悪役令嬢は悪役プレイがしたい〜令嬢に転生して冒険生活〜   作:明日美ィ

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6 悪役令嬢 ダンジョンを全力で突っ走る

「オーホッホッホ!雑魚どもに用はないわ!邪魔だから退きなさい!」

 

 ダンジョンの通路を塞ぐ十数匹のゴブリンの群れをなぎたおす。ここのゴブリンは戦士とか神官とかなどのジョブに分かれておらず、全員が全く同じボロボロの短剣と腰巻を巻いている。そのため集団の統率が取れておらず、数こそ多いものの大した敵ではありません。

 

 最後のゴブリンを殺戮し終えたあと、ヒロが自身の背よりもずっと大きなバッグを持って駆けつけてきた。バッグの中にはここ数日ダンジョンに篭れるように食料品や寝袋などをありったけ詰め込んできてある。

 

「マリアンヌさーん、先行しすぎです!荷物持ちポーターを置いてけぼりにしないでくださいよ。荷物奪われたらどうするのですか」

「ああ、そうね。申し訳ないわ」

 

 というわけで今は街を離れてダンジョンの第一層にきています。

 ダンジョンとか迷宮というのは……いわゆる小説やゲームとかに出てくるそれとほぼ同じである。違いといえばダンジョン地上部に暮らすための施設らしいものがないことくらいか。あと固定層であり一直線の廊下のような第一層以外は、第二層以降は森や火山などがランダムに変わるという。

 ここで発生するモンスターは倒してもしばらくするとリポップするが、このモンスターはダンジョンから出ないため、地上に危害を与えることはない。

 そのためギルドも関心が薄く、ここで討伐したモンスターは討伐報酬にはならない。そのかわりにモンスターのドロップや、ダンジョンで発生する宝箱からアイテムを入手できてそれが収入になるのだ。

 

 倒したゴブリンはすぐにチリとなって消滅し、いくつかの死体からはみすぼらしい短剣だけが跡に残されていった。

 

 ここで小休憩を取り、水を軽く飲む。

 ダンジョンに突入してから、第一階層の半分程度まで突っ走ったがここまで冒険者に会うことはなかった。

 

「ダンジョンって冒険者に人気がないのかしら」

「ダンジョンは一攫千金のチャンスがあるけど、ギルドランクには影響しないからね」

 

 そういうものらしい。冒険者になる人はお金が目当ての人ばかりだと思っていたけれど、意外とそうでもないのか。あとダンジョン周辺に店や宿がないため長期滞在ができないのも大きいか。ここが価値があるとされれば、このダンジョンやその周辺が整備されて活気に溢れるのかもしれませんね。

 でも今ダンジョンがガラガラなのは好都合ですね。

 

「休憩もこのくらいにして、先行きましょうか」

 

 

 ダンジョンの各階層にはボスモンスターといわれる、同じ階層にいる他のとは一線を画す強さのモンスターがいる。基本的にはダンジョンの下の階層へと降りるための階段を守るように待機している。ダンジョンでポップするモンスターからのドロップは確率で落とすが、このモンスターを倒した時はランダムなアイテムが確定でドラップするという。

 今回のダンジョン攻略の狙いはボスからドロップするアイテムから『魔道書』を入手することだ。

 一度ボスモンスターを倒すとダンジョンを入り直すまでポップはしない。そして『魔道書』のような貴重なアイテムは階層が深くなるほどドロップする確率が上がる。そのため通常は自分の実力を見定めながら階層を降りていくのが基本中の基本なのだが……。

 

「で今回のダンジョンは何階層まで攻略するつもり?」

「今回は一階層だけを探索するわ」

「え?マリアンヌさんの実力なら2、3階層も突破は難しくないと思うのだけれど。なぜ一階層だけ?」

 

 今回のダンジョン探索は、いわゆるゲームでよく用いられる『リセマラ』だ。つまりダンジョンのボスが復活するタイミングがダンジョンの出入りなので、この往復サイクルを上げることができればより多くのボスドロップが手に入るのだ。

 深い階層に行けばいくほど『魔道書』ドロップする確率は上がるだろうが、それだとサイクルに時間がかかる上、万が一ミスで死んでしまうかもしれない。

 このダンジョンは人の往来がほとんどないうえ、下の階層が降りるたびにランダムな場所になるため、ダンジョンで遭難すると救援が来る可能性は絶望的である。

 そのため固定層であり、サイクルが最も短い第一階層のみに絞って探索しているのだ。

 あとポップするモンスターもゴブリンのようなの雑魚だけなので、非常に戦闘が楽なのも大きいです。

 

 第一階層の残り半分も突っ走ってついにボスがいる部屋までやってきました。それまでのダンジョンは幅数メートル程度の廊下だったが、ここだけは大空間になっていて、そこの部屋の中心に身長3m程度の豚の頭の怪物がいました。

 ……あれはいつぞや戦ったオークとほぼそっくりですね。変異種かもしれないですね。

 

『ダンジョンに眠る億千万の宝を求めし人間どもよ!ここを通りたければこのワシを……プ、プギィ!ちょっと待て戦闘に入るのはワシのセリフを全部言ってからにして!』

 

 ボスオークの右肩にナイフが突き刺ささり、突然のことに混乱する。ヒロが投げナイフをオークに投げつけて見事命中したのだ。敵との距離は15メートル以上あるが、それでも刺さるのはヒロの怪力によってなせる技である。

 

「マリアンヌさん、今!」

 

 言われるまでもないです。ナイフが投げられるや否や部屋の中央へ駆け出して、オークに接近する。オークは刺さったナイフを抜かずに巨大な金棒を振り上げて床を叩きつける。叩きつけられた床は表面のタイルが砕け散り、破片となって飛び散る。

 

『見たか、このワシのパワーを!』

「確かにすごいけど、動きが遅すぎないかしら?」

 

 鉄扇を広げ、鋭利な刃のようになっているそれで金棒を持っている手を切りつける。オークの腕は丈夫なのか骨までは砕けなかったが肉が引きちぎれ、腕は細切れ状態となってしまった。

 

『き、きさまあ!ワシの示威行為パフォーマンスを無視しやがって!せっかくの久々の客だというのに!』

「さっきからうるさい子豚ちゃんね、お黙りなさい」

 

 先の尖ったヒールでオークの股間を全力で蹴り上げる。そのまま 鉄扇を閉じて喉笛に突き刺しとどめを刺す。オークは股間を強打した痛みで股間を抑える格好をしたまま絶命した。

 

 オークの死体は光となって消え、跡には銀貨の詰まった袋と赤い宝石のようなものが残った。

 

「ハズレね、でこの宝石は何かしら?」

「多分マジックアイテムの類だと思うけど。街に戻って鑑定すればわかるんじゃない?」

「まあこれはこれでもらっといて、地上に戻るわよ」

「本当に降りずにダンジョンを往復するんだね……」

 

 帰り道はまだゴブリンがポップしていないので。特に何事もなく地上まで戻ってこれた。時間にすれば往復でボス戦を含めて体感で一時間ちょっとくらいか。

 今回のダンジョン探索ができるのは食料や水の持ち込んだ量を考えて跡三日くらい。睡眠時間を考慮してもあと50回くらいはボスドロップを狙えるだろう。

 残る問題は……、魔道書が第一階層で稀にドロップということは事前の情報収集で知っているが、果たして50回でドロップするのだろうか。今回は特に欲しい魔道書を絞っているわけではないが、強力な魔法を狙うのならもっと深い階層まで降りる必要があるだろう。

 

「じゃ、2周目いくわよ」

「へーい」

 

 

『ダンジョンに眠る億千万の宝を求めし人間どもよ!ここを通りたければこのワシを……プ、プギィ!またお前か!なんで二階層に降りないんだよ!』

 

 

 ダンジョンを爆走してボスを瞬殺し、ドロップを回収して地上に戻る、それを三日間続けた、そして三日間に渡るダンジョンマラソンが終盤にかかる頃、ボスオークは、こちらを見かけるや否や土下座して、

 

『お願いですから!わしからドロップできるものであるのならぁ!差し出しましますので、どうかお帰りになってください!」

 

と懇願するようになった。そこまで疲弊してしまったらしい。

 

 

 

 そうして私たちはダンジョン攻略を終えた。この短期間の間で数冊の魔道書を手に入れることができたのは嬉しい誤算だった。

 

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