居場所~戸塚彩加ルート~   作:おたふみ

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1話

修学旅行の後から、八幡の様子がおかしい。

元気も無いし、自分で『腐っている』と言ってた目は、生気を失い死んだような目になっていた。時々、大岡君や大和君と一緒に教室を出て、遅れて戻って来る。

話を聞いても『大丈夫だ』『なんでもない』ばかり…。時には『俺に関わらない方がいい』とまで言う。

こんな状況なのに、由比ヶ浜さんは何も言わない…。川崎さんは話しかけてるけど…。

 

しばらくした雨の日。部活も休みになり、一旦帰宅後に買い物に出掛けた。その帰りに海の近くの公園のベンチで八幡を見かけた。傘もささず、鉛色の空を見上げる八幡が居た。近づこうとすると、うっすらと笑みを浮かべながら海の方へ歩きだした。

危ないと思い、駆けより海の数歩手前で捕まえた。

「八幡!何をやってるの!」

「…戸塚」

「しっかりして!」

「俺は…もう…」

そう言うと気をうしなった。

 

幸いにも、家までは遠くない。引きずるように家まで運び、ずぶ濡れの八幡を着衣のまま湯船に放り込んだ。気を失っているので、沈まないように注意をはらいながら、自分もシャワーを浴びた。

 

家人と一緒に着替えをする為に服を脱がすと、体中がアザと傷だらけだった…。

 

とりあえず、自分のベッドに寝かせて目が覚めるのを待った。

 

「ん…。ここは…」

「目が覚めた?」

「天使が居る…。ここは天国なのか…。違うな、俺が天国に行けるわけが…」

「八幡…」

「戸塚…」

「なんで、あんなところに…」

「どうして、死なせてくれなかったんだ…」

消えそうな声で彼が呟く。

「八幡、よかったら話してくれないかな?」

「いや…でも…」

「八幡…」

彼の手を握り目を見つめる…。彼の顔が赤くなった気がする…。

「あんまり、気分の良くない話だぞ」

「それでもいいよ」

「わかった。話すよ」

 

彼はゆっくりと話してくれた。

修学旅行の前に来た、戸部君の依頼。その後に来た海老名さんからの依頼。葉山君の現状を壊したくないとの話。そして、嘘告白。信じると言ってた奉仕部二人の言葉。妹は奉仕部二人を信じて話を聞いてくれない。戸部の告白を邪魔したと大岡君・大和君からの暴力。ほかにも、文化祭の悪い噂もあっての罵詈雑言に暴力。

「と、戸塚…、泣いてるのか…」

「八幡…、よくがんばったね」

気がついたら、彼を抱き締めていた。

 

少し落ち着いてきたので、今後の話をしよう。

「八幡は…どうするつもりなの?」

「ま、死ぬのは戸塚に止められたし、どこか遠くに行こうかなぁ」

「あてはあるの?」

「ないな。人目につかないところで…」

「この世界を捨てるの?」

「かもな。次は俺に優しい世界になってくれると、ありがたい」

「…わかった。僕もこの世界を捨てる」

僕は決意した。八幡と一緒に、ここを捨てることを。

「戸塚、何を…」

「八幡、僕がこれからする話を聞いたら、後戻り出来ないよ」

「ど、どうしたんだ、戸塚」

「この話を聞いたら、友達、クラスメイト、部活仲間、…そして家族。すべてを捨てる覚悟はある?」

「…死ぬつもりだったからな。まぁ、最後の挨拶ぐらいできればいいかな」

「わかった。これから話すことは、嘘偽りない事実だからね」

 

 

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