次の日、八幡を迎えに行く。
この格好、驚くかな。
「おはよう、八幡♪」
「お、おはよう…」
「どう…かな?制服のスカートって初めて着るから…」
「すげぇ、可愛い…」
「良かった。じゃあ、行こうか」
彼の腕をとる。
「お、おい、戸塚」
「戸塚じゃない。ちゃんと彩加って呼んでよ」
「お、おう、彩加」
「うん、何かな八幡」
「は、恥ずかしいんだけど…」
彼の顔は真っ赤だ。
「僕たち、婚約者なんだからいいの」
「そ、そうか…」
「八幡…」
「ん?」
「その…、ご両親はなんて言ってた?」
「色々、すまなかったって。親父が泣くところ、初めてみたよ。あと、彩加にも挨拶したいってさ」
「ご両親からしたら、僕は息子さんを奪ってしまうんだよね…」
「でも、喜んでくれたよ。俺みたいなひねくれたヤツと婚約してくれてさ」
「そっか…」
「なぁ」
「なに?」
「川崎と材木座だけでも、話をしたいんだが…」
「そうだね。あの二人も八幡のこと心配してたからね」
そんな話をしながら登校すると、凄い視線だった。昨日までジャージやズボンで登下校してたのに、いきなりスカート姿になったからだろう。
視線は向けて来るものの、誰も話かけてくることはなく、そのまま校長室へ。
「失礼します」
「し、失礼しまふ」
八幡ちょっと噛んだ。可愛い。
「殿下、話は聞いております。まずは御掛けください」
「ありがとう」
ソファーに腰掛け話を始める。
「校長、急な要望を聞いていただき感謝します」
「いえいえ。それで、隣に居るのが…」
「はい。婚約者の比企谷八幡さんです」
「ど、どうも…」
「今日は私と彼の荷物をまとめに来ました」
「では、そのように。彼のご両親からも連絡は受けてます」
「はい。お世話になりました」
「校長、川崎沙希と材木座義輝という生徒を呼んでいただきたいのですが…」
「あと平塚先生も、お願いします」
校長が席を外し、二人になった校長室。
「本当に彩加はお姫様なんだな」
「そう言ったじゃん」
「いや、少しずつ実感してきたんだ」
「ちょっと急過ぎたかな」
「いや、大丈夫だろ」
彼の手を握る…。
「不安かもしれないけど、僕はずっと側に居るからね」
「ありがとう、彩加」
校長が三人を連れて戻ってきた。
「戸塚、比企谷…」
「八幡、戸塚殿」
「校長、これはどういう…」
「僕から話します」
「平塚先生は、僕の事情をご存知ですよね?」
「まぁ、聞いてはいたが…」
「川崎さん、材木座君。僕はとある国の王族なんだ」
「え?」
「戸塚殿?」
「それに、女の子なんだよ」
「待って、戸塚…。お姫様ってこと?」
「そうだよ、川崎さん」
「八幡!我らの目に狂いはなかったぞ」
「うぜぇ、材木座」
「今朝、スカート姿の戸塚と比企谷が腕を組んで登校したって噂になってたから…。そしたら、二人とも教室には来てないし…」
「うん。僕は学校を辞めて国に帰るんだ。八幡を連れてね」
「ちょっと待ってよ」
川崎さんが狼狽している。無理もない。
「八幡は昨日、死のうとしてたんだ…」
「比企谷…それって…」
「あぁ、本当だ」
「八幡!何故我に話してくれぬ!」
「悪かったよ。それを彩加が止めてくれたんだ」
「僕は前々から八幡のことが好きだった。昨日の夜、死ぬぐらいなら、僕の婚約者として国に行こうって言ったんだ」
「俺も彩加が女だったらって思ってたからな。その話を受けた」
「そう…なんだね…」
「川崎と材木座は、なんだかんだ言っても、俺のこと心配してくれてたからな。最後に挨拶したかったんだ」
「比企谷…」
「八幡…」
平塚先生が声を出す。
「戸塚と比企谷の婚約はわかった」
ん?小声で結婚したいって言った?
「なぁ、比企谷。何故死のうなんて考えた。私だって、教師のはしくれだ。何故私に言ってくれなかった」
「平塚先生、すいません。あの時は、もう余裕がなかったのかもしれません。我慢して我慢して…、気がついたら海に向かって歩いてました」
「比企谷、すまなかった。お前の異変に気づいてやれなかった」
平塚先生が土下座をする。
「や、止めてください」
「だが…」
「もういいんです」
「すまん、すまん、比企谷…」
平塚先生は涙でボロボロだ。
平塚先生が落ち着くのを待って、八幡が事情を話した。
「比企谷、本当にすまなかった」
「それで、奉仕部の二人は居ないんだね」
「我に力になれることがあれば…」
「もういいんだ。そのおかげで彩加と結ばれた訳だしな」
「でも、アイツらは許せない。平塚先生…」
「うむ、それなりの処罰は受けてもらう」
「それはお任せしますが、明日以降にしてください」
「今日やれば、君に謝罪させることも可能だぞ」
「騒ぎになると面倒なので」
「君がそういうのなら…」
「比企谷、未練はないの?」
「無いといったら嘘になるが、川崎と材木座と平塚先生と話せたから、もう充分だ」
「そっか…」
「ねぇ、川崎さん、材木座君。一緒にお昼食べない?」
「いいのかい?邪魔して」
「わ、我もいいのか?」
「八幡のベストプレイスで食べようよ。あそこなら人目につかないし」
「購買でパン買わないとな」
「八幡、僕お弁当作ってきたんだ」
「彩加の手作りか?」
「うん。八幡の為に作ったんだ」
「ありがとう、彩加」
「なんか、もう夫婦みたいだね」
「ぐぬぬ、八幡…」
昼休みの約束をして、川崎さんと材木座君は教室へ戻った。