悪役令嬢は悪役プレイがしたい〜令嬢に転生して冒険生活〜 作:明日美ィ
「それでその男と共闘することになったわけ?」
私がガイゼルをテントに連れて、二人に経緯を話したところ、ヒロは不審そうな声を上げた。
「別にいいじゃない、人手足りていないんでしょ」
「まあ確かに猫の手も借りたい状況ですけど……」
オーラムも声色が若干良くない。もっとも二人の表情は仮面をかぶっているせいでよく分からないが、いまいちガイゼルを歓迎しないようだ。
「お金が必要だったからとはいえ、詐欺を働いていた人を普通受け入れる?」
「オイオイオイ、こいつら本当に医術師かよ。犯人だっていってこいつらを突き出したら国も信じるんじゃねえ?」
ガイゼルも同様に仮面を付けた二人をみて不審そうな顔をして、文句を言っている。
私はいがみ合う両者をいさめるようにパチンと両手をたたいた。
「別にいいじゃないの。みんな目的は同じなんだから、協力して病気を退治しましょう!」
「マリアンヌさん、たまに強引に物事進めるよね。マリアンヌさんらしいといえばらしいけど……」
「ええ……あたしは短いつきあいですが何となく分かります。それでですね、マリアンヌさんちょっと調査に進捗があったのですよ」
それまでオーラムは一人で看病と調査を平行していたせいで進捗が滞っていたが、ヒロがしてくれるようになったため調査に集中出来るようになったらしい。
なぜ彼女には医療スタッフがいないのかというと、庶民出身かつ十代で王族の専属医師に抜擢されたため、周囲からの嫉妬で王宮医局から孤立しているからのようだ。
ついでに言うとオーラムは医術師と言うより研究職に近く、従来にない治療法を開発しているという経緯から一人で活動していたとのことだ。
オーラムは患者の足に巻かれている包帯をはずすと、ひび割れた患部がむきだしになり、そのひび割れの隙間から体液がにじんでいた。
彼女は小瓶を一つ取り出し、そのひび割れにかけると患者は痛そうにうめく。しかし液体をかけたところから紋章のような記号が、足から浮かび上がった。
「いまかけたのは呪いを識別するための薬品です。本来は毒性があって人間に直接は使えませんが、あたしが毒性が低い薬を開発しました。これで朽木病の正体は厳密には病気ではなく、人に感染するタイプの呪術であることが分かりましたね」
「つまりこれは病気ではないと言うことか?俺は薬師として彼女らのような者はよく看ているが、よく他人から病気を移されたりして鼻が欠けてしまう奴も多い。これもそういう病気じゃねえのか?」
似たような患者を扱っているガイゼルが反論する。
「やはり蔓延しているのはそういう方が多いのですか?」
「ああ。貴族の連中もかかっている奴はいるみたいだが、知っている限りスラム街で女郎買いをしているようなやつらだ」
「だとするとおそらく性的に接触した際に感染するタイプの呪いだと思います。機構は不明ですが、被害者がほとんどが女性であることから考えると、もしかしたら彼女らが相手にした共通の客が呪いの元凶がいるのかもしれません」
「となると俺が聞き取りをすれば分かるかもしれないな。ただ彼女らが取った客から移った奴もいるかもいるだろうから、時系列を整理して初期に呪いにかかった奴を割り出せればいいんじゃねぇか?」
ガイゼルは頷いた。
「そうですね。これはあたしだと手に余ります。可能なら犯人の割り出しをガイゼルさんに頼みたいですがよろしいですか?」
「ああ、いいぜ。これが病気だったら俺の手ではお手上げだが、呪いなら確か元凶を潰せばいいんだよな。それなら手伝えるな」
「なら手分けして犯人を割り出しましょう」
今までは情報が足りなくて手がかりがなかったが、だんだんと今するべきことの方針がわかり始めてきた。
「オレはどうしたらいい?」
ヒロが話に割り込んでくる。
「ヒロは今までのように待機でお願いします」
「むう。オレもやる気がでてきたから手伝いたいんだけど」
「もし戦闘が置きそうな場合はガイゼルさんと交換して出撃してください。マリアンヌさんもヒロさんがいたほうが戦いやすいでしょう?」
「そうですわね。では各々やるべきことをしましょう」
私は再びスラム街に躍り出た。