悪役令嬢は悪役プレイがしたい〜令嬢に転生して冒険生活〜   作:明日美ィ

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34 反撃

 とりあえず半日待機して周囲の騒ぎが収まった後、私達は服を着替えてオーラムのテントに戻った。

 

 オーラムは一晩眠っていなかったらしく、仮面越しからでもかなり寝不足な様子であることが分かった。

 

「マリアンヌさん、昨日の真夜中急に患者の容態が回復しました。一部の人がひどく衰弱しているため楽観視は出来ませんが、とりあえず死者はでていません」

「そう。それはよかったわ。それでちょっと話すことがあるのだけど……」

 

 私は昨夜の出来事を話して、いまキシリトル家の者に追われていることを話した。

 オーラムはちょっと困ったように肩をすくめた。

 

「そうですか……あたしとしては患者が治ったのは喜ばしいことですが、マリアンヌさんが逃亡の身にあることは非常に心苦しいです。とはいえあたしが手助けできることは限られています。下手すれば、自分が所属しているアルキミア王国とデーニッツ王国との関係が悪化するかもしれませんし」

 

 アルキミア王国の王女専属医師であるオーラムは政治的問題から手助けは難しいらしい。

 

「となると……残るのは冒険者ギルドかしら」

 

 依頼を受注したのは冒険者ギルドだし、国内各地に拠点を構える巨大な組織らしいので、駆け込んでも貴族の圧力に屈せず匿ってくれるかもしれない。

 そのためキシリトルの手の者に捕まる前に依頼の完遂をしてからギルドに駆け込むことにした。

 4人で手分けして患者をオーラムが事前に手配していた別の医療機関に搬送して、テントを畳み簡易診療所を解体した。

 

 そして冒険者ギルドのカピタル支部に私達は駆け込んだ。

 

「は、はあ……。依頼は満了したけど解決のためにキシリトル子爵の屋敷に忍び込んでそれが原因で追われていると……」

 

 私が報告を終えると、受付嬢は顔をひきつらせていた。ちなみにガイゼルは依頼とは直接関係がないからと言ってこの場にはいない。と言うより行方をくらませてしまった。

 

 待合室でしばらく待機していると、先日会ったギルド幹部のレンズが現れた。

 

「マリアンヌさん、あなたはなぜいちいち貴族と対立するのですか?もう少し穏便に解決する方法はなかったのでしょうか」

「始めから穏便に済ませる方法があったらそうするわよ」

 

 男はため息を付いた。

 しばらくなにやら考えていたが、その後男はこう話を切り出した。

 

「確かに私達は冒険者の自由の保護を尊重していますが、キシリトル子爵からの攻撃を保護できるのかは分かりませんね……。それよりも反撃に移った方がいいのかもしれません」

「反撃?」

「キシリトル家やサドエス家は現在の国王に対して不服を申し立てて、謀反として今回の騒動を引き起こしたと言う話が仮に本当ならば

、国王に申し上げれば解決に動いてくれるかもしれません」

「でも何の取り置きもなく宮中に入ろうとすると門前払いされるんじゃない?」

「ただの一冒険者ならそうなるかもしれませんね。しかし冒険者ギルドの意向として動くのなら、話を聞いてもらえる可能性は十分にあります」

 

 幹部レンズの話によるとかつてのデーニッツ王国は国の軍隊が魔物の討伐をしていたのだが、冒険者ギルドが成立してからは仕事の一部をギルドに外部委託しているため、国王であっても冒険者ギルドを無視することはできないらしい。

 

「その上反国王派の謀反の証拠を差し出せば、国王に大きな借りができます。そうなればさらに国内での冒険者ギルドの影響力が強まります」

「つまりギルドとしても協力する価値があるから協力するということ?」

「ええ」

 

 レンズの返答を聞いて、ヒロはなんて現金なんだとため息をついた。

 男は羊皮紙に丁寧な文字を書き付け、私にその紙を渡してきた。

 

「ギルドから、あなた達を指名する緊急依頼です。依頼内容はギルドからの緊急報告を国王に奏上することです。あなた達だけでは難しいでしょうから高ランクの冒険者も一人付けます。護衛はその人に任せてあなた達は証人として王宮に上がってください」

「そんな重大なことをあなた一人で決めてしまってよろしいのかしら」

 

 目の前の男はあくまで幹部の一人であり、今彼のしていることは下手すればギルド全体に大きな影響を与える行為である。

 男はすこしにやりと嗤った。

 

「ギルドでは王宮に取り入る方針がすでに決まっています。それにギルド全体が巨大になりすぎているため、ギルド全体の意向をまとめるには膨大な時間が掛かります。その間あなた達を保護するのは困難だと思われます。もたもたして利益を逃すよりは、最低限ギルド長の許可だけをもらって行動に移したほうが良いと思われます」

「それってもしかして他の幹部に出し抜けされないためだったりしませんか?」

 

 ここまで黙って聞いていたオーラムが口を挟んだ。自身の出世のために早急な判断を下したのではないのかと推測を話すと、レンズは急に真顔になった。

 

 対談が終わった一時間後、レンズが手配してくれた冒険者と合流した。

 その冒険者は全身を黒い甲冑でまとい、宝石で飾られた長剣を腰に帯びていた。声は少なくとも30半ばの男性のようだが、ヘルムを被っているため声がこもって聞こえる。

 

「私がアレクスだ。冒険者ランクは12。カピタル支部ではトップ5の中に入る冒険者、ということになるらしい」

 

 アレクスは口調は砕けているが態度は丁寧で、自身の実力を過大評価せずに見極めているようであった。

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