鋼鉄ノ水平線   作:ツメナシカワウソ

2 / 2
前作のあの人が出てきます。知らない人はこちらから→ https://syosetu.org/novel/200966/


第二話『半人半機着任問答』

大本営。深海棲艦に対抗出来る唯一の手段であった艦娘達を建造、入渠、補給するための各地に配置された施設『鎮守府』の本部であるこの場所に、今回は見慣れない巨大な人型の機械が停まっていた。既に大きな注目を浴びているようで、周りに可憐な少女達が各々のリアクションをとっている。そんな中、その機械の持ち主は、高級品の敷き詰められた執務室にて一人の青年と対峙していた。髪は涙のように青く、切れ長の目には悲壮感が滲み出ている。

 

「初めまして。僕は佐江島(さえじま)裕翔(ゆうと)・・・この大本営を取り仕切る、元帥です」

 

「ご丁寧にどーも。俺はドラガ・モータリオ。解放旅団『daemon』の首領だ」

 

丁寧に挨拶した裕翔とは裏腹に、やや乱雑な口調でドラガは軽く自己紹介を済ませた。

 

「しかし・・・機械に機械が乗っているとは想像出来ませんでしたよ。というか、そもそも貴方のような、俗に言うサイボーグのような存在がいること自体信じられませんが」

 

裕翔はそう言うと、眼前のドラガと名乗る人型の者を見た。身長は凡そ2m程。人間の身体の表面の筋肉に合わせるように配置されたアーマーのような物の金属ユニットは時折水色に光り、カメラのレンズのように拡大と収縮を繰り返す目もそれに同期するように光を発している。何故か履かれているジーンズは半分以上が破れており、その上からも金属のパーツが見えている。髪は赤色で顔部分の肌は白いが、それ以外の肌に該当する部分は黒く染められている。自分や“彼”には及ばないが、現実離れした見た目だ。裕翔がそう思っていると、ドラガが口(?)を開く。

 

「で?わざわざ通信入れてきて何の用だ?」

 

「あぁ。単刀直入に言います。我々に協力して頂きたい」

 

裕翔はそう言うと、プレッシャーを目の前のサイボーグに与える。上に立つ者として順応した結果であろうか、その姿は眠れる獅子という言葉を連想させた。だが、ドラガはその言葉が放たれて数秒も経たない内に答えを出した。

 

「幾らだ?」

 

「金なら幾らでも。現実的な範囲には限られますがね」

 

「随分と曖昧だなオイ。言っとくが、アンタらの現実と俺らの現実は違うぜ?具体的に言わせて貰うと、最低でも1兆は頂く」

 

1兆。艦娘達の入渠や補給、及び建造に掛かる費用の10年分に相当する金額だ。そんな額を払えるか否かと言えば、当然・・・YESだ。

 

「いいでしょう」

 

「wow.青い顔して失神するかと思ったぜ。そんで、俺らは何に協力すればいい?戦闘か?」

 

「その通り。お恥ずかしながら、現在の我々の戦力では深海棲艦に対して退けるだけで御の字と言った状況です。そこで、貴方のような深海棲艦に対して能力を発揮できる人材が欲しかったというわけです」

 

「まぁそうだわな。お前みてぇなお偉いサンはこういう高ぇモンに囲まれて踏ん反り返り、女子供を戦争に行かせて沈めんだから。お前ら人間じゃねぇって感じだよな!まぁ俺はそもそも人間なのか怪しいラインだが」

 

「・・・」

 

しばし、沈黙。

 

「否定はしません。ですが、僕は他の無力な何もしないクズとは違う」

 

怒りのままに、裕翔は言い放った。

 

「ほう?そこまで言うんだったら見せてもらおうじゃねえか。クズとは違うってことをよ」

 

「わかりました。ついて来てください」

 

そう言うと裕翔はドラガを連れて訓練施設へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、訓練施設に着いた裕翔とドラガは、互いに向き合い、構えをとっていた。しかし、お互いに動くことはない。一対一の戦いに於いて、相手よりも先に動けば挙動を読まれやすく危険だということを互いに知ってのことだった。だが、ドラガはそれを本能的に覚えているだけであり、そこにどんな意味があるかまでは考えたことはない。それ故、数分の静寂を破って裕翔に殴りかかった。

 

「ハッ!」

 

「遅い!」

 

しかし、ドラガの動きを見切った裕翔は、己の背中に意識を集中させ、一気に分散させる。すると、複数の勲章が付いた制服の背中が破れ、枯れ木のような骨に彼岸花の生えた羽のような器官が姿を現し、拳を弾いた。

 

「成る程な!これがアンタの言うクズと違うってことか!だが扱いきれんのかな!?」

 

ドラガはそう叫ぶと、自分の身体を変形させる。変形と言っても四肢の推進機を解放しただけだが、これによって動きは更に加速する。

 

「おおおおおおおおらオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ‼︎」

 

「くっ・・・舐めるなァッ‼︎‼︎」

 

何処かで聞いたような叫び声を発しながら怒濤のラッシュを繰り出すドラガ。だが、裕翔もそれに対応して羽で弾くスピードを上げていく。周囲には凄まじい音と風が吹き乱れ、最早本来の訓練室の原型は留めていない。それでも彼らは戦いをやめようとしない。更に拳は速く、重く。更に羽は軽やかに、されど正確に。極限の状況下で、二人は互いを高め合っていた。だが、諸行無常。どんなものでの何れ終わりというものは必ず訪れる。今回のそれは、裕翔の羽とドラガの拳が互いの攻撃によって破壊されるという事象となって起きた。

 

「「何ィ!?」」

 

自身の武器が壊れるタイミングが同じなら驚愕の声を挙げるタイミングもまた同じ。だが、そこから先は違った。

 

「え!?俺、腕壊れたのか?あーマジでバラッバラじゃねえかよ!直すの面倒なんだよなぁ・・・」

 

「あ・・・施設が・・・やってしまった・・・」

 

お互いに失ったものへの落胆を抱え、二人は顔を見合わせる。

 

「・・・2兆」

 

「はい?」

 

「2兆に値上げだ」

 

「・・・まぁいいでしょう」

 

 

 




なんと2222文字というゾロ目の奇跡。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。