悪役令嬢は悪役プレイがしたい〜令嬢に転生して冒険生活〜   作:明日美ィ

26 / 40
26 キシリトル

 作戦の方針が固まると事態の進展も早くなった。

 協力者が現れたこともあって、私はガイゼルと二人で娼婦街に赴き、被害を受けている娼婦達に聞き取りをするとすんなりと候補者が見つかった。

 

「キシリトル子爵の当主が、ここ最近このスラム街で娼婦巡りをしているらしい。もともと女ぐぜが悪いことで知られていて、スラム街以外にも下町の女性に手を出してあちこちで子供を作っているらしいな」

 

 特にガイゼルの活躍がめざましかった。

 娼婦街にいる娼婦と言っても女郎宿に寝泊まりしている娼婦もいれば、個人で客を取る夜鷹と言われる娼婦もいる。

 そして彼女らは自分が病気持ちであることは、知られると当然客が取れなくなるので隠している者が多い。あのオーラムに保護されている患者達は隠しきれないほど症状が進行してしまっている者達だ。

 その彼女らから聞き込みが出来るのは、長年ここの娼婦を含めた患者を多く看ているガイゼルくらいしかいないだろう。

 

「となるとそのキシリトールの野郎をとっちめればいいのかしら?」

「キシリトルだ。だがそもそも犯人の候補が奴と決まった訳じゃねえだろ。そもそもこれだけだととっちめるのには証拠不十分だろう?」

「まあせいぜい状況証拠だけで、物的証拠はないしね」

 

 前にサドエスと殴り倒したときは、魔物を使役するための宝石を所持していた上に、犯人が自分の犯行を白状していたので罪状に関してはごまかしようがなかった。だからこそ貴族の息子をはり倒したのにそのことにあまり追求されなかった。

 しかし今回は現時点では「なんか怪しい」と言う段階にすぎず、こちらから仕掛けると最悪国からの制裁があるだろう。

 

 私達に出来ることでもっとも安全な案は、可能な限りそのキシリトル子爵が病気の騒動の犯人であるという証拠を集めて、国にその証拠を提出する事ぐらいだろう。

 

「それでもつまらないわね。出来ることなら自分の手で叩きのめしたいわ」

「やめとけ。下手に貴族を怒らせると二度とそこにはとどまれなくなるぞ。俺だってエルフランドを追い出されているから、こんなところに住んでいるんだよ」

「あら、あなた何かやらかしたのかしら」

「うっせ、関係ねぇだろ今は」

 

 進捗を報告するためにテントに戻ると、二人は相変わらずテントの中にいたが少し様子がおかしい。

 

「今日のお昼頃ですね、患者の一人の苦痛が余りにもひどくて暴れ出したので、思い切ってケシの乳液を与えてみました。今は沈痛が効いていて落ち着いていますが、このままだと長く持たないかもしれません」

 

 話しているオーラムの手元には注射器が置かれていた。

 

「もう少し時間があれば……呪いの解除剤が作れるのですが少なくとも合成と精製にあと3日は必要です。それも動物試験をしていないので副作用も不明なので最悪失明したり、歩けなくなるかもしれなせん。完全な薬を作るためには多分2週間は必要です。それまで彼女たちの体が持つかどうか……」

 

 自分の力が足りないとオーラムは落ち込んでいた。

 

「せめてあたしが医局の人に頭を下げてでも人を連れていくべきでしたね……。患者の数が多すぎて、皆さんが来るまで人手がぜんぜん足りていませんでしたので……」

「自分を責めるのは止めなさい。やはり元凶をぶったおすのが一番よ」

「落ち着いてマリアンヌさん!これ以上問題を起こすとおや、陛下も黙っていられなくなる!」

 

 私が改めて決意を決めて勢いよく立ち上がると、ヒロに止められた。

 

「ちっ、仕方ないわね。もう夜遅いし、とりあえず明日から証拠集めをしましょう。ガイゼル、キシリトールガムの屋敷はどこにあるのかしら?」

「奴の領地に1つあるみたいだが、王都にも滞在するための屋敷があるからおそらくそこにいるだろうよ」

「居場所が分かるならいいわ。それよりおなか空いたから、ガイゼルここら辺で何かおいしいものはないかしら?」

「マリアンヌさん、いつも以上にフリーダムすぎる……」

 

 ヒロは頭を抱えている。

 

「テント内で食べられるようなものでいいか?さすがに患者をおいて食べに出かけるわけにもいかねえし。ついでに酒も買っておくかな」

 

 ガイゼルは快く引き受けて買い出しに行き、一時間後に患者含めた全員分の食料と酒を持ってテントに戻ってきた。

 

「あたしはこの状況で酒を飲むわけには行かないので、そちらで飲んでください。そもそもあたしは未成年なので……」

 

 水飲み鳥の仮面を付けた少女?はポリポリと顔をかくように仮面をかいた。

 

 ガイゼルが買ってきてくれたのは、皿代わりの大葉に包まれた料理だった。

 その包みを開くと、意外なことに私が知っている料理に酷似していた。

 

「これは豚のしょうが焼き?」

「まあ、そういうもんだな」

 

 細切りのタマネギと豚肉をあわせて炒めた、日本ならありふれた料理「豚のしょうが焼き」だった。

 別にこの世界は向こうの世界とは違うが、その食生活はヨーロッパの西洋料理に非常に近い。あえて違いに言及するなら、大航海時代に南米から持ち込まれたポテトやトマトが普通に食されるくらいだ。

 しかしここにきてバリバリの日本料理に出会うとは予想していなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。