悪役令嬢は悪役プレイがしたい〜令嬢に転生して冒険生活〜   作:明日美ィ

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3 悪役令嬢 冒険者生活を始める

 部屋の外から小鳥のさえずるのが聞こえる。気持ちのいい朝だ。

 私は窓を開け、外の空気を思い切り吸い込む。

「すぅーーーー、オーホッホッホ!オーホッホッホ!」

「マリアンヌさん、なにしているの?」

「日課よ」

 

 日課というのは嘘だが、この世界に来る前はたまに自宅で高笑いの練習をしていたりした。そのときは住んでいたところが住宅地で、たまにうっかり窓を開けていたためご近所さんに変な目で見られていたこともあったが。

 

 あの時倒した怪物……オークの討伐報酬が結構な額になったので、いまはこの街で一番値段の高い宿に宿泊している。マリアンヌは馬小屋のようなところに泊まるはずがないから、というのもあるが慣れない環境で自分の身体の疲労を溜めないためでもある。

 

 はじめは、

「あれはマリアンヌが全て倒したから自分の分は必要ない」

「街に連れてって行った件もあるし、女の子を野宿させるわけにはいかない」

ということで意見が衝突したが、最終的に『2人でパーティーを組んで報酬を山分けにする』ということになった。

 

「おめざめ麗しゅうございますわ、ヒロ」

「おはよう、マリアンヌさん。……マリアンヌさんのいたところの令嬢ははみんなそのような話し方とか、高笑いとかをしていたの?」

「ええ、まあそうですわ」

 

 ゲーム内の登場人物では大半の人物の話し方は普通だが、一部の人は……筆頭がマリアンヌだが、いつの時代の少女漫画かよという話し方をしていた。なので本当は少数派です。そういうマリアンヌの自分のスタイルを突き通すところがが好きなんですけどね。

 

「で、今日から2人でモンスターの討伐依頼を受ける、ということでいいんだよね?」

 

 ヒロは昨日と同じく上下半袖の服を着て、腰に長剣を帯びていた。

 私も昨日と同じ服しかないのでそれを着ますが、昨日の戦闘で付着したはずの返り血がついていないまっさらな状態です。ゲーム内では登場人物が着ている服は常に同じであるため、もしかしたら自動で服を浄化する機能が付与エンチャントしているのかもしれません。

 

「それでいいですわ。確か受領できる依頼のランク上限は、パーティーリーダーのランクで決まるのよね。それでヒロのランクは今いくらなのかしら?」

「え?ランクも何も昨日登録したばかりだからランク1だよ」

「……昨日戦っていたオークはランク3相当のモンスターよね、討伐依頼を受注できないはずよね?」

「討伐依頼は受注できなくても、倒した証明ができるのならばお金はもらえるんだよ。その分危険だし、同じランクで受けるより報酬は引かれるけど割りがいいんだよ。だからちょっと無理しちゃった」

 

 ……”ちょっと無理”って、昨日の戦闘を見る感じ冒険者の仕事は常に命がかかっているのだ。子供がこんな簡単に命を捨てていいのだろうか。私は日本に長く住んでいるから、子供が命を軽く見ているというのはやはりおかしく感じてしまう。これが価値観の違いというものかしら。私としてはあまり危険は犯したくないですが。

 

「これからはランク1の討伐報酬を受けましょう、無理して死んだら元も子もないわよ」

「はーい」

 

 

 宿を出て、冒険者ギルドが設置してある酒場まで歩いていく。大通りは人の往来が激しく、至る所で食べ物の屋台や露天商をやっていて活気に溢れていた。路面も元いた世界のようなアスファルトではないが、石やレンガのタイルを敷き詰めているため、ヒールで歩くとコツッ、コツッと子気味良い音がする。

 しかし裏通りを覗くと、地面がむき出しのままになっていて、そこでぼろきれで体を覆って座り込んでいる人が何人もいた。ヒロが言うには、怪我のせいで働けなくなった冒険者や麻薬中毒で廃人になった人は最終的にここにたどり着くらしい。向こうの世界もこちらの世界も貧富の差というのがあるようね。

 

 

 ギルドの扉を開け、受付のカンターに行き討伐依頼を受注する。その間後ろで「おいあれは昨日の……」「たしか”自称”公爵家令嬢とかいってたよな」「し、聞こえるぞ!」とかざわざわと野次が聞こえてきますね。マリアンヌは淑女なのでことを荒げるつもりはありません。せいぜいときおり声のする方向に振り返って殺意を込めて睨みつけるだけです。

 

「ではマリアンヌ・スカーレットブラットさんとヒロさんはこのランク1相当のゴブリン退治を受注する、ということでいいのですよね?」

「ええそうですわよ。ヒロ、出来るだけ今日中に街に帰りましょう」

「そうだね、キャンプする準備とかないしね……。それにマリアンヌさんは多分野宿とかしたことなさそうだし、したくないでしょ」

 

 というわけで昨日いた森まで歩いていきます。

 ヒールのままですが最悪またヒロにおぶってもらいましょう。私の担当は主に戦闘です。

 

 

 というわけで森に入りましたが、今日も茂みの中に潜り込んでから覗き込んでいます。なぜかというと……

「ケケケ……」

「グフフ……」

「キャーッキャッキャ」

 肝心のゴブリンは割とすぐに見つけたのですが、そのゴブリンが4体の小隊で行動しているのですよ。ゴブリンは人間の子供くらいの大きさの小鬼のようなモンスターです。でも4体のうち1体は他より体が一回り大きく、ヒロと同じくらいの身長はありそうですね。

 その大きなゴブリンが小隊を指揮しているようで、他には弓を持ったもの、神官のような姿をしたもの、体と同じくらいの大きさの剣を持ったもので構成されています。

 

『ねえヒロ、ランク1のモンスターってこれが普通なのかしら?』

『ゴブリンの小隊は人数によるけどランク4相当らしいからねえ、引き返した方がいいんじゃない?』

『そうね』

 

 ゴブリン単体はそこまで強くないらしいですが、群れると危険度が跳ね上がるようですね。

 

 しかしこまったことにドレスが茂みの細かい木の枝にひっかっかってしまい静かに抜け出せません。

 ……やはりマリアンヌの格好は戦闘に向いていませんね。

 

『マリアンヌさん、はやくこっち!』

 

 ヒロはすでに茂みから抜け出して、こっちに手を招いています。

 ……ええい、前言撤回。やはり悪役令嬢はこの程度ではビビったりしません。マリアンヌ、行きます。

 

 向こうのゴブリン達も物音に気がついたようで、警戒姿勢をとっています。昨日とは違い奇襲は無理でしょう。

 

 ……ならば、

 

「オーホッホッホ!来なさいこの雑魚どもが、みじん切りにして差し上げますわよ!」

 

悪役令嬢として堂々と戦いましょう。

 

「マリアンヌさん?!なにやっているの?!」

 

 ヒロの静止の声を無視して、まずセオリー通り神官から倒します。

 弓持ちが矢を放つが、それを鉄扇を斬りはらい駆け出す。

 神官は大剣持ちの後ろの隠れているため、鉄扇の射線内に入らない。大剣持ちは剣を大きく振りかぶり、私を両断せんと振り下ろしますが鉄扇を剣に真横方向にぶち当てて、剣の軌道を大きくずらす。そのままの勢いで回し蹴りをこめかみに放ち大剣持ちを吹き飛ばす。

 神官が傷を癒そうとするが、そのまえに鉄扇を投擲する。しかし逆に槍を持った隊長に落とされてしまう。

 隊長の槍とはさすがにリーチの差があり、さらに弓持ちは矢をつがえて私を狙っているので素手では対応が難しいか、と思ったが後ろから投石が飛んで来た。

 

「ヒロ!」

「マリアンヌさん、いまのうちに!」

 

 隊長と弓持ちのゴブリンが体をすくめた一瞬で鉄扇を拾い上げ、閉じたまま槍を鉄扇で切り落とす。さらに一歩踏み込んで隊長に肉薄し左胸辺りを深々と突き刺す。血反吐を吐き隊長は崩れ落ちた。

 

 あとは完全に消化試合だった。私が神官を、ヒロが弓持ちを1体ずつ倒した。

 

 さすがに一人で突っ込むのは無策でしたね。最も昨日から実力を確かめずに無茶ばかりしている気がしますが。

 

 その後は午前中いっぱいをつかってゴブリンの小隊を2つ撃破しました。

 

 これならなんとか生活はできそうですね。

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