悪役令嬢は悪役プレイがしたい〜令嬢に転生して冒険生活〜   作:明日美ィ

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 後始末は我々に任せてくれ、とアレクスに言われたので私達は王城を離れ、街に戻った。

 

 宿に置いていた荷物を引き取り、一応身の安全をはかるために冒険者ギルドの一室で数日間宿泊した。王宮内のゴタゴタがあったせいなのか、その間アレクスはギルドを訪れなかったが、そのかわり使者が私たちを訪ねた。

 

「陛下からマリアンヌ様に言伝がございます。陛下が留守の間に起きた襲撃事件を見事解決した暁に、あなた様に報奨を授けたいとのことです。明後日の正午、少なくともあなた達のどちらかは王城に参上してもらいたい、とのお願いでございます」

 

 使者は伝言を伝えた後、これはお願いではなく陛下からの命令でございますと小さく付け加えた。これは貴族の常識を知らない、冒険者の私が貴族的な言い回しを誤解させないための配慮なのだろうか。

 

「少なくとも一人と言うことは私だけでもいいということかしら?」

「そうじゃないの?さすがに親にこの姿を見せたらひっくり返ってしまうから、オレは遠慮するよ」

 

 彼女はやはり家族に冒険者の姿を見せたくはないらしい。以前からかなり嫌がっていたし、あの時も緊急事態でなければ王城に駆け上がることもなかっただろう。

 

 というわけで私一人が国王に謁見することになった。

 

 そしてその当日、私は用意された馬車に乗り王宮に登城するとこになった。

 

 前に来たときは急いでいたため余りよく見ていなかったが、やはりとても美しく壮大な城だ。

 旅行や写真で中世西洋の城はいくつか見たことがあるが、それらよりも時間が経っておらず新しいためかとても綺麗だ。

 

 そして私はヒロの父である国王と謁見の間で対面する事になった。

 

 国王は40前後の男性だが、かなり体を鍛えているらしく周囲の騎士のように筋肉質であった。

 王はすくりと玉座から立ち上がると、威厳のある低い声で話し出した。

 

「私はエドワール・フォン・デーニッツだ。此度は王宮に巣くう不埒者を倒したことにたいして感謝する」

「え、ええ。大したことはしていませんわ。ただの成り行き上のことですし……」

 

 これが国王の威厳によるものなのか、中身が一般人である私は思わす緊張してしまう。彼の娘であるヒロはかなり気さくな感じがするが、やはり大国を治める人物が放つオーラは今まで出会った他の貴族と比べても別格であるように感じる。

 

「今回そなたを呼び寄せたのは、私の不在に乗じて事を起こした反国王派の事件について話してもらいたいからだ。事の経緯は騎士団とアレクスから聞いているが、そなたの口からも聞いておきたいことはいくつかある……。ああ、椅子はすでに用意しているから適当に座ってくれ。どうせ私の私的な謁見だし、気楽に構えてくれ」

 

 そういうと国王は玉座の上で器用にあぐらをかいた。やはり親子は似るものなのだろうか。

 

 言われるがままに椅子に座ったが、何を聞かれるか分からなくて怖い。

 

「そなたはアレクスと共に王城に侵入したと聞いたが、彼と一時離れて以降の行方は分かっていない。どうやら執務室で合流したらしいが、それまでにそなたを見かけたと言う情報がない。どうやって執務室に入ったのだ?」

 

 ああ、それは聞かれたくなかった質問だ。現在行方不明の王女から隠し通路を教えてもらってそこから侵入したなんて、とうてい返答できるはずがない。かといって適当な返事では嘘がバレてしまうだろう。

 

「ええっと……偶然隠し通路らしきものを見つけたので、そこから入りましたわ。まさかそのままキシリトルのいる所に繋がっているとは思いませんでしたわ」

 

 手のひらから汗をかきはじめたため、手を握ってごまかす。国王はじっと私を見つめて、何かを推し量っているようだが私の内心を見透かそうとしているのだろうか。

 

「そうか。偶然隠し通路を見つけてしまったのか。それは王族と一部の貴族のみに知らされている脱出通路だ。偶然だとしても見つけるのはかなり困難なはずだが……、もしかしたら経年劣化で見つけやすくなったのかもしれないな」

「そ、そうかもしれないわね」

「偶然ならしかたないな。後で修繕しておくか。それよりこの道の件は決して他人に口外してはならない。あの男たちの二の舞になるかもしれないからな」

 

 あの男、つまり謀反を企てたキシリトルとその派閥に属していた貴族達の話が出てきた。

 アレクスの話では、国王に反逆した者達は処刑及びお家断絶になるとのことだが……。

 

 国王はあぐらのまま髭をいじりながら、大したことがないかのようにこう言った。

 

「むろん、彼らは激しい尋問にかけた上で処刑だ。今分かっているだけで反逆罪と呪術の悪用、無関係の市民に危害を加えたことなど、まさに悪事のオンパレードだ。それらだけでなく余罪もあるかもしれないからな。念のために調べておく」

 

 あっさりととんでもないことを言ってのけた国王に対し、私は背筋が凍り付くような思いがした。

 

「とはいえそなた、いやマリアンヌ殿には感謝している。私の兄上はすでに他界しているが、いまだに兄上の派閥に属していた貴族達がいる。彼らは私の政権に対して不満を持ち、それ自体は大したことがないが、私を倒し兄上の息子を王にしようと言う動きが水面下で続いているらしくてな。確証がないために手出しはできなかったのだが、マリアンヌ殿の働きで彼らを無理矢理行動させることができたからな」

 

私が地下室から手紙を奪ったことで身の破滅を感じた貴族達は、それまでの計画を破棄し、やけくそで行動を起こしたためにうまく鎮圧できたということらしい。

 

「だから私の権限でマリアンヌ殿に報奨を与えたいのだが、何か希望はあるかね?」

 

 それは願ってもない話だった。


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