居場所~戸塚彩加ルート~   作:おたふみ

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三浦だけでも救いをという声に、お応えして救済話です。
興味のある方はどうぞ


苦悩し続けた優しき者

その再会は偶然だった。

「川…崎…」

「ん?三浦?」

高校卒業以来の7年ぶりの再会だった。

「元気そうだね、じゃあ、私は…」

「待って!」

「ん?」

「ちょっと…お茶しない?」

三浦の目は、何かすがるように感じられた。

川崎は時計を確認して言った。

「待ち合わせがあるから、少しだけだよ」

「ありがと…」

適当な喫茶店に入り席に座る。

飲み物が運ばれ、一口飲んでから、川崎が切り出す。

「アンタ、なんか話しがあったんじゃないの?」

「えっと、その…ヒキオ…比企谷は元気なの?」

「それ、アンタに関係あるの?どうして私に聞くの?」

少し突き放すような言い方をする。

三浦はうなずき、弱々しい声で話し始めた。

「教室でさ、ヒキオと戸塚と携帯で撮った写真…見てたよね」

「見られてたのか…」

「ヒキオは、あーしが居たグループのせいで、ヒドイ目にあってた…」

飲み物を口にしながら、川崎が聞き入る。

「あーしは、それに気づけなかった…。何も出来なかった…」

三浦の目から涙がこぼれる。

「アンタ、直接なにもしてないんだから、気にすることないんじゃないの?」

「でも、でも…、ヒキオにヒドイことした連中の近くに居たあーしが止めなきゃいけなかったのに…」

三浦が川崎の目を見る。

「あーしは、それが出来なかった…。だから、ヒキオにゴメンて言いたかった…」

「三浦…。アンタ、良いヤツだね。この後時間ある?」

「あ、あるけど…」

「待ってな」

川崎が席を外し、どこかへ電話をし戻ってくると。

「三浦、行くよ」

「行くってどこに?」

川崎はニヤリと笑い…。

「比企谷に会わせてやるよ。謝りたいんだろ?」

「そ、そうだけど…」

「アンタも運が良いね。アイツらが帰って来てるタイミングで私に会うなんて」

「帰って来てる?」

「それは、お楽しみだよ」

三浦と共に、川崎はある場所へ向かった。

 

その頃、比企谷家では…。

「ヒッキー、子供達は?」

「小町と雪ノ下さんがディステニーに連れて行ってる」

「比企谷君、それを早く言いなさい」

「何、行こうとしてるの雪ノ下」

「あの子達とパンさんよ。天使二人にパンさんなんて、夢のコラボレーションよ」

「まぁまぁ、雪ノ下さん。もうすぐ川崎さんも来るから」

「そ、そうね。姉さんには、写真を沢山撮るように連絡するわ」

「小町も雪ノ下さんも、うちの子供達を可愛がり過ぎ」

「八幡も、そんなこと言わないの。お陰で友達と水入らずに出来るんだから」

「だってよ彩加、うちの両親より可愛いがってるんだそ。その両親なんかスネて温泉行っちゃったし…」

「お義父さんとお義母さんには、悪いことしちゃったね」

「大丈夫たろ。帰ってきたら、遊んでくれるから」

「そうだね」

「ヒッキー、中二は?」

「編集さんにカンズメにされてる」

「本当にラノベ作家になったんだね…」

「アイツは意外と出来るヤツなんだよ」

そうすると、呼鈴がなった。

「ん?川崎か?」

「僕が出るよ」

「彩加、頼む」

部屋に入って来たのは、川崎と三浦だった。

「三浦…」

「優美子…」

「三浦さん…」

「ひ、ヒキオ!!」

三浦が八幡に抱きつく。

「うわっ!」

「ヒキオ、ゴメン、ゴメン。あーし、あんなことになってるなんて知らなくて、何も出来なくて、ゴメン!」

「三浦は何も悪くないじゃないか、謝ることなんてない」

「でも、でも…」

泣きながら、八幡に抱きつく三浦。

「…八幡?」

「こ、恐いから睨むな。不可抗力だ。三浦、とりあえず離れてくれ。俺が死んじゃうから」

「ヒキオ!死んじゃダメだし!」

「逆効果だった!死なないから、離れろ!許す!許すから!」

 

八幡から離れた三浦は由比ヶ浜に涙を拭ってもらっている。

「結衣はヒキオのこと知ってたの?」

「何年か前にね。優美子とも疎遠になってたから…」

「そっか…。結衣や雪ノ下さんも許してもらえたんだね」

「えぇ」

「元々、八幡も恨んでいた訳じゃないからね。はい、三浦さん、お茶」

「あ、ありがとう…。結衣、誰?」

「あぁ、やっぱり、そうなるよね。僕、戸塚彩加だよ」

「え?戸塚!!」

「そうだよ。久しぶり」

「なんか、髪長いし、元々可愛いかったけど、さらに…」

「あ~、三浦。俺と彩加は結婚したんだ」

「え?それって、海老名が好きな…」

「違うぞ」

「えっと、僕は女だったんだよ…」

「え?え?え?」

「ヒッキー、優美子にちゃんと説明してあげて」

「面倒くせぇ」

「八幡、ラノベ輸入禁止にするよ」

「おい、俺の楽しみを奪うな。わかったよ」

 

三浦に一から説明する。

「なんか、ヒキオも大変だったと思うけど、戸塚も凄い人生だったね」

「事実は小説より奇なりだよ」

「あっ!小説です思い出した!ウチのが、来れなくてゴメンね」

「まっ、仕方ないだろ」

「川崎さんが気にすることではないわ」

「中二は仕方ないね」

「川崎、結婚してるの?」

「川崎さん、三浦さんに説明してあげて」

「面倒くせぇ」

「俺のモノマネはやめろ」

「似てたでしょ?えっとね、今は『川崎』じゃなくて『材木座』なんだよ」

「材木座?どこかで聞いたことあるような…」

「写真見せてやれよ」

「えぇ~、恥ずかしいよ」

と、言いながら、スマホの写真を三浦に見せる。

「わかんないし」

「アイツ痩せたからな。川崎、高校の時に撮った写真あっただろ?」

「あれね。はいよ」

「え?あ?コイツ?さっきの写真と全然違うし。別人じゃん」

「そ、私が死ぬ気でダイエットしたら結婚してやるって言ったら見事にね」

「中二、変わったよね」

「材木座君、見違えたわ。外見も小説も」

「アイツとはネットでやり取りしたからなぁ」

「八幡たら、パソコンの画面見ながら、怒ってたもんね」

「すまん、うるさかったな」

「大丈夫だよ」

「で、今は締め切り間に合わなくてカンズメだけどな」

「そうなんだ…」

「三浦、そういえばあの時のグループはどうしてる?」

「あのあと、疎遠になっちゃったから、わかんない。結衣とも久しぶりなくらいだから…」

「葉山君ならわかるわよ」

「葉山?どっちでもいいが、一応聞く」

「姉さんの下で、馬車馬のように働いてるわ」

「なにそれ恐い」

 

 

時間も遅くなり、解散になる。

「そろそろチビ達も帰ってくるな」

「そうだね。ねぇ、八幡?」

「ん?」

「三浦さん、良い顔して帰ったね」

「アイツは優しいヤツだからな。それにオカンだし」

「何それ…」

「なぁ、彩加」

「なに?」

「本当に、彩加に助けてもらって良かったよ」

「また言ってる。僕だって、八幡に助けられてるし、こんなに幸せにしてもらってる」

「そうだな。俺も彩加に幸せにしてもらってる」

「あの子達にもね」

「そうだな」

「彩加、愛してるよ」

「僕も愛してる。八幡」

 

 

 


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