四人でベストプレイスで昼食を食べる。最初で最後の光景。
楽しい時間も長くない。
「比企谷、戸塚、見送りに行くから」
「わ、我も行くぞ」
「ありがとな、川崎、材木座」
「またね、川崎さん、材木座君」
二人が教室に戻るのを見送る。川崎さんの目に涙が見えたけど、黙っておこう。
最後下校時間まで空き教室を貸してもらえたので、そこで時間を潰す。
その間は、今までの八幡の話を聞いた。
中学時代の告白とその後、入学式当日の事故、奉仕部での出来事、文化祭。そして、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんへの憧れ…。そして憧れてた人達からの拒絶。心が痛くなるような話も彼は、もうどうでもいいという。僕に辿り着くまでの過程だと思えばなんてことはないと言った。彼のことを益々好きになってしまった。
下校時間を過ぎて静かになった教室で荷物をまとめる。これを玄関まで運べば従者が取りに来てくれる。この教室ともお別れだ。
「ねぇ、八幡」
「ん、どうした?」
「なんか、感慨深いね」
「彩加はそうかもな。おれには良い思い出なんてないから…」
「じゃあ、良い思い出にするために…」
彼に駆け寄りキスをした。
「お、おおおおおお、な、なななななな!!」
「誰も居ない教室でキスなんて、リア充みたい…でしょ?」
「可愛いな、ちくしょう」
作業を終えて、最後に職員室に挨拶をしに行く。
「平塚先生、お世話になりました」
「比企谷、何かあったらいつでも言ってくれ。地球の裏側からでも飛んでいくからな」
「貴方はルパンですか…。ありがとうございます。結婚式にはチケット送るので、パスポート準備しておいてください」
「まさか、生徒に先をこされるとは…。元気でな」
「先生も…」
校門を出て、帰りは手を繋ぐ…。数日前には考えられなかったことだ。
しばらく歩いていると、声をかけられた。
「あれ~、比企谷君だ」
「げっ!雪ノ下さん」
「『げっ!』とは失礼ね。隣に居る娘は誰かな?」
「こんにちは、雪ノ下さん。八幡、行こう」
「雪乃ちゃんに隠れて浮気とは。ダメだぞ」
「雪ノ下は関係ないですよ。嫌われてはいても好かれてはないでしょうから」
「そんなことないよ。雪乃ちゃんは不器用だから」
「まぁ、どうでもいいですけどね。とりあえず、このことは明日までは誰にも言わないでください」
「それって、私にメリットはあるのかな?」
「たぶん、面白いことになります」
「ふ~ん。わかった」
「あと、俺と彩加に深入りすると、貴方では手に負えなくなるので、やめた方がいいですよ」
「それは、私への挑戦かな?」
「いえ、忠告です。彩加、行こう」
「では、ごきげんよう。雪ノ下さん」
雪ノ下さんと距離が出来たら、八幡は大きくため息をついた。
「あの人の相手は疲れる」
「なんか凄い人だったね」
「もうそれも終わりだ」
「うん、そうだね」
そうこうしてると、八幡の家に着いた。
「じゃあ、深夜3時に迎えに来るからね」
「なんか夜逃げみたいで、すまないな」
「荷物は必要最低限で。残りは使いが取りに来るから」
「わかった」
彼の頬にキスをして、その場を後にする。