かつてポケモントレーナーとしての活動を諦めた少女はチャンピオン達の後押しを得て再び旅を志した。
その旅の中で得た物は多くそれはいつになっても彼女とポケモンの幸せな思い出となる物だ。
さあ、一つの旅が終わったら、また新しい旅に出よう。
新たな人とポケモンの出会いを求めて。

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ポケットモンスターソードシールドが予想以上に面白かった事から1作書いてみました。

尚本作の主人公には特に転生要素はありませんが、作者の転生要素の有る過去作
『ハローマイドリーム』のキャラが登場する事もあり転生タグをつけております。


とある少女の挑戦とその後

秋の空の陽光が、天井の透明度尾の高いガラスを透かして入っていく。久しぶりに見たシュートシティ国際空港はやっぱりすごい綺麗な建物だ。空港は白く清潔だし、ネオンの光を放つ最新の機械がどこもかしこも目まぐるしく動いている。自分が来る前と変わらずそれ自体がガラル地方の観光名所と言えるほどの賑わいだ。

 

「え~と、シンオウ行き312便の搭乗口は、と」

 

私はガラル地方に来た時と違って両親と一緒ではなく一人で私はキャリーケースをガラガラ言わせながら歩いていく。私の乗りたいシンオウ行き312便はまだ出発時刻まで1時間はあるけど乗り損ねる訳にはいかない。方向音痴気味の私としては早めにどこに行けば乗れるか確かめておきたかった。

 

そんな私にちょい、ちょいと手をかける者がいた。緑色のリボンのように細い腕は私のホウエン時代からの友達のサーナイトだ。私がまだ幼稚園生の頃からの付き合いになる彼女がもう片方の腕で指し示すのはカントーなどの日本方面の飛行機の行き先が書かれた電光掲示板。そこにはしっかりとシンオウ行き312便の搭乗口等が書かれている。トレーナーの私以上に賢い子だ。

 

「なんだ!ちょうど真ん前にあるじゃん!ありがとうねサーナイト。もう少し食べ物とか買っとこうか」

 

あと一つ訂正。私は今も一人じゃない。サーナイトだけじゃなくてバンギラス、ニャイキング、ルンパッパ、キュウコン、タイレーツと多くの仲間になったポケモンがいるんだから。

 

お菓子と飲み水、それにちょっとしたシンオウ地方に住むおばさんへのお土産を買ってから待合室に向かう。その途中に私よりちょっと下くらいのピチューとワンパチと、メッソンを連れた子と目が合った。空港の中だしポケモンバトルを挑む訳でもないだろうし何だろう?

 

「あ、あのイチハ・ツダさんですよね?」

「はい。そうですけど……」

「よかったらサインください!キバナさんとの試合を見てからファンだったんです!」

「わっサインなんて初めてだ。いいよ~」

 

何とも驚いた事にサインのお願いだ。

 

「こんな感じでいいかな?ちょっと書きなれてないから変な形だけど……」

「そんなことありません!大切にしますありがとうございます!来年のトーナメントも絶対応援しますっ!」

 

私の暮らしているガラル地方では毎年推薦状をもらったポケモントレーナーたちが8つのジムチャレンジに挑み、全てのジムをクリアした者はチャンピオンへの挑戦者を決めるファイナルトーナメントへの出場権をかけて戦うセミファイナルトーナメントに出場する事が出来る。何を隠そう私もその中の一人で8つのジムをクリアした4人の中にぎりぎり滑り込みセミファイナルトーナメントに出場したのだ。尤も一回戦でホップ君というトレーナーに負けてしまったのだけど。

 

「後折角だから係員さんの許可が出たら……バンギラスと写真をとっていく?」

 

そう聞くとその子は問えても嬉しそうにぶんぶん首を振って肯定したので私は係員さんに許可を取ってバンギラスをハイパーボールから出す。ポン、と軽い音の後に出てきたのは暗い黄緑色で構成された逞しい体に背中から棘を無数に生やしたよろいポケモンバンギラスだ。バンギラスはあたりをきょろきょろと見渡して、少し空港の賑わいに驚いたようだけどすぐに何をしようとしているか納得してくれたようで居住まいをただす。

 

「すごーい!この子があのっキバナさんのポケモンをジュラルドンまで倒して大活躍したあのバンギラスですか!?」

「そうそう。あの時は頑張ったよね~!」

 

そう言って傷のあるお腹を撫でてあげるとバンギラスは嬉しげに唸った。その様子に安心したのか女の子のポケモンたちもバンギラスに駆け寄りじゃれつき始めた。そうして私もみんなで写真を撮る。私が色んな人やポケモンと縁を結んだ楽しかったジムチャレンジの旅の思い出を。

 

 

 

 

 

 

 

私イチハ・ツダは今はこんな風に元気だけど1年と少し前はどん底だった。何せお父さんの仕事の都合でガラル地方に越してきた当日に交通事故に遭って大けがをしたのだから。

 

友達と別れることになったのは寂しかったけど、トレーナーとしての私はガラル地方に向かう飛行機の中で燃えに燃えていた。私は多くのトレーナーと同じように前に住んでいた地方で無敵だったチャンピオンに(今はそのチャンピオンを破った私より年下の女の子がチャンピオンをやっているけど)影響されてポケモントレーナーのになったけど、我ながらセンスはあると思っていた。

 

なにせ私の持っているポケモンはサーナイトとルンパッパの二匹のみだったけどジムバッチは短い期間で4つ取得できたし、それ以外の野良試合でも勝率は高かった。なので私はポケモンバトルが私の住んでいた地方同様に盛んなガラル地方では他のポケモンも手持ちに加えてジムを制覇し、その先の最高のポケモントレーナーを目指そうなどと考えていた。

 

けれど引越し当日、ちょっと空港から意気揚々と外に出た時に事故に遭ってしまった。

 

しかもその交通事故の起きた理由がまたひどい。当時私のいた近くではポケモンの密猟者が取引を行っていた際に些細な諍いから片方が逆上し、密漁したバンギラスを入れたボールを開放してしまったという。結果として興奮したバンギラスが暴走し道路に出てしまい、バンギラスに驚いたドライバーがハンドルを切った先に私がいたという訳だ。そんなこんなで私は大けがをしてしまったうえにお気に入りのリボンまでなくしてしまった。密猟者のおじさんには刑務所の中で深く反省してほしい。

 

それからという物私は数か月入院生活を送る事になったが、私はガラル地方に来た時の覇気をすっかり失ってしまっており、日に日に治っていく体とは裏腹に陰鬱な心を持て余してリハビリも適当にこなしていた。今になって考えると事故の時の身体が動かない恐怖と痛みで外に出る事への警戒心が生まれたの他にも、新生活の出鼻をくじかれて何処か自分だけが取り残されていたかのような疎外感を感じていた事。それらが私の心から一歩を踏み出す勇気を奪っていたのだろう。でも当時の私は特にそんな自己分析もなく心配してくれるサーナイトとルンパッパの相手をしながら「旅に出るなんて考えなくていいや。これからは安全な地域だけで過ごそう」等と考えて無気力に過ごしていた。

 

そんなある日の事。私が暇つぶしに病室にあるTV(ガラル地方の名物社長ローズ社長率いるマクロコスモス社の傘下企業が開発したリーズナブルだけど映りのいいやつ)のチャンネルをザッピングしているとある光景が目に飛び込んできた。

 

それはとあるポケモンバトルの映像だった。超満員のシュートシティスタジアムの中央にある芝生の上では二人のトレーナーと彼らの操るポケモンが縦横無尽に飛び回り技を発射しあう激しいバトルを繰り広げていた。素人目にもとてもレベルの高い試合だったが、それもそのはず見た事のない片方の三角形の頭をしたドラゴンポケモン(ドラパルドというらしい)を操るのはガラル地方で10年間無敗を誇るチャンピオンの中のチャンピオン、ダンデだ。そしてもう一人は。

 

「これって……ガラル地方のダンデさんと……チャンピオンさん!?」

 

一方ゲンガーを操るのは私がいた地方の元チャンピオンさんだ。私がガラル地方に来る数か月前にチャンピオンの座を降りた彼はどうやら地方間のエキシビジョンマッチに招待されたようだが、そのポケモンバトルの腕は全く持って衰えを見せていない。

 

「ゲンガー、シャドーボール!」

「何の負けるな!ドラゴンアロー!」

 

ゲンガーがシャドーボールを放つとほぼ同時にドラパルドの頭のカタパルトからドラメシヤ2機が緊急発進する。その内一機はシャドーボールと相殺されたが、残る一機はとんでもない速度でゲンガーに突進し元より耐久の少ないうえに消耗していたゲンガーを吹き飛ばした。ダンデの巧みで力強い戦いに会場が沸き上がる。

 

「……え?今あのポケモン進化前っぽいのを発射しなかった?ガルーラみたいな生態のポケモンなの?」

 

あまりにも予想外なドラパルドの生態に私が困惑している間に元チャンピオンが繰り出したのはミミッキュだ。彼がチャンピオンだった時代は使わなかったポケモンの登場に私が驚くのとほぼ同時に、確実に先制する事が可能な”かげうち“を繰り出しゲンガーと同様に消耗したドラパルドを倒したのを見て、今度は元チャンピオンの強さに客席が沸き立つ。それでこそガラル地方のチャンピオン、ダンデの相手にふさわしいと。

 

「すごいバトルだ……」

 

思わず私は呟いてしまった。ガラル地方のチャンピオンであるダンデさんは新たなポケモンを繰り出し、対する元チャンピオンもアウェーの不利を感じさせず果敢に迎撃する。その素晴らしいバトルは長く続いた。結局勝ったのはダンデさんだったけど見ていた皆が楽しいだけじゃなくて、何か良い物が腹の底から湧き上がってくるような良いバトルだったからか、私もあの事故の事を忘れて確かに思ってしまった。またポケモンバトルをやりたいって。

 

さらに驚いた事にはその元チャンピオンさんが私のお見舞いに来た事だ。

 

「ああダンデ君はスケジュールが合わなくて来れなかったんだ。ごめんね」

 

そんな風に謝るがとんでもない。彼はチャンピオンを退いた今も昨日見せた試合の通りの素晴らしいトレーナーであり、私たちの憧れなのだから。慌てて場所を開けた私ににこやかに礼を言って彼は腰を下ろす。噂通りの柔和な人だった。

 

私の為に来てくれた彼と病室で遊びながら交流を深めていく内に私は幾つか質問してみた。ポケモンバトルの事とか、普段の活動とか有名な試合の話とか。スケジュールが開いているのをいい事に色々な事を聞く事が出来た。

 

「あのパルシェンとルンパッパって何を放してるんでしょうか?」

「んー動きを見た感じ素早いポケモンを相手にした時の動き方かな。あいつ付き合い長いんだけど凄い教えたがりでさ、とにかく動きから技まで水ポケモンを見ると何かを教えずにはいられないんだ」

「そうなんですか!ポケモンにもそういうタイプっているんですね」

 

中庭で何事か話しているルンパッパとパルシェン、ふわふわと散歩するミミッキュとサーナイトを視ながら私は自分の胸の内を打ち明けようか迷っていた。見舞いに来てくれた人にわざわざそんな内容を相談しなくてもいいだろうと思ったのだが結局は相談してしまった。事故以来私は内に閉じこもるようになって、でも昨日の試合からまた自分でもまた旅に出たいという気持ちが沸き上がってきたけどまだ不安と思う事。そんな事を話してしまった。

 

私が話し終える彼はしばらく何事かを考えるかのようなそぶりを見せるとやがて語りだした。

 

「そうだな……正直言って旅に出ない事が悪い事だと俺は思わない。どんなポケモンが住んでいるか、どんな人々が生活を営んでいるか……その分地元の事を良く知る事が出来るしね。何も容量の決まっているゲームとは違うんだ。街一つでも十分に魅力的な冒険になる」

 

そういう彼の顔は何処か謎めいていた。チャンピオンになるまでの、それからの人生で何かがあったのだろうか。

 

「ただね。俺も子供のころから何度かやったけどやっぱりいろいろなポケモンや人と出会える旅は悪くないと思う」

 

そう言って彼が放り投げたのは二つのハイパーボール。そこから出てきたのは黒い鋼鉄の身体をした紅い目のとりポケモンと太鼓バチのようなものを握り、草の冠をした逞しい体つきのポケモンだ。前者はアーマーガアというガラル地方でよく見るポケモンで私も知っていたが、後者は知らないポケモンだった。彼が言うにはゴリランダーというガラル地方固有のポケモンだそうだ。

 

「俺がこいつらと会ったのはガラル地方に来てから本当に偶然。でも今ではほら、笑いながら話し合える大切なパートナー達だ。旅の目的を目指して突き進むだけじゃなくて……その過程で良い出会いが沢山ある、旅ってのはそういう物だと俺は考える」

 

私の目から見てもアーマーガアとゴリランダーはずいぶんトレーナーを慕っているように見えた。それは彼に力量もあるのだろうけどそれ以上にガラル地方を一緒に旅した事が大きいんだろうか?

 

「だから俺は旅に出てみたらいいと思うよ。確かにこの地方での始まりは悪かったけど……その分良い事が沢山待っているはずだから。……ちょっと偉そうだったかな?」

「い、いえそんな事ないです!私……頑張って推薦状をもらって旅に出ようと思います!」

 

私はようやく決心がついた。臆病な癖に特攻が高いわけでもない私も、また旅に出て色々なポケモンや人に出会う喜びを味わいたいとまた確かに思ったから。

 

「その意気だ!あ、後前みたいに犯罪に巻き込まれる心配はあまりしなくていいと思うよ。ガラル地方は元から治安がいいし、俺とダンデ君で犯罪組織5個位潰しておいたから」

「えっ」

 

チャンピオン×2の実力はやはりすごかった。

 

それから私は少しずつ、少しずつだけどリハビリに取り組んで退院した後、ようやく通えた学校でも友達を作って遊んだり、ポケモンバトルをするようになった。そうして少しずつ勘を取り戻して大会にも出るようになった。そうしたのはあのバトルで勇気をもらったというよりも、単にまたポケモンバトルへの興味が再燃したというだけなんだろうけど私はまたやる気を出してトレーナーとしての道を歩み始めた。

 

そしてそんな私を見ていてくれた人がいるのか今年のジムチャレンジ開始の一か月前私はリーグから推薦状をもらってジムチャレンジに参加する事が出来た。家でドキドキしながら待っていた私は推薦状を見て喜び過ぎて思わず一緒に踊っていたルンパッパが目を回してしまう程だ。そんなくらいに私は喜んでいた。

 

それからしばらくして私達のジムチャレンジが始まった。エンジンシティでの開会式、大勢のベテランから私の様な若手、それにちょっと前にトレーナーだった人まで多くの人が集まった開会式はとても壮大で否応にもこれから凄い事が始まるんだってワクワクした。何せ何万人もの人が集まる事のできるスタジアムは超満員で熱気に包まれていて、それはローズ委員長の演説からチャンピオンのダンデの登場で一気に盛り上がったのだのを見たのだから。こんな大歓声のスタジアムの中で私も自分のポケモンを大マックスさせて戦う日がもうすぐだという事に私は興奮を感じて、一生の思い出にしようと思っていたのだっけ。

 

さらに開会式が終わった後皆が最初のジムのあるターフタウンに向かう中技マシンを買っておこうと今更ながら思い出した私はポケモンセンターに行く途中ダンデさんに出会った。近くで見る彼はチャンピオンにふさわしい堂々たる雰囲気と体格の持ち主でそれでいてどこか人懐っこい雰囲気を漂わせた人だ。

 

私は突然の出会いに驚き、混乱したポケモンの様にあらぬ事を口走ってしまった。私はダンデさんのエキシビジョンマッチを見てまた旅に出る事を決めました。絶対にジムチャレンジを勝ち抜いてあなたと試合ができるように頑張りますなんて言ってしまった。

 

「うんその意気だ!俺は君の挑戦を待っているぞ!」

 

そんなダンデさんからすれば何度聞いた言葉におなじみのリザードンポーズで返してくれた。私はそれを見てさらに頑張ってジムに挑もうと思ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

古都ナックルシティのスタジアムの中、客席にぐるりと囲まれた中央にある本来なら緑の芝生が見える鮮やかなバトルフィールドは吹きすさぶ"すなあらし"の色で覆いつくされていた。まるで砂漠の中の様な凄まじい砂嵐の中で私が相対するのはダンデさんのライバルである最強のジムリーダーのキバナさんと、ダイマックスで途轍もなく、もはや高層ビルと見まがうほどに巨大化したジュラルドンだ。

 

一方で私の方はこれまたダイマックスもあって紅いエネルギーを纏う巨大なバンギラス。ちょっと前に仲間になったバンギラスは今日もよく戦い不利な状況からジュラルドン相手に食らいついていた。だがそれでも長年一線で戦ってきたキバナさんとジュラルドンは強い。

 

「ジュラルドン、ダイスチルだ!」

「バンギラス身を護って!」

 

ジュラルドンの重厚な体から鈍色のエネルギーの奔流が発射された直後にバンギラスが身を護りその威力を減衰させるが、強大な一撃を完全に防ぐことは出来ずに黒と鼠色の模様がある胴にエネルギーが凄い音を立ててぶつかった。タイプ一致の上に弱点の鋼タイプの一撃を喰らった私のバンギラスの身体はぐらりと傾ぎ膝をつく。

 

「ああっ……!」

 

もうバンギラスは傷だらけで、今にもこのまま倒れそうな状態だ。でも私はまだ負けられない。残り一枠となったセミファイナルトーナメントの出場権の獲得の為、この戦いに勝つ必要があった。

 

そう、私があのホップ君やユウリちゃんと言ったダンデさん本人に推薦状をもらったようなトレーナーに劣るのは分かっている。でも私も私なりに頑張ってきたし、今はもう戦闘不能の皆も頑張ってきたんだ。それは今倒れそうになっているバンギラスも同じだ。だからもう少しだけ―――――

 

「頑張って、バンギラス……!」

 

身体を傾がせたバンギラスは片目だけで私を見てぐぉうと唸り、そして右腕を高々と上げる。まるで自分の中にある迷いに打ち勝つように。

 

 

 

 

私が旅に出てまず最初に捕まえたのはニャースだった。私がこれまで知っていた白い綺麗な毛並みのニャースとは全く異なる黒いボサボサの毛並みをしたこの子を最初に見たときはぎょっとしたけど、サーナイトの催眠術で捕まえてから触れ合ううちに笑うと意外とかわいい事に気づいた。また最初に戦うターフタウンジムのヤローさんは草タイプの使い手だと聞いていたので炎タイプのロコンを捕まえた。私のロコンは意外と神経質でいつものようにブラッシングを要求するけど、その替わりお礼に木の実をとってくる律儀な子だ。

 

この新たに私の仲間に加わった二体を軸にまず私は最初から3つのジムを勝ち抜いた。以前はなかった大観衆の中緊張しながらも戦ったターフタウンのヤローさんやバウタウンのルリナさん、エンジンシティのカブさんは皆負けても私を祝福してくれたいい人たちで、私も最初から最後まで凄い楽しく試合が出来た。

 

続くラテラルタウンジムでは私と同年代のサイトウちゃんとポケモンの、力強くしなやかな技に魅せられた。私のサーナイトが格闘ポケモンに相性が良くなければ負けていたかもしれない。後翌日の出発前にカフェでお茶していたサイトウちゃんにばったり会い、お菓子を食べながらポケモン談義をして電話番号も交換して手を振って別れたのもいい思い出だ。

 

その後に行った5つ目のアラベスクタウンはとても幻想的な街並みでお母さんや友達の為に写真を送ったらすごく喜ばれた。その後ジムリーダーのポプラさん相手には道中進化したニャイキングとキュウコンが中心になって勝利したけど、あのクイズの内容とジムの中に「フェアリーだ……フェアリーに染められてしまう。僕がピンクのようせいに……」と虚ろな目でつぶやいていたホップ君が居たのはどういう事なんだろう?

 

その次の6つ目のキルクスタウンまでの道で私はタイレーツと出会った。山道にあった良く小型ポケモンの為に住宅にあけられているような穴が何なのか気になって見て見たら、その時丁度綺麗に脚を合わせて行進してきたタイレーツと遭遇した。両方驚きながらも捕まえてみると格闘タイプだって分かってすごい驚いた。丸っこい形でてっきり虫タイプだと思っていたから。

 

その後育てたタイレーツはキルクスタウンジムのマクワさん相手にも、スパイクタウンジムのネズさん相手にも大活躍した。特にマクワさんの時なんて「はいすいのじん」で能力を上げたタイレーツが何と三体も連続で倒してくれた。強化されたタイレーツの先頭にいるタイチョーの力は凄くてもうほとんど飛び回って相手を攻撃していたのは今でも強烈な印象が私の頭の中に焼き付いている。付け加えておくとこの二つのジムチャレンジもサービス精神旺盛で私も何度もやりたいくらいの楽しいバトルだった。

 

そして少し前、ある意味この旅の総決算になるような出来事が起こった。私が最後のキバナさんとの闘いに備える為、ワイルドエリアでキャンプをしていた時の事だ。練習でその直前に戦ったユウリちゃんに完敗した事もあり6匹目を求めて一日中奔走していた私はへとへとになりながらキャンプ地に帰ってカレーの準備をしていた。

 

普段と違って私のテントしかないキャンプ地でサーナイトに手伝ってもらいながらカレーの準備をしながら、のんびり秋の日が暮れていくのを見ていると見張りについていたニャイキングが激しく唸りだした。慌ててあたりを見て見るとニャイキングの視線の先では丈の高い草むらががさがさと揺れている。

 

「どうしたの?そんなに唸って……?まさかあそこに危険なポケモンでもいるの?」

 

ガラル地方では目撃例がない物のウルトラビーストという異世界から来たポケモンが暴れる事件が何度かあった事は私も知っていた。そんな風に危険なポケモンが近づいているのかもしれないと私は火を止めて揺れる草むらに向き直って周りのポケモンに指示を出して出てくるのを待つ。そうすると出てきたのはバンギラスだ。バンギラスは見るからに強大で好戦的なポケモンだからか、みんなが私との間に割って入る。

 

でも私はバンギラスの動きに違和感があった。その一歩一歩踏みしめるような歩みは戦いにきたポケモンのそれではないし、何より右手に何かを握っているようなそぶりを見せている。おかしいな、それにバンギラスってこのあたりでも珍しいなと思ったあたりで私の頭の中の歯車がかちりと組み合うような音がした。そう、私はバンギラスを一度だけ映像ではなく本物を見た事があった。

 

「待って!あなたはあの時の……!」

 

そう私がバンギラスという珍しいポケモンを生で見たのはただ一度だけ。今からちょうど1年前に事故に遭った時だ。あの時暴走していたポケモンはバンギラスだったはずで、今にしてみると車にはねられた私を呆然と見ていた大きな影は他ならぬバンギラスだった。

 

私の言葉にバンギラスはしっかりとうなづくと差し出すように右手を出した。私に差し出したのは私があの事故の時に無くしたお気に入りのリボンだった。少し汚れてほつれているけど一年間放置されたとは思えない状態だったのはバンギラスが大切に持っていてくれたに違いない。

 

「そっか……このリボンを大切に持っていてくれたんだね。ありがとう……」

 

保護されてから野生に帰ったバンギラスが何を想ってこんな事をしたのかはわからない。でも確かに私の元に大切な物を届けてくれたこの心優しきポケモンに私はお礼を言った。

 

でもバンギラスは私にリボンを差し出した後も草むらに帰る事無く、私の前に何かがしやすいように頭を低くしていた。だから私はひょっとしたらという思いを込めてハイパーボールを取り出すとバンギラスはそれを穏やかな目で見ていて、受け入れるように逞しい両腕を広げた。

 

こうして私の6体目の仲間にバンギラスが加わった。

 

それ以外にも今短い旅の間には無数の出会いや驚きがあった。それはまだ十数年しかない私の人生でも最も楽しい時間の一つで、同時にこれからもポケモントレーナーとして色々な所に行こうと思わせる旅だ。

 

 

 

 

――――――――そんな旅のポジティブな象徴の一つだったバンギラスはこの大一番の8つ目のジム戦でも私の言葉に応えてくれた。

 

右腕を天へと掲げたバンギラスはかつてないスタジアム全体をふるわせるほどの咆哮を上げると、地面に倒れこむようにして体全体の力を集中させて大地を殴りつけた。殴りつけられた大地はこれまた轟音を立てながらひび割れてゆき、その崩壊のエネルギーはジュラルドンをも巻き込んで叩きのめした。それは地面タイプのダイマックス技

”ダイアース“だ。

 

ほぼ戦闘不能ながらバンギラスという攻撃力に秀でたポケモンのゼンリョクの一撃を思いきり浴びたジュラルドンは、爆炎に似たダイマックスのエネルギーを噴き出すと瞬く間に元のサイズに戻りどさりと横倒しになった。これで私のポケモンはまだバンギラスが残っているものの、キバナとポケモンはゼロ。すなわちそれは私の勝利。

 

『何と!激戦を制したのはイチハ選手だー!』

「皆……お疲れ様。バンギラスもつらかったのによくやってくれたね」

 

スタジアムが歓声に沸く中私は倒れそうなバンギラスをボールに戻してその上からそっと撫でる。本当に本当にこの旅に出てよかった。そんな私に歩み寄るのはキバナさんだ毎度おなじみの自撮りで自分の写真を撮った後に私に握手を求めてきた。

 

「おめでとう!俺様を破るとはすばらしいトレーナーに素晴らしいポケモン!ナイスゲームだった!」

 

噂通りのナイスガイのキバナさんはそう言って私達を湛えた。その後このバトルはその年の「ジムチャレンジNo1バトル賞」にノミネートされて私達は色々貰ったけ、どそれを後押ししたのはほかならぬキバナさんらしい。賞をもらった事を除いても私はこの試合の事を一生忘れない。それはバンギラスを始めとするこの旅で絆を育んだポケモンたちも同じだ。

 

 

 

 

「サインの他に写真まで取っていただいて……ありがとうございました!もしよかったら来年のジムチャレンジでもお願いします!」

「バトルのお誘いは大歓迎だよ!それじゃーねー!」

 

私は手を振ってからさっき会った子と別れた。時間が過ぎるのは早くちょうどいいくらいに飛行機に乗る時間が迫ってきている。さあ、今度はシンオウ地方へ冒険の旅へ出発だ。

 

―――――――――結局8つのジムチャレンジをクリアした私はセミファイナルトーナメントまではいけたけど、そこまでで全力を出し切った私はダンデさんの弟のホップ君に負けてしまった。その事には悔しさを感じるけど同時に満足感とまた、頑張ろうという気持ちはまだ私の中に強く息づいている。

 

だから今も私はシンオウ地方に住むおばさんに会いに行くついでと言っては何だけど、休み期間を利用してポケモンバトルの修行の旅に出る事にした。シンオウ地方にはあのチャンピオンさんの持っていたガブリアスの様な私が映像でしか知らないポケモンも沢山いて、それに名前も声も知らないライバルや友達になれる人たちもいるはずだ。

 

だから初めての土地にドキドキする事もあるけど私はシンオウ地方での旅がとても楽しみだ。サーナイト、バンギラス、ニャイキング、ルンパッパ、キュウコン、タイレーツかけがえのない仲間たちとまた新しい冒険の旅に出ていこう。

 

「さあ出発だ!」

 

外からの光に満ちた搭乗口に私は歩いていく。まだ見ぬ大地に思いをはせながら。

 


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