悪役令嬢は悪役プレイがしたい〜令嬢に転生して冒険生活〜   作:明日美ィ

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「……!」

 

 私はとっさに固まってしまった。

 このままだと援軍を呼ばれて数の暴力に圧殺されてしまうだろう。 隠し通路に引き返しても逃げきれるかどうか怪しいが、脱出した方がいいのかもしれない。

 

 そう迷っていたとき、私の脇を小さな体が通り過ぎた。

 

「ヒロ?!」

 

 彼女は兵士達を強引に押しのけ、執務室と外に繋がる扉にかじりつくようにとりついた。扉は内側から開くタイプであるため、扉を引っ張り外から援軍が室内に入らないようにしたのだ。

 少しして外から扉をバンバン叩く音が聞こえたが、ヒロが食い止めているおかげで今のところ加勢はない。

 

「誰も入れさせない!マリアンヌさん、なんとかして!」

「……分かったわ」

 

 ここまできたら自分も覚悟を決めた方がいいだろう。初撃に失敗して弱気になっていたけど、きっとマリアンヌなら果敢に立ち向かうだろう。

 

 私は鉄扇を構えて戦闘の態勢を取る。キシリトル子爵と護衛を含めて敵は十数人。

 ワイドウィングを起動し、室内の壁を蹴り上げながら私は縦横無尽に戦う。兵士の注意を可能な限りヒロから逸らすために可能な限り派手に戦う。

 兵士の顔を蹴り上げ、剣先を直感で回避し額に鉄扇をたたき込む。

 たった一人で大勢の兵士を相手に立ち回ることができている。

 

 マリアンヌの戦闘力がここまで強いとは思わなかった。いくら彼女が主人公のライバルだとしても、ここまで強い必要はないはずだ。

 もしかしたらここはゲームとは違う世界だから、世界にあわせた強さになっているのだろうか?

 

 そんなことを考えているうちに一人二人と兵士が倒れていく。

 そしてキシリトルとその側近数人だけになった。

 

 ヒロのおかげで増援はまだ室内に流れ込んでいないからなんとかなっているが、連戦のせいでこの時点で少し息切れしてきた。

 

 その一方キシリトルはギリギリと歯噛みして私をにらんでいる。

 

「まったく、忌々しい娘ネ!ことごとくワシの邪魔をしおって!」

「相変わらず台詞が三流の悪役その物ね。肥溜めを食べたような口でそんな言葉をはいても滑稽なだけよ。いい加減覚悟しなさい」

 

 私は鉄扇をキシリトルに向けて投擲した。

 鉄扇は護衛の隙間をかいくぐって飛んだが、男は見た目からは想像付かない反射神経をもって腕で受け止めた。

 本来なら骨を砕くほどの威力のはずだが、男は気にもとめないようだ。

 

「な?!あんたいったい何様よ!」

 

 キシリトルは私が驚いているのを見ると、にたりと(わら)った。

 

「ククク……。こんなこともあろうかとわしは自分の体に呪術による強化をほどこしているのネ。ワシの体は全身鉄のように固くなっているのネ」

「まったく面倒ね……」

 

 ガイゼルの話ではキシリトル本人が朽木病の感染源になっているらしいため、娼婦達を苦しめると同時に自分は逆に利用しているのだろう。

 

 鉄扇は腕に当たって足下に転がって、回収が困難になってしまって若干不利になってしまった。一息にしとめようとしたがそれがあだとなってしまった。

 

 そうしている間にもヒロが押さえている扉がドンドンと激しくぶつかる音がして、今にも蹴破られそうだ。

 今のうちに倒さないと室内になだれ込んだ兵士に圧倒されてしまうだろう。それなら別の武器を用意する必要がある。

 

「ヒロ、腰に差している長剣を貸しなさい!」

「え?いま両手が使えないから、マリアンヌさんが抜いて!」

「仕方ないわね、剣が抜きやすいように体の向きを変えなさい!」

 

 キシリトルから距離をとって、扉の方に向かい長剣を引き抜く。長剣は鉄扇と比べて手にしっくりとはこないが、王都の武器屋で買った剣であるためしっかりとしたつくりで扱いやすい。

 

 しかし私が再び立ち向かおうとしたそのとき、ヒロが体の向きを変えてしまって扉を押さえる力がゆるんでしまったらしい。突然ドスンと音がしたかと思うと、バキッと蝶番(ちょうつがい)が壊れる音がして扉を蹴破られてしまった。

 

 しまったと思って振り返ると、そこには銀色の鎧を着た騎士と共に黒の鎧を着た騎士が立っていた。

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