って散々な状態だった。
炭治郎は顔も含めて全身に切り傷や擦り傷が沢山付いてて、全身筋肉痛で肉離れも起こしてる。オマケに下顎も割れてるって言われてた。
伊之助は見た目は酷くないけど、喉を酷く痛めてる。何かあったのかいつもの様な元気がない。
俺は一番酷いらしく、あの気持ち悪い蜘蛛の毒のせいで腕と足は縮んじゃってる。左腕なんか痙攣してるし。
でも後遺症は残らないって話だから良かったって思ってる。
蜘蛛になっちゃった人は残るって言ってたから。悲しいね
しのぶさんって人は面白い音をしてる人だ。
優しいかと思ったらある人が来ると少し熱が入ったみたいにツンツンしだす。
蜘蛛になっちゃった人達を治す時は女神様みたいだったな。
みんなしのさんの所に行ってたし。
反面分からないのが薬膳さんって呼ばれてる人だ。
優しい音はしてる。
してるんだけど、まるで壁の向こうか、水の中から聴こえてくるようなくぐもった音なんだ。
それと一緒に悲鳴の様な、泣いてる様な、そんな悲しい音も聞こえてくる。
どうしてあの人の音はあんなにもくぐもっているんだろう?
どうしてしのぶさんの音が柔らかになるのに、薬膳さんの音は苦しそうになるんだろう?
「皆さん。どうですか?身体の具合は?」
「はい。お陰様でかなり良くなってます」
「そうですか。それでは、竃門くんと伊之助くんは、予定通りに機能回復訓練に移りましょう」
入るなり、しのぶさんはそんなことを言ってきた。
え?なんなのそれ?
そう聞き返す前に炭治郎達は連れて行かれた。
機能回復訓練とやらが始まって数日、炭治郎と伊之助は毎日やってるんだけど、帰ってくる度にげっそりした顔でやってくる。
何やるの?って心配になって聞くんだけど
「ごめん…」
とか
「キニシナイデ…」
しか返ってこない。
なんだよ!?こえーよ!
教えてくれよ!俺も明日からやるんだからさぁ!
そしてその明日が今だ。
怖いよぅ…何やらされるんだよぅ…。
そう思ってついて行った先の道場っぽい大部屋には、女の子が居た。
女の子だ。
キリッとした雰囲気の二つ結びの女の子。
それを真似して本人達なりにキリッとした顔をする3人の女の子達。
あとは奥に湯呑が並んだちゃぶ台の側に座ってる女の子。
女の子。女の子。お・ん・な・の・こ!!!!
「善逸さんは初めてですのでご説明します。先ずは寝たきりで固まった身体を解していきます。次にあそこのちゃぶ台で反射訓練を行います。湯呑の中は薬湯が入っており、それを先に相手に掛けると言うものです。掛けられたくなければ、相手の湯呑を抑えてください。最後は全身訓練。端的に言えば鬼ごっこです。相手は私アオイか、あちらのカナヲになります。また、無いとは思いますが希望があればアイリス様がお相手してくださる事もあります。なにか質問はありますか?」
その時…俺は理解した。
こいつら…こいつら…こいつら!!!
うおぉぉぉのれちくしょおおおおぉおぉぉぉーーーーーー!!!
「すいません。ちょっといいですか?」
溢れる怒りを抑えて手を上げる。
「はい。なんですか?」
「いえ、ちょっと……お前ら。来い」
そう言ってゆらりと立ち上がり、二人のボケを連れて行く。
行かねぇとか知るかそんなもん!
そんでもって二人を外に連れ出した瞬間。
俺はキレた。
「このクソどもが!ゴミ共が!!そこに正座しろ正座!ゴラァ!」
「ナンだとテメェ…!」
うるせぇ!俺の不安と怒りと恨みの一撃を喰らえ!
バッキャア!!!
「ゴッハァ!?」
「伊之助ーーー!?何をするんだ善逸!?伊之助に謝れ!」
なにをーーーー!!!
「お前が謝れ!お前らが詫びれ!!天国にいたのに地獄にいたみたいな顔してんじゃねぇ!!毎日女の子とキャッキャキャッキャしてただけのくせに何やつれた顔してたんだよ!土下座して謝れよ!切腹しろ!!」
「なんてこと言うんだ!」
「黙れこの堅物デコ真面目が!!そして聞け!いいか!?女の子に触れるんだぞ?!身体を揉んでもらえて!湯呑で遊んでる時は手を!鬼ごっこする時は身体に触れるんだぞ!!!女の子にはおっぱいが二つにお尻も二つ!太ももも二つ付いてんだぞ!!すれ違えばいい匂いするし見てるだけでも楽しいだろーが!幸せ!!うああぁぁぁ!!!幸せええええぇぇぇぇ!!!!」